Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第93話 お土産披露⑤

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「も、もういい時間なんだからちゃっちゃと終わらせるわよ!」

 

 確かに普段ならもう子供達はベッドに入っているべき時間だろう。

 あんなに元気いっぱいだったアルマもこくりこくりと船を漕ぎ出している。

 その都度クエンに起こされているが限界は近そうだ。

 ユノに至ってはペーターのお土産開封あたりからぐっすりだ。

 それを考慮してか素早い動作でお土産を開封していくテイラーだが、何となく口元がにやけている気がしてならない。

 なんだかんだ言ってもやはり中身が気になるのだろう。

 

 まず出てきたのは服。

 普通の村娘が着るようなごく普通の服だ。

 テイラーの着ている服はいつもだいたい一緒なので迷うことはなかった。

 決しておしゃれに興味がないわけではないのだろうが、何事も無難を求める性格故か『誰に見られても恥ずかしくない』ような服を選ぶ傾向が強いのだ。

 

「うん!派手過ぎず地味過ぎず、いい感じじゃない!」

 

 テイラーの反応は悪くない。

 代わりに床の染みから奇跡の復活を遂げたオーリーはやや不服そうだ。

 

「なぁ、なんつーか・・・普通過ぎじゃねぇ?」

「──な!・・・別にいいじゃない!私はこういう普通なのが好きなの!」

「いや、それにしてもよ~・・・どれも代わり映えしないっつーかパッとしねぇっつーか、なぁ?」

 

 先程の鉄拳が余程堪えているのか、オーリーは若干言いにくそうにアルマに同意を求めた。

 

「うん!どれも同じに見えるよね!」

「───えぇっ!!?」

 

 アルマはひとつ頷くと、満面の笑みにて実にはっきりと言い放った。

 服は気にしない派の二人にそう言われ、テイラーはショックで膝をついてしまう。

 

 自分的には〝派手過ぎず地味過ぎず〟というコンセプトの中でよく選んでいる方だと思っていた。

 色味に気を使い装飾に気を使い、今まで何着も何着も試着しては選び抜いてきた。

 それなのにこの言われようである。

 別におしゃれだと言ってほしい訳じゃない。

 自分にそこまでのファッションセンスはないし、それを自負した上で身の丈に合う物を選んでいるつもりだ。

 だがその結果がこれでは少々凹んでしまう。

 

「・・・・・なぁ、俺何か悪いこと言っちまったかなぁ・・・」

「・・・僕にフらないでくれ」

「・・・あれ、テイラー姉?テイラー姉ぇ!?」

「・・・フフフ・・・私は普通・・・私は無個性・・・私なんてただのその他大勢・・・・・」

 

 テイラーがショックで軽く壊れてしまった。

 目の端に涙を溜め自己嫌悪の言葉を吐き続けている。

 アルマが肩を揺すって正気に戻そうとするが乾いた笑いしか返ってこない。

 

「くっ、仕方ない・・・クエン!その箱を開けるんだ!」

「──ん、分かった!」

 

 このままでは会の進行もテイラーの精神も駄目になると思ったクレスは、テイラーの隣に座るクエンに大きめの箱を開けるよう指示を出した。

 少々無作法ではあるがビリビリと急いで包装紙を破いていく。

 

「──あっ!テイラー姉、あれ見て!」

「・・・私なんて・・・・・え?・・・あれ・・・・・」

 

 体を起こし顔を掴んで無理やり箱に向けさせる。

 暫くブツブツと何かを呟いていたが、〝ソレ〟を正しく認識した瞬間漸くテイラーの目に光が戻った。

 

「えっ・・・これって・・・」

「お前へのお土産だよ、テイラー」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

『バフッ』

 

 甲高い叫声を上げながらお土産へとタックルをかますテイラー。

 今の今まで死にかけの魚のように口をパクパクさせていたとは思えないほどの俊敏さである。

 テイラーの精神を一瞬で正常に、いや最高潮にまで引き戻したモノの正体は・・・〝くまのぬいぐるみ〟だった。

 大きさは大体100センチといったところだろうか。

 

「むはぁぁぁ・・・・・しあわせぇぇぇ・・・・・」

 

 ぬいぐるみをギュゥゥゥと抱き締めるテイラーの顔はとても幸せそうだ。

 普段の大人びた態度とは似ても似つかない最高の笑顔を見せる12才の少女がそこにはいた。

 

「───ハッ!ち、違うのよ!これは・・・そう!偶々私が凄い熊好きだったってだけで───!」

「ん、テイラー姉・・・『チラッ』」

「う~さ~ぎ~!」

「ん、『チラッ』」

「パ~ン~ダ~!」

 

 我に返り、今の自分の状態が如何に恥ずかしいかを悟ったテイラーは苦しい言い訳で乗りきろうとする。

 が、すかさずクエンが3、40センチとくまと比べてやや小ぶりなうさぎとパンダのぬいぐるみを箱から見せると、これまた顔を綻ばせて勢いよく飛び付いていく。

 両手一杯のモフモフ、かわいいぬいぐるみ好きな彼女にとってはまさに天国だろう。

 

「はぁぁぁ~・・・クレス兄、ありがとぉ~・・・・・」

 

 表情だけでなく心まで緩みきってしまったテイラーの口から普段言えない感謝の言葉が零れる。

 普段ツンツンと怒ってばかりのイメージだが、心の底ではこういった気持ちを持ってくれているのだろうか。

 

「テイラー、お前・・・」

「フフフフフ・・・・・──ってあれ?今私・・・・・ち、違うわよ!?あくまでぬいぐるみを買ってくれたことに対してだけだから!本当にそれだけだから!っていうか別にぬいぐるみなんて好きじゃないけどね!たまたま今回熊とうさぎとパンダっていう私の好きな動物がモデルのぬいぐるみがウンタラカンタラ・・・・・・・・・・・うぅ・・・嬉しかったわよ・・・」

 

 ぬいぐるみ天国から現実に返ってきたテイラーは今自分が無意識に口走ってしまったことを思い出して赤面してしまった。

 そして何とか誤魔化そうと口早に言い訳を出していくが、流石に苦しいのが自分でも分かったのか尻すぼみに声が小さくなっていき、最後にはぬいぐるみで顔を隠しながらも感謝の言葉を述べた。

 前回帰った時クエンやアルマにテイラーの好きなものを聞いておいたのだが、まさかここまでとは思っていなかった。

 普段お姉さんとして振る舞っている反動なのか物凄いデレだった。

 今回また迷惑をかけてしまったし、今度帰ってくるときはもっと大きなぬいぐるみをプレゼントしてあげよう。

 そう強く決意したクレスだった。

 

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