Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第49話 魔法が解ける時

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「ルート、大丈夫かい?」

 

 ロバート殿下の指示のもと、賊の引っ捕らえ、負傷者の確認などを慌ただしく行っている横でルート達は集まっていた。

 ルートは先程ふらついていたので座らされている。

 会場はまだ少し混乱しているものの、応援の騎士も現れロバート殿下の毅然とした態度もあり、徐々にだが落ち着いてきている様子だ。

 

「まったく・・・本調子じゃないんなら最初からそう言っときなよ。心配するじゃないか・・・」

「ごめんごめん、もう大丈夫だと思ってたからさ」

 

 あの程度の動きでふらつくなんて・・・よほど体が弱っていたらしい。

 普段病気らしい病気なんてかからなかったから油断してたな。

 

「シンデレラ嬢に・・・・ルート君、だったかな?君達のお陰で助かった。感謝するよ」

 

 粗方指示を出し終えたロバートが近付いてくる。

 

「有難いお言葉ですが、自分達は当然のことをした迄です」

「そう謙遜するな、こんな芸当そうそう出来るものではない。まぁ、〝コレ〟は少々やり過ぎな気もするが・・・・・」

 

 そう苦笑いしながら天井を見上げる。

 天井にはロックが豪快にぶち壊した大穴が。

 まるで最初からそういうデザインであったかのように、大穴からは真ん丸なお月さまが輝いて見える。

 こうして終わってみるとよく分かる。

 我ながら、なかなか無茶な作戦を思いついたものだ。

 ・・・・・しかし、弁償しろ!とか言われない・・・よな?

 

「なに、私を助けるためにやってくれたことだ。弁償しろなんてことは言わんさ」

 

 心配してるのがバレてしまった。

 まぁ自分達が空けた大穴を見つめてれば誰でも気づくか・・・

 

「さて今回の事件、君達には色々と聞かなければいけない事がある。なので申し訳ないが、今晩もう少しここに残っていてもらってもいいかな?」

「明日ではダメなのですか?」

「あいにく、明日は時間がなくてね・・・私の我儘で申し訳ないが今晩しか時間がとれないんだ・・・」

 

 やはり王族ともなれば忙しいんだろうな。

 個人的には早く宿で休みたいんだけどしょうがない。

 

「わかりました・・・皆もそれでい──『それはおすすめしません』──え?」

 

 突然無線機に入ってくる魔女の声。

 おすすめできないってどういうことだ?

 

『もうじき0時の鐘が鳴ります』

 

 ・・・だからなんだと言うのだろう?

 

『なので、シンディ様のドレスは・・・・・・・消えます』

「何でですかっ!!?」

 

 たまらず叫ぶシンディ。

 無線機でのやり取りな故、シンディが突然叫んだ形になり周りの視線が一気に集まるが、当のシンディはそれに気づかないほど動揺している。

 

『シンディ様は灰かぶり姫がお好きなのだとうかがっております・・・』

「え?あ、はい、好きです・・・」

『なのでどうせならばと思い、主人公シンデレラと同じように0時に魔法が解けるドレスを着用していただきました』

「えっ、じゃあ今すぐ帰らないと・・・」

『公衆の面前でスッポンポンでございます』

 

 シンディの顔がみるみる青くなっていく。

 そして己に残されたタイムリミットを確認するため、会場に設置されているであろう時計を探し始める。

 しかし、先の戦いの影響か全く見つからない。

 暫く焦ったようにアワアワしていたが、ロバートが腕時計をはめているのを見つけ恐る恐るといった感じで尋ねる。

 

「あの~、つかぬことを伺いますが・・・0時まで後何分ほどでしょうか?」

「む?0時なら・・・・・あとちょうど1分ほどだが?」

「まずい!走れ!!」

 

 それを聞くなりシンディの手を引いて走り出すルート。

 事情を聴いていたメアリー達もそれに追従しようとするがルートがそれを制す。

 

「皆は説明のために残ってて!」

 

 たった今ロバート殿下に残っていてくれと頼まれたのだ。

 ここで全員帰るわけにはいかないだろう。

 それに、シンディを家に送るくらい自分ひとりで十分だ。

 

「一体急にどうしたって言うんだい!?」

「ええっと、すみません!今は説明している時間はありませんのでっ!」

 

 ロバート殿下には申し訳ないが体裁に構っていられない。

 こんなところでスッポンポンになんてなってしまったら、いったい何のために必死に暗殺を防いだのか分からない。

 王子の命は守れても己のドレスすら守れないなんてマヌケ過ぎる。

 そういう役割はシンディじゃなく、エルが担うべきだろう。

 

「二人きりだからって手ェ出すなよ!」

「あんたと一緒にしないっ!」

 

 叩かれて嬉しい悲鳴をあげている変態を背に出口へと走る。

 

「あっ、靴が!」

 

 見るとシンディのガラスの靴が片方脱げてしまっている。

 急いで拾いに行こうとしているが恐らく無意味だ。

 

