Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第34話 打出の大槌と一鬼夜行

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「へっへ~ん!カンナの勝ち~!!」

「油断しないでカンナ、雰囲気が変わった。もうさっきみたいな安直な攻撃はしてこないよ」

 

魔人化したエッチャーをカンナが弾き返した。

これで少なくともパワーはカンナが勝っていることが証明された。

でもカンナは調子に乗りやすいタイプだから釘を指しておく。

 

「む~~~分かってるよツバキ~!」

 

本当に分かっているのだろうか?カンナは素直でいい子だけど少し抜けている所があるから心配だ。

・・・・・まぁでも大丈夫だろう。

今回はハゴロモ様に『周りを気にせず』戦っていいと許可をもらっている。

つまりカンナは"アノ"武器を好きに振るえるということだ。

・・・・・・・本当に大丈夫だろうか?

ここらの地形が変わってしまうんじゃないだろうか?

ハゴロモ様はきっと気にしないだろうが多少・・・いや、結構文句を言われてしまう筈だ。

・・・・・そうなる前に私がさっさと止めを刺してしまおう・・・

 

「カンナ・・・さっさとケリをつけて他の人の援護に行くよ?」

「まっかせといて~!!」

「張り切るのはいいけどやりすぎないでね?」

「アハハハハハハ~~~!!!」

 

・・・・・さっさと走って行ってしまった。

あれでは多分最後のは聞こえていないだろう。

そんなに全力戦闘できるのが嬉しいのだろうか?

まぁカンナの戦闘スタイルは他の誰よりも派手ではあるからしょうがないのかもしれない。

 

 

 

ふっふっふ~~~、ようやくカンナの力を発揮できる場が来たよ~。

ハゴロモ様も『遠慮せずにボッコボッコにしていい、責任は妾が取る!』って言ってくれてた気がするし今日はやってやるよ!

ここ三日程ご飯食べてばっかで体をあんまり動かしてなかったから張り切っちゃうよ!

さっさとこの人倒してハゴロモ様とメアリーちゃんにいっぱい誉めてもらうんだ♪

 

すでに戦い終わった後のことを考え頬を綻ばせながら胸元の小さな槌の形をした首飾りに手をかける。

 

「"打出の大槌(うちでのおおづち)"っ!」

 

カンナがそう叫んだ瞬間、5センチ程だった首飾りが今では形こそそのままに1メートルを優に超える立派な大槌に変化していた。

魔人化して理性が無くなっても本能が危険を感じ取ったのだろう、エッチャーも自身の身体を強化し始めた。

より力強く、より速く相手を攻撃できるようにビキビキと音をたてながら。

対するカンナも大槌の重さに、そして何よりエッチャーに負けぬよう身体強化の魔法を自身にかけていく。

 

お互いが自身を強化し終わり視線を交差させた。

その瞬間、ドンッ!という音と共に両者がすさまじいスピードで相手の元へ飛び込んでいった。

二人の距離が瞬く間に縮まる。

そのまま凄まじい勢いで正面衝突・・・・する筈もなく、両者拳と槌を 振りかぶり渾身の一撃をぶつけ合う。

ビリビリビリィィィッッッ!!!

その衝突に大気は震え、辺りを衝撃波が見舞った。

それほどの一撃、しかし、両者とも仕止めきれず続けて第2第3と次々と攻撃を重ねていく。

 

「むぅぅぅ~、この大槌を素手で受け止められるなんて聞いてないよ~・・・でも流石に無傷じゃないみたいだしもう一押しかな?」

 

そう、互角の応襲を繰り広げてきたエッチャーだったが、流石にあの大槌の連打の前ではいくら魔人化し強化された身体でも無傷ではいられなかった。

拳から血がポタポタと流れておりこのまま続ければそう遠くないうちに腕が使い物にならなくなるだろう。

それでもエッチャーは殺気を剥き出しにして向かってくる。

これしきの痛みなど気にならないのか、最早そんなことすら考えられなくなっているのか、それはもう誰にも分からないが、使い込まれたであろうその技は血走った目からは想像もできない程綺麗な動きでカンナに向かって繰り出─────されなかった。

 

ブシュゥゥゥッ!

