Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第74話 力の差

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 シンディから距離をとりお互いに剣を構える。

 ルートは一度深呼吸をして心を落ち着かせるとミレイクに向かって駆け出した。

 勢いをつけた切り込みはあっさりと防がれる。

 次に弾かれた勢いを利用して回転しながらの横薙ぎを放つがこれも防がれてしまう。

 ならばとミレイクの周りを高速で動き回ってフェイントをかけながら攻撃を加えていく。

 が、ミレイクにフェイントは通じずこれまた防がれてしまった。

 

「・・・出し惜しみをしている場合かね?さっきのあの力を使いたまえよ。〝氷刃(フィロ)〟」

 

 その場で剣を一振りするなり氷の斬撃が生み出されルートへと放たれた。

 体勢を低くしながらかわしてそのままこちらも剣を振るう。

 

「〝咲暗(サクラ)〟」

 

 刀から闇の魔力を纏った黒い斬撃が放たれる。

 

「この程度・・・フンッ──ッ?」

 

 こんなもの牽制にもなりはしないと軽く切断したミレイクだったがその瞬間、黒い斬撃は闇の魔力を瞬時に辺りへと飛び散らせミレイクの視界を奪い去ってしまった。

 魔力によるジャミング機能もあるようで魔力関知による位置特定も出来ない。

 まるで雲のように掴み所の無い戦術だとルートへの評価が高まるが、このまま次の手を素直に打たせてやるつもりはない。

 そう思い剣をを振るうと冷たい突風が黒靄をあっという間に押し退けてしまった。

 

「〝鬼灯突(ホオヅキ)〟!」

 

 開けた視界に映るのはこちらに向かって突きを放ってくるルートの姿。

 その刃には濃密な闇の魔力がこれでもかと纏わせてある。

 先程のようなちんけな技ではない、明確な殺意と力を込めた敵を〝仕留める〟為の技だ。

 

「次は力比べか?面白い、受けて立とう!」

 

 ルートに対抗するように剣を地面と水平に引き突きの体勢をとる。

 そして次の瞬間、両者は激突した。

 轟音と爆風が辺りを包む。

 

「・・・少年、それが精一杯かね?」

 

 両者の突きは拮抗していた。

 互いの剣先はバチバチと火花を散らし互いを貫こうとせめぎあっている。

 しかし、全力を注いでいるであろうルートに対してミレイクはまだまだ余力を残しているようで余裕の表情だ。

 

「───っ!・・・まだまだァ!」

 

 魔力をたっぷり込めた渾身の突きを瞬間的にパッと出した突きに止められたルートは無理矢理にでも魔力を上乗せしていく。

 すると、徐々にルートの刀がミレイクの剣を押し戻し始めた。

 

「ウォォォォォォォ!!」

 

 ここで押せばいける!そう思い更に力を込めていく。

 

「流石だ・・・」

 

 徐々に押し込まれるミレイクだがその顔に浮かぶのは焦りではなく笑み。

 相手を翻弄し続ける雲の如き戦術だけではない、多少無茶な戦術だろうとそれを強引にでも遂行出来るだけの力、言わば猛獣の牙を持っていることが嬉しいのだ。

 先のクレスは力任せではあったがいい(モノ)を持っていた。

 そしてルートも・・・・・。

 

「さて、では見せよう。その先の力を!」

 

 押し込んでいたルートの刀の勢いが弱くなって・・・否、ミレイクの剣が急速に力を高めている。

 剣に氷の魔力が込められていき、その冷気は剣をみるみるうちに凍てつかせていく。

 力関係が逆転したのを察したルートは咄嗟に防御体勢をとりその場で踏ん張るが、ミレイクの剣は暴力的なまでの冷気と魔力を放っている。

 

「───〝煌氷槍(ランサ・センテレオ)〟!」

 

 瞬間、辺り一帯に冷気の大爆発が起こった。

 暴風雪(ブリザード)よりも激しく冷たい爆風は一瞬のうちに木々を薙ぎ倒し、ガラスを砕き、地面を凍らせる。

 小規模ながら災害が起こったと言ってもいいだろう。

 そんな災害クラスの一撃を繰り出したミレイクは、剣を核とした氷の大槍を携えて目の前で大きく崩れる建物、正確にはその崩落の中心にいる血だらけで満身創痍なルートを見つめている。

 

「同じ手は喰わんよ」

「──何ッ!?」

 

 振り返りもせず大槍を持った右腕を軽く後ろに振るうと、今まさにミレイクを背中から撃ち抜かんとしていた光線を呆気なく打ち消し、そのまま先端部分でクレスを弾き飛ばした。

