Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第84話 竈作り

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「では行ってきます。テイラー、留守を頼みますね?」

「アルマもいるし大丈夫よ、任せてシスター」

「任せて、シスター!」

 

 せっせと10分ほどで荷積みを終えた荷車をオーリーが前からメインで引き、ナタリーとペーターが横に着く形で町へと向かっていく。

 ユノはまだ小さいので荷台に乗せられたようだ。

 結構な大荷物だがオーリーが引いているからか、孤児院から遠ざかるその姿はどんどん小さくなっていく。

 あのスピードなら1時間もあれば帰って来るだろう。

 

「さて、それじゃあ始めるわよ!」

「おぉーーっ!!」

 

 テイラーの号令にアルマが元気良く拳を突き上げる。

 横を見ればアルマ程ではないにせよ、クエンもエッセルもそれなりのテンションで拳を掲げていた。

 皆のノリに若干戸惑いはしたが、場の雰囲気を壊してはいけないだろうとクレスは一応拳を掲げておくことにした。

 

「とりあえず2班に別れるわよ。私とアルマ、エッセルは食材の下ごしらえ、クエンとクレス(にい)は竈と燻製器の準備を、はい始め!」

 

 パンッとテイラーが手を叩くと同時に皆が一斉に動き出す。

 テイラーとアルマとエッセルは大部屋へと戻り、食材を調理場へと次々運んでいく。

 

「ん、クレス兄、私達はこっち・・・」

 

 3人のテキパキとした手際に感心しているとクエンに服を引っ張られ、そのまま裏庭へと連れていかれた。

 

「さて、俺達は何から始める?」

「ん、もう決めてる・・・」

 

 そう言うと、クエンはおもむろに手頃な木の棒きれを拾い地面に円を書き始めた。

 1つ書き終えるとその横に少し離してまた円を書いていく。

 大体1メートル間隔で計5つの円を書き終えたところで棒きれを置いた。

 

「まずは竈を作る、クレス兄は石を集めてきて・・・」

 

 成る程、自分が材料となる石を集めクエンがそれを組み立てて竈を作るというわけか。

 力の配分的にも正しい判断だと言えるだろう。

 

「よし任せろ!」

「ん、なるべく角張ったのをお願い・・・」

 

 上に鍋や食材を乗せるのだ、つるつるしたやつじゃ組み立てにくいし滑って危ないということだな。

 安心しろ、野宿でも自炊はしないがそのくらいは理解してるぜ。

 

◇◇◇◇◇

 

「ほぉ、大したもんだな」

 

 2往復目の石運びでクエンの元に戻ると、そこには立派な石造りの竈が出来上がっていた。

 1度目の石を持ってきてからまだ5分程度しか経っていないのだが、この作成スピードは流石としか言いようがない。

 絵が上手いのは知っていたから芸術センスがあるのは分かっていたが、まさか工作系までいけるとは・・・。

 

「ん、たまたまいい石が揃ってただけ・・・・・ほら、もうここはいいから仕事に戻って・・・」

 

 この程度大したことではないと顔色ひとつ変えずいい放つクエンだが、クレスに褒められその頬は赤く染まっていた。

 そして照れ隠しなのかさっさとクレスを追い払ってしまう。

 

「はいはい行ってきますよ」

「・・・・・・・ん、もっと凄いの作る!」

 

 クレスの背中を見送ったクエンはひとつ気合いを入れる。

 もっと早く、もっと綺麗に、と。

 もっとクレスに褒めて貰えるように、と。

 

◇◇◇◇◇

 

 20分後、そこにはとても即席で作ったとは思えないほど立派な竈が5つ出来上がっていた。

 これだけの量の石を集めてきたクレスも凄いが、それをここまでのクオリティに仕上げたクエンの技量は天晴れと言うしかないだろう。

 

「おつかれさん・・・ほれっ」

「ん、・・・ちょっと頑張りすぎた・・・」

 

 流石に疲れたのか、その場で可愛くちょこんと座り込みクレスから水を受け取る。

 

「後は俺がやっとくから暫く休んでろ」

「ん、ならちょっとだけ休ませてもらう・・・」

 

 じんわりと汗をかき火照った体を冷ますように、吹き抜ける風を全身で受け止める。

 涼しい風がなんとも心地よい。

 

「うしっ、やるか」

 

 今度は自分の番だと気合いを入れるクレスの横には木の枝が山積みにされていた。

 これらはクエンが5つ目の竈を制作している時、手が空いたクレスが火をくべる用にと森で拾ってきた薪の代わりである。

 大量の食材を調理することになるので、これまた大量に拾ってきた。

 それらを手早く竈に詰めると早速得意の火魔法で点火しようとする。

 

「───待ってクレス兄!先にお鍋とお水!」

 

 もう少しこの余韻に浸っていたいクエンだったがどうやら休ませてはもらえないらしい。

 

「おおっ!そうだったな、ちょっと鍋取ってくる」

「ん、・・・・・お鍋の場所、分かる?」

「・・・・・・・着いてきてもらおうか・・・」

 

◇◇◇◇◇

 

 調理場(そこ)は正に戦場だった。

 刃が肉を切り裂き血風が鼻腔をくすぐる。

 

「アルマ!こっちは大体片付いたわ!」

「じゃあそのままハムとベーコン準備に取り掛かかって!エッセル兄!そっちはどう?」

「こっちはもう少しかかりそうだ!」

「オッケー!終わったら先に水煮に移って!」

 

 額に浮き出た汗を拭うこともせず、ただひたすらに目の前の食材達を捌いていく戦士3人がそこにはいた。

 生臭さすらものともせず、いくら汚れようが気にも留めないその姿は純粋にかっこいいと言えるだろう。

 少なくともクレスはそう感じた。

 

「ん、クレス兄、大きい鍋はここ・・・」

 

 そう言って調理場横の倉庫から自身の身の丈の半分以上はある大きな鍋を抱えたクエンが、調理場の様子に見惚れるクレスを急かす。

 

「おおっ、すまん!」

 

 クエンに言われ、自分達が鍋を用意しなければこの先の調理へ進めないことを思い出し、急いで鍋を抱え竈へと走っていく。

 

「クエン!そっちはどう?」

「ん、竈は出来た、燻製器はこれから・・・」

「流石早いわね!なら先ずは水煮から始めましょう!」

 

 テイラーとクエンが互いの作業の進行状況を確認し合う。

 方針が決まりクエンが竈へと戻ると、クレスがセットし終えた鍋に井戸から汲んできた水を入れていた。

 

「うしっ、こっちはセット完了だ。次は?」

「ん、火を入れるの・・・」

「よっしゃ、任せろ!」

 

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