 

「グゥゥゥッ!?」

 

今まさに拳を突き出そうとしていたエッチャーの背中をツバキが十字に切り裂いていた。

いつの間に!?カンナに集中していたとはいえ決して他への注意をおろそかにしていたわけではなかった。

それなのにここまでの接近を許し攻撃されてしまった。

 

このままでは不味いと本能で感じたのか、カンナへの攻撃を止めすぐに二人から距離をとるエッチャー。

 

「流石に硬い・・・・・」

 

斬るには斬ったが致命傷には程遠い。

背中の筋肉の薄い部分を斬ったのだが流石に硬かった。

カンナの連打でもなかなか傷を負わなかったのだから当然だと言えば当然だろう。

 

「もうっ!ズルいよツバキ自分ばっかりー!!」

 

次の攻防で腕を破壊してやろうと思っていたカンナはそれを邪魔されてご立腹だ。

 

「ごめんごめん、ちゃんとカンナの一撃で決めさせてあげるから」

「ほんとっ!!?」

「ほんとほんと。だから今度は私が先に行くわ、"特大の"を期待してる」

 

そう言ってツバキはエッチャーに向かって走り出した。

(今ので確信は持てた・・・・・これでいける!)

 

一鬼夜行(いっきやこう)っ!一粒十倍(いちりゅうじゅうばい)っ!」

 

ツバキがそう唱えると一人二人三人とどんどんとツバキが増えていき、十人にまで増えたところで止んだ。

かと思えば次々とその姿が消えていく。

流石に理解の及ばないエッチャーだったが次の瞬間、

ブシュッ! ガクッ

さっきと同じように切られた感触、しかしそれと同時に右足に力が入らず膝をついてしまう。

右足の腱を斬られたのだと理解した頃にはもう遅かった。

先程十人に増えたツバキが身体中の腱や筋を斬り裂いてゆく。

たまらず両膝をついてしまう。

やられた、例え身体深くまで刃が届かなくても腱や筋は斬れる。

現にエッチャーは指の一本すら振るえず無防備に身体を晒している。

エッチャーの意識が少なからず戻ったのかはたまた戦意喪失したのか、どちらにせよおとなしくなったエッチャーはふと気付いた。

いつの間にか自分の周りに影がかかっていることに。

それは雲が作った影ではありえないきれいな丸の形をしている。

自分はどこかでこの形を見ている。

あぁそうだ、あの大槌だ。

そう思い空を見上げるエッチャーの目には全長10メートルを超える大槌が迫っていた。

避ける術も時間もない、完璧なタイミングだった。

 

「いっっっけぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」

 

ドゴォォォォォォォォンッッッッッ!!!

 

噴火かと聞き間違う程の爆音に メアリー達も思わず振り向いてしまう。

 

「すっ、凄いねぇ・・・・・」

「マジかよ・・・・・・・」

 

多くの者が言葉を失う中、巨大なクレーターの真ん中でカンナとツバキは向き合っていた。

 

「やったよーっ!!」

「流石にやりすぎ、みんなビックリしてる」

「え~、でもハゴロモ様は気にせずやれって・・・・・」

「分かってる、ハゴロモ様にも後で注意しておく。カンナに指示するときはもっと具体的な上限を決めておいてくださいって」

「ぶーぶー!」

 

皆の視線が降り注ぐなかでもマイペースに話し込む二人。

なんにせよエッチャーは倒され、残るはエムゥ、ジーコ、そして魔人バーズ。

皆ツバキ達に続けと気合いを入れ直す。

 

 

「へぇ~、やるじゃんあの子達・・・・・」

 

じっくりと観察しているバーズ、未だ自らは手を出していないが、内心は暴れたくてウズウズしていた。

 

 

 

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