Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第94話 お土産披露⑥

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「うぅぅぅ・・・こっち見ないでぇ・・・・・」

「テイラーもこの調子ですし次にいきましょうか。次は・・・ユノですね」

「うん~」

 

 赤くなってしまった顔を皆に見られまいと必死に隠そうとするテイラーを気遣い、ナタリーは会を進行させることにした。

 順番が回ってきたユノはいつもと変わらぬ緩~い声と共に、これまたゆるゆる~と手を挙げる。

 

 今の今まで寝ていたのだが、自分の番が回って来た瞬間パチリと目を覚ましたのには驚いた。

 相変わらずマイペースな子だ。

 ・・・・・ていうかユノの声、今回帰ってきてから今初めて聞いた気がするのは・・・気のせいか?

 

「ユノ一人だと大変そうですし私も開けるの手伝いますね?」

「うん~」

 

 一人チマチマと包装紙を破こうとするユノにナタリーが助け船を出す。

 まずは勿論衣類からだ。

 と言ってもユノはまだ4才、大人が着るようなお洒落お洒落した服はない。

 それでも身体的成長を見越して、今着ている物より(ワン)サイズ程大きい服を選んである。

 

「おぉ~」

 

 目の前で服を広げたユノは恐らく感嘆であろう声を上げる。

 微妙に分かり辛いが多少目がキラキラしている気がするので喜んでいるのは間違いない・・・と思いたい。

 ナタリーも横にて笑顔でうんうんと頷いているので多分大丈夫だろう。

 

「良かったですねユノ?」

「うん~・・・・・ん?・・・んん?」

 

 突如何かを感じ取ったユノは鼻をクンクンと動かし、いつものゆるゆるっとしたマイペースさからは想像できない速度で動き出す。

 未開封の箱の前に辿り着くとその中の一つを手に取り顔を近づけ目を閉じた。

 集中した表情で黙っている姿に皆がどうしたのかと心配していると、突然カッ!と目を見開いた次の瞬間トコトコとナタリーの元へ箱を持って戻ってきた。

 

「シスター、早く早く~」

「──わ、分かりました!」

 

 ユノに急かされ箱を開けてみると・・・チョコにマシュマロ、クッキーにキャンディ、出るわ出るわお菓子の山。

 きっと子供の夢であろう『お菓子1年分』を現実にしたらこんな光景になるのだろう。

 甘ったるい香りが串焼きで満腹になった腹を刺激して体が悲鳴を上げているのが分かる。

 どうやらユノはこの甘い匂いを密閉された状態の箱から嗅ぎ取っていたらしい。

 まるで犬のようだ。クレスのみならず全員がそう思った。

 

「最後はシスターだな、ちゃっちゃと済ませて寝よぉぜぇ。ふあぁぁぁ・・・・・」

「お前、自分の分が済んでるからって・・・」

「仕方ありませんよクレス、普段ならとっくに寝ている時間なんですから」

 

 たまらず欠伸を漏らすオーリーだが彼を責めることは出来ない。

 むしろよくここまで起きていたと誉めるべきだろう。

 よく見れば子供達は皆瞼にかかる重力と必死に戦っている。

 中にはアルマとユノのように瞬殺されている者も見受けられるが、大体は睡魔に負けじとナタリーのお土産開封を待っている者ばかりだ。

 というか自分の番が終わるなり速攻眠りについたユノはある意味一番子供らしいと言えるのかもしれない。

 

「では開けますね?」

 

 最初に出てきたのは数着の黒い修道服、いつもナタリーが着ているものだ。

 というよりもこれしか着ていない。

 この黒い修道服がナタリーの普段着であり仕事着なのだ。

 当然汚れることも多いので何着か替えのものもあるのだが、汚れれば洗えばいいしほつれたのなら縫えばいいと新しく買うことはほとんどなかった。

 子供達も買おうと薦めるらしいのだが、『まだいけます、まだいけます』と毎回購入には至らないらしい。

 それなら今回プレゼントしてやろうとクレスは買ってきた。

 

「物持ちがいいのも結構だけどよ、身なりを綺麗にしとくのもシスターとしては大事な仕事なんじゃねぇか?」

「・・・えぇ、確かに。神に祈る者が汚ならしい姿をしていては失礼にあたってしまいますからね・・・あぁ神よ、私に────」

 

 別にそこまでのことは思っていないのだが・・・微妙に思い違いをしているナタリーは神へ祈りを捧げ始めてしまった。

 そもそもクレスは神など信じていない。

 白い修道服を着てはいるが、別に宗教に興味があるわけではないのだ。

 初めて孤児院(ここ)を旅立ったあの日にナタリーとアンダーソン司祭より貰ったのを切っ掛けに今日まで着続けているだけ、それこそクレスにとっての仕事着なだけなのだ。

 その点に関してはナタリーと同じ・・・いや、ひょっとしたらあの頃からナタリーに影響されていたのかもしれない。

 そんなことを考えているとナタリーのお祈りが終わった。

 少し上機嫌になったナタリーは他の箱も開けていく。

 中身は肌に塗るクリームや髪に塗る油だった。

 

「白いクリームは乾燥を防いで肌を潤す効果が、油の方は傷んだ髪を治したりツヤ出しの効果があるらしいぞ」

「まぁそれはそれは!まさかクレスがこういったものを買ってくるとは・・・」

 

 美容関係のものを選べるようになったクレスの成長にナタリーは目に涙を浮かべて喜ぶ。

 今まで美容の〝び〟の字すら出してこなかった男がここにきてこの成長である。

 ドヤ顔なのも過去の事を鑑みればこそだろう。

 

「店員のオススメはやっぱ間違いねぇな。ナタリーの情報をちょっと伝えただけで直ぐに選んでくれたよ」

「そうですか、それはさぞや良い店員さんだったのでしょう・・・」

 

 そう心の中で店員さんに感謝の言葉を告げながら商品を箱に戻していると、箱の奥に折り畳まれている一枚の紙があることに気付く。

 表には店の名前であろう文字が書かれている。

 デザインが奇抜すぎて読めはしないが恐らくはメッセージカードなのだろう。

 ひょっとしてクレスが直接口では言えないような気持ちを書いてくれたのかも、と少しドキドキしながら開く。

 

 〝お歳を取られてもまだまだこれからですよ!〟

 

 メッセージカードにはそう書かれていた。

 ナタリーの顔から一瞬にして笑顔が消える。

 

「・・・クレス?店員さんには私の事をどのように伝えたのですか?」

「え?俺が小さい頃から世話になってる人で、もう長いことシスターとして子供達の世話をしていて、皆の母親のような大人の・・・・・あれ?ナタリー?」

 

 異様な雰囲気を感じ取り横を振り向くと、神に仕える者が発してはいけないと思われる黒いオーラを身に纏ったナタリーが静かに拳を握り締めていた。

 

「・・・ナタリー・・・さん?」

 

 ゴッッッ!!

 

 クレスは床のシミとなった。

 

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