Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第42話 童話の姫に憧れて?

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「今帰ったよ」

「あぁ、メアリーさんお帰りなさい・・・」

 

メアリー達が買い物から帰るとシンディはテーブルを拭いている手を止め少し疲れた顔で出迎える。

 

「ん?何か疲れてないかい?」

「いえ、なんでもないですよ!?」

 

疲れている理由は勿論、先のルートの看病である。

その後火照る身体を冷ましながら洗濯をしていると先程ルートが脱いだ・・・ていうか自分が脱がせた服を見たせいでまたも熱くなってしまった・・・・・なんてことは言えない。

また、普段からルートとメアリーはお互いの裸を拭き合うような親しい間柄なのだと思うと恥ずかしくなってしまい顔を直視できない。

男性経験のないシンディにとって今のメアリーは人生の大先輩、いやいや天上人にすら感じられた。

 

「あっ、そういえば・・・やけに人が多かったけど、ここはいつもこんななのかい?」

 

一人あたふたしているシンディを置いておいて、思い出したようにメアリーが尋ねてきた。

 

「あぁ、それは明日の夜、街の中央にあるサンドリヨン城で舞踏会があるからだと思いますよ?」

「ふーん舞踏会・・・それだけであんなに人が集まるかねぇ・・・・・」

「なんでも王都から王子様が来るんだとかでここ最近はすごい盛り上がりです」

 

こんなにこの街が盛り上がっているのは珍しい。

何せその余波が街の端っこであるこんなところまで届いているのだから相当盛大に行われるのだろう。

 

「やっぱり王族ってのは凄いんだねぇ・・・」

「メアリーさんも行ってみてはいかがですか?」

「いやいや、あたしは舞踏会なんてキャラじゃないよ」

 

ないないと手を振るメアリーだが、スラッと背は高くスタイルもいい、目はキリッとして十分美人である。

きっとドレスも凄く似合うんだろうなぁ~とつい見惚れてしまう。

 

「えぇっ!?行こうぜメアリーちゃん!俺メアリーちゃんのドレス姿みたいなぁ!」

「美味しい食べ物出るなら俺ッチも行きたいッス!」

 

二人が鼻息荒くメアリーを説得している・・・・・片方の動機は不純極まりないが・・・

 

「あっ、でも確か・・・お酒が出るから参加は成人した人だけでしたよ?」

「またしても・・・喧嘩祭りに続いてまたしても成人の壁がぁぁぁ・・・」

「だいたい、ルートの面倒だって見なきゃならないだろう?あたしは残るからあんたら二人で行ってきなよ」

 

四つん這いになり悔しがっているロックを横目にメアリーが提案する。

しかしそれではエリアルドの欲は満たされない。

 

「メアリーちゃんが行かないのに俺だけ行っても意味ないだろ!?」

「俺ッチもいるッスよ!!」

「男はカウントせんッ!!」

 

なんだとぉ!?やるかぁ!?と二人で醜い言い争いをしている。

このままでは殴り合いに発展してしまうかもしれない。

 

「あの~、私がルートさんを見ているので皆さんで行ってきては・・・・・なんて、おこがましいですよねっ!?」

 

途中まで言いかけたが、ルートとメアリーの関係を考えると余計なお節介だったかと自重する。

 

「メアリーちゃん、シンディちゃんがここまで言ってくれてるんだぜ?シンディちゃんの面子のためにも、ここは舞踏会に行くべきだぜ!」

「そうッスよ!じゃないと俺ッチ、むさいおじさんと二人で行くハメになっちゃうッスよ~・・・」

「おじさん言うな!俺はまだ24だ!!」

 

これぞ好機とエリアルドとロックが二人がかりでメアリーを説得する。

メアリーとしては行ってもいい。

しかし、その為にひとつ確認しておきたいことがあった。

 

「シンディは行かないのかい?」

 

この街の住人であるシンディならば、今まで舞踏会のために準備をいろいろしてきただろう。

それを奪ってしまうのに抵抗を受けないわけがない。

 

「元々行く予定は無かったので大丈夫です!明日はお店も休みなので大掃除をする予定でした。ずっと家にいますので安心してください!」

 

どうせ他にやることもないし大丈夫!ルートさんも明日にはほとんど善くなってるだろうし───

 

