Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第54話 トレス王国王都到着

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 時刻はお昼少し前、東から昇ってきた太陽がそろそろ西に沈み始めようかな?というところでルート達はトレス王国の王都である『ティラストリア』に辿り着いていた。

 

「ふ~、なんとかお昼までに着けたね」

「やっぱりお昼ご飯はちゃんとお店で食べたいですもんね」

 

 先日から旅に加わったシンディももうすっかり慣れたようで、朝から歩き通しだったにも関わらず額にじんわりと汗を滲ませる程に留まっている。

 初めての旅であったもののそれほど苦戦することもなく、割りと直ぐに順応できた。

 モンスターとの戦闘はまだ不安が残るが、実力的には問題無いのでこれも直ぐに慣れることだろう。

 

「で、どうするんだい?先に飯を食べるか、キーパーさんに会いに行くか」

「ん~~・・・王都に来たら直ぐに来てくれって言われたし、先ずは王城に行こう」

 

 一行は街の入口からでも見える大きな城に向かって歩き出した。

 城へと続く大通りには衣服屋、武器屋、飲食店など様々な店で活気に満ち溢れていた。

 あちこちから漂ってくる魅惑の香りに空腹を擽られながらも、何とか寄り道をせずに王城へと辿り着いた。

 門にいる警備兵にキーパーの名前を出し用件を伝えると、確認のため少々待たされたが案外あっさりと通された。

 流石大国の王城、外観も凄いが内装も凄くゴージャスだ。

 サンドリヨン城のものとは比べ物にもならない程大きなシャンデリアがこれでもかと存在感を放っている。

 玄関ホールで既に呆気に取られているルート達は、案内係のお姉さんに連れられて個室へと案内される。

 フカフカのソファに細かい細工をされた職人技の光るテーブル等々、待合室でもこれだけ豪華だと最早感心してしまう。

 

「申し訳ありません皆様、キーパー副団長は現在別のお客様と会談中でして、終わり次第こちらに伺うとのことなのでもうしばらくお待ちください」

 

 慣れた手つきで紅茶を人数分注ぎながら説明してくれる。

 とても良い香りがするが、このカップも高価なものだと思うとどうにも緊張してしまう。

 ルート、メアリー、エリアルド等冒険者勢はそうでもないが、シンディとロックは『割ったらどうしよう!?』とカタカタ手を震わせている。

 自分達に出すくらいだから一つ二つ割れたところで向こうは何とも思わないだろうが、こういったことに慣れていない庶民は緊張するものなのだ。

 

「いや~、お待たせしてすみません」

 

 空腹を紛らわすためにクッキーを食べていると、会談を終えたであろうキーパーが汗を拭きながら部屋に入ってきた。

 

「いえいえ、こちらは全然大丈夫ですよ」

「ふぅ、そう言ってもらえると助かります・・・おや?そちらの方は・・・」

「あの後旅に加わったシンディです」

「おぉそうでしたか。初めまして、騎士団副団長のキーパーと申します」

「あわわわっ、こっ、こちらこそ初めまして。シっ、シンディと申しまぁうっ!」

 

 ピシッと礼儀正しく綺麗な礼をするキーパーに慌てて自分も自己紹介をするシンディだが、勢い余ってテーブルに頭をぶつけてしまった。

 痛がるよりも恥ずかしさが勝ってしまったシンディはササッとソファの後ろに隠れてしまう。

 キーパーは汗を拭き案内係のお姉さんに入れてもらった紅茶を一口飲み気を落ち着かせると、懐から袋を取り出しルート達の目の前に置く。

 

「まずは皆さん、魔人討伐とエヌルト殿救出、大変お疲れさまでした。あの後議会で話し合い、皆さんの活躍に見合った報酬を用意しました、お受け取りください」

 

 渡された袋の中には中々の量の大金貨が入っていた。

 

「全部で800万ゴールド入っています。お一人200万ゴールドずつですね」

 

