ケンカ祭り三日目、とうとう今日優勝者が決まる。
町全体の熱気が上がっている気がするが、ルートはそんなこと気にしていないようでいつもと変わらない。
宿屋の主人や屋台のおっちゃん等から激励をかけられるがいつもの営業スマイルで対応していて、端から見ていてどうもテンションの起伏を感じられない。
「なんか、全然嬉しそうじゃないンスけど・・・」
「いつものことさ。変に緊張してガチガチになってるよりはいいと思うけどねぇ」
相変わらずのマイペースぶりに感心?しロックがメアリーに小声で話しかけると、慣れたものなのかコレが通常運転だと答える。
「むしろ普段通りじゃないのは・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言ってハゴロモを見る。
ハゴロモは何か気分でも優れないのか時折眉をしかめたり何かを考え込んでいる。
「ん~・・・思い過ごしじゃないッスか?今朝だってモリモリ朝ごはん食べてたじゃないスか」
「そうなんだけど・・・なんとなくねぇ・・・」
そんなやりとりをしながら会場へとたどり着く一行。
相変わらずすごい観客の数と熱気だ。
しばらくするといつもの司会の男が選手達を連れて出てくる。
なるほど、流石はここまで勝ち上がってきた四人である。
見るものが見ればハッキリと強者だと分かる風格だ。
そして、司会から改めて選手の紹介なんかを軽くしたあと一試合目が始まった。
一試合目はエリアルド対エムゥの対戦だ。
この勝負、正直どちらが勝つかメアリーには分からない。
昨日の試合を見ていた限り短期決戦はないと思う。
それは二人の戦闘スタイルからも分かる。
エリアルドは試合後半に攻撃力が上がっていき、エムゥは試合前半は相手の攻撃をわざと受けて楽しんでいたからだ。
エムゥの打たれ強さを見ると、恐らく試合後半にならなければ致命傷は与えられないだろう。
下手をすればその前にエムゥに倒されてしまうかもしかれない。
それだけエムゥはパワー、スピード、タフネスを高い水準で兼ね備えている。
総合力なら今大会でも一番だろう。
「試合開始っ!」
一気にエムゥの元へ向かうエリアルド。
相手が受けに徹するのを確認して連激を繰り出していく。
どうやら早い段階で倒すことにしたようだ。
だが肝心のエムゥはというと
「ん~・・・気持ちいいけど、物足りないなぁ~昨日の方がいいパンチしてたよぉ~」
あまりきいていないようだが、何か確信を得たのかニヤッと笑うとエリアルドは攻撃を止め少し距離をとった。
「ならお前も攻撃してくんねぇか?実は俺はダメージを受ければ受けるほど強くなる特異体質なんだよ」
そう言って試すようにエムゥを見る。
「ふぅ~ん・・・何の作戦かは知らないけどとりあえず乗ってあげようかなぁ。本当にダメージで強くなったら儲けものだし・・・とりあえず君がすぐやられないように手加減はしてあげる、よ!」
そう言うと一気に迫り張り手を繰り出す。
勿論エリアルドが対処できるスピード、威力でだ。
それをエリアルドはかわさず、されど無防備で受けるわけでもなくガードして受け止めた。
「おいおい、何でガードするんだよぉ~、それじゃパワーアップできないだろぉ?」
「いや~わりぃわりぃ。つい条件反射で防いじまった」
そう謝るエリアルド。
訝しめな表情を浮かべるエムゥだったが確認のためもう一度張り手を繰り出す。
パシィィィンッ!
今度はガードされず体に当たった。少し身体が動いた気がするが・・・
その後もダメージを与え続けていったのだがたまに防御されたりかわされたりした。
なんでも『今のを喰らってたらダウンしていた』とか『油断してたからつい条件反射で動いちまった』という理由らしい。
それでもかなりのダメージを与えたはずだ。
現にエリアルドの身体には傷がたくさんある。
「いよ~しもう充分だろう。おまちかねのきついのをくれてやるぜ!」
そう言って構えるエリアルド。
エムゥは彼の行動に所々疑問があったがとりあえずパワーアップしたという攻撃を受けてみることにした。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ダァァァンッ!ダァンダァンッ!!
会場に激しい打撃音が響く。が、
「ん~~~、結構効いたけど残念、僕を倒せなかったね」
パワーアップしたエリアルドの拳はエムゥの肉壁を越えられなかった。
身体に痕はついているが決定打にはなりえなかった。
エリアルドは現実を受け入れられないのか固まってしまっている。
「かわいそうだけど、これで終わりね?」
エムゥはゆっくりと張り手の構えをつくると未だ動かないエリアルドに照準を合わせ、
「いいパンチだったけど、これで終わり──ハッ!」
先ほどの拳のお礼なのか今までより力を込めた張り手がエリアルドを襲う。
ズドォォォォォォンッッッ!!!
あまりの衝撃波に砂埃が舞う。
ようやく砂埃が晴れると・・・・・エリアルドが、笑っていた。
それだけではない。エムゥの顔が驚愕に染められている。
更によく見ると、エムゥの張り手はエリアルドの左側に外れており逆にエリアルドの右拳がエムゥの腹にめり込んでいる。
会場中が頭に?を浮かべている。勿論エムゥさえも。
「いや~、なかなか隙を見せねぇからちょっと焦ったぜ」
エリアルドが一歩下がってにこやかに語りだした。
「お前、用心深そうだったから一芝居うたせてもらったぜ!」
「えっ、えぇっとこれは~・・・・・」
解説者も状況がよく分からないのか言葉に詰まっている。
「よしよし、俺が解説してやろう。まず始めに、お前の打たれ強さの秘密は身体強化の力によるものだ。筋肉や皮膚を鉄のように固くしたんだ。ただ、それには欠点もある。防御力に優れた反面攻撃時には使えない・・・そうだろ?」「・・・・・・・・・!!?」
「だからお前が防御をとく瞬間、つまりお前が攻撃してくる瞬間に攻撃しなきゃなんなかった・・・だけど、それも1回バレればもう次はそうそう使えねぇ。だから確実に決めるために罠を仕掛けた」
「罠?・・・・・・!!やはりダメージでパワーアップというのは嘘か!?」
「いや、それはほんと。万が一寸前でバレても防御を突破できるようにギリギリまで上げたぜ。」
「じゃあなんなんだ?」
「何故攻撃を受けてるとき時間をかけさせたのか、それはお前の攻撃の癖を見極めるためだ。お前の得意な張り手、この一つを見極めるために結構時間はかかったかけどな。そこまで来ればあとはベストなタイミングで攻撃を決めるだけだ」
「くぅぅぅ・・・警戒していたのにぃぃぃ・・・」
悔しそうに嘆くエムゥ。
「ああ、だからお前に警戒を解いてもらった。最後の攻撃に失敗して動けない敵、それを見てお前は油断した。用心深いお前は俺の言動に違和感を覚えていたのに最後にそれを忘れたんだ」
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
ただ呻くことしかできない。
「ギリギリで、熱い戦いだったぜ!」
気力の限界を迎えたのかエムゥが倒れたところで勝敗が決まった。
決勝進出は、エリアルド。