Empty of the story   作:うえすぎけんしん

43 / 103
第43話 王子暗殺計画

____________________

 

「えぇぇぇっ!?メアリーさんドレス持ってないんですか!?」

 

朝のおつきみ亭にシンディの絶叫が響き渡る。

普段であれば継母と姉二人にうるさいと怒られるところだが、今日は舞踏会当日ということもあり朝からエステや理容室に出掛けているので問題はない。

 

「いや、普段ドレスなんて着る機会無いから買ってないんだよ」

「どうするんですか、舞踏会今夜ですよ!?」

 

舞踏会当日だというのにここにきてメアリーにドレスが無いことが発覚した。

ドレスがなければ舞踏会に行かなくてもいいだろうと今朝まで黙っていたのだがシンディの『メアリーさんはどんなドレスを着ていくんですか?』という質問に答えられなかったことで発覚してしまった。

 

「買いに行きますよ!今すぐ!!」

「えっ?いや別に────」

 

あ~れ~~・・・・・・・とシンディに腕を捕まれたメアリーは活気ある街中へと連行されていった。

 

 

 

 

 

「うーん・・・・・これはどうですか?」

「ちょっと丈が短くないかい?」

「じゃあこれは?」

「ちょっとフリフリしすぎじゃないかい?」

 

二人は先程から複数軒店を廻っては試着を繰り返していた。

シンディはメアリーの魅力に見合うドレスを探すのに燃えていた。

スラッと背が高く健康的でほどよく鍛えられたその身体はまさにシンディが羨む『大人の女性像』だったからだ。

クールなルックスと少しパーマのかかったその金髪はどことなく大人の余裕というものを感じる・・・・・気がする。

 

「かわいい系よりは綺麗系?露出は多すぎず・・・・・かといって少なすぎれば意味はないか・・・・・・色は・・・・・・・・」

 

もう完全に自分の世界にトリップしてしまっている。

先程もそんなに真剣に選ばなくてもいいんだよ?と伝えたのだが、

 

「ダメです!メアリーさんは可愛いんだからドレスもちゃんと似合うものを選ばなければいけません!」

 

と怒られてしまった。

しかしプリプリと怒っていてもどこかドレス選びの楽しさが隠せていない。

その後も試着を続けやっとシンディのお眼鏡に叶い決まったドレスは真っ赤なイブニングドレスだった。

丈は踝辺りで袖はなく、腕と背中が大胆に露出されているが白のストールを羽織ることでバランスを取っている。

足元は黒いヒールでドレスを邪魔しない色合いになっている。

その後簡単な装飾品を買い、満足したのかふぅ、と汗を拭うと

 

「では私は店で使う食材を買っていくので先に帰っていて下さい!」

 

と嬉しそうに小走りで去って行った。

 

 

 

「なぁなぁ、どんなドレスを買ったんだよ~」

 

イライラ

 

「見てみたいなぁ~」

 

イライラ

 

「ちょっと着てみてくれよ~」

 

ブチッ

 

「うっさいね!あんたのために買ったんじゃないよ!」

 

帰ってくるなりエリアルドに絡まれてしまいドレスがどうだの舞踏会が楽しみだの鬱陶しいことこの上なかった。

しかも、ルートは鈍った身体を丹念にストレッチしておりこの場にはいない。

ロックも舞踏会に行けない鬱憤を忘れるように熱心に何かをモクモクと作っているためこの場にはいない。

ならメアリー自身がこの場を離れればいいのだと思うが、生憎メアリーは今昼食の調理中で動けない。

だからこうして食堂を掃除しているエリアルドと二人きりになってしまっているのである。

 

「あっ、そうかぁ・・・つまり今夜のお楽しみにってことか!」

 

成程!と手を叩くエリアルドにイラッとするが、もう料理も出来上がるので二人きりは解消されるとホッとする。

 

「ほら、もうできるから二人を呼んできてくれよ」

「アイサー!」

 

ビシッと敬礼を決めルンルンとルート達を呼びに行くエリアルドを無視しながらテーブルに皿を並べていく。

ちなみに継母達は少しでも体を細く見せるために昼は抜くと言っていたので用意していない。

 

 

 

「・・・・・・・なぁ、遅くねぇか?」

「人が多かったからしょうがないんじゃないかい?」

「でも心配ッス」

「僕が見てこようか?」

「まだ無理はすんなよ、それなら俺が行くぜ」

「まぁもうちょっと待ってみようさね」

 

料理ができてから30分、未だシンディは帰ってきていなかった。

昼御飯の時間も過ぎカンカンと大工さんも作業を再開し始めている。

シンディもこの時間には必ず帰ると言っていたが故に心配になってくる。

そろそろ捜索をしようかと話し合っていると

 

「みっ、皆さん!大変です!!」

 

とシンディが血相変えて帰ってきた。

 

「どうしたんだい?そんなに慌てて」

「あっと、えっと、王子様、舞踏会、怪しい人達───」

「ちょっ、ちょっと落ち着きなよ!」

 

テンパっているシンディをイスに着かせ、水を飲ませて落ち着かせる。

 

「で、何があったんだい?」

「えっと、メアリーさんと別れたあと買い物をしてたんです・・・・・そしたら路地裏に見かけない人達がコソコソと入っていったんです。気になったのでついていったら・・・・・・舞踏会で暗殺するって話してたんです!!」

