舞踏会。
夜間に行われる大人のダンスパーティー。
元々は宮廷における社交界の催しのひとつであるが、近年は貴族なども定期的に開いていることで民衆にも身近なイベントになってきた。
また、資産家、医者、商会の会長などお金持ちの交流の場ともなっているので、舞踏会を開催するのは権力を見せつけるという金持ちのステータスなのである。
だが、今回の舞踏会は街の皆のためということもあり平民も数多く参加している大規模なものだ。
ここでうまくいけば一気に上流階級の仲間入りができると皆燃えている。
そんな中全く違う目的で舞踏会に参加する男達、
「お飲み物はいかがですか?」
王子を暗殺から守るため潜入しているルートはウェイターとして会場内をまわっている。
その所作もなかなか手慣れたもので本物と遜色ない。
『おいおい、どこでウェイターなんて覚えたんだよ?』
「空いたグラスお下げします・・・・・こういう時に便利だからいろいろ覚えたのさ・・・それよりシンディ、そっちはどう?」
茶茶をいれてくるエリアルドを軽くスルーしシンディに状況を尋ねる。
今回のミッションはまずシンディが犯人を見つけないと始まらない。
『ちょっと待ってください・・・・・・いました。会場左端、ローストビーフが置いてあるところに一人でいます。黒髪短髪、薄い顎髭で右手人指し指に指輪をつけてます』
「了解、その調子で次を探して」
シンディはうまくやってくれている。
事前に指示した通り特徴をなるべく細かく教えてくれている。
だからといって特徴をとらえようとあまりジロジロ見ていると怪しまれるのでそこには気を付けるよう言ったのだが今のところそれもちゃんと守れているようだ。
自然な動きで情報の場所へ向かう。
・・・・・・いた。
黒髪に顎髭、情報通りだ。
ん?グラスが空いているな、これはやりやすい。
ルートはこっそり酒に薬を入れる。
「失礼、おかわりはいかがでしょうか?」
「んぁ?あぁ、もらおう・・・・んっ、うまい」
「ごゆっくり」
空いたグラスを受け取り新しいお酒を渡す。
ルートが偽のウェイターだとはバレていない。
ルートは男が酒を飲むのを見届けてから立ち去る。
「飲ませた。どんどんいこう」
『見つけました、場所は────』
その後も同じような手順で薬入り酒を飲ませていく。
酒が空いていない時は直接薬を入れるためメアリー達に気を引いてもらった。
何人か薬を飲ませられなかったがしょうがない、元々そこまでうまくいくとは思っていない。
「そろそろ時間だよ」
『了解、直ぐに向かう』
エリアルドが向かったのはトイレ、つまり薬とは下剤だ。
王子様が現れるまでになるべく敵の数を減らしておこうという作戦だ。
お、そうこうしているうちに一人トイレに向かったな。
「イテテテテ、なんだか急に腹が痛くなってきやがった・・・・仕事の前に済ましとかねぇと・・・・」
「よう、待ってたぜ・・・」
「あん?誰──ブガァッ!」
振り返ると同時に鼻を思い切り殴られる。
その一撃でノビてしまったのか白目を剥いてしまった。
「うし!・・・・・おっと、次が来る前に隠さねぇと・・・・」
急いで男の口、目、手足を縛って個室へ放り込む。
敵がいくら手練だろうが関係ない。
腹を下している状態で本来のポテンシャルを発揮出来る奴なんていない。
そこに付け込んだ作戦、少々卑怯だろうが関係ない。
今回は手段を選べる状況ではないのだから。
「ふぅ、済んだぜ」
『ご苦労様、薬を飲ませたのはソレで最後だよ』
『エル、ルート、そろそろ王子が出てくるみたいだ。早く戻ってきな』
「『了解』」
これで大分敵は減った。
残り3人・・・・他に仲間がいるとしても何とかなるかな?
めぼしい奴は既にマークしてるから対応できるだろう。
会場に戻るとステージ辺りに人が集まっている。
皆王子が登場するのを今か今かと待ちわびている。
すると突然、フッと会場の明かりが消えた。
ソレと同時に楽器隊の演奏も止まる。
「皆、待たせてしまったな」
声と共にスポットライトがステージ中央を照らし出す。
と同時に楽器隊が演奏を小さく再開する。
皆邪魔してはいけないと声を出さず自重している。
「私は・・・トレス王国第3王子、〝ロバート・ディ・アルステイム・トレス〟だ!!」
歓声と共に演奏も音量を上げる。
明かりも戻りステージに花吹雪が舞う。
大した演出だが、整った顔でやるから絵になっている。
短く切り揃えた金髪に碧い瞳、なるほど、THE・王子様って感じだ。