Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第89話 お土産披露①

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 孤児院に入るなり、子供達は一斉に自分へのお土産の元へと走り出した。

 最初のうちに個人別に仕分けてはいたのできちんと自分の分だけを確保していく。

 しかし直ぐには開けず、皆図ったように大部屋の中央付近へとお土産を移動し始めた。

 あっという間に出来上がったのはお土産による輪、各々が自分のお土産の前に座っている。

 オーリーとテイラーの間にスペースが空いているのは恐らくクレスとナタリーの位置なのだろう。

 見ればテイラーの横にナタリーの分のお土産がちゃっかり配置されている。

 取り敢えず子供達に倣って定位置に座る。

 

「さて、じゃあ誰から開ける?」

「はいはいはーいっ!オレからオレから~!」

 

 たらふく肉を食べて元気をフルチャージしたオーリーが高々と手を上げる。

 そして一方的にそう宣言すると、周りの同意も得ずにお土産の包装紙を乱雑に破き中身を取り出していく。

 

「・・・おいクレス兄、これ・・・・・」

 

 さっきまでのハイテンションはどこへやら、言葉を無くし見入っているのは一本の剣だ。

 なんてことはない、どこにでもある武器屋に売っているどこにでもある普通の剣である。

 にも拘らずオーリーは、ついでに言うと隣に座っているエッセルもその鈍い輝きに眼を奪われていた。

 

「もう10才になっただろ?ならそろそろ()()()使ってもいいんじゃねぇかと思ってよ・・・エッセルにもあるぞ」

 

 それを聞いたエッセルは同じように包装紙をビリビリと破って中身を取り出す。

 そこには確かにオーリーの持つ物と同じ、武骨な一本の剣が納められていた。

 

 オーリーとエッセルはクレスのような冒険者に憧れていた。

 強く、自由、何よりかっこいい冒険者になるため、二人は我流ではあったがトレーニングを重ねてきた。

 そんな姿を見て、クレスは二人に一本ずつ剣を与えたことがある。

 今もまだ子供ではあるが当時は更に幼かったため、普通の剣ではなく子供用に短くされた短剣ではあったが。

 あれから数年、背も伸び力も付いた二人ならということで今回お土産に選んでみた。

 

「つっても安物だけどな、でも結構丈夫だから簡単には壊れねぇと思うぜ・・・あり?」

 

 昔を思い出しながら反応を窺おうと二人を見やると・・・いない。

 空き箱をその場に残し二人の姿だけが消えてしまった。

 

「はぁ・・・クレス、あそこです・・・」

 

 どこだどこだとキョロキョロしているとナタリーがため息混じりに指を指す。

 その方向はさっき串焼きをした裏庭だ。

 なんでそんな所に、と二人を見れば・・・

 

「おりゃっ!とりゃぁぁぁっ!・・・くぅぅぅ~!やっぱ本物は違うなぁ!」

「フンッ!フンッ!また一から鍛え直しだな」

 

 早速素振りや薪を使った試し切りなど、剣の取り回しを確認していた。

 あぁ、まぁやりたくなるよねぇ・・・とクレスは温かく見守っていたのだが、楽しそうに夢中で剣を振るう二人の元へツカツカと歩み寄る存在が一人。

 

 ゴツンッ!!

「コラッ!まだ途中なのに何勝手な行動してるのよ!拳骨入れるわよ!?」

「いってぇなぁぁぁ!何すんだよテイラー姉!ってかもう既に拳骨入ってんじゃねぇか!」

 

 流石は孤児院のお母さん役を務めるテイラー、見事な鉄拳制裁である。

 オーリーだけに拳骨を入れてエッセルは口頭注意で済ませているのは日頃の行いの差だろうか。

 しかし、剣を振り回しているところに躊躇なく踏み込んで行くとは大した度胸だと感心する。

 いつも泣きべそかいてはナタリーにべったりだった昔とはえらい違いである。

 立派になったと嬉しく思うべきか、それとも嫁の貰い手が来てくれるか心配するべきか・・・個人的にはもう少し子供らしくあった方が愛嬌があっていいと思うのだが、これを言うと殴られそうなので思うだけにしておこう。

