泣き虫小僧はミカンがお好き   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ!
こちらではお久しぶりの、なちょすです。
遅くなってごめんなさい⋯この作品を読んで下さっている全ての皆様すみません⋯。
もう少しかかります!申し訳ありませんッ!!

今日は千歌っちの生誕祭という事で、そんなに長くないですが再びバカップルを製造しに参りました。ヒロインとして小説も増えてきた千歌っちですが、なちょすワールド全開の誕生日回をごゆるりとお楽しみくだしゃあ!!


生誕祭
ちかたん! ~普通怪獣に花束を⋯?~


大きな旅館のとある部屋の前。

カチカチと動く腕時計の秒針をカウントダウン⋯今の俺はひと味違うぜ?なんてったって愛しのSweet Honeyの誕生日直前だからな⋯!

 

さぁ5秒前だ⋯⋯4⋯3⋯2⋯1⋯⋯!!

 

「千歌っ!!誕生日おめでふわぁ〜おっ!!??」

「ノックしろぉッ!!///」

「すみませんでしだっふんだっ!!」

 

飛んできた枕は一味違う俺の顔面を直撃。廊下へと叩き出された俺はすぐさま襖を閉め、今見たものを忘れるように努力した。

だってまさか、生まれた日にほぼ生まれたままの下着姿を見てしまったらそうなるだろう。

大丈夫さ⋯俺なら忘れられる⋯出来るよ、出来る。

うん。

 

 

うん⋯無理ぽ。

 

 

ねぇ。」

「ひぃっ⋯!?」

何回目?ねぇ、千歌ノックしてって何回言えばいいの?

「ごごごごめんなさいっ!」

 

僅かに開いた隙間から伸びる手は、ギリギリと俺の肩を掴んでは離さない。

 

3回目はさぁ⋯無いって言ったよね?

「い、言いました⋯。」

こっち見て言ってくれる?

「すみませんッ!言いましひぃいいいいっ!!??」

 

隙間から覗き見える赤い瞳に光は無かった。しっかりと開き切った眼と『無』一択の真顔でこっちを見ている。

 

これあれだわ。『本気でおこ( #`꒳´ )だよ!』状態だ。to be continue⋯?でエンディング始まるヤツだわ。

おっかねぇよぉおおおっ⋯⋯!!

 

ねぇ。何回言えばいいの?逆に何回言えば覚えてくれるの?

「き、今日はたまたまと言いますか⋯。」

『今日は』?『たまたま』?へぇ⋯3回目の確信犯じゃなくて?

 

うぉおおおおおっ!!肩に!肩に指がめり込んできてるッ!!もげるもげるもげるっ!!

 

「ほ、本当に違うからっ!ねっ!?」

じゃあ何?

「あの⋯だって⋯ち、千歌の誕生日を1番に祝いたかったからっ!!」

 

しばしの沈黙。

こちらを見つめたままゆっくりと襖を閉めていく千歌は、最後まで無の悟りを開いたままストンと音を立てた。果たして俺は許されたのか、呆れられたのか。

 

同じくらいの隙間で再び襖が開いた時、そこに居たのは別人だった。

 

 

「⋯なら⋯良いけど⋯⋯///」

 

 

はぁ〜い可愛い。

何ですかその窄めた口にそっぽを向いたつっけんどんな表情は。少々お可愛いが過ぎやしませんか。オマケに何ですかその真っ赤なお耳は。見せてるんですか?そうなんですか?恥ずかしさ堪えきれなくなって徐々にニヤけていってるの気付いてるんですか?

あ〜〜〜〜〜〜〜〜もぅ⋯⋯。

 

好き。結婚しよ。

 

「でもね、りょーくん⋯。」

「何ですかSweet Honey?」

「おめでとうは2番目だったよ。」

「ガッデェムッ!!」

 

床に手を付いた俺の目からは涙がボタボタと落ちていった。

 

畜生⋯誰だ。1番を⋯初めてを奪った奴は一体何処のどいつ───!

