Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第56話 シンディ、冒険者に

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 う・・・うまいっ!!こんなに美味しいものがまだあったとは・・・!

 

 ラーメンを食べ終えた一同は、少しお腹を落ち着かせてからデザートである『杏仁豆腐』を食べていた。

 元々甘い物好きのルートは一つ目をマッハで完食し、これまたマッハで追加を頼みまた完食するという行動を既に三度終えていた。

 

「あんまり張り切って食べすぎるんじゃないよ?」

「大丈夫だよメアリー、デザートは別腹さ!それに・・・聞くところによるとこの杏仁豆腐、なんでも体に良いらしいじゃない」

 

 確かに、杏仁豆腐とは薬膳料理の一種で喘息などに良いとされているが、あくまで喉に効く薬であって、いくら多く食べても疲れを取る働きも無ければ消化を助ける働きも無い。

 

「はぁ、しょうがないね・・・それで最後にするんだよ?」

 

 驚きの表情で挙げかけた右腕を力なく降ろしていく、恐らく五つ目を頼もうとしていたのだろう。

 ルートは過去にも甘いものを食べ過ぎて動けなくなった経験が何度もあるのだ。

 メアリーはいつも迷惑をかけられていた側なので早めに釘を指しておく。

 苦悶の声を出しつついつもいつも満足げな顔をして倒れているルートを店から引き摺って帰っているのは誰だと思っているのか・・・。

 まったく・・・二人だけなのならともかく今は団体行動中なのだから少しは自重してほしいものだ。

 

 

 ショボくれるルートを連れて店を出る。

 宿に向かうにはまだ時間があるがどうしようか・・・

 

「ルート、このあとどうするんだい?」

「うん、冒険者ギルドに寄ってシンディの登録をしておこうかなって」

「私のですか?」

「本当はリンベルでやっておいた方が良かったんだけど忘れててさ」

 

 冒険者になるためには冒険者ギルドでの登録が必要、5才の子供でも知っている一般常識である。

 しかし、シンディはルート達の旅に〝ついてきた〟だけだったので冒険者登録をし忘れていたのだ。

 

「ちょっと待っとくれよ、シンディは冒険者になるのかい?」

 

 そういえばシンディにはまだ冒険者になりたいかどうか聞いていなかった。

 ぬるっと旅仲間に加わったので気付かなかったのだ。

 

「危険も多いし無理しなくていいんだよ?」

「う~~~ん・・・・・やります・・・私、皆と冒険したいです!!」

 

 どうやら意思は決まったようだ。

 

「おっ、俺っちもなりたいッス!!」

「ロックは無理だよ・・・まだ成人じゃないし」

 

 ガーン!とショックを受け項垂れるロック。

 だが仕方ない、冒険者になるために唯一必要な条件、それが年齢なのだから。

 成人、つまり15才を越えていないと冒険者にはなれない、これは世界共通の決まり事であり誰もが従うしかないのだ。

 

 落ち込むロックを宥めて冒険者ギルドへと向かう。

 大通りの目立つ場所に建っており遠目からでも直ぐに分かった。

 昼食時間を過ぎ、中は多くの人で賑わっている。

 いい依頼が無いかクエストボードを囲む冒険者達をすり抜け、受付へと並ぶ列に加わる。

 全員で並ぶ必要はないのでルートとシンディだけが並び、メアリー達は壁際の待合席に座って待つことに。

 少し待ったが、順調に列は進みいよいよ自分達の番が来た。

 

「お待たせしました、ご用件をお伺いします」

「彼女の冒険者登録をお願いします」

「かしこまりました。それではまず、こちらの水晶に手を乗せてください」

 

 そう言って受付嬢が机の上に出したのは一つの白い水晶、これは手を乗せた人物が15才かどうかを判別できる魔導具だ。

 15才以上なら青く光り、以下なら赤く光る。

 シンディは今15才なので問題なく青い光が灯る。

 

「はい、確認いたしました。では次にこちらの用紙に必要事項をご記入下さい」

 

 続いて受付嬢が差し出した用紙に名前や生年月日など基本事項を書き込んでいく。

 この辺は偽名や嘘を書く人達もいるが、シンディは別にやましいこともないので正式なのを記入する。

 過去に薄ら暗い経歴を持つ者がそれを隠すために嘘を書くこともあるが、冒険者には複雑な事情を持つ者も少なくないため、その辺りはギルド側も黙認している。

 次は職業(ジョブ)、シンディは蹴り技を使うから格闘家あたりかな?

 ここは嘘を書く人はあまりいない。

 というのも、臨時でパーティを組む際前衛が欲しくて剣士を引き入れたのに、それが本当は回復役(ヒーラー)だったのでは最悪全滅する可能性だってある。

 下手すれば自分の命まで危うくするというのに、そんな奴はいないだろう。

 さて、必要事項はこんなものだな。

 

「書けました」

「確認いたします・・・はい、大丈夫です。パーティは組まれますか?」

 

 パーティにはメリットもデメリットもある。

 メリットとしては、メンバーで一番ランクが高い人と同じランクのクエストを受けられること。

 更にメンバーの半数以上が同ランクなら一つ上のランクを受注出来る。

 つまり4人パーティのうち2人がBランク冒険者なら一つ上のAランクのクエストを受けられるのだ。

 デメリットとしては、働き度合いが違っても報酬が等しく分配されること、これは臨時パーティでも同じシステムなので文句が出ることが多い。

 まぁパーティを組むくらい仲が良いのであれば不満なんて滅多に出ないが・・・

 

「あっ、じゃあ『三日月のゆりかご』に加入で」

 

 そう言って自分のギルドカードを差し出す。

 そのパーティのメンバーがいないと勝手に加入出来るようになってしまうので当然のチェックである。

 

「かしこまりました。それではギルドカードをお作りしますので少々お待ちください」

「・・・・・あの、ルートさん。『三日月のゆりかご』って他にどんな方がいるんですか?」

 

 受付嬢が横のモニターに情報を打ち込んでいる間にシンディが尋ねてくる。

 

「僕とメアリーだけだよ。結成して日も浅いしね・・・」

「そうですか・・・あの、名前の由来は?」

「結成しようって決めた日の夜の月が三日月でゆりかごみたいに見えただけだよ」

 

 何てことはない、最初のパーティなんてそんなものだ。

 それに名前の変更はいつでも可能だから問題ない。

 

「お待たせしました、こちらがシンディ様のギルドカードになります」

 

 序でに自分とメアリーのギルドカードにシンディがパーティに入ったという情報も書き込んでもらい、丁寧な接客をしてくれたお姉さんにお礼を言ってギルドを出る。

 

 

「はぁ~~~~・・・・・・」

 

 ギルドを出てからもキラキラとした目で自分のギルドカードを見つめるシンディ。

 ランクは当然Gランクから、試験を受ければ飛び級で少し上のランクから始められたりもするが、シンディは旅すら初めての町娘なのでこれからゆっくりと教えていこうと思う。

 自分も早く成人して冒険者になってやると息巻くロックの機嫌を何とか宥め、一同は街の観光を行うことに。

 

「よしっ!ここは俺に任せな!」

 

 この中で唯一何度も王都を訪れているというエリアルドが案内役を買って出た。

 初王都だし、ここは素直に経験者に案内してもらうとしよう。

 

 

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