泣き虫小僧はミカンがお好き   作:なちょす

22 / 23
皆さん、こんにチカ。なちょすです。
泣き虫小僧をご覧に頂いてる皆様。長らくお待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした⋯。この場を借りて、お詫び申し上げます。
さて、久々の話は1年生's!!まるちゃんルビィちゃん初登場の巻!!バカップルのイチャコラを期待して下さった方、ごめんなさい。今回は無いです。
なので過去話や過激な話で時間をお過ごし下さい。

ん?過激な話の投稿先⋯ですか?
R-18。(ボソッ)


ずらっ!ぴぎっ!よはっ!(1/2)

「貴方は善子ちゃんを泣かせました。」

「はい⋯。」

「反省⋯してるずら?」

「はい⋯。」

 

恋人の家。正座してる僕。

どういう状況かって?今この子達が言ってくれた通りだよ⋯。

赤毛のツインテール。明るい茶髪のロン毛。歳も同じ、善子とクラスも同じの2人の少女に、お説教されている最中でございます。

かたや、黒澤ルビィさん。ダイヤさんの妹である。

かたや、国木田花丸さん。善子の幼馴染みで、文学少女(千歌談)だ。

『どっちも小動物系で可愛らしい』と言っていた、これまた可愛らしい彼女さん⋯僕は、初めて貴方の言葉に疑問を抱いていますよ。

 

「煩悩あり、ずら。」

「いってぇっ!!!!」

 

バシンッ!という音と共に、俺の肩には平たい木の棒が振り下ろされた。ほら、あれだよ。座禅組む時に坊さんが叩いてくるやつ。あれ超痛えんだ。マジで。

『我々の業界ry』とか言う紳士達も居るが、生憎俺はMっ子では無いのだ。普通に痛い。曜姉ちゃんに渡されたのであろうサングラスをかけた2人の少女が、この場においては何よりも怖い。般若心経をヘドバンしながら唱えてきそうだもん。因みにあれは警策(きょうさく)って言うんだ。良い子のみんなは、覚えて帰ってくれよ?

まぁ⋯なんにせよ、だ。

 

「ん、これは中々⋯。」

「〜〜〜♪」

「⋯そこの2人は何しに来たんですか。」

「保護者ですが?」

「冷やかし〜♪」

 

抹茶プリンを満足気に食べている大和撫子お姉様と、これまた俺達に目もくれずにダイビング雑誌を読み耽るグラマラスお姉様。

⋯何だこのメンツ。

ダイヤさんなら分かるよ?黒澤⋯って、どっちもか。ルビィさんの事を見に来たのであろうし。問題はもう1人だよ。これ程までに雑な冷やかしなど見た事ない。冷やかすならもっとこっちを見て冷やかして欲しいものだ。おや?これではまるで俺がMっ子じゃあないか。

 

「あははは!コバンザメ!!」

「どこで笑ってんの!?」

「煩悩あり、ずら。」

「いでぇっ!!!!」

 

クッソ⋯負のスパイラル⋯⋯誰か、2人の坊さんを止めてくれ⋯。

 

「⋯何してんの?」

 

おぉ⋯おぉっ⋯⋯!!かつてここまでコイツが神々しく見えた事があっただろうか。何で居るのか、とかはこの際どうでもいい⋯!救いを!救いの手を!!

 

「ヨハネ様ぁっ!!」

「⋯⋯キモッ。」

「んだコラっ!」

「煩悩あり、です。」

「むぁっ!?」

 

救いの手は気の所為だったようだ。

そして叩き手が変わったらしい⋯いつの間にか、さっきまで俺の右肩を叩いていた国木田さんは、ルビィさんに棒を手渡していたんだ。でもさ⋯俺、思うんだよね。

それ⋯⋯頭叩くやつじゃねぇから⋯。

 

「ダ、ダイヤさん⋯。」

「自業自得、ですわね。」

「果南ねぇ⋯。」

「ん〜⋯私は奄美大島派かな。」

「何の話!?」

「はぁ⋯千歌さんにいきなり来いって言われたり、何だってのよ⋯。」

 

千歌に呼ばれた。

俺は、その事実を初めて知った。

 

あの1件以降、俺と善子はまだまともに会話をしていない。本当はちゃんと話して、何か言うべきだった。けど、俺には何を話したらいいのか分からない⋯勝手だと思う。普段通りを装ってるけど、善子だって目が泳いでる。

多分、同じなんだ。

 

