GOD EATER -the last blood-   作:ポラーシュターン

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赤染の狼 -5-

3体の神融種に囲まれている。

 

それだけでも絶望的だというのに、

既に、先程まで撒いていたガルムにまで追いつかれてしまっていた。

 

その場には計5体の中型以上のアラガミがいて、

それらは全てマルドゥークの支配下にある。

 

勝てる見込みはほぼ、無いと言ってよかった。

 

「・・・コレット嬢、スタングレネードは?」

 

背中合わせに円陣を組み、お互いを守り合っていると、エミールが小声で訊いてくる。

 

「あと1個しかない。ガルムはさっき使ったし、

ラーヴァナには元からほとんど効かない」

 

加えてあの仮面では、恐らく一切効かないと言っても間違いではないだろう。

 

ぐぬう、とエミールはそのまま唸っていた。

 

「突破も無理、撃破も無理、逃走も・・・無理だなこれは」

 

「・・・どうするの、リヴィさん」

エリナの心配そうな声。

 

・・・おかしかったのは、自分の身ではなく、

リヴィが何を言うのか心配そうだったことだ。

 

リヴィはちょっと微笑んでから、それを口にする。

 

「・・・まずは、死なないことだけ考えよう」

 

その言葉に、エリナはほんの少しだけ、嬉しそうに頷いていた。

 

 

 

小競り合いに終始していたとはいえ、

マルドゥーク、ガルム2体、ラーヴァナ神融種ときて、

三人ともがここまでほとんど負傷せずに来られたのは正直に言って、奇跡に近かった。

 

その全てが一堂に会したこの場で、それを維持できるのかどうか。

 

培ってきたゴッドイーターの経験を、極限まで活かす時だった。

 

「・・・ふっ!」

気迫と共に声を漏らしながら、深紅の鎌を振るう。

 

エリナを狙おうとしていたラーヴァナは、

その一撃を鬱陶しそうに肩の神機で受け止めていた。

 

そしてエミールにつきまとうガルムを、

エリナがショットガンを撃ち込んで引き剥がし、

 

リヴィを照準し砲撃姿勢を取っていた別のラーヴァナの足を、

すかさずエミールが叩き、転ばせる。

 

もはや呼びかけをする余裕はなく、またその必要もなかった。

 

乱戦の中でも、お互いを守り合い、戦い続ける。

 

それを愚直にこなし続けていれば、いつかは終わりが訪れる。

 

どんな結果にしろ、それが最善であることに間違いはあるまい。

 

その信念を胸に、リヴィは続けざまに鎌を振ろうとして、

「!?」

目の前の個体ごと巻き添えにする別方向からの砲撃を受けて、

リヴィは盾ごと吹き飛ばされる羽目になった。

 

 

その攻撃を仕掛けてきたラーヴァナは顔半分が欠けた、最初の個体だった。

 

その傷の隙間からは『ルル・・・』と低い唸り声が漏れ聞こえてくる。

 

同時に、その仮面の奥に隠れた眼から、

強い殺意が放射されているのをリヴィは肌で感じた。

 

「・・・恨みがましい奴だ」

 

同胞を巻き込んだ連携はガルムも見せた。

しかし、それが味方を助けるものだったのに対し、

今のは、あからさまにリヴィへの復讐を優先して敢行した攻撃だ。

 

アラガミがそんな執着を見せるとは、

と、リヴィは半ば呆れながらそちらに神機を向ける。

 

ラーヴァナはその仕草に激昂したかのように、

抉られた兜から怨嗟の咆哮を放ち、さらに核を輝かせた。

 

 

リヴィはそれに合わせ、敢えて前へと踏み込む。

 

「それはこちらの方が・・・速い!」

咬刃展開形態の神機を真上に掲げ、垂直に振り下ろす、

バーティカルファングを繰り出す。

 

それは離れた場所でチャージ中のラーヴァナ、

その砲身を越えて、臨界間際の核へと刺さる軌道を描く。

 

砲撃姿勢のラーヴァナは全身が硬化するが、その核だけは例外だ。

 

 

しかし、寸前。

 

「なっ」

 

そのラーヴァナが取ったのは、

四基のロングブレードで同時にインパルスエッジを放つという、予想外の行動だった。

 

当然、その射撃がリヴィに届く距離ではない。

しかしその反動は外付けの推進装置・・・スラスターのような機能を果たしていた。

 

ラーヴァナが砲撃姿勢のまま滑るように後退し、鎌の間合いから逃れる。

 

狙いを外した複数の刃は、ぎゃりりりっ、

と耳障りな音を立てて手前の砲身を引っ掻くだけに留まった。

 

してやられた、とリヴィは咄嗟に鎌を仕舞いながら身を翻す。

 

間一髪、オラクルの奔流がリヴィを掠めていく。

 

「くっ・・・」

 

神属性のオラクルを浴びて、

リヴィの身には、熱くも冷たくもなく、ただ痺れるような痛みが走る。

 

そして横に転がるリヴィを追撃するかのように、

今度は巻き込まれたラーヴァナの方が突撃してくる。

 

左右にあるロングブレードは、

受け止めればすかさずインパルスエッジへと転じるだろう。

 

迂闊に正面に立てないというプレッシャーは中々立ち回り辛く、

リヴィは下がりながらの防戦を強いられる。

 

そしてそんな至近距離の攻防もお構いなしに、

割れ兜の個体がオラクルを立て続けに放ってくる。

 

いくら同胞が硬くて同属性だからといってやりすぎだろう、

などと思う暇もなく、リヴィは高密度の砲火にさらされる。

 

「くそっ」

 

活路を見出せないリヴィは、

直撃を受ける前に、半ば自分から飛ばされるようにして距離を取らざるを得なかった。

 

ずざざざ、と地面に擦過痕を残しながら踏み止まるリヴィ。

 

そしてどうにか体勢を立て直そうとしたところで、

「どわあ!」

直後、すぐ隣に人が降ってきてリヴィは肝を冷やした。

 

頭から落ちて大丈夫か、とラーヴァナに注意を払いつつ見やると、

流石のタフさというべきか、エミールはすぐに起き上がってみせる。

 

顔中に土埃をつけながら、エミールは悔しそうに顔をしかめていた。

 

「ぬうぅ・・・正々堂々一対一ならば・・・!」

実に騎士らしい台詞だったが、アラガミ相手に無茶な注文だ。

 

隙ありとばかりに砲撃が飛んできて、二人はさらに後方へと飛び退く。

 

今度はそこにエリナがいて、2頭のガルムがまさしく飛び込んでくるところ。

 

咄嗟に自分とエミールでそれを受け止め、エリナがショットガンで援護して。

息をつく間もなく、再び乱戦に持ち込まれる。

 

・・・その絶え間のない攻撃を捌きながら、三人は徐々に追い詰められていた。

 

 

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