熊の魔物をたおした青いずきんのお婆さん、メアリーのお婆さんの家に入る。
「・・・フーーー・・・で、何しに来たんだい?メアリー」
ソファーにドカッと座るなりタバコに火をつけ一服すると、今回の来訪の目的について聞いてきた。
「お袋からばあちゃんにってクッキーの出前だよ」
「なんだいナタリーの使いかい、いつもご苦労だねぇ」
ナタリーとはメアリーのお母さんのことで、お婆さんの娘である。
お婆さんの名前はブラッドリアであるらしいのだが、ナタリーメアリーとの違いが凄すぎるとルートは思っている。
ちなみに、ナタリーさんは緑色のずきんをかぶっているので、この一族はずきんをかぶらないといけないという家訓があるのかもしれない。
そして、二人でトレス王国に行くことを伝える。
「ふーん。トレス王国に、か。いいんじゃないかい?若いうちにいろんな経験をするのは大切さ」
あっさりとお婆さんは許可を出してくれた。
「ウィリアムはどうするんだい?あいつも行くのかい?」
ウィリアムとはルートの師匠だ。
「師匠は先に行って待っていると言ってました。なんでも、向こうでやることがあるとか・・・」
「あぁ、エリックのところだね・・・」
ブラッドリアは少し悲しそうな顔をした。
「エリック?どなたですか?」
エリックだけでは誰か分からないので詳しく聞いてみる。
「エリック・ディ・アルステイム・トレスだよ」
「あの英雄の!?」
珍しくメアリーが驚愕している。
しかし、ルートはあまり世間のことを知らないので正式名を言われても分からない。
「え~と、誰?」
「「!??」」
二人して目を見開いている。
分からないから分からないと言っただけなのに、そんなに有名な人なのだろうか?・・・ん?最後に"トレス"とついている・・・
「ハァーーー・・・世間知らずだとは思ってたけどこれほどとは・・・」
「ハァーーー・・・ウィリアムは何を教えてたんだか・・・」
・・・なんだろう。師弟揃ってディスられている気がする
「・・・エリックってのは元トレス王国の王子で先の聖戦の英雄の一人だよ」
そこからは底無しの世間知らずであるルートのためにふたりがかりで色々と教えてくれた。
約15年ほど前、魔王が世界を征服せんと軍を率いて各国を襲いだしたため、各国が協力し応戦したのが"聖戦"
その時最後に魔王と直接闘った者達が"英雄"
七人いたため"七英雄"と呼ばれているらしい。
「その七人の名前は"エリック・ディ・アルステイム・トレス"、"ローグ・ガレッド"、"アレイスター・テンペスト"、"セイメイ・安倍"、"レオナルド・インフィニー"、"イクス"、"ゼロ"の7人だよ!トレス王国に行くなら覚えときな!」
怒られてしまった。
なんでも、トレス王国は聖戦時に各国をまとめていた連合軍の中心国だったとか。
なるほど、それほどの事を知らないとは自分はとんでもない世間知らずだなと、ルートは自分の無知ぶりを逆に誇らしく思った。
「エリックは最後に死んでしまってね・・・ウィリアムは知り合いだったから墓に手を合わせにでも行ったんだろうね」
師匠は英雄と知り合いだったのか・・・それならそういう話くらいしておいてほしかった。
「で、トレス王国にはいつ発つんだい?」
ルートが今度師匠に抗議してやろうと拳を握っていると、ブラッドリアから出立の日時を聞かれた。
「早ければ三日後には出たいかな?」
本当は明日にでも出たいのだが、メアリーの準備や周りへの挨拶もあるので時間を延ばした。
「随分早いねぇ・・・メアリー、あんたがしっかりとルートの手綱を引いとくんだよ?ちょっと目を離すとなにしでかすか分かんないんだから・・・」
「分かってるよばあちゃん!」
・・・またディスられた・・・
そんなやり取りもあったが、二人は魔物の素材や肉を換金して家路についた。
そして三日後、挨拶もし終え準備万端な二人は早速トレス王国へ向け歩き出した。
トレス王国にはエリックの他にも"ローグ"と"レオナルド"という英雄が住んでいるらしい。
まぁ、一介の冒険者の自分が会うことはほぼないとは思うが・・・
歩き始めて30分程、王都が小さくなってきた時、
ダダダダッ!!
誰かが走ってくる音がする。
「ちょっと待って欲しいッスゥゥゥゥゥゥ!!」
どうやら自分達に用があるようだと後ろを振り返ると、
「ハァ、ハァ、や、やっと追い付いたッス!」
大きな荷物を抱えたドワーフの少年が息を切らせていた。
知らない少年だ。
メアリーに目で知り合いか尋ねるもどうやら違うらしい。
「え~と、何か用かな?ていうか誰?」
「ハァ、ハァ、あ!お、俺っちはロックというッス!見ての通りドワーフッス!実は、お二人がトレス王国へ行くと聞いて自分も同行したくて来たッス!!お二人のお邪魔はしないッスから、どうか同行を許可して欲しいッス!!」
ルートとしては別に構わないのでメアリーに聞いてみると、メアリーも構わないとのことだったので許可を出すと、
「いやったァァァァァァッスゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
ものすごいテンションで喜ばれた。
泣いて喜んでいるが、走ってきたのもあって汗と涙で顔がすごいことになっている。
今回の旅、早速三人旅になってしまった。