「…結局なんだったんだ」
幸広は少しげんなりした顔で体育館から教室に戻っていた
プロジェクターが真っ暗になった後、ほとんどいつもと変わりないように式は進行していった
これじゃあますます真実味がなくなってきたじゃないか
ぼんやりと空を見上げながら考える
「すげぇ!本当に写真なくなってる!」
「ほんとだ!ちゃんと撮ったの確認したのにー。」
周りの生徒が先ほどの男の写真について話しているみたいだ
本当になくなった…ということは削除されたのかその写真に男が写っていないということなのか
前者なら男の言う『記憶を消す機械』とやらはネットワークの操作もお手の物ということになる。逆に後者ならグラフィック技術の単なるトリックになるのでますますイタズラの線が濃くなるだろう
そんなことを考えてたら後ろからドンッと衝撃と共に女子の声が聞こえた
「やっほーよっちゃん!」
「…福司か。よう」
中学時代からの付き合いだが妙にウマがあい、そこそこ仲がいい女子だ
校則が緩いこの学校でも「部活の時に邪魔だから」という理由で中学校時代からずっとショートヘアのままだ
ちなみにスタイルもそこそこいい
女子のくせにコイバナとか入れてもらえないらしく、たまにしょぼくれて幸広の所でグダグダ言ってきたりする
…あ、勘違いしないでほしい。確かに付き合いは長いが、恋人とかそんなのではない
そしてさらに言うが
要するにここで恋愛するならキツいとだけ言っておこう
そんなことはさておき、
「ねえねえ!あの男の人の写真全部消えてるんだよ!何人かビデオ撮ってた人もいるんだけどあの男の人が写ってるのだけスッパリ消えてるんだって!」と由衣がマシンガンのごとくしゃべる
どうやらさっき考えていたやつは前者が正解に近そうだ
ということはそれだけネットに繋がるものは簡単に消されるということ
かなり厄介そうだな
「なあ、福司はあれ信じるか?」
「うーん…半分信じて半分信じないかなー?」
どっちだよ!
心の中で全力でツッコむ
「でもなんか今日ずっともやもやしてるんだよねー。なんか大事なこと忘れてる?感じ。なんだろ?」首をかしげながら由衣が考え込む
「知らね。夏休みの課題とか?」
そう答えながらチクリと頭が痛んだ
あれ?俺もなんか忘れてる?
「まあ課題なら後でわかるからいっかー」そう言って由衣が伸びをする
前向きでポジティブ。それが由衣のいい所だ
そうだな
そう言おうとして
『存在すら忘れてた課題がなきゃいいけどなー』
真後ろから誰かの声が後ろから聞こえた
言葉を飲み込んで後ろを振り返る
「どしたの?」急に止まった幸広に由衣が不思議そうに言った
「…いや、なんでもない」
すぐに前を向き歩き始めた
後ろには誰もいなかった
でもどこか懐かしい声だった気がした
* * * * * *
教室に帰ったら簡単なホームルームが行われた
これも毎回の恒例行事
そこでさっきの男の分について書かれたプリントが配られた
とはいっても内容はあの男が言ったことと変わらない
いくつか学校側が追加で注意を足したようだ
中には男が言ってなかったことも含まれていたから事前に学校側にコンタクトをとっていたのかもしれない
・基本的にあの男から生徒に対して直接的危害はないと約束されたが念のため気をつけること
・もし少しでも消された生徒を思い出すことができれば先生にできるだけ話すこと
・人の命がかかっているかもしれないため、できるだけ参加してほしいこと
・もし、
ということらしい
あとは担任が授業を頑張ってほしいだの課題はちゃんと提出期限までに出しましょうなど毎回おなじみのことをしゃべって終わった
そして生徒vs男の攻防が幕をきって落とされた
まあ本気にとってないやつと非日常でテンションが上がってるやつしかいなかったけどな
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