 

「因みに1番目は曜ちゃん。」

「ヨォォオオオオソロォオオオァァアアッ!!!!」

「えぇ⋯そんなに泣き叫ばなくても⋯。」

「クソゥ⋯!これから会う度に『え?1番先に言わなかったの?あ、私か!!』とか、『毎年私が1番だったからごめんね〜!ヨーソロロロロ!!』とか、『ところで執事服着てみない?』とか言われるんだぁっ⋯!」

「最後のは関係無いような⋯というか曜ちゃんそんな鳴き声じゃないからね!?いや鳴き声とか無いけども!!」

 

こういう時の曜姉ちゃんの行動力は半端じゃあない。だが何故だ?俺はカウントダウンと同時に部屋に入ったんだぞ?幾ら携帯での送信が早いと言ったってそんな事有り得るのか?

そんなの誰かが時間を操作しない限り⋯⋯操、作⋯?

 

 

『腕時計⋯何か時間遅れてるような⋯⋯まぁいっか。明日直そ。』

 

 

「まぁいっかぁぁぁあああっ!!!」

「うわぁっ!?え、何!?りょーくん何かおかしいよ!?」

「千歌ぁ⋯。」

「う〜ん⋯何が何だかさっぱりちかちーだけど⋯私は、りょーくんがそれだけ思ってくれてた事がとっても嬉しいよ?だから泣かないの!ね?♪」

「うぅ⋯はい⋯⋯。」

「よし!じゃあそろそろ寝よっか!一緒に寝よ〜!」

 

手を引っ張ってくれる千歌は、そのまま自分の布団へと入っていった。ここにと言わんばかりに隣をポンポンとしている光景も、もう何度見た事だろう⋯布団に入っていつもの様に抱きつかれて彼女は眠るのだ。

でも今日は⋯今日だけは、違ってもいいんじゃないか。

 

一番最初におめでとうは言えなかったけれど、出来ることなら⋯ある。

 

「りょーくん、ギューっ!」

「ん。」

「はぇ?」

「その⋯今日は、俺が⋯ギュッてするよ。」

 

年上の彼女をギュッとした途端に、ふわもち感触が胸の中へすっぽりと収まった。恥ずかしさはまだあったけれど何より身長差が織り成すマリアージュとこの不思議な感覚が瞼を重くしていく。

何故この人が寝る度に俺に抱きつくのか⋯少し分かった気がする⋯⋯。

 

「千歌⋯おめで⋯と⋯⋯お休、み⋯⋯。」

 

胸の辺りがキュッと掴まれた気がしたけれど、睡魔に抗えなかった俺はそのまま微睡みの中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

「⋯⋯⋯ぜ⋯全然⋯⋯寝れない⋯///」

 

 

 

 

 

 

 

朝、双丘の中で目が覚めた。

それはもう⋯ご立派な。

いつの間に立場が逆になったのか、結局いつも通りハグられたまま朝を迎えた俺はSweet Honeyが起きるまで身動き1つ取れない、悶々とした時間を過ごす事に。

 

今日は誕生日という事もあり、千歌と2人で朝から出掛けることにしていた。勿論プレゼントは用意しているけれど、それと同時に行きたい場所もあったんだ。彼女の誕生日がある、この月だからこそ行きたかった場所⋯千歌と一緒に見たかった景色が。

 

髪を後ろで纏め、青地のワンピースに『(ぱいすら)』という普段よりも少し特別なお出掛けスタイルに、これまたいつも通り悩殺されそうになったが、今日は一々ダメージを受けていられない。

バスに乗って、俺達は目的地まで17号線を下って行く。沼津の方は良く訪れるものの、南伊豆の方まではあまり行かない俺には普段見ている海や自然の景色は普段と違って見えた。

 

それは彼女も同じのようで、窓の外を見てはまるで子供のようにはしゃいでいる。

ただ⋯繋がったままの手に俺がどれだけ緊張しているのか、この人は多分分かっていないだろう⋯そう考えたら何だか可笑しくて。『どうかした?』なんてキョトンとしたその顔に、『何でもない』って(うそぶ)いて。

ただ⋯黙って、握る手にちょっぴり力を込めたんだ。

 

気付くか気付かないか⋯本当にその程度。

千歌は、笑いながらもっと強く握ってくれた。

 

それだけで、嬉しさが胸を一杯に満たしてくれる。

 