俺達は⋯距離感が分からない。

あんなに居心地の良かった適正距離は───あっさりと無くなったんだ。

 

告白した人間と、振った人間。それが原因で、生まれた誤解。こいつの力を借りて、丸く納まって生まれた現在(いま)⋯それが、これなんだ。

何も言わず、善子は俺から1番遠い、ダイヤさんの隣に座った。

 

『⋯⋯⋯。』

 

誰も⋯何も言わなくなった。

あれほど警策で叩きまくっていた2人ですら、静かになってしまった。

丸く納まったのは、俺とあの人⋯2人だけだ。別に、善子とどうこうしたいとか、こうなりたいとかそういう事じゃない。ただ⋯言わなくちゃいけないんだ。

何かを、言わなくちゃ───。

 

 

「ねぇ。」

 

 

いきなり発せられた声に、体がビクつく。

それは俺だけでなく、他の1年生3人も同じだった。

 

「ルビィ、それ貸して?」

「は、はい⋯。」

 

初めて見る、とでも言うかのように、先程までとは全然違うおどけた表情をして、彼女は警策を果南ねぇに渡した。

 

⋯⋯渡し、た?

 

 

「まどろっこしいっ!!」

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!」

 

 

バチン?バシン?そんな優しいものじゃあ無い。空を切り裂いた警策は、スパンッ!!と俺の背中を撃ち抜いた。

 

「わっ!見てダイヤっ!折れた!!」

「可愛らしいですが可愛らしくないですわね。」

「か───っ、ッ!!」

「あ⋯ごほんっ!いつまでウジウジしてんの涼介君!見てるこっちがイライラしてくるから、言いたいことがあるならしっかり言う!したい事があるならハッキリする!!私⋯昔っから言ってるよね?」

「あの⋯果南さ───。」

「良いから。」

 

転げ回る俺の痛みはお構い無しに、果南ねぇは両手でしっかりと俺の頬を掴んだ。

 

「納得⋯してないんでしょ?思ってる事、あるんでしょ?なら、ビシッとする!馬鹿正直で真っ直ぐなのが、君の良い所なんだから!」

「果南ねぇ⋯。」

 

『行っておいで。』とでも言うように、果南ねぇは優しい目でしっかりと視線を向けてきた。

 

馬鹿正直で、真っ直ぐに。

⋯どうもあの日以降、ダサさに磨きがかかっているらしい。結局、自分一人じゃ何も出来なかった。

いや⋯しなかった、のか。言うべきことなんて、分かってたはずなのに。

 

「善子。」

「な、何よ⋯。」

「⋯⋯ゴメンっ!!」

 

ダイヤさんの隣に居る善子の元へ行き、深深と土下座をした。

 

「本当は、もっと早く言うべきだった。お前を傷つけるだけ傷つけて、お前一人で背負い込ませて⋯たった一人苦しませて⋯それで俺だけ幸せに、だなんて、虫が良すぎる話だ。お前が居てくれなかったら、きっとこうはならなかった。お前が居てくれたから、今があるんだ。本当にゴメン⋯⋯。」

「⋯私は⋯別に、アンタにそう言わせる為にやったんじゃ───。」

「でもっ!!」

「っ⋯。」

「⋯⋯ありがとう。」

 

床で固く握りしめた拳に、冷たいものが落ちた。

言えなかった事。振っておいて『ありがとう』なんて、言うのが怖かった。気まずく謝る言葉は幾らでも出るのに、感謝の言葉は果南ねぇに発破をかけられてようやく出せた。本当に⋯情けない⋯。

 

「ぷっ⋯。」

「へ?」

「あはははっ!何泣いてんのよ!!」

「う、うるせぇっ!こっちだって怖かったし分かんなかったんだよ!!」

「やーい、泣き虫小僧ー!」

「んだとこの⋯沼津在住っ!」

「悪口下手かっ!」

 

その時、俺とダイヤさんの携帯からメッセージアプリの通知音がなる。

 

「失礼⋯ふふっ。」

「お姉ちゃん?」

 

ダイヤさんは、口元に手を当てて静かに微笑んだ。何やらメッセージを打ち込み、俺と、善子と、ルビィちゃんや花丸ちゃんを見て、口を開く。

 

「まぁ⋯折角1年生が4人もいるのですから、皆で出掛けてきたらどうですか?」

『え?』

「あぁ、良いねそれ。そっちのが早そうだ♪」

 

何故このタイミングなのか。何故急にそんな事を言ったのか。頭を捻りながら、携帯のメッセージに目を通す。

 

相手は千歌だった。

ここにいるメンツを呼ぶだけ呼んで、未だ姿を見せない張本人。そんな彼女からのメッセージに───胸きゅんした。

 

 

『⋯帰ってきたら、いっぱい遊んでね?』

 

 

お馴染みの部屋着にふわっふわのイセエビぬいぐるみを

抱えたまま枕に顔を埋めている姿が目に浮かぶようだ。はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜⋯⋯⋯あの人はもう⋯本当にもうっ!!きゃわたんっ!!