 

「ほら戻って!そもそもあんたが企画したことなんだから最後まで責任持ちなさいよ!」

「へぇ~い・・・・・」

 

 たんこぶをさすりながら渋々戻ってきたオーリーと少しばつが悪い顔のエッセル。

 

「まだまだお土産はあるんだから、ほらさっさと開けて!」

 

 テイラーの言葉に口を尖らせながらも、言うとおり次々と箱を開けていく。

 中身は新しい服に靴、ダンベル等のトレーニング用品、剣術を主とした武術書といったものが入っていた。

 

「・・・ねぇクレス兄、10才男児へのお土産のチョイスとしてこれはどうなの?」

 

 服と靴のチョイスはいいと思うが問題はそのあとだ。

 ダンベルって!武術書って!どこぞの戦闘狂騎士団にでも入れる気か!

 こんなもの貰って喜ぶ子供なんていないわ!バカじゃないの!?

 ・・・とツッコミそうになったが何とかこらえる。

 

「本人は喜んでるみたいだしいいんじゃねぇか?」

「えっ!?」

 

 慌ててオーリーを見れば、右腕をダンベルで鍛え左手で武術書をめくる姿がそこにはあった。

 周りの空気など気にせず『ほぉほぉ、うん、なるほど・・・』などと一人何かを納得している。

 

「・・・ごめんなさいクレス兄、こいつがバカだって忘れてたわ・・・エッセル、続けて・・・」

 

 バカは気にするだけ無駄、即座にそう判断してエッセルにバトンを渡す。

 疲れた顔のテイラーからバトンを受け取ったエッセルは、先程のように興奮することもなくチャキチャキと箱を開封していった。

 中身はオーリーと殆ど変わらないラインナップで、強いて違いを挙げるとすれば衣類のバリエーションくらいだろうか。

 オーリーのは基本白か黒の単色の物しかないのに対し、エッセルのはほどよく鮮やかだったり、一見単色でもちゃんと胸にワンポイントがあるものが多い。

 この明らかな扱いの差に当然オーリーは意義を申し立てる。

 

「ちょっと待てよ!何でエッセルの服だけお洒落なんだよー!?」

 

 堪らず自分の衣類をかき分けてエッセルの服に対抗できるものを探すが、出てくるのは黒と白のシャツのみだった。

 ワンポイントどころか白か黒のワンカラーのシャツしか出てこないことに絶望する。

 そんな親友の痛々しい姿を見ていられなくなったのか、お洒落な服を貰ったエッセルもクレスに真意を問い質す。

 

「クレス兄、何で二人で服の種類が違うのか、僕も聞いておきたいよ」

 

 流石にオーリーが可哀想だという周りの視線を受けるが、当のクレスは悪意の欠片もない表情であっけらかんと答える。

 

「いやだって、オーリーは服なんて気にしない性格だし、それにほら・・・すぐ汚すだろ?」

 

 ・・・あぁ~・・・・・オーリーも含めたその場にいる一同が納得した。

 確かにオーリーは服に関して無頓着だ。

 少々穴が空いていようが汚れていようが気にしないし、遊んだり修行したりで泥まみれにしてはテイラーによく叱られている。

 今までどんな服を与えても等しくボロボロにしてきたオーリー。

 そんなオーリーに着られたのでは、逆に服を作ったデザイナーに申し訳ないとすら思えてくるのは考えすぎだろうか?

 

「そう考えて汚れがつきにくく落ちやすいっつーいいヤツを買ってきたんだよ。シンプルなデザインだけどエッセルのより高かったんだぞ?」

 

 デザインでは負けたが値段では勝った、それで何とか気持ちを立て直したオーリーはエッセルに『これでイーブンだな!』とでも言いたげな笑みを向ける。

 そしてテイラーもこれで日々の洗濯が楽になると『よくやった!』という顔と共にサムズアップをクレスに向けて放つ。

 開始まだ二人でこの騒ぎかとナタリーは今一度姿勢を正して長期戦を覚悟した。

 だって喜怒哀楽溢れるお土産披露会はまだまだ始まったばかりなのだから・・・。

 

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