Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第3話 エミリーの目覚め

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・・・・・知っている天井だ。

・・・・・自分の部屋だ。

 

ベッドに寝たまま窓に目をやる。

太陽は燦々と輝いている。

もうお昼を過ぎた時間だろう。

 

・・・・・長い夢を見ていた気がする。

拐われた自分を王子様が助けてくれる夢。

一夜だけの儚い夢。

・・・・・・・素敵な人だったな///

・・・もう一度眠ればまた会えるかな///

 

普段真面目なエミリーだが、今日ばかりは行儀が悪くても二度寝したい気分だった。

 

ヒリヒリ

 

「何かしら?少し手首が痛むような?」

 

そう思い手首を見てみる。

すると、少し赤い痕がついていた。

 

「?何の痕かしら、寝ている間にどこかへぶつけたのかしら?」

 

そう思うが、エミリーは寝相は良い方であり寝返りもあまりしない上、ベッドが無駄に大きいので少々寝返りをした程度では何かに腕をぶつけたりはしない。

そう考え、よ~く赤い痕を見てみると、

 

「何かで縛ったような・・・痕?・・・アァッ!?」

 

突然大きな声と共に起き上がる。

昨日の出来事の衝撃と、寝ぼけていたせいもあって昨夜の出来事を夢だと思っていたが、そうじゃないことにようやく気づいた。

 

「そっ、そうだ!!お父さんとお母さんに早く無事だと伝えなきゃ!あぁ!その前にあの人に早くお礼をしなきゃ!!」

 

そう言いながら急いで寝間着から着替えていく。

・・・まぁ、寝間着に着替えさせられている時点で両親には知らされている筈だと分かってもいいのだが、エミリーは珍しくテンパっているので気づかない。

 

「あの方、まだ家にいてくれてるかしら?」

 

ようやく着替え終え、ルートもまだ居てくれていればと思いながらリビングへ向かう。

 

「お父さん!お母さん!」

 

リビングのドアを開けると、

 

「ウォォォォォォォォォ!!エミリィィィィィィィ!!」

 

「あら!エミリー!!もう起きて大丈夫なの!?」

 

引くほど号泣しながら抱きつこうとしてくる父と、体の具合を聞いてくる母。

・・・しかしそこにルートはいない。

 

「私は大丈夫よ。それより、あの人はいないの?」

 

心配してくれているのは分かっているが、抱きつかれるのは嫌なので父をかわして訊ねる。

 

「うぅぅぅ、ひどいじゃないかエミリー。・・・ルート君なら昨夜お前を届けてくれた後、報酬を受け取って帰ったぞ?」

 

それもそうだろう。

エミリーを自宅に連れて帰るのが依頼だったのだから、それを達成したのならばもうそこにいる必要はない。

報酬を受け取ったら普通は帰るだろう。

しかしエミリーは

 

「えぇ!?何で返しちゃうの!?ちゃんとお礼もしたかったのに!!」

 

納得がいかないようだ。

 

「し、しょうがないだろう?『お礼に家に泊まっていかないかい?娘が起きたら一緒に食事でもどうだい?』と聞いたら『いえ、自分は依頼を達成しただけ。それに明日の昼には王都に戻らなければいけませんので、これで失礼します。』と言うのだから、無理に引き留める訳にもいかなかったのだ・・・」

 

つまり、今頃ルートは王都に戻ってしまっているということになる。

 

「そんなぁ・・・」

 

エミリーは膝をついて落ち込む。

 

「はぁ、ルート様ぁ///」

 

 

 

 

その頃、王都では

 

「いや~、無事に無傷で連れ帰ったから報酬アップだったなぁ~」

 

ルートが酒場でご機嫌だった。

といっても、飲んでいるのはノンアルコールのジュースだが。

そんなご機嫌なルートに近づく人影

 

「よぉ、えらくご機嫌じゃないかいルート」

 

そう声をかけたのは金髪に赤いずきんが特徴的な女で

 

「あっ!メアリー久しぶり!」

 

名をメアリーというらしい。

 

「何か良いことでもあったのかい?」

 

「うん!実はね・・・」

 

メアリーに聞かれ答えるルート

 

「ということがあったの」

 

経緯を説明したルートだが、メアリーはジト目で見てくる

 

「その娘、たぶんあんたのこと勘違いしてるね・・・さぞ素敵で紳士的な王子様だと想われてるだろうね」

 

救出劇に苦笑いしてしまうメアリー。

何が勘違いかというと、早く助けに行ったのもお姫様抱っこしたのも、怪我でもされたら報酬をアップしてもらえないからという不純な動機だということだ。

そもそも、依頼を受けたのも、『このくらいなら直ぐ終わるだろう』という考えであって、長引きそうなら受けてはいない筈である。

ルートとはそういう人間なのである。

現にエミリーの気持ちになんて気づかず、今はニコニコと足下の黒いのら猫にパンをちぎって食べさせている。

 

相変わらずだと思いつつ今度は疑問をぶつけてみた。

 

「なんで直ぐ帰ってきたんだい?飯くらい食ってくれば良かったのに」

 

もてなしくらい受けてくればいいのにと不思議なようだ。

 

「飯代も浮くし、良いベッドで寝れるし良いことだらけじゃないかい?」

 

「ご飯は確かに惜しかったけど、あの娘が起きるのはお昼頃になりそうだったし、良い部屋って逆に落ち着かなくて寝られない。それに、今日は昼からメアリーと魔物狩りする予定だったでしょ?」

 

「そうさ!狩って狩って稼ぐよ!」

 

ルートにとっては、依頼達成のもてなしよりも、メアリーとの魔物狩りの方が大事らしい。

それは恐らく、メアリーが大切な仲間だからだろう。

 

「あっ、そうだ!お袋からばあちゃんにクッキー届けるように言われてるんだった。ついでにいいかい?」

 

母からのお使いを思い出すメアリー。

 

「いいよ、どうせ森に行くんだし」

 

どうやら魔物狩りの場所とお婆さんの家は同じ森にあるらしい。

 

ルートの了承を得ると、メアリーはルートの向かいに座り店員に注文をする。

 

「お昼食べてないのメアリー?」

 

「あぁ、さっき帰ってきたからね」

 

「依頼?」

 

「いや、お袋に頼まれて親父の弁当の忘れモン届けに行ってたんだ」

 

『よくお母さんにお使いを頼まれるな』と思ったが口には出さないでおいた。

そのまま二人で昼食を終え、メアリーは家にクッキーを取りに戻ったので、合流は現地でということになった。

 

ちなみに、昼食はご機嫌だったルートが支払った。

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