Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第28話 ケンカ祭り⑩

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ケンカ祭り決勝戦、舞台の真ん中で二人は向き合っている。

 

「まさか坊主が決勝まで上がってくるとは、正直あの時は想像もしてなかったぜ」

「そう?」

 

そうだろうか?まぁ、参加者の殆どが筋肉ムキムキな中自分みたいなヒョロっとしたのを見ればそう思っても仕方ないのか?

 

「人は見かけによらねぇってやつだな、うん。・・・それはさておき、さっきお前の所に来た姉ちゃんは知り合いか?」

「?」

 

後半を小声で聞いてきた。

恐らく周りにあまり聞かれたくないのだろう。

 

「頭に赤い頭巾まいた金髪の姉ちゃんだよ」

「あぁ、メアリー?」

 

メアリーがどうかしたのだろうか?

 

「お前、あの姉ちゃんとどういう関係なんだ?」

「どういう関係もなにも、ただ一緒に旅をしてるだけだけど?」

「付き合ってんのか?」

「付き合う?」

「だから~、恋愛関係のことだよ」

 

ああ、なるほど、つまりエリアルドはメアリーに好意を持ったけどメアリーに相手がいるかどうか気になるわけか。

 

「メアリーに好きな人がいるかは分からないけど、恋人みたいな人は見たことがないよ」

「ぅおっ?そ、そうか?あんがとよ」

 

好意を持っていることがバレたからなのか驚いている。

 

「よかったら後で紹介しようか?」

「マジか!?そりゃ助かるぜ!ならさっさと試合しちまおうぜ!」

 

相当うれしいみたいだ。

思わず小声で喋るのを忘れてしまっているくらいに。

それを指摘しようと思ったがエリアルドは早々に自分の立ち位置に戻ってファイティングポーズを構えているので自分もそれに習うことにした。

 

「それでは、決勝戦・・・開始ィッ!!」

 

ゴングと同時にエリアルドが向かってくる。

もしかしたらただ早くメアリーを紹介してほしいだけなのかもしれない。

っと、そんなこと考えてる暇じゃない。

 

身体強化を使いエリアルドの初撃をかわし距離をとる。

・・・今の動き、準決勝の時よりも速かったかもしれない。

どうやら決勝まで本気を出してはいなかったようだ。

これが彼の本気なのかはまだ分からないが、後半になれば威力はこれより上がる筈・・・するつもりはないが油断はできないな・・・

 

「オラオラァッ!どうした避けるだけか!」

 

(今のところ勢いで押してはいるが、決めてにゃ欠けるな・・・結構マジで攻撃してんのに上手くかわしやがる。やっぱスピードに関しては向こうの方が上だな)

 

エリアルドは心は熱く頭はあくまで冷静に分析をしていく。

 

(ここで本気を出してもいいが、この後の仕事に差し支えるかもしれねぇからなぁ・・・──ぅおっ!?)

 

エリアルドが力を出し惜しみしているとルートが身体強化のギアを上げて攻撃してきた。

何とか防いだが勢いを削がれてしまった。

 

(ちっ、考えてる暇ねぇか・・・それに、あいつが例の奴等かもしれねぇからな。もしそうならここで倒しといた方がいいな。よし!そうと決まれば・・・)

「行くぜ!!」

 

身体強化をMAXまで引き上げルートに接近する。

 

「!!?」

 

突然のパワーアップに驚くが何とか攻撃を捌いていく。

捌ききれずに少し傷を負ってしまったがこちらも身体強化を跳ね上げ対抗する。

 

そこからは苛烈だった。

攻防が激しく入り乱れ、観客ももはや歓声をあげることすら忘れただ魅入ってしまっていた。

スピードで勝るルートだったが、冒険者としての戦闘経験による反応でそれをカバーしていた。

一方パワーで勝るエリアルドだったが、ルートに上手くかわされ大きなダメージを与えられないでいた。

しかし、後半に入るとエリアルドの攻撃力が上がってきた。

これではたとえクリーンヒットを免れても致命傷になりかねない。

これでルートは今まで以上の回避行動を要求されることになる。

たが、より慎重な立ち回りを要求されたにも関わらずルートの表情は変わらない。

むしろ予定通りだと言わんばかりにうっすらと笑っているようにも見える。

 

「やっぱり思った通りだ」

「・・・なにがだ?」

「君がパワーアップする条件だよ」

 

確信を得たとばかりに打ち合いをやめて語り出す。

 

「それは時間じゃなくて、ダメージ。君は傷を負うごとに攻撃力が上がる。そうでしょ?」

「・・・・・・・・いや~、やっぱバレてたか~・・・」

 

やられたという表情を浮かべたエリアルドだったが、すぐに構え直すと、

 

「まぁでもやることはかわらねぇ。一撃当てりゃ俺の勝ちだ───フッ!」

 

強烈な右ストレートを放った。

今の話を聞いている間静かに、されどしっかりと身体強化を使い一撃で倒せるようにと。

 

エリアルドは思った。スピード、パワー共に最高の一撃だと。

現にルートはまだかわさない、その身体はダラリと力が抜けているようだ。

今から避けても遅い、これは捉えたと、そう思った瞬間、ルートの身体がブレた。

 

「は?」

 

思わず間抜けな声が出てしまった。

無理もない、完璧に捉えたと思った瞬間拳は空を切り、対象の姿が視界より消えていたのだから。

 

ズドムッ!!

 

「ガハッッッ!!!??」

 

エリアルドは驚愕した。

今しがた消えたと思っていたルートが次の瞬間自分の鳩尾を深く抉っていたのだから。

普通に移動しただけなら驚きはしない。

しかし、今自分は身体強化を使っているので動体視力も上がっている筈、それなのに何が起こったか分かっていないことに驚愕したのだ。

 

「な、何をグッ!・・・した、したん、だ!?」

 

「陰月流、影法師・・・」

 

 

 

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