Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第40話 おつきみ亭

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トレス王国、都市リンベル。

王都から少し離れたこの街は地方と王都を行き交う人で賑わっている。

貴族などは専ら王都に住居を構えているのでこの街に住んでいるのは殆どが平民である。

中央ではあらゆる店が所狭しと並び連日賑わっているのに対し、街の外層部は実に長閑である。

都会の喧騒を忘れる・・・というより都会の喧騒が届かないのだろう。

そんな外層部の一角にその店はあった。

 

 

 

おつきみ亭

今年で創業20年を迎える食事処。

メニューは多くないものの、リーズナブルな値段と有名店にも引けを取らない味で地元に長年愛されている。

 

 

「ふぅ、もうお客さんも来ないだろうしあのおじさんが帰ったら今日はお店を閉めようかな」

 

時刻は午後10時、辺りはすっかり暗くなり、お店は軒並店仕舞いをしており明かりがついているのは民家だけ。

道を行き交う人もおらず、通りからは風の音だけが寂しく聞こえる。

少女は洗ったグラスも拭き終わり、店のドアにかけてある"OPEN"の札を"CLOSED"に裏返すべく玄関口に向かう。

 

「おいおい、どの店も閉まってんじゃねーか!」

「そりゃこの時間に薬屋が開いてるわけないだろ?」

「飯屋も開いてないッス~」

 

すぐ外から話し声と共に数人が近付いてくる。

もう店を閉める予定だったがそれだと彼らが可哀想なので迎え入れることにした。

 

「あの、うちの店でよろしければまだ開いてますよ?」

「ほんとかい?助かるよ!」

「助かったぜ!」

 

各々感謝を口にしながら店に入ってくる。

鎧姿の男性が一人、赤いずきんをかぶった女性が一人、大きなリュックを背負った子供が一人の三人・・・いや違う、よく見れば鎧姿の男性に白髪の少年が一人おぶわれている。

体調が悪いのだろう、頬が赤く息も荒い。

 

「この時間でもやってる薬屋か病院はあるかい?」

「この辺りの薬屋はもう閉まってます。病院は街の中央に行かないとありません」

 

どうしよう、この店に薬なんて置いてないしまずどんな病気かも分かってない。

今から病院に案内する?でも馬車がない。

歩きでは時間がかかりすぎてしまう、どうしよう・・・・・

 

「どれ、私にその子を見せてみなさい」

 

どうすればいいか皆がオロオロしていると、店に残っていたおじさんが白髪の少年に近づきそう言った。

他に選択肢もなかったのでその場少年を寝かせると、おじさんは額に手を当てたり脈を計ったりと診察をしていった。

 

「ふむ、これはただの風邪だね。日頃の疲れが一気に出たんだろう」

 

付近で手を拭きながらそう診断すると、どこからか巾着を出して赤いずきんの女性に手渡した。

 

「薬だ。一日二日は安静にしておくことを薦めるよ」

「ありがとう。まさかここで医者に居合わせるなんて・・・」

「いやいや、私は医者ではないよ・・・・・ただ医学も勉強していただけだ。お役に立てて良かったよ、では・・・」

 

それだけ言うとおじさんは店を出ていってしまった。

 

「騒がしてすまなかったね・・・あっ、ここらで宿はまだあるかい?」

「・・・・・え?あっ!えぇ~と、この辺りだともう宿屋は開いてないと思います・・・」

 

颯爽と去っていくおじさんに呆気にとられてしまい返答に遅れてしまった。

もう夜も遅くどこの宿屋も閉まってしまっているだろう。

ここらは都会と違って早めに閉める店ばかりだから宿屋もそれに準じている。

観光客も滅多にここらには泊まらないので仕方ないのだろう。

でもそうなるとこの人たちはどこも泊まればいいんだろうか。

病人もいるのにどうすれば・・・・・あっ!

 

「あの、よろしければうちに泊まっていかれますか?」

「えっ、いいのかい?四人も迷惑じゃないかい?」

「大丈夫です。今は使われてませんけど宿泊用の部屋が3部屋余ってるんです」

 

すっかり忘れてしまっていたが、このおつきみ亭は5年ほど前まで小さいながらも宿泊施設だったので部屋は余っているのだ。

普段から掃除もきちんとしているのでベッドメイクを直ぐ行えば今すぐにでも使える。

女性から、では有り難くと合意を得たので急いで部屋を仕上げに行く。

慣れた手つきで素早くベッドメイクを終えると直ぐに白髪の少年を寝かせる。

さっきの様子だと晩御飯もまだだろうと残り物でよければ作りますよ?と尋ねればいたく感謝された。

実は自分も晩御飯がまだだったのでご一緒させてもらうことにした。

 

「へぇ~、では皆さんは旅をしてるんですね?まだお若いのに凄いです!」

「いやいや、それを言うならその年で店を切り盛りしてるシンディの方が凄いさね」

「いえいえ、実際のお店の経営者は継母ですから・・・それに私ももう15才、成人ですから!」

「立派だぜ!今時そんな若者がいるなんてなぁ~・・・」

「なんだい、あたしゃ若くないってことかい?・・・あたしゃまだ17だよっ!!」

「イタッ!!違うぜメアリーちゃん!メアリーちゃんは大人びてるから・・・なんというか・・・・・」

「はぁ~・・・まぁいいさね。ところであんたいつまでついて来る気だい?」

「とりあえずは王都までだな。その先は─────」

 

そうしてお互いの自己紹介をして和気藹々と楽しく食事を済ませるともう0時手前、お互い明日のこともあるのでここでお開きに。

無理して泊めてもらうのだからとメアリーが洗い物を、ロックとエリアルドが掃除を手伝ったので後片づけは直ぐに終わった。

 

メアリーさん達、楽しそうだったなぁ・・・冒険者になるなんて考えたこともなかった。

・・・そういえば、誰かとご飯食べるなんて久しぶりだったなぁ・・・・・暖かくて、楽しくて、美味しかったな・・・・・

 

この日、シンディは夢の中で、昔家族で食卓を囲んでいた頃の夢を見た。

 

 

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