 敵を倒し最も油断したタイミングだと奇襲をかけたのにも関わらず、まるで歯牙にもかけんと軽くあしらわれ返り討ちにあったクレスはルートとは反対側の建物に叩きつけられる。

 

「君が回復魔法を使えるのは知っている。大人しくやられたフリをしていたようだが・・・彼のように気配を消しきれていなかったぞ?」

 

 クレスの方へ向き直りゆっくりと歩き始めるミレイク。

 大槍を軽く払うように振ると剣を覆っていた氷がひび割れ次々と弾けていき、再度空中で結晶化し小さな槍を形作っていく。

 

「君はもう少し力の使い方を学んだ方がいい、でなければ切り裂きジャックなど倒せはしない・・・〝氷柱(セリオン)〟」

「グアァァァァァァッ!!!」

 

 瓦礫にもたれ掛かり動けないクレスは飛来する攻撃を防ぐことも出来ず直撃を受けてしまう。

 足や腕に氷の槍が突き刺さり瓦礫に縫い付けられたクレスは堪らず意識を手放してしまった。

 

「さて・・・」

 

 再び場を静寂が支配する中、今度はルートに向き直り近づいていくミレイク。

 

「そろそろ姿を見せてもらいたいものだな・・・」

 

 見据える先は息も絶え絶えなルート一人。

 

「・・・黙りか・・・・・なら、彼が死ぬだけだ!」

 

 そう言って小さな氷の刃を作り出しルートの胸めがけて投擲する。

 誰の事を言っているのかは分からないが刃はどんどんルートに迫っていく。

 そして刃がルートの胸を貫かんとした正にその時───

 

 パァン!

 ズドォォォンッ!

 

 氷は弾かれ、お返しとばかりに鉄球が飛んできたが速度もなく当たるほどではない。

 何が起こったと朧気な瞳でルートが前を見ると二人の人物がルートを守るようにミレイクの前に立ち塞がっていた。

 

「・・・君達は・・・・・」

「・・・シンディに・・・ロック?」

 

 驚きだった。

 ロックは魔人の強さを知っているはずだし、シンディもついさっきあの力を目の当たりにしたのでここに近寄ることはしないだろうと思い込んでいた。

 二人とも小さく震えている。

 必死にミレイクを睨み付けているがやはり魔人という存在が怖くて仕方ないのだろう。

 

「何してるんだ、早く逃げて!」

「「──イヤです(ッス)!!」」

 

 ルートに背を向けミレイクを見据えたままシンディとロックは続ける。

 

「そんなボロボロなルートさんを見捨てられる訳ないじゃないですか!」

「そうッス!それにここで退いたら男が廃るッスよ!」

 

 まずい、早く二人をここから遠ざけなければ巻き添えをくってしまう。

 そう考えているとどこからか炎の下級魔法であるファイヤーボールがミレイクに襲いかかった。

 顔色ひとつ変えず防ぐミレイクだったが今度は別の場所から矢が、また別の場所からは雷撃が飛んでくる。

 

「まったく、邪魔者が多いな・・・〝氷柱(セリオン)〟!」

 

 ミレイクの周囲に氷の槍が浮かび上がり、攻撃をして来たそれぞれに向かって飛んでいった。

 各所から叫び声があがり気配が消えた・・・どうやらやられてしまったようだ。

 出来ればもう少し人数が揃ってから攻撃に移ってほしかったのだが・・・やはり街中に騎士はほとんど残されていなかったのかもしれない。

 というのも、実は先程シンとネイと一緒に騎士三人も連れ出していた際、仲間を呼んで援護をしてくれるように頼んでいたのだ。

 その隙を狙って魔人を仕留めようと思っていたのだが・・・自分とクレスはやられ計画は崩れてしまった。

 

「この場に騎士達も集まりだしたようだな・・・丁度いい、力の差を分かりやすく教えてあげよう」

 

 瞬間、ミレイクから暴風とも言えるほどの底冷えする魔力が辺りに溢れ出す。

 

「〝氷河(グラシアール)〟!」

 

 バァキィィィィィィィィンッ!!

 一瞬、魔力による風を受け瞬きをしたほんの一瞬であった。

 膨大な魔力と冷気により、周りの建物や道を巻き込み高さ数十メートル、厚さ十数メートルにもなる巨大な壁が自分達を中心に円を描くようにしてまるっと囲いこんでしまった。

 

「これで邪魔は入らない」

 

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