 

まぁでも⋯真面目な話、きっとダイヤさんや果南ねぇを呼んだのも⋯善子を呼んだのも。全部彼女なりの考えだったのかもしれない。

 

「お2人の許しがあれば、ご一緒させて下さい。」

「ルビィ達は⋯その⋯。」

「⋯⋯善子ちゃんは?」

「別にいいわよ。馬鹿が混じるくらい。」

「なら大丈夫ずら。」

「えっ⋯本当に?」

「ここで嘘をついてもしょうが無いよ。オラは国木田 花丸。」

「く、黒澤ルビィ⋯です⋯。」

「えっと⋯じゃ、じゃあよろしく、2人共。あ、そうだ!ちょっとだけ待っててくれ!」

「良いけど⋯。」

 

3人の了承を得た上で、一旦俺は部屋を後にした。やっぱ挨拶は大事だもんな、うんうん。

 

 

 

 

 

 

『ぶふっ⋯!!』

 

1分もしない内に戻ってきた俺の顔を見て、果南ねぇとダイヤさんは噴き出していた。

そうだろな。あぁそうだろうな!右頬についた紅葉を見たら誰だってこうなるだろうさ!!

行ってきますって⋯しに行っただけなんだけどなぁ⋯⋯。

 

「また派手にやられたわね⋯。」

「うぅっ⋯背中もほっぺも心も痛い⋯⋯グスッ。」

「あははははっ!!」

「さぁ⋯こっちは引き受けましたから、4人で遊んでらっしゃい?」

「うん⋯。」

「あっははははは!!ひーっ、ひーっ!!ゲッホゲホッ!!」

「果南ねぇ笑いすぎだっつーの!!」

 

1人馬鹿笑いしてる幼馴染みは放っておきましょう。さっきまで感謝してたのに⋯カッコ良く見えていたのにっ⋯!

 

「それじゃあ、行くずら。」

「えっ、あ、はいっ。」

 

立ち上がった国木田さんは、俺の方を一瞥した後に部屋を出ていった。ルビィさんもどこか怯えた表情のまま、国木田さんの後について行く。

 

「ねぇ。」

「ん?何だぁっふん!?」

 

振り向いた俺を待っていたのは、額への軽いグーパンだった。今日はとことん変な声が出てくる日だが、そんな事よりも笑ってる堕天使の方が衝撃的過ぎて動けなかった。

してやったと言わんばかりのヘラヘラした顔で、善子は立ち上がった。

 

「今回の件はこれで終わり。変な貸し借りだとか罪悪感なんて、こっちから願い下げよ。」

「善子⋯。」

「ヨハネだって言ってんでしょうが。主の名前もちゃんと言えないようじゃ、アンタには泣き虫リトルデーモンぐらいがお似合いよ。ばーか。」

 

それだけ捨て台詞のように吐き捨て、善子も2人の後に続いて部屋を出ていった。

 

「⋯⋯んだよ⋯。」

 

そんな文句を垂れながら、ようやく俺も部屋を後にする。

ほんの少し、スッキリした心持ちで。

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿正直も考えものだねぇ。ところで⋯あの子にはなんて?」

「⋯こんな感じですかね。」

「ん〜?ぷっ⋯!あっははは!!」

「そんなに可笑しいですか?」

「いやぁ、ダイヤにしては可愛いらしいなって思ってね〜♪それじゃ⋯隣でお姫様と『がーるずとーく』でもやりますか!」

「ふふっ⋯ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁさぁやって来ました沼津市内!

スクールアイドル3人に男は俺1人!ただでさえあんなに可愛らしい彼女さんが居るのに傍から見ればハーレムに近い状態だから、友人達に見られでもしたら俺の首が飛ぶこと間違いなしの光景だ!あっはっはっは!!

