Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第37話 バーズ戦

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ジーコは倒れ、これで魔人化した三人全員を倒したことになる。

最後までバーズもこちらに手を出してくることはなく、幸いこちらも怪我らしい怪我をした者はいない。

後は全員でバーズを倒すだけなのだが・・・偉く余裕の態度だ。

いや、むしろ僕たちのことなんて眼中にもないような感じだ。

いくらお前らが束になってかかってこようとも自分は負けないという自信、いや確信があるのだろう。

そしてその確信は多分当たっている。

というのも、データがとれて余程嬉しいのか魔力が少し体から漏れているのだが、その圧が尋常じゃなく高いのだ。

これは魔圧といって文字通り魔力の圧力という意味で格下のモンスターなんかはこれで追っ払えるらしい。

常に出していると敵に居場所がすぐバレてしまうので普段は隠しておくものなのだが・・・・・なるほど、モンスターが逃げ出したくなる気持ちがよくわかる。

こいつは危険だ戦うな、と全身が警戒音をけたたましく鳴らしている。

 

「~~~ん?おお!すまん、予想以上にいいデータが取れたんでついお前らのこと忘れてたよ。・・・心配しなくてももうあの貴族なんか狙わねぇよ」

 

漏れ出していた魔力を引っ込め、満面の笑みでそう言ってくる。

 

「エヌルトが狙いなんじゃなかったのか?」

「もうジーコ達もいねぇのにあんな小物狙っても意味ねぇよ」

 

何でそんな面倒臭いことをわざわざ、と何かを払うかのように手をパタパタと振って否定する。

 

「さて・・・俺としちゃあデータもとれたしもうここにいる意味はないんだが・・・・・────っとぉッ」

 

そのまま立ち去ろうとこちらに背を向ける寸前、左手を横に軽く振り何処からか飛来してきた矢を炎で消し飛ばした。

 

「神妙にお縄につけ魔族よ!!」

「我らの同胞の敵討ちをさせてもらうぞ!!」

「ああ、騎士の増援か」

 

そう興味無さげに呟くと、これまた軽く手を振るい炎を今度は弓矢を構えた騎士自身に放った。

 

「フンッ、雑魚が」

 

一撃、騎士達は苦痛の声をあげることもできず全身を焼かれて息絶えた。

 

「・・・・・あぁそうだよな、勝手にこっちの都合にばかり付き合わせちゃ悪いよな。よし!お前らも敵討ちしたいだろうし少しだけ付き合ってやるぜ・・・」

 

別にこちらは知人が殺されたわけでもないので敵もくそもないのだが、どうやら奴さんはやる気のようでニヤッと不敵に笑うと再び魔圧を放ち始めた。

先程の漏れ出ていたものとは明らかに違う。

肌にビリビリと突き刺すように感じる魔力がバーズの実力を表しているようだ。

両手にそれぞれ炎を灯し、今までのように軽く振るう。

死戦が、始まった。

 

 

 

始まってみれば一方的だった。

バーズの炎は思っていたよりも威力が高く、直撃すれば先程の騎士と同じように呆気なく死んでしまう。

だから回避に努めたのだが、今度はそれを数で補ってきた。

正に火の雨、人間の腕くらいの大きさの炎が無数に降ってくる。

そんな魔法を汗ひとつ流さずまるで息をするかのような自然な流れで連発している様子を見るに魔力切れは期待できそうもない。

そもそも、あんな魔圧ができるやつがそうそう簡単に魔力切れなんか起こさない。

ただでさえ魔人族は生まれつき魔力が高いのだから当然だ。

対するこちらは徐々に避けきれなくなる者が出てくる。

避けられないならとメアリーとエリアルドが迎撃しようとするが何せ数が凄い。

すぐに手が回らなくなってしまう。

このまま火の雨に晒されてしまうのかと覚悟を決めかけた時、

 

「妾をなめるでないぞ!」

 

ハゴロモが神通力で念の傘みたいなものをつくり火の雨から守ってくれた。

その隙にツバキは"一鬼夜行(いっきやこう)"で姿を消し死角からバーズを狙う。

 

「お?あの女がいねぇ・・・ってことは・・・・・"フレア"ッ!」

「危ないっ!」

「くっ!!」

 

