ルートは森の手前でメアリーを待っていた。
涼やかな風を受け、食後ということもあり少しウトウトとし始めていると、遠くから金髪に赤いずきんをかぶった女性が歩いてきた。
メアリーである。
背中に銃を、左手にバスケットを持っていてなんともシュールな絵面である。
「よぉ、待たせたね」
「ふぁあ~・・・そうだね、眠っちゃうとこだったよ・・・」
昨夜のエミリーに対しての紳士ぶりが嘘のようにメアリーに正直な気持ちを伝える。
「あんた・・・そこは『全然待ってないよ。僕も今来たところさ!』くらい言えないのかい・・・」
ストレートな感想に呆れるメアリーだが、今更のことなので特に気にしない。
むしろ、ルートが正直な気持ちをぶつけられる相手はそう多くないので、その一人が自分なのも少し嬉しく感じる。
「あれ?魔銃新調したの?」
「金が貯まったからね。オーダーメイドにしたのさ」
メアリーが背負う魔銃が前と違うのに気づいたルート。
ちなみに、魔銃とは銃を媒体に自身の魔力を撃ち出す魔導具である。
火の魔力を込めれば火の魔力を、水なら水を撃ち出せる。
魔銃以外にも、杖、弓、剣を使い魔法を使う人もいて、中には、本や人形など変わったものを使う人もいる。
別に道具を使わずとも魔法は使えるし実際道具を使わない人も大勢いるのだが、なにかを媒体にする方が魔法を使いやすいらしい。
定規で引く方がフリーハンドで線を引くより速く楽に綺麗に書けるというのと似てるらしい。
普通は市販品の中から自分に合った魔導具を選ぶのだが、オーダメイドだと、自分の魔力にしっかり合わせられる上に装飾も自由なのが好評だ。
しかし、オーダーメイドは高いので、一人前の冒険者のや権力者等お金持ちしか持てないある種のステータスなのである。
「前のはオーダーメイドじゃなかったの?」
「まぁ今までは市販品のでも別に苦労しなかったからね」
ならばなぜこのタイミングで新調したのか?
ルートは気になったので聞いてみることにした。
「あんたもうすぐ"トレス王国"に行くんだろ?それに着いて行こうかと思ってね、今のうちに銃くらい良くしとこうと思ったのさ」
トレス王国とは、今ルート達がいる国アール王国と同盟を結んでいる大国である。
「そうだったんだ」
「まさか、断りゃしないよね?」
「別に良いけど、ご両親やお婆さんは良いの?」
「あたしは冒険者だよ?そこらのガキじゃあるまいし、何十年と離れる訳じゃないんだから問題ないよ」
「そっか、じゃあお婆さんに言っとかなきゃね」
どうやらルートのトレス王国行きにメアリーがついていくことが決まったようだ。
そうこうして、ようやく二人は森へと入っていった。
ズバッ! ズバズバッ!! ドパンッ! ドパンッ!
ギャオォォォォォッ!!グォォォッ!
森の中に戦闘音と魔物の断末魔が響き渡る。
ルートは刀で、メアリーは魔銃から水の弾で魔物を次々倒していく。
「調子良いみたいだねメアリー」
「やっぱオーダーメイドなだけはあるな。ただ、火が使えないのは癪だよ・・・」
魔銃の性能はとても良いみたいだが、森の中なので火が使えないメアリーは少し不満顔だ。
それでも的確に魔物の頭を撃ち抜いていくあたりは一流の冒険者だからだろう。
討伐部位をしっかり確保しながらお婆さんの家に向かっていく。
ここまで特に苦戦もなくお婆さんの家の近くまで来た二人なのだが、
「あれ?お婆さんいないみたいだよ?」
感知魔法で辺りの魔物の存在を探っていたルートは、家の中に人がいないことを伝える。
「果物でも取りに行ってるのかね?まぁ先に入って待ってようか」
そう言って家に入ろうとするメアリーの後ろでルートは魔物の接近を感知する。
「待ってメアリー、大きいのが来たみたい」
ガサガサッ ガサガサッ
「グオォォォォォォォ!!!!!」
やれやれとため息をつきながらも銃を構えるメアリー達の前に3メートルは越えるかという大きさの熊の魔物が現れた。
「・・・でかいね」
「大きいのが来たって言ったじゃない」
「この森にこんな大きさのがいたのかい・・・」
3メートルを越える魔物を前にしても余裕な二人。
「グォォォッ!!」
それに怒ったのか、突進してくる魔物。
勿論、余裕で回避する二人。
流石は大型の魔物だけあって、衝突した木はへし折れているが魔物にダメージは見受けられない。
「・・・タフそうな奴だねぇ」
メアリーが少しだけ嫌そうな顔をする。
と、その時、狼の魔物が大量に現れた。
「チッ!面倒だねぇ!」
メアリーがさらに嫌そうな顔をする。
そろそろ火の魔法も使ってやろうかと思い出したとき、
ドパァンッ!!
銃声と共に熊の魔物の胸に大きな穴が空き、熊の魔物は声をあげることも出来ず倒れる。
それに恐怖したのか、狼の魔物達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。
メアリー達が銃声の元へ目を向けると、
「全く、人の家の前でやかましいよ」
金髪に青いずきんのお婆さんが立っていた。