Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第83話 お土産

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 子供達の視線はもれなくクレスの持ってきた大袋に注がれている。

 孤児院に帰ってくる度にお土産を用意してきてくれるので最早恒例行事と言える。

 しかし今回はいつもよりも圧倒的に量が多い。

 それは中に入っているであろう品々の形に歪んだ袋の形状を見ても明らかだ。

 今回は個々へのお土産も1つ2つでは足りないかもしれない。

 というのも、クレスはマジックバッグを複数所持しているので大抵の品は収納できてしまうのだ。

 例えショッピング好きのマダムの荷物持ちをやったとしても、馬車の中に収まる程度の荷物くらいなら持ち運びに苦労はしない。

 そんなクレスが荷物を()()()やって来た。

 きっとマジックバッグにも収まらないほどお土産を買いまくったに違いない。

 そうなんでしょう?とナタリー含め孤児院の全員がそう視線で訴えかける。

 

「あぁそうだ!ムカつくことがあったからヤケ買いした!」

 

 そう堂々と開き直るなり腰に下げたマジックバックから次々とお土産を取り出し始める。

 両手を使い左右それぞれのポーチから取り出す様はまるで何かを舞っているかのようだ。

 

「・・・・ハッ!──わ、私達もやるわよ!」

 

 クレスの舞?に呑まれていた子供達だったが、いち早く正気に戻ったテイラーの掛け声により、現在自分達が囲い込んでいる大袋内に捕らわれているであろうお土産達の救出作業へと意気込んで向かっていく。

 

 数分後、大部屋には4つの小山が出来上がっていた。

 子供達は出しても出しても中身の詰まった状態が続く大袋との格闘を終えて疲労からダウンしている。

 クレスは、計3つものマジックバッグを空にした結果を見て感慨にふけり呟く。

 

「・・・う~む・・・流石に多かったかな・・・・・」

「買い過ぎです!!」

 

 唯一お土産を出す作業に参加していなかったナタリーの叫びが孤児院内に響き渡る。

 

「新手のテロですか!?どれだけ買い込んでいるんです!・・・大体あなたという人は・・・・・」

 

 悪いという意識はあるのか、クレスは目を逸らし頬をポリポリと掻いている。

 そしてこれから始まる説教を想像し溜め息を吐くのだった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

「シスター、これは?」

「それはこっちへ・・・オーリー!飽きたからといってサボってはいけませんよ!」

 

 今やっているのは仕分け作業だ。

 何せこの量、買った本人のクレスも何がどれだけあるかを把握できていないため、食料、衣類、個人への物など、一度キッチリと整理しなければならない。

 さっきまで床の上で伸びていた子供達だったが、クレスがナタリーから説教を受けている間に復活していた。

 その代わりに今度はクレスがやつれた顔をしているが、それは自業自得なのでしょうがないと皆気にせず作業をつづけていく。

 

「食料品だけでも凄い量ね・・・」

「肉がいっぱいだぜぇぇぇ!!」

「ん、フルーツもいっぱい」

「シスター!ぼくも料理手伝うからね!」

 

 整理してみて改めて分かる物量にテイラーは驚きを通り越して最早呆れ果てている。

 逆に無邪気組であるオーリー、クエン、アルマは今まで見たことない食材の山に目を輝かせて喜んでいる。

 

「はぁ~・・・日持ちしない物は早めに食べるにしてもこの量、とても私達だけでは食べきれませんね・・・」

 

 ナタリーは目の前の食材達の対処に頭を悩ませる。

 

「ある程度はブルムの町にお裾分けに持って行くとして・・・」

 

 肉と魚、特に肉はクレスが倒したモンスターの分も入っているので凄く多い。

 このままではここら一帯が肉や魚の腐臭で覆われてしまうのは必至。

 

「・・・仕方ありません。オーリー、エッセル、荷車を出してきてください。今から町に行きます」

「お裾分けに行くのシスター?」

「えぇ、ついでに塩、酢、砂糖も買いに行きましょう」

 

 下から見上げるユノの頭を撫でるナタリーの顔は微笑んでいたが、クレスや子供達には分かる、あれはやる気の目だと。

 あの目になった時のナタリーはなかなか人使いが荒くなるのだ。

 

「何で塩とかが必要なんだ?それならここにもあるん・・・」

「この量の保存食を作るのにここにある調味料だけで足りるわけないでしょう!」

 

 干物、塩漬け、燻製、酢漬け、ジャムなどの保存食を作ろうとすれば当然食材の他にも調味料が必要になってくる。

 塩漬けには塩が、酢漬けには酢が必要なのだが・・・何せこの山だ、必要な調味料も半端ない量になるだろう。

 勿論この孤児院に蓄えている調味料では全く足りない。

 となれば買ってこなければならない。大量に。

 

「オーリー、ペーター、ユノは私に着いてきてください。クレス、エッセル、アルマ、クエン、テイラーは食材の下ごしらえと器具の準備をお願いします」

 

 手早くナタリーが指示を出すなり皆が一斉に動き出す。

 いつもは文句をぶーたれるオーリーも、やる気モードのナタリーには一切の異論は唱えない。怖いから。

 ちなみにこの人選だが、ユノはまだ小さいからナタリーが保護者として同行するとして、何故オーリーとペーターが選ばれたのか?

 それは二人が料理などのもの作りに向いていないからである。

 オーリーは冒険者志望だけあって剣の扱いには慣れている。

 しかし性格のせいかあらゆる行動がパワフルになりがちで、卵すらまともに割れない不器用さんなのだ。

 物は壊す人とは揉めるという院内一のトラブルメーカーがいては、大量の食材も生ゴミと化してしまうだろうという賢い判断である。

 次にペーターだが、決してオーリーのように不器用というわけではない。

 ただ非力すぎるのだ。

 普段から孤児院に引き籠って本ばかり読み耽っているペーターは、元々体も痩せ細っているのに運動もしないので体力が全くない。

 院内の誰よりも運動神経が悪く、腕力も5つ年下のユノとどっこいどっこいという情けなさ。

 そんな彼が大量の食材を捌く、干す、漬けるなど体力がもつ筈がない。

 多少なりとも体力をつけるいい機会ではあるのだが、生物相手で時間をかけてはいられないということで今回は戦力からは外れてもらった。

 まぁ大量の荷を積んだ荷車を引くのも結構な仕事だとは思うが、そこは一応オーリーもいるので問題はないだろう。

 ペーター本人は嫌そうな顔で溜め息を吐いているが、勉強の為には適度な運動も効果的なのだとクエンが肩に手を置き励ましている。

 

「こんなことになるならちょっとでも体を鍛えておけばよかったな・・・」

 

 そう溢すペーターの目尻に浮かんだ滴は、きっと数時間後ぐったりとしているであろう自分の姿を思い浮かべたから出てきたに違いない。

 ・・・ちょっとしたウォーキングから始めてみようかな?次回を見越してそう思ったペーターだった。

 

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