泣き虫小僧はミカンがお好き   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ。
千歌っち推しっちのなちょすです。
新作投稿になりますが、この経緯は活動報告にて掲載中です。
可愛いなぁ⋯千歌っちよ⋯。
攻めっちも受けっちもいいなぁ⋯。


ようこそ十千万へ!

『やーいやーい!泣き虫小僧のりょーすけ!!』

『ぐすっ⋯返してよぉ⋯僕の宝物なんだよぉ⋯。』

『こぉおーーーらぁあーーーー!!』

『げ!アイツが来た!』

『もう!またりょーちゃん泣かせてるでしょ!!それ返してあげなよ!』

『へっ、言われなくてもこんなもんいらねーよ!じゃあーなー!』

『ぐすっ⋯うぅ⋯。』

『全くもう!りょーちゃん大丈夫?』

『う、うん⋯ありがとう⋯。』

『ああいう時はガツンと言ってやらなきゃ!⋯でも、私があげたそれ持っててくれたんだね。』

『僕の⋯宝物だから⋯。』

 

 

 

 

 

 

「ふぅー⋯よし、行くか。」

 

それを口にしたのは何度目だろう。あまり人の家に長居するなと教わったけどこっちは緊張でそれどころじゃないし、俺は決して不審者じゃない。

名前は滝沢 涼介(たきざわ りょうすけ)

4月から沼津の高校に通っている高校1年生。

両親が海外出張というラノベの主人公みたいな展開になってしまい、内浦の知り合いの家へ居候する事になった悲しき男子高校生さ⋯。

今うろうろしているのは、ここ内浦でも老舗の旅館である『十千万』⋯の前。好きでこの旅館の前で20分もうろついてるわけじゃないけども。

 

「⋯よし行くか!行くか?いや、まだもうちょっと心の準備が⋯!」

「あの〜⋯どちらさん?」

「うわぁっ!?ご、ごごごごめんなさい!!怪しいものじゃないです!いや怪しかったかもしれないですけど決してそういうんじゃ⋯!」

「まぁまぁ落ち着きなよ少年。ここらじゃ見ない顔だけど⋯沼津の子かい?」

 

そう聞いてくるのはこの旅館の美人3姉妹の二女、高海 美渡(たかみ みと)さん。昔っから美渡ねぇって呼んで良くしてもらってた人だ。

 

「あ、はい⋯てか、俺です。分かりませんか??」

「ん〜?⋯まさかお前⋯『泣き虫小僧のりょーすけ』か!?」

「そです、その涼介ですよ。」

「はっはっは、そっかそっか!いやー背伸びたな!」

 

『泣き虫小僧のりょーすけ』。

俺がそう言われるのには理由がある。

元々気弱で、よくいじめっ子達から泣かされていた。

その上自分で言うのもなんだけど⋯感受性豊かだったらしい。

ドラマや漫画を見ては泣き、動物関連の話を聞いては泣き、ゲームに感情移入して泣き⋯終いには1年ぶりに会った友人の前ですら泣いてしまう始末。

ちなみに今もその泣き癖は治っていない。

 

「あれ?でもお前の一人称『僕』じゃなかったか?」

「あっはは⋯色々あったんですよ⋯。」

 

主に中学の時に一緒に居た厨二病堕天使のせいだけど。

俺と堕天使ともう1人の友人⋯この3人グループは3年間離れることが無かったからね。

ん?でもあの堕天使って家が沼津なのに同じ高校に居なかったような⋯まぁいっか。

 

 

「わんっ!!」

 

 

玄関から元気な犬の鳴き声が聞こえる。

あのもふもふ⋯あの目!間違いない!!

 

「しいたけ⋯?しいたけか!?」

「わふっ!」

「じ、じいだげぇ〜!大ぎぐなっだなぁ〜〜!!」

 

こちらへ走ってくる旅館の愛犬、しいたけ。

久しぶりに会ったってのに俺のこと覚えててくれてるなんて⋯!顔をペロペロと舐められるけど、そのペロペロが懐かしくも愛おしいペロ!

 

「しいたけに触れてガチ泣きする奴初めて見たわ⋯。」

 

美渡ねぇが何か言ってるけどそれどころじゃない!俺は今この1匹の命と感動の再会をしてるんだ!!

 

「美渡ちゃん、お客さん⋯って、駄目じゃないこんな可愛い子泣かせちゃ。」

「いや、こいつが勝手に泣いてるだけだぞ?」

「あ、志満ねぇ⋯こんちは!」

「いらっしゃい涼ちゃん。大きくなったわねぇ⋯♪」

 

この人は美人3姉妹長女、高海 志満(たかみ しま)さん。

しっかり者だけどたまにトリップするんだよね。

 

「ねぇねぇ涼ちゃん!1回だけでいいから『お姉ちゃん』って呼んでみて?」

「へ⋯?」

「志満⋯それはいけない。」

 

お、お姉ちゃん⋯。昔の俺だったら言えたのかもしれないけど結構来るものがある⋯

しかぁし!ここでやらねば男が廃る!もう泣き虫りょーすけだなんて言わせない!!

 

「お、おぉ⋯お姉⋯ちゃん⋯。」

 

恥ずかしぃぃいいいいいい!!

