ケンカ祭り二日目も残り二試合、先に戦っていたエリアルドとルートだったがだいぶ体力も回復していた。
今会場の中央には二人の男が向かい合っている。
「久しぶりだな、エフェル。お前がケンカ祭りに興味を持ってたとは知らなかったぜ」
「ようエリアルド。こっちこそ意外だったぜ、剣士のお前が殴り合いの祭りに出てくるなんてな」
「忘れたのか?俺は祭りには目がない男なんだぜ?」
「フンッ、まぁお前が何企んでようが俺には関係ねぇ・・・けど、お前が俺と張り合えてたのはお前が剣を使ってたからだというのを忘れんなよ?」
どうやら二人は知り合いらしい。
二人とも冒険者ランクはAランクで結構有名だとか・・・まぁあのエフェルとかいうのは金髪で長髪サラサラな上に顔も良いので人気なのは納得だ。
会場の声援も心なしかエフェルの方が多い気がする・・・主に女性票が・・・
そうこうしているうちにゴングが鳴る。
二人は構えたままお互いの動きを見ている。
エリアルドはスタンダードな構え、エフェルは・・・蹴り技主体かな?手は楽にして足を小刻みに動かしている。
暫くは様子見かと思ったら両者同時に動いた。
拳と蹴りの激しい応酬が繰り広げられる。
やはり普段から格闘で戦っているエフェルの方が強い。
まず手数が圧倒的に多い。
どんな体勢からでも強い蹴り技を放っている。
エリアルドの方は威力こそ劣ってはいないものも、なかなか決定打を決められずにいる。
しかしなぜだろう、優位なはずのエフェルの顔が焦っているように見える。
エリアルドが手を抜いているようには見えない。
全力でエフェルを捉えようと拳を突きだしている。
十分後・・・・・
決着は着かずお互い息を乱していた。
エフェル優勢の筈だったのだが未だ決着はついていない、いやむしろエフェルの方が劣性に変わっていた。
傷もエフェルの方が多い。
「ハァハァ、へへっ、相変わらず嫌な"力"だぜ・・・」
「ハァ、ハァ、そろそろ決着か?」
「のぼせ上がんな。俺はまだ諦めちゃいねぇぜ」
エフェルがエリアルドの顔に蹴りを放つ。
エリアルドはそれを腕でガードしすぐさまエフェルの顔にカウンターを放つ。
エフェルは両腕でそれをガードすると同時に後ろへ跳び威力を削ごうとする。が、削ぎきれなかったのかガードごと吹っ飛ばされる。
「ハァハァッ、お前のタフさには呆れるぜまったく・・・俺の敗けだ・・・」
エフェルが降参した。
「いいのか?自ら敗けを認めて」
「引き際を弁えるのも冒険者の能力の一つだ。もっと早くにお前を仕留めきれなかった時点で俺の敗けは決まってたよ」
そう言うとエフェルは会場を後にした。
エリアルドも相当疲れたのか控え室へとゆっくり歩いていった。
「うう~ん、やっと私たちの番ね~ん」
エリアルド達の熱い戦いで湧きに湧いていた客席からヒィィィ!?というような悲鳴が聞こえる。
「あらやだ悲鳴だなんて、失礼しちゃうわぁ~ん?」
客席をある意味ざわつかせているのはルートの対戦相手、エッチャーだ。
女口調だがれっきとした男で、身長は190cm程だろうか?筋肉もしっかりついていてごつい。
そのくせ服の面積は小さくピンク色だ。
・・・正直直視はしたくないが相手も相応の強さを持っているので油断できない。
それは予選でのエッチャーの戦いをチラッと見ただけでもわかる、かなりの実力者だ。
「それにしても、君、かわいいわねぇ~!ほんと、食べちゃいたいくらい」
ゾワッッッッ!!っと会場の気温が一気に下がる。
"コレ"と戦わなければならないルートに皆が同情しているとゴングが鳴った。
ルートはどんな攻撃がきてもすぐかわせるように見た感じ楽に構える。
対するエッチャーは・・・・・クネクネしている。
足で軽くステップは踏んでいるが体はクネクネと動いていて正直気持ち悪い。
しかしルートには分かる。
(芯がまったくぶれていない・・・やっぱり相当な実力者だな・・・・・ッ!!?)
ルートが警戒を強めているとエッチャーが仕掛けてきた。
クネクネした動きから速く重い攻撃がいくつも飛んでくる。
まともに防ぐにはリスクが高いと判断したルートは風に舞う木の葉のようにかわしていく。
「あら~、やっぱりすごいわね~。初見でここまでかわされたのは初めてよ~ん?これならまだ本気を出せそうね~ん・・・簡単に壊れないでねぇ?」
エッチャーがギアを上げてどんどん猛追してくる。
それをルートも必死にかわし続けていく。
(・・・クネクネした独特のリズムのせいで動きが読みづらい・・・)
パァァァンッ!!
「・・・あら?」
エッチャーが何の音かと音のした方を見る。
すると・・・ルートの掌底が自分の胸の辺りに当たっている。
攻撃を受けたのだと理解する。
「やるじゃない♪初ヒットおめでとう。でももうマグレは起こらないわよ・・・ッ!?」
パァンッ パァンッ
再び攻撃をするエッチャーだがすぐさまカウンターを食らってしまう。
「なっ、なんで!?なんで急に!?」
「余裕ができたからさ」
混乱するエッチャーにルートが答える。
「反撃開始だよ。君の動きは・・・もう見切った」
そう言うや否や今度は自分から突っ込むルート。
慌てて応戦するエッチャーだが攻撃が当たらない。
さっきまではクリーンヒットとまではいかないながらもルートの体に当たっていたのに今はまったく当たらない。
ルートに攻撃した瞬間死角に入られて逆に攻撃を受けてしまう。
それも筋肉と筋肉の隙間や筋肉の薄いところなど防御力の低いところを的確に突いてくる。
(この子、何て才能なの!?この短時間で私の動きを見切って弱所まで見極めるなんて・・・・・・)
素直に感心してしまった。
認めてしまった。
こうしている今もダメージを受け続けもうすぐ立っていられなくなるだろう。
(まだ負ける予定じゃなかったけど、満腹だわ~♪)
つい顔が笑ってしまう。
ダメージを受け苦しいはずなのに嬉しくなってしまう。
「(最後に貴方と戦えて)満足だわ~♪」
そう言ってエッチャーは意識を手放した。
ルートもエッチャーに礼をする。
また強くなれたことに感謝しているのだろう。
気づけば、会場中が拍手をしていた。
最初こそ悲鳴もあったがその後の戦闘に皆が目を引き付けられたからだろう。
何にせよこれで最終日に戦う4人が出揃った。
観客、選手のボルテージがまた一段と上がっていく。
(・・・・・・・今日は何も起こらなかった・・・なら・・・明日かの・・・・・)
夕暮れの茜色から暗く染まっていく空を見上げながらハゴロモは不安を感じていた。