「本当にいいのかい?」

「え?あっ!おじさん!!」

 

シンディに声をかけたのは昨夜のおじさんだった。

 

「どうしてここに?」

「昨日の子の経過が気になってね・・・・・・それより、本当にいいのかい?舞踏会は憧れじゃないのかい?」

 

そう言うと男は一冊の絵本を机の上に置いた。

 

「あっ、それは!」

 

シンディには見覚えがあった・・・どころではない、それは毎日のように読んでいる自分の愛読書だった。

汚れ具合から・・・というよりも、結構古い本なので自分以外に持っている人なんて見たことがない、一目で自分のだと分かった。

でもあれはいつも自室に持って帰って大切に・・・・・あれ?昨晩はどうしたっけ?

 

「そこの床に落ちていたよ。大切な本なんだろう?大事にね・・・」

 

汚れを払うように本を軽く叩いてからシンディに返す。

 

「ありがとうございます、父から貰った大切な物なんです」

「『灰かぶり姫』か・・・」

「はい、5才の時の誕生日プレゼントに貰ったんです。それからずっと大事にしてて・・・・・」

「分かるとも・・・・・毎日のように読んでいるんだろう?本のくたびれ方を見ればわかるよ」

 

父を思い出し軽く涙ぐむシンディと、あやすように頭を撫でるおじさん。

 

「灰かぶり姫って何ンスか?」

 

ロックが?マークを浮かべながら聞いてくる。

 

「昔の童話さ。えっと、ストーリーは・・・・・・」

「継母と姉に苛められていた女の子が魔女に魔法をかけてもらい舞踏会にて王子様と恋に落ちる・・・・・」

「魔法の効果が切れそうになり家に帰るも落としていったガラスの靴を頼りに自分を探しに来てくれた王子様と結ばれる話さ」

 

いまいちストーリーが思い出せないでいたメアリーの代わりにシンディとおじさんがしっかりと解説してくれた。

 

「その灰かぶり姫に憧れてるんじゃないのかい?」

「・・・・・・確かに昔は憧れてました。お姫さまになるのは女の子の憧れですから・・・・・でも今は、このお店をやっているのが楽しいのでいいんです」

 

笑顔を浮かべて言うシンディだが、その笑顔はどこか無理をしているようにも見えた。

 

「お父さんのお店だから・・・・・じゃないのかい?」

「そうかもしれません・・・・・でも今はまだこのままでいいんです」

 

本心は本心なのだろう。

だがそれはやりたいことが明確に決まっていないからこそのものだというのは直ぐに分かった。

 

「ご心配ありがとうございます」

「いや、いいんだ。何かあれば相談に乗るからね?」

「はい、お願いします・・・・・あっ、そういえばおじさんのお名前まだ聞いてませんでしたね?」

「おやそうだったかい?名前も知らない相手にこんな話をされてもね・・・・・私は・・・・・レオンだ。・・・・・さて、長話が過ぎた。昨日の彼はどこかね?」

 

そう言ってレオンはメアリーとルートの部屋に向かった。

 

 

「王子様、かぁ・・・・・そう言えばお母さんが昔言ってたっけ・・・『私の王子様は(この人)だけよ』って・・・・・フフッ」

 

少し昔を思い出し、悲しくも嬉しいシンディだった。

 

 

 

 

「うん、経過は順調だね。3日もあれば全快すると思うよ。・・・・・・・───お大事にね」

 

ルートの診察を終え おつきみ亭からでるレオン。

ひとつ角を曲がり進むと物影から一人のメイドが後に続く。

洗練されたその動きは見事と言う他ない。

 

「昔は『私もお姫さまになる!』と夢見ていたあの子も変わったなぁ、アイン?」

「彼女もお年頃ですし、家庭環境がああですから」

 

アインと呼ばれた彼女は表情を一切変えず答える。

 

「私も年をとるわけだ・・・・・・そうだ、フィーアをこっちに呼び戻しておいてくれ、ドライ」

『かしこまりました』

 

今度はどこからか男の声が帰ってきた。

姿は見えないがハッキリと返事は聞こえた。

 

「さて・・・・・フィーアからどんな情報が聞けるか・・・・・」

 

レオンは真剣な表情を浮かべながらどこか楽しそうに路地に消えていった。

 

 

 

 

 

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