 

「⋯美渡ちゃん。旅館の事は任せたわ。私この子の所に居候する。」

「バカ言ってないでさっさと飯の準備するぞー。」

「嫌!私この子と暮らす!!」

 

志満ねぇに思いっきり抱き着かれる。

全てが柔らかい⋯包まれ具合が凄い⋯口が裂けても言えないけど。

突如、その和やかムードに終止符を打つ叫び声が響き渡る。

 

「たっだいまーー!!」

 

彼女が来たからか。

それとも俺の彼女に対する認識がそうだからか、俺の体は一気に強ばる。

そんな緊張をよそに、辺りを爽やかな柑橘系の香りが通り抜けていった⋯気がした。

その人の名前は、高海 千歌(たかみ ちか)

美人3姉妹の末っ子であり幼馴染みだ。俺にとっての3人目の姉のような人。

 

そして⋯初恋の人だ。

 

「あれ、どういう状況⋯?」

「ちょっとな⋯志満がダメになった。」

「ねぇ千歌ちゃん。この子、誰だか分かる?」

「え?ん〜⋯ん〜〜〜?」

 

彼女は俺の周りをぐるぐる回って確認しだした。

めっちゃいい匂い⋯違う!何考えてるんだ俺は!!

にしても動く度に頭のアホ毛がぴょこぴょこ動いていてとっても可愛らしい。

動きだけ見ると、この人がとても1つ年上だと思えないな。

 

「ん!」

「⋯な、なんでしょうか?」

 

ずいっと顔を寄せてきた。

あの⋯これでも思春期男子ですよ?近過ぎじゃない?千歌ねぇだけに。

 

「駄目だ〜!なんか見た事あるんだけどなぁ⋯。」

「そんなバカ千歌にヒントをやろう。その1、お前の1つ歳下。」

「へ?」

「ふふ⋯その2、小学校までは毎日の様に遊んでたわ♪」

「そしてその3⋯いつまで経っても泣き癖が治らない泣き虫だ。」

 

千歌ねぇが目を丸くして立ち尽くす。

最後の一押しとして、俺は携帯に付いているストラップを彼女の前に差し出した。

大切な貰い物の⋯ミカンが付いたストラップ。

 

「それ⋯私と同じやつ⋯。」

「⋯俺の宝物だよ。千歌ねぇがくれたから。」

「嘘⋯りょーちゃん⋯⋯?」

「あっはは!ようやく気づいた?」

「りょーちゃん⋯りょーちゃぁああん!!」

「久しぶ⋯りぃぃいいいいっ!!!」

 

手に持っていたスクールバッグを放り投げ、千歌ねぇは走りながら飛びついてくる。

かなりの勢いだけど、そこは根性で踏ん張ってみせよう⋯!

 

「本当にりょーちゃんだ!急にどうしたの!?」

「親が海外出張行っちゃってさ。今日からここでお世話になるんだよ。」

「そうなの!?私何も聞いてないよ!?」

「だって千歌ちゃんに言わなかったもの♪」

「酷いよ志満ねぇ!でもそっかぁ⋯ちょっと見ない間に成長したね〜!誰か分かんなかったもん!」

「千歌ねぇが変わらな過ぎるんだよ。」

「何を〜!これでも大きくなったんだぞ〜!」

 

いつの間にか越してた身長差は、大体15cmくらい変わってた。

俺の胸までしか無いその人は、本当にあの時のままだ。

 

「でも一丁前に『俺』なんて言うようになったんだね。」

「はは、茶化さないでくれよ。千歌ねぇも綺麗になったね。」

「へ?///」

 

素っ頓狂な声を出した彼女の顔が赤くなる。

違うな⋯綺麗は綺麗だけどこれは⋯。

 

「前言撤回。可愛くなった!」

「⋯むぅ///あんまりからかうんじゃ無いの!///」

 

ビシッ!と頭を軽く小突かれる。

本当の事を言っただけなのになぁ⋯。すると彼女は抱き着いてた手を離し、静かに俺に言葉をかけてくれた。

 

「⋯おかえり、りょーちゃん♪これからよろしくね!」

 

昔見た大好きな人の笑顔。

その言葉を言ってもらえたことがたまらなく嬉しい。

あ、やば⋯涙腺が⋯。

 

「⋯ぐすっ⋯千歌ねぇ〜⋯!」

「えぇ!?ちょ、何で泣いてるの〜!」

「だっでざ〜⋯!」

「もう⋯せっかく成長したのに中身そのままじゃん⋯おいで?」

 

彼女に優しく頭を掴まれ、そのまま抱き締められる。

必然的に頭はこの人の胸へ⋯胸⋯。

悲しき男の性よ、頼む。今だけは大人しくしていてくれ⋯。

 

「なぁ志満。あれは感動で泣いてるのか、千歌の胸が強烈なのかどっちだと思う?」

「どっちもじゃないかしら?♪」

 

滝沢 涼介、これから十千万でお世話になります。

それと1つ年上のお姉さんは、やっぱり大きくなってました。




涼介ぇっ!!!!!!(泣)

こんな感じの高海家スタイルです。
させてやるぞぉ⋯イチャコラさせてやるぞぉ⋯徹底的になぁ!

千歌っちは年下の子には凄いお姉さんだと思うの。
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