Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第61話 警鐘、鳴る

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 チュンチュンと鳴く鳥の囀りとカーテンの隙間から射す陽の光がもう朝であることを伝えてくる。

 

「・・・・・んっ・・・んぅぅぅ・・・・・」

 

 未だ完全に夢の世界からは抜け出せておらず瞼を開ける力が湧いてこない。

 どうやら自身の身体はもう少しこの至福の微睡みを楽しんでいたいようだ。

 超絶フカフカの高級ベッド、適度に保たれた室温、主張し過ぎず安らぎを与えてくれるアロマ、お腹の上にのし掛かる重く硬いクッション・・・・・クッション?

 

「くがぁぁぁぁ~~~、ぐごぉぉぉ~~~」

 

 違和感を感じ目を開けお腹を見ると・・・乗っかっているのはクッションではなく鍛え上げられた逞しい足、そのまま視線を横にずらすと気持ち良さそうに眠るエリアルドの姿が。

 相変わらずの寝相の悪さで己のベッドから落ちるだけでは飽きたらず、隣のベッドで寝ている自分に足を乗っけておいて素知らぬ顔で熟睡とは・・・・・。

 

「フンッ!『ギュッ』」

「アガァッ!?」

 

 寝顔が何となくムカついたのでとりあえず足のツボを押しておく。

 もちろん肩こり腰痛に効くなんて体にいいものではなく、師匠直伝『ただ痛いだけのタメにならないツボ100選』のうちのひとつだ。

 使い道はないと思っていたがまさかこんなところで使えるとは・・・。

 

 エリアルドの悲鳴を目覚まし代わりにロックも起きてきたので自分もベッドから出る。

 本当はもう少し布団にくるまっていたかったがメアリー達と朝食を取らなければいけないので渋々起きる。

 

 

「エリアルドの悲鳴が聞こえたけど・・・朝から何してたんだい?」

「さぁ、寝ぼけてベッドから落ちたんじゃない?」

 

 流石いい宿だけあって朝食も豪華だ。

 量は多くないが体を内側から目覚めさせ且つ活力を与えてくれる・・・ような気がする。

 

「ふーん・・・で、今日はどうするんだい?」

 

 エリアルドがベッドから落ちたことには興味ないのか、今日のこれからの予定を聞いてくる。

 

「シンディに簡単な依頼をやってもらおうかな?せっかく冒険者登録したんだしね」

「まぁ早めに慣れておいた方がいいかもね」

「ハイハイ!俺っちも今のうちに慣れておきたいッス!!」

「・・・なんかまだ足が痛ぇな・・・・何でだ?」

 

 

 

 と、いうわけで再び冒険者ギルドにやって来た。

 今日は冒険者登録をしに来たわけではない、新米冒険者シンディに冒険者としての基礎を学ばせるために来たのだ。

 

「先ずは依頼を受ける。Gランクだと・・・この辺りかな?この中から好きなのを選んで」

 

 冒険者のランクによって選べる依頼の質も変わってくる。

 高ランク冒険者はより高ランクの依頼を受けられ、逆に低ランク冒険者は報酬の少ない低ランクの依頼しか受けられない。

 AランクならAランクまでの依頼を、DランクならDランクの依頼までしか選べないように決められている。

 パーティーで挑むのならひとつ上のランクまで受けることが可能だがそれにも受付の許可が必要だ。

 これは決して嫌がらせではなく、自分の実力を過信した冒険者が無駄に命を散らせないようにするためのルールである。

 たまにいるのだ、早く上のランクに上がろうと依頼書をよく読まずに無謀をする冒険者が。

 同じランクの依頼でもその土地の地形や気候、生息するモンスター、数、冒険者自身との相性、全て違う。

 高ランク冒険者になるために必要なのは強さだけではない、己の力量を正確に把握する力こそ必要なのだ。

 

「う~んと・・・やっぱり討伐系の方がいいんですよね?」

「採取系はいつでも出来るからね」

 