ツバキがいないことにいち早く気づいたバーズは直ぐに自身の周りに炎を噴射させた。

既に攻撃体勢に入っていたツバキは避ける時間もなく、そのまま炎に飲み込まれると思われたが、寸前で分身を盾に何とかその場から脱出した。

ツバキの狙いは悪くはなかった。

但し一人では傷をつけるのは難しいだろう。

そう、()()なら。

皆で生き残るためルートは作戦を伝える。

皆切羽詰まっているからか反対意見は出なかった。

 

「いくよ!」

「うん!やぁぁぁぁぁぁっ!」

 

ルートの合図と共にカンナが"打ち出の大槌"を大きくしていく。

火の雨をものともせずにどんどん大きくなる大槌。

バーズまで充分届く大きさになると勢いよくバーズの上に振り下ろす。

流石に当たっては洒落にならないのでバーズは火の雨を撃つのを止め回避する。

ドカァァァァァッ!と物凄い音と衝撃を響かせるが巨大なクレーターを作っただけで辺りに土煙が虚しく舞っている。

しかし、その土煙のせいでルート達の姿を見失ってしまった。

直ぐに火の雨を再開させ炙り出してやろうとしたその時、自分の背後から誰かが飛び出してきた。

迎撃のため振り返るとツバキが双剣を構え迫っていた。

 

「けっ、バカの一つ覚えかよ・・・せめてさっきみてぇに姿くらい消してから来いよっ!」

 

さっきと同じ攻撃に苛立ちながら炎弾を撃ち込む。

その炎弾を受けツバキは消えた。

消し炭になって消えたのではない、煙のようにポンッと消えたのだ。

 

「あ?今のはさっきの分身・・・・・ってことは────っ!?」

 

バーズの足に鋭い痛みが走る。

咄嗟にその場から飛び立とうとしたが一瞬遅かった。

その場から離れた時には更に肩や腕にも幾つか斬り傷を受けていた。

 

「バーナーっ!!」

 

バーズは急ぎ今いた場所に火炎放射を放った。

すると姿を消していたツバキの分身が炎を受けて消えた。

念のため周りにも火炎放射を放っていると下から魔力の高まりを感じとり、下を見るとメアリーが魔銃に魔力を込めながらこちらを狙っている。

 

「"溜魔弾(チャージバレット)"!」

 

高密度の炎弾がバーズに迫る。しかし、

 

「炎使いの俺に炎で挑むとはなあぁぁぁっ!・・・・・・・・───うぉっ!?」

 

すかさずバーズも炎弾を撃ち対応する。

バーズの炎弾は咄嗟だった為メアリーのものより少し小さかったのだが炎使いとしてバーズの方が上なのか相殺された。

だがそれとは別の攻撃を受けた・・・いや、受けている。

その正体はハゴロモの神通力。

メアリーの攻撃に対応した隙に体の自由を奪われてしまった。

これ(神通力)を解くには術者であるハゴロモの集中力を乱さなければならない。のだが、正確な狙いがつけられない今の状態では無駄弾になりその隙に追撃を許してしまうだろう。

なのでしょうがなく低威力だが広範囲を攻撃できる炎魔法を撃つことにした。

 

「ちっ、当たりゃあいいんだ!"ワイドバーナー"!」

「ようやっと出番だぜ!"水の盾(アクアシルド)"!」

 

それを待っていたエリアルドが水の盾で防ぐ。

いくらバーズが炎が得意でも低威力な魔法ならエリアルドの水魔法で防ぎきれるとルートは読んでいたのだ。

と、その時、

ズバァァァッ!

バーズは背中を大きく斬られた。

 

「なっ・・・・・に・・・・・・・・・」

 

バーズが視界に捉えたのはルート。

その先で剣玉を振りきっているのはロック。

つまりロックの剣玉のフルスイングの勢いを利用してここまで一気に距離を詰めたということだろう。

確実に仕留めるためルートは刀にかなりの闇魔力を纏わせ威力を高めていたようだ。

バーズが地上に落ちていく。ハゴロモがもう大丈夫だと判断して神通力を解いたのだろう。

 

「やっ・・・・・・やったッスぅぅぅぅぅ!!!」

 

バーズが力なく地上に倒れたことでロックが勝利を叫ぶ。

皆が叫ぶわけではないがそれぞれ安堵したりと喜びを露にしている。

 

 

「あぁ~~あぁ、油断してるから負けちゃうんだよなぁ」

「!!?」

 

どうやら戦いはまだ終わっていないみたいだ。

 

 

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