 

「でね、その時曜さんが───。」

「リリーもそんなこと言ってたわ。」

「皆大変ずら〜⋯。」

 

俺要らなくない?

うん⋯そりゃ薄々予想はしてたよ。だって国木田さんの俺を見る目⋯あれ、本気で嫌ってる目だもの。親友を傷付けられて大変ご立腹なさっている様子ですもの。ルビィさんにしても、明らかに距離を置いてるし⋯たまにこちらを伺っては眼が会う度に困惑した表情をしているし⋯。存在を認知されないのがこれ程までに切ないものだとは。

 

「あの⋯。」

『⋯⋯⋯⋯。』

 

⋯ほら。

 

「あのっ。」

「何?」

 

ほらっ。

 

「いや、その⋯ど、どこに行くのかな〜って⋯。」

「ついてくれば分かる事をいちいち聞かないで欲しいずら。」

 

ほらぁっ!!

 

「何突っかかってんのよ、ずら丸。」

「別に⋯どういう人なのか分からないのに最初から親しく出来るほどオラは出来てないよ。普通の事ずら。」

「普通、ねぇ⋯意地張ってるだけじゃないの?」

「逆に聞くけど、どうして善子ちゃんはあんな事があった後でこの人の近くに居れるの?」

「普通の事だから。」

「そんなの普通じゃないよ。」

「それを決めるのはアンタじゃ無いと思うけど?」

「善子ちゃんでも無いずら。昔に何があったのかは知らないけど、いつまでも過去に拘ってると前が見えなくなるよ。」

「ご忠告感謝しとくわ。アンタもいい加減本から顔を上げなきゃ、頭まで夢物語になるって教えといてあげる。」

「ふ、2人共っ⋯⋯喧嘩は⋯あの⋯⋯。」

 

 

⋯気まずい。

ルビィさんがこんなにもオロオロしてるという事は、きっと本来の2人はこんな事を言い合ったりする仲では無いのだろう。今となっては、一触即発のバチバチムードだ。お互いが小さく毒づいてる事なんて目に見えて明らかだし、何より空気が重い⋯。

 

全部、俺が引き起こした誤解で生まれてしまった事。ヂクヂクとした胸の痛みが、涙腺という名のダムを決壊させそうだ。

泣く資格は⋯無いんだけれど⋯。

 

「⋯先、行くね。」

「花丸ちゃんっ!」

 

そう言い残し、国木田さんは先を歩いて行った。

俺の方を一瞥し、何を言うわけでも無く、ただただ静かに。

 

「よ、善子ちゃん⋯あのね!花丸ちゃんは、善子ちゃんの事考えて───」

「知ってる。」

「っ。」

「だから意地張ってるって言ってんのよ⋯バカ花丸。」

 

後ろからは、善子の表情は見えない。

それでも⋯握られた右手は、固い拳を作り出していた。

 

「ルビィ。」

「な、何⋯?」

「そこの泣き虫、相手してくんない?」

「えっ⋯えぇっ!?」

「じゃ。」

「おい、善子っ!?」

 

なんてこった⋯唯一この空間、このメンバーで会話が成り立っていた善子まで先を行ってしまった。

ルビィさんはゆっくりとこちらを振り向くが、その表情には怯えと不安しか感じられない。ましてや仲のいい友人が喧嘩まで始め、その原因となった人間と一緒に居るのだ。彼女も、パンクしそうなのだろう⋯どうしたらいいか分からないといった感じで距離を置き、再び目線を下へと落としていた。

罪悪感で押し潰されそうだ⋯罪悪感で⋯⋯。

 

「グスッ⋯。」

「えっ?」

「ルビィさん⋯ごめんなさいぃ⋯⋯!」

「えぇっ!?な、何で泣いてるのぉ!?」

「だっでぇ〜⋯!」

「あの、な、泣かないでよぉ⋯泣かれると⋯ルビィまで、泣いちゃうっ⋯からぁ⋯!」

 

それから⋯取り残された俺達は、お互いに鼻を啜りながら『ごめんなさい』を言い合っていた。

この時は予想もしていなかったんだ。

 

波乱で幕を上げたこのお出かけの結末が、『予定調和』だった事に───。




ネタ→シリアス。
上げて→叩き落とす。

いつも通りです、はい。
果たしてよしまるは元に戻るのか。答えは作者のみぞ知る(気がする)。取り残されたルビィさんとバカップルの片割れは泣かずに済むのか(手遅れ)。

Coming soon⋯.
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。