 討伐依頼は文字通りモンスターの討伐が仕事である。

 冒険者代名詞であり、冒険者の大多数がこちらを主とし活動している。

 その魅力はなんといっても報酬と名誉だろう。

 実力さえあれば、それこそ下手な貴族より地位も財産も手に入れられる。

 本来血筋でしか手に入れられないものを自らの手で掴み取ることが出来る。

 だからこそ皆危険を顧みず夢に向かって挑んでいくのだ。

 それに比べて採取系の依頼を主として活動している冒険者は少ない。

 討伐系と比べて危険は少ないがその分報酬も少なくなるのがその最たる理由だろう。

 場所によっては十分危険なのだがあくまで目的は目標の採取であるため、モンスターと出会ったからといって必ずしも戦わなければいけないということはない。

 そもそも、この採取系の依頼は力のない新人冒険者が基礎的な経験を積めるようにと用意されたのが始まりであり、力もあり経験豊富な玄人冒険者は指名依頼でもない限り滅多に受けない。

 現に今もルート達の横の方でモンスター討伐依頼の用紙を巡る熾烈な争いが行われており、採取依頼の用紙はほとんど見向きもされていない。

 他にも護衛任務、探索任務、食料の納品依頼等があるがこちらはそこそこ需要がある。

 特に食料の納品依頼は未成人の小遣い稼ぎなどに最適らしい。

 

「えっとじゃあ、これにします!」

 

 シンディが元気にくるっと回り、選んだ依頼書を見せてくれる。

 

「ゴブリン討伐か」

「はい!」

 

 ゴブリン討伐は一番オーソドックスな選択であると言える。

 恐らく殆どの冒険者が新人の頃に戦っているモンスターであるゴブリン。

 下級モンスターの割にそこそこ高い知能を有し、人間を真似て武器や衣服を身につける。

 時にはトラップなども設置してくる小賢しい連中だ。

 単体では雑魚同然だが集団に出会うとなかなか厄介で、新人冒険者の死亡率の多くにこいつが関わっている。

 

「依頼内容もしっかり確認してね」

「はい!え~と・・・討伐達成数は5体、出現場所は王都近くの森、報酬は1000ゴールドで追加討伐1体につきプラス100ゴールド・・・です!」

 

 依頼内容に必死に目を通す姿は実に初々しい。

 だがやっぱりゴブリン討伐は報酬が安いな。

 

「討伐証明部位はどこか分かる?」

「えっと、右耳です!」

「よろしい、じゃあ早速いこうか?」

「はい!」

「俺っちもやってやるッス!」

 

 シンディは新人冒険者として、ロックは冒険者になる前の予習としてやる気に満ち溢れている。

 未だ汚れのないピュアな心意気は少しだけ羨ましくもある。

 

 

『ゴォォォンッ!ゴォォォンッ!ゴォォォンッ!』

 

 

 突如として鳴り響く街の鐘。

 これはこの王都に危機が訪れていると知らせる非常用の警鐘だ。

 といっても実際に鳴っているところなんて初めて見たぞ。

 

「失礼する!先刻王都周辺に大量のモンスターが出現した!この事態に対しトレス王国騎士団より冒険者ギルドに緊急クエストを要請された!」

「大量のモンスター?数は?」

「・・・・・おおよそ、1万・・・」

 

 ギルド内にどよめきが広がる。

 普通モンスターが1万も集まるなんてことありえない。

 皆それを理解しているからこそこの事態の異常さが分かってしまう。

 

「種類は!?」

「ゴブリン、オーク、トロール、サーペント、ハーピー、オーガ・・・他にもまだいると思われる!」

 

 少なくとも共闘するような種族じゃないやつらばかりだな・・・。

 こんなことが自然に起きるはずがない、となれば黒幕がいるはず・・・。

 何が狙いだ?

 

「騎士団だけで対応できないのか?」

「残念だが今王都にいる騎士だけでは市民の安全を保証できない・・・それに・・・・・」

「・・・それに?」

「ドラゴンも3体目撃されている・・・」

 

 再びどよめきがギルド内に広がる。

 冒険者でも滅多に出会うことがないドラゴンが人里に3体も・・・一体何が動いている・・・?

 

 

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