 800万ゴールド、大金貨1枚で10万ゴールドだから80枚入ってるのか・・・凄いな。

 

「ありがたいんですけど・・・多くないですか?」

 

 たまらずメアリーがキーパーに聞くが確かに多いと思う。

 実際魔人は倒したが、その後グランツという別の魔人に殺られそうになったわけだし、今回の場合良くて100万ゴールドが妥当じゃないのかな・・・

 

「いえいえ、魔人の脅威は皆さんが思っているより大きいのです。我が国は皆さんのような優秀な冒険者と今後とも良き関係を築いていくためにも今回はこれくらいが妥当だと判断しました。・・・というのは建前でして、エヌルト殿を始めその父ボイル子爵からも余罪が出てきまして・・・あの事件のお陰で我が国の汚点を発見できたということでその貢献分として報酬の増額をさせていただいたのです・・・」

 

 一応個室なのだが、最後の方は小声で教えてくれた。

 貴族ということで揉み消されるかもと思っていたのだが・・・国の上層部はまともなようで安心したな。

 

「ボイル子爵家はどうなるんですか?」

「まず御家取り潰しは間違いないでしょう。己の私欲のために大勢の命を無駄に散らせた罪はそれだけ重いですから」

 

 貴族にとって御家取り潰しは結構重い罰の筈、特に欲にまみれた連中にとっては相当堪える筈だ。

 そうですか・・・と納得していると、まだ話は終わりではないと話を続ける。

 

「そちらのシンディさんも関わったでしょう大臣によるロバート殿下暗殺未遂、こちらの件をしばらく公言しないで頂きたいのです」

 

 何でも、大臣という国の上層部に裏切り者が出てその調査を行うにあたり、他に裏切り者がいた場合今回の件で警戒されては調査をしにくくなるかららしい。

 騎士団の中でも信用できる限られた人間にしか真実は知らされていないようで、表向きには大臣も被害者で現在は怪我の治療のため休職中とされているらしい。

 

「無事調査が完了しましたら改めて報酬と勲章を授与する予定ですのでその時はまたお呼びしますね」

 

 ではごゆっくり、と残った紅茶を飲み干し次の仕事へと颯爽と向かっていったキーパー。

 副団長という偉い立場になっても大変なんだな・・・・・

 頑張るキーパーに心の中で敬礼をし、自分達も部屋を出る。

 

「あっ、お待ちを・・・・・こちらをどうぞ」

 

 出口に向かう自分達を案内係のお姉さんが呼び止め、懐から1枚の紙を差し出してきた。

 

「まだ宿が決まっておりませんでしたらこちらをお使いください」

 

 差し出されたのは宿の宿泊券、見た感じ結構良いところの宿のようだ。

 

「いいんですか?」

「こちらも今回の報酬の一部ですので」

 

 王都に着いたら最初に来てほしいというのにはこういう理由があったのか・・・なかなか、いやかなり気が利く人だ。

 

「このあと直ぐに連絡をして二部屋お取りしておきますので、夕方ごろにお伺いしていただければ問題なくお泊まりいただけます」

 

 つまりお昼ご飯を食べて軽く観光をしてから宿に向かえば良いわけか・・・

 

「色々すみません」

「いえいえお気になさらずに・・・宿泊期間は・・・7日ほどでよろしいですか?」

 

 7日も良いのか・・・久々にぐっすり眠れそうだな。

 

「そんなにですか!?」

 

 メアリーがあまりの待遇の良さにいつものクールさを維持しきれていない。

 メアリーのこんなオーバーリアクション久しぶりに見たな。

 

「あっ、勿論気に入らなければ7日も泊まらなくてもよろしいですよ?おっしゃって頂ければ別の宿を──」

「いえ、十分すぎます!」

 

 無事に宿をゲット出来た、となれば安心してお昼ご飯を食べられる。

 さて、初トレス王国王都・・・うまいものがひしめくこの巣窟、いったい何を食してやろうか!!

 

 

 

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