Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第30話 突然の来襲

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ケンカ祭りでルートが優勝した。

何でもかこのケンカ祭りで金的を使ったのはルートが初めてだったらしい。

いろいろな選手がいるがそのラインには皆触れてこなかったらしく、ルートの優勝には多少賛否両論あったが、そもそも金的がダメだというルールはないので特に問題はなかった。

 

会場は整理され、これから授賞式だ。

優勝者、準優勝者、3位入賞者にトロフィーが渡されお偉いさんのありがたい長いお話を聞くといった簡単なものらしい。

まぁだいたいそのあと受賞者は記者なんかに質問攻めにあったり、騎士団や冒険者ギルドにスカウトされたりと大変だったりするので長いお話はあくまで先制パンチなのだとか・・・

そして、長いお話をしてくれるそのお偉いさんは何でもトレス王国の貴族で騎士団の家系らしく、代々このケンカ祭りを主催してきたらしい。

まぁ、話の長さも代々続いているせいでお話の時間になると皆帰り始めるのが通例らしく、何ならもう今から帰り支度を始める人までいるほどだ。

 

 

どうやら授賞式が始まったみたいだ。

なんかいかにも貴族って感じの人が出てきたな。

あれが例のお偉いさんかな?周りに6名の護衛をつけてるしそうだろうな・・・

・・・・・・・・・・フムフム、3位から順番にトロフィーを受け取っていくのか。

こういう式って何か決まり事ってあったりするのかな?

・・・まぁ、前二人のを見て真似すればいいよね?

────? 何だろう、今誰かから殺気が漏れて───────ッ!!?

 

その瞬間、ルートだけでなく"ソレ"に気付いた者は皆空を見上げた。

膨大な魔力の反応、それと同時に一点に収束して形をなしていく存在、""魔法""である。

 

魔力の塊は徐々に大きく、太陽に負けぬとばかりに燃え盛るソレは、誰が見ても分かる通り炎の魔法だ。

 

誰がなんの目的で!?

驚きながらもいつものように刀を抜くため腰に手をかける。 が、今はまだケンカ祭り、会場内に武器の持ち込みは禁止、ましてや選手である自分が持っているわけもない。

今武器を携帯しているのは貴族の護衛の6人の騎士のみ。

 

ドンッ!!

 

そうこう考えている間に魔法が放たれた。

その炎は会場の上でいきなり爆発したかと思ったら次の瞬間無数の炎弾として会場中に降り注いだ。

 

ドォォォンッ!ドォォォンッ!

 

会場中から悲鳴と爆発音が聞こえる。

最早会場は大パニックだ。

一刻も早くここから逃げ出さなければと、誰もが出入り口に向かおうとして将棋倒しのようになっている。

 

「くっ!メアリー達は!?」

 

会場の中心部であるここにはほとんど被害はなかったのでルート達は無事だが、メアリー達は客席にいた筈。

メアリー達も武器は持っていなかった筈なのでひょっとしたら今の魔法で負傷したかもしれない。

そう思い直ぐに皆を探しに行こうとするルートだったが、魔法を撃った当人はそんなことは知らないとばかりに次の魔法を準備し始めた。

 

「ィィィィイイイ悲鳴だァァァ・・・さぁ、もっと聞かせてくれよォォォ!」

 

「くっ!?───あれはッ!?」

 

上空からの更なる魔力の反応に顔を向けるルート。

さっきは逆光でよく見えなかったが今度はその姿を捉えることができた。

灰色の肌に真っ赤な瞳、背中には蝙蝠のような翼を携え不適に笑う男。

何より特徴的なのは男の顔にある刺青のような赤い紋。

 

「あれは、魔紋(マナクレスト)?───ッ魔人かッ!?」

 

魔人

膨大な魔力を有し優れた魔法の技術を持つ存在。

エルフや妖精のように寿命が長く、先の聖戦で人類と敵対していた恐怖の象徴。

聖戦が終わってからはその存在を見たものはいないとされていたが今ここに現れた。

何をしに来た?そんなことを考える暇もくれないようでもう新たな魔法を撃とうとしている。

 

「さっきと魔法が違うな。狙いは・・・ッここか!」

 

魔人は魔法を会場中央であるここに向かって撃ってきた。

今度は分裂などせずに大きな炎弾のまま向かってくる。

貴族の護衛の騎士達もそれに気付いたようで咄嗟に貴族を守るように防御魔法を張った。

 

バリバリッバァァァァァンッ!!

 

一瞬だけ抵抗を見せたがあっけなく破られ魔法が炸裂した。

咄嗟だったため防御の強度が弱かったのか、魔人の攻撃力が高かったのか・・・いや、きっと両方であろう。

しかし、それは騎士達も理解していたのか魔法だけでなく自分達の体を使って貴族を庇ったのだろう、貴族は蹲ってはいるが無傷である。

代わりに騎士達は傷だらけで地面に倒れ呻いている。

ほぼ直撃だったが流石は騎士、死んでいる人はいないようだ。

 

しかし今の攻撃、なぜ最初に撃たなかったのだろう・・・

確実にあの貴族を狙ったものだし、威力からしても全力ではないにしても本気だった。

なら不意打ちで撃った方が成功率は上がる筈だし騎士達だって混乱して防御魔法を使えなかったかもしれない・・・

 

そう思い魔人を見るルート。すると、

『計画通り』と、聞こえはしないがルートの目には確かにそう唇が動いているように見えた。

 

この状態が目的?・・・会場は大混乱、騎士達は倒れ狙いの貴族は生きている・・・まさか!?

 

そこまで思い立ったルートの横を駆け抜けていく影が一つ。

直ぐにソレを目で追うと、エリアルドが貴族に向かって走っていた。

エリアルドは倒れている騎士達のロングソード二本を素早く拾うとさらに貴族との距離を詰めていく。

そして剣を振りかぶり・・・・・・・・・

 

──────ガキィィィィィンッ!!

 

貴族を狙う攻撃を見事防いで見せた。

 

 

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