「どうせ消えるんだから問題ないよ、急ごう!」

「・・・それもそうですね、・・・んしょっ、行きましょう!」

 

 残っていたもう片方の靴を脱ぎ右手で掴むと再び走り出す。

 そして、ゴーーーンッ、ゴーーーンッと、二人が扉を開け外に出ると同時に0時を知らせる鐘が鳴った。

 思わずハッとなってシンディを見るとまだドレスは消えていない。

 一瞬安堵しかけるが、よく見ると袖や裾辺りからドレスが消えていっている。

 

「──っ!せめて人気のない場所まで行こう!」

「はっ、はい!」

 

 服が服として機能しなくなるまであと1分もないだろう。

 それまでにせめて人の目のないところまで行きたいのだが・・・・・シンディは裸足、女の子にあまり無茶はさせられない。

 ・・・・・こうなったらしょうがない。

 

「ちょっと我慢してね?」

「え?・・・キャアアアッ!!?」

 

 シンディを両手で抱え上げ再び走り出す。

 シンディは悲鳴をあげてバタバタと暴れるが我慢してもらうしかない。

 長い階段を下っているとかぼちゃの馬車が見えてくる。

 

『馬車はまわしておきました、お急ぎを・・・』

 

 相変わらず淡々と言ってくるが・・・そもそも魔女がドレスに変な魔法をかけなければこうして走って会場を去らなくて済んだというのに・・・・・まぁ、今は愚痴ってもしょうがない。

 観念したのかシンディも暴れるのを止め目を瞑って耐えている。

 そのお陰かまだドレスと言える段階で馬車に入れた。

 

「お疲れさまでした。直ぐにお家までお送りします」

 

 二人が馬車に入ったのを確認してから馬車はゆっくりと走り始める。

 魔女は御者席に座っているので車内にはルートとシンディの二人きりだ。

 

「なんとか間に合ったね・・・」

「は、はい・・・・・あの・・・あまりこっちを見ないでくれませんか?・・・その、恥ずかしいので・・・・・」

 

 そうだった、シンディのドレスは現在進行形で消えていっているのだった。

 なら早く服を着ればいいのに・・・そう思い馬車の中を見渡すが、どこにもシンディの服がない。

 行きの馬車の中で今のドレスに着替えたので必ず残っているはずなのだがどこにも見当たらない。

 シンディも手で隠してはいるがもう視覚的にはかなり危険、というより最早ドレスとは呼べないレベルまで消えている。

 流石にこのままでは可愛そうだな。

 

「よかったらこれ・・・・」

 

 そう言ってワイシャツを脱ぎ渡す。

 

「えっ!?でもそれじゃあルートさんが・・・」

「いいからいいから、早くしないと全部消えちゃうよ?」

「うぅぅ・・・・・ありがとうございます」

 

 やはり裸は恥ずかしいらしく大人しくワイシャツを着てくれた。

 ワイシャツは少し大きめのサイズだったので、シンディ太もも辺りまでを覆い隠してくれている。

 お陰でこちらは上半身裸になっているわけだが、シンディが全身裸を晒すよりかはダメージなんて無いに等しい。

 しかし、やはり恥ずかしいのか、シンディはそこから家まで一言も発することはなかった。

 ・・・・・・・というか今にして思うと、別に急いで帰る必要はなかったな・・・・・適当に服を貸してもらえば済む話だった。

 相当動揺してたんだな。

 

 

 そこから暫くして、ようやくロバート殿下との話が終わり解放されたメアリー達が帰ってきたが、その日は疲れていたこともあり、特に何か話すでもなく皆すぐに寝入ってしまった。

 ちなみに、いつの間にか魔女の姿は消えており、テーブルの上に無線機とシンディの服がいつの間にか置かれていた。

 一体彼女は何者だったのだろう?

 というか何をしたかったのだろう?

 

 

 

 とある宿の一室、レオンとアインは全身をフードで覆った少女と対面していた。

 

「ただいま戻りました」

「おかえり、フィーア」

「レオン様は舞踏会に来られなくて良かったのですか?」

「私がいては彼らの活躍が見られないからね・・・それに、今日は静かに酒を飲みたい気分だったんだ」

 

 氷が入ったグラスをカランと鳴らし一口飲む。

 それだけの動きがとても様になっている。

 

「しかし、シンディは王子に憧れていると思っていたが・・・少々早計だったかな・・・」

「恋心をコントロールするのは容易ではありませんので」

「まぁ、彼女はお姫様っていうキャラクターではないだろうからね」

 

 なかなか上手くはいかないものだな・・・と、笑みを浮かべながらもう一口酒を煽る。

 

「亡き友の忘れ形見・・・・・彼女の幸せはどこにあるのか・・・」

 

 懐かしき顔を思い出しながら酒を煽る姿には、どこか哀愁が漂っていた。

 

 

 

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