Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第39話 己の実力

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「・・・・・・・んぅ、うぅぅぅん・・・?」

 

パチパチと焚き火の音で目が覚める。

辺りは完全に暗くなっておりしばらく眠っていたのだと理解する。

誰かが掛けてくれたのであろう毛布を外し辺りを見渡す。

応援に駆けつけて来てくれたであろうトレス王国の騎士達が松明を片手に忙しなく動き回っている。

恐らく魔人襲撃での負傷者の救助と周辺の警備で忙しいのだろう。

自分が寝かされているテント以外にも多くのテントが設営されており今尚負傷者の治療が行われている。

負傷者の数は少なくはないが決して多いというほどでもないと思えるのはあの超満員の観客席を知っているからか。

それでもあまり雰囲気がピリピリしていないのは魔人という脅威が去ったからなのか。

・・・・・・魔人・・・・・勝てなかった。

膨大な魔力量、洗練された魔法技術、師匠に魔人は魔法にとても優れた種族だとは教わっていたが想定以上だった。

一人目のバーズこそなんとか倒せたがまぐれもいいところだ。

あれはこちらの手の内をほとんど知られていない状況下での完全な不意討ちだったからこそ成功したのだ。

バーズの性格も大きな要因だろう。

人間を、いや魔人族以外を遥か格下だと思っている不遜な性格。

傲慢なのかもしれないが、それは確かな実力を伴っていたからこそなのだろう。

それにあの二人目の魔人、グランツと言ったか、はっきり言ってレベルが違った。

バーズの時は戦力差があっても戦略をいくつか考えついた。

しかしグランツの時はそんなこと考えもしなかった。

あまりに敵が強大すぎて、あまりに敵が格上すぎて、まるで目の前に巨大な雷雲が雷鳴を轟かせながら迫ってきているよう感覚さえ覚えた。

最後には抵抗を嘲笑うかのように蹂躙された。

黒猫の乱入と槍の援護がなければ自分達はあっさりと死んでいただろう。

決して自分の力を過信していたわけではないが・・・・・この体たらく、拾った命を無駄にしない為にももっと強くならねば・・・・・・

 

「おや、起きたのかい?」

 

冷静に自己分析をして今後の目標を立てているとふいに声がかかった。

振り向くとメアリーが良かったと軽く安堵の表情を浮かべている。

 

「調子はどうだい?」

「全快とは言えないけど普通に動く分には問題ないよ」

 

軽く肩を回しながらそう答える。

 

「他の皆は?」

「そこまでひどい傷じゃなかったから負傷者の運搬とか手伝ってるよ・・・・・あっ、あんたはまだ休んどきなよ?」

 

じゃあ自分も手伝おうと起き上がろうとした寸前に先回りして止められてしまった。

 

「いやいや、元気一杯ですね~」

「あぁ、キーパーさん」

 

誰だろう、鎧をつけているから騎士だとは思うけど・・・

この人をすでに知っているようなのでメアリーに目で説明を求める。

 

「この人はキーパーさん。今来ている騎士団の責任者で副団長さんなんだよ」

 

副団長・・・・・騎士団の中では結構偉い役職だ。

騎士団は役職が上がるにつれて要求されるスペックも上がる。

その中でも強さは絶対条件の筈、ということは・・・

 

「じゃああの槍の攻撃はこの人が?」

「いえいえ、私の力ではあれほどの技は使えませんよ・・・あれは我が騎士団の誇る団長の武技です」

 

なるほど、団長クラスならあれほどの武技を使えても不思議じゃない・・・・・ん?団長ということは騎士団で2番目に偉い位の筈、なら

 

「その団長さんは今何処へ?」

 

そう疑問を持つのは当然のことだろう。

 

「彼は別の任務があるのでもう引き上げました。いや、恥ずかしながら魔人相手となると我等だけでは心許なかったので、偶々近くにいた団長に声をかけてきたということなんですよ・・・」

 

恥ずかしそうに頬をポリポリと掻いている。

だが正しい判断だったと思う。

自分達の実力を理解して最適と思える選択を即座に出来るのは優秀だからだろう。

伊達に大隊長をやっていないということか。

あっ、そういえば、

 

「あの、エヌルトは?」

「あぁ、エヌルト伯爵は無事保護しましたよ。・・・といっても、直ぐに王都で裁かれることになるでしょうけどね」

 

まぁそうだろう、過去にそれだけのことをしているのだからしょうがない。

これで少しでもジーコ達が浮かばれればいいのだが・・・・・

 

「就きましては、魔人討伐をされ民衆の危機を救ったあなた方には王都にて正式に褒美等を与えたいのですがお越しいただけますか?」

「素直に魔人の行動についての情報提供をしに来い、って言ってくれていいですよ?」

「っ!?いやいや、素晴らしい洞察力をお持ちですね」

 

一瞬顔に出たが直ぐに隠した。

まぁ普通に考えれば分かるよな、モンスター撃退なんかとは訳が違う。

魔人化の実験なんかしている魔人と直接戦ったんだ。

詳細な情報を手に入れたいと思うのは当然だ。

それが国家を脅かすかもしれない存在なら尚更。

 

「今はまだ旅の途中ですので直ぐにとは・・・しかしそう遠くないうちに王都にお伺いさせて頂きます」

「そうですか、分かりました。それでは王都にいらっしゃった場合は王城にて私の名を出してください。城の者には伝えておきますので。では」

 

そう言ってキーパーさんはテントから出ていった。

すると今度は入れ替わるようにハゴロモが入ってきた。

どこか沈痛な表情をしている気がする。

 

「すまぬルート、妾達は一度ヤマトへ戻る」

 

突然の帰国宣言。

 

「どうしたの?」

「先程父より文が届いた。太閤亡き後のヤマトが荒れ始めておるとな」

「だから戻って来いって?」

「忙しくなるから手伝えということなのじゃろう」

 

まぁそういう事情なら仕方ないだろう。

しかし太閤って誰なんだろう?どうも有名人を知らない傾向にあるな自分は。

七英雄のことも知らなかったし今度勉強会でも開いてもらおうかな?

 

 

 

 

時は少し進んで────

 

人間領から険しい山、深い森を越えた先に聳え立つどこか不気味な雰囲気をもつ城、魔王城。

その城の玉座の間にて複数の魔人が顔を会わせていた。

 

「それでみすみすバーズを殺されてきたと?」

「ちゃんとデータは持ち帰ってきたんだから怒らないでよ魔王様?それにあいつが殺られたのは油断してたからで完全な自業自得、僕に非はないよ」

 

魔王と呼ばれる魔人を前にしても崩さないその飄々とした態度からは本当に相手を敬っているのか疑問である。

しかしその魔王本人がさして気にしている様子もないことから日常茶飯事なことなのだということが伺える。

 

「英雄の力は健在か・・・・・・」

 

チラリとグランツの負傷した腕を見てそう呟いた魔王の口はニヤリと三日月のような弧を描いていた。

 

 

 

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