「「「何だってぇぇぇぇぇっ!!?」」」

「っ!?・・・・・・・・・・・・・・・」

 

店内に絶叫×3が響く。

ルートも驚いたが、直ぐに何かを考え始めた。

 

「大変じゃねぇか!直ぐに騎士団に知らせねぇと───」

「それが、そんなことあるわけないとまともに取り合ってもらえなかったんです・・・・・」

「ならもっと上のやつに直談判しに行こうぜ!」

「私もそうしようとしたんですけど、王子様お付きの大臣?という方がそんなことあるわけがないと追い払われてしまったんです・・・・・」

 

確かに証拠があるわけでもない。

そんな話一つで舞踏会を中止にするわけにもいかないのか・・・・・

 

「にしても警備すら増やさないってどうなんだよ?」

「もともと万全ってことじゃないンスか?」

「そうだとしても暗殺なんて言葉が出てきてるんならそれ相応の警戒はするだろ?」

 

確かに普通なら街に巡回兵を送ってもおかしくはない。

相手は王族なのだから万が一があっては一大事だ。

しかしまともに相手にもしないのは・・・・・・・

 

「その大臣・・・・・怪しいね・・・・・」

 

ここまで沈黙を守っていたルートが口を開いた。

 

「怪しい?」

「うん、対応が雑すぎるしろくに調べもしない。まるで何でもないことのように終わらせてる」

「つまり?」

「犯人グループとグルなんじゃないかってこと」

 

流石に深読みしすぎだろうと皆思うが大臣の対応の不自然さを考えると一概には言えない。

しかしそうなると大臣にメリットがあるとは思えない。

犯人グループから報酬が渡されるとしても大臣として責任問題に問われ最悪処刑だ。

 

「どう考えてもデメリットの方がデケェぜ?」

「大臣の立場なんてどうでもいいとしたら?」

 

皆こいつ何を言ってるんだという目でルートを見る。

 

「ようはテロリストなんじゃないかってこと」

 

ますます皆の疑問が大きくなる。

 

「じゃあ何で舞踏会なんて場で暗殺するんだと思う?」

「え?そりゃあ・・・・・あれ?なんでだ?暗殺なら───」

「そう、暗殺するなら普通は人目につかないところで行われる・・・・・でも敢えて舞踏会にしたのは世間に見せつけるため」

 

つまり世間に王族が殺された事実を確実に伝えるため。

人目につかないところでの暗殺では病死など偽造されてしまう可能性が高い。

王族の暗殺などという国家の汚点はなるべく隠したいだろうから当然だ。

簡単に暗殺を許したとなれば国家の信頼に響く。

そのためなら事実など簡単に隠蔽してしまうだろう。

それに舞踏会は直接触れ合うため警備にも隙が出来やすい。

 

「恐らくその大臣は自分の死を偽装するかして逃げるだろうね。そうなれば責任は騎士団に向く」

 

死人に口無し、大臣がいないのであれば避難は警備担当の騎士団に殺到するだろう。

 

「成程な、それなら納得がいくぜ・・・・・でもどうすんだ?俺等冒険者の言葉と大臣の言葉じゃどっちの方が信頼できるか明らかだぜ?」

 

問題はそこだ。

大臣がいる以上騎士団には頼れない。

どれ程の騎士に大臣の息がかかっているかも分からない。

最悪全員敵だってこともあり得る。

 

「・・・・・私達だけで、助けましょう・・・・・」

 

シンディが緊張しながらも口を開く。

 

「助けられるのは私達しかいません!」

「相手は暗殺集団と騎士団だぜ?流石に分が悪すぎる」

「だからといって見殺しにしたくないです!」

 

皆分かっている。

助けられるなら助けたいが相手の実力も数も未知数、最悪自分達は国家反逆の罪を被せられてしまう。

 

「やろう」

 

意外なことにルートが賛成の意を表した。

 

「本気かい?」

「うん、きっと報酬ガッポリ貰えるよ」

 

シンディのような善意100%ではないがやる気だ。

普段勝算のない戦いには決して挑まないルートがやるというのだ、きっと何か策があるんだろう。

 

「まず、舞踏会という場である以上相手も迂闊には動けない」

 

不審な動きをしているやつが簡単に王族に近付いてそれを騎士が止めない筈がない。

それを許せば騎士もグルだとバレてしまうしなにより民衆の目が多い。

王族の開く舞踏会だ、それなりにコネのある人間もいるだろう。

その中で暗殺をするのなら・・・・・・

 

「メアリーとエルは舞踏会へ、僕は城の中を探るよ」

「俺っちは?」

「何が起こってもいいように外で待機」

「あの、私は・・・」

「・・・・・シンディはここで待ってて」

 

当然だ、危険すぎる。

言いたくはないが足手まといになるだけなのは目に見えている。

 

「昔護身術を習っていたので足手まといににはならないと思うんです!」

「・・・・・シンディちゃん、ここは俺等に任せて───」

「お願いします!行かせてください!!」

「・・・・・・分かった。シンディもメアリー達と一緒に中へ行って」

 

熱意に負けたのか許可を出す。

シンディの目を見れば生半可な覚悟ではないのがよくわかるが本当にそれだけで同行を許したのかは謎だ。

 

「・・・・・いいのか?」

「守ってあげてね?」

「おう!」

 

エリアルドに任せておけば大丈夫だろう。

さて、役割は決まった。

後は残された時間で準備を整えるだけだ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。