空いてる手で、鞄の中の小包にそっと触れた。

 

「わぁっ⋯!見て見てりょーくん!ひまわりっ!!」

「あぁ⋯綺麗だね。」

 

やって来たのは南伊豆のひまわり畑。視界を埋めつくすおよそ3万本にも及ぶ太陽の花は、風になびかれてはキラキラと輝いていた。

その中ではしゃぐ千歌もまた、キラキラとしていて───。

 

 

「本当に⋯⋯綺麗だよ。」

 

 

別にそうしたかったわけじゃない。ただ、気付いたら俺は千歌の所へ歩いて、その手を掴んでいた。

くっと引き寄せ、彼女に近付いた。

 

千歌の顔が赤くなっているのを見て、そこでようやく、自分がこの人にキスをしたんだって⋯気付いたんだ。

 

恥ずかしそうに俯いた彼女が愛おしくて、手を離したくなかったけれど⋯俺は、鞄の中の小包を彼女にそっと手渡すことにした。

 

「千歌⋯これ。」

「⋯うん。ありがとう。開けてもいい?」

 

コクリと頷いた俺に微笑んだ彼女は小包を開けた。用意したのは向日葵の髪留めと、白紙のアルバム。

 

「これは⋯?」

「その⋯俺の願望みたいで申し訳ないんだけど、さ。これから⋯沢山の写真でそれを埋めていきたいなって⋯思って⋯俺と、千歌の2人で。」

「りょーくん⋯ありがとね。本当に⋯ありがとう。」

 

両手でアルバムを抱きしめた千歌は、眩しいくらいの笑顔で笑っていた。心臓が張り裂けそうなくらい、その笑顔に夢中な自分が居て⋯どれだけこの人に弱いんだって、少し笑ってしまう。

向日葵の髪留めを付けてくれた彼女は、『似合う?』って聞きながらクルクル回ったりした。『髪留めだから回る必要は無いんじゃない?』って笑いそうだったけど、この人が全身で喜びを表す人だって思い出した途端に何だか気恥ずかしくなった。

 

だから───。

 

「凄く、似合ってるよ。」

 

きっと、その一言で伝わるんだ。

 

アルバムを持ったまま後ろに手を組み、こちらへ笑いかける彼女に、俺は持ってきていたチェキを構えた。

 

 

───太陽の輝き(サンシャイン)

 

 

少しだけ⋯さっきとは違う風が吹き、周りの向日葵達が彼女の方を向いていた気がした。自分を普通だという彼女は、自分がどれだけキラキラしていて、優しくて、暖かい光なのか気付いていないかもしれない。

 

出てきた写真の向こうで、彼女の笑顔は他の何よりも眩しかった。

 

「アルバムの1枚目だね!」

「あぁ⋯そうだね。千歌が良ければ、だけどさ。」

「嫌、なんて言わないよ。」

「助かるよ。ねぇ千歌⋯向日葵の花言葉って知ってる?」

「ううん、分かんない。」

 

『教えて?』と言わんばかりに、こちらへほほ笑みかける彼女に気恥しさを覚えながらも、俺は彼女に話した。

 

「『憧れ』。『貴方だけを見つめる』。千歌は⋯いつだって俺の憧れだった。懸命に色んな事を考えて、周りを笑顔にして、頑張りすぎる事もあるけどそれを力に変えられて。俺は、そんな千歌だからずっと見てこれた。そばに居たいと思った。」

「⋯⋯うん。」

「千歌⋯これからも、そばに居ていいかな。」

「ふふっ⋯さっきも言ったよ?嫌なんて言わないって。」

 

口元に手を当て、クスリと笑う彼女。つられてこっちも笑ってしまう。

 

「そういえばそうだ。じゃあ⋯よろしくね、千歌。」

「うん。よろしく、涼介。」

 

手を繋ぎ、チェキを空高く掲げる。

こちらにレンズを向ければ、隣で彼女が飛びついてくる。

 

 

───きっとブレブレだな。

 

 

そんな事を思いながら、俺達は2枚目の写真が出てくるのを笑いながら待った。

 

眩い輝きと、溢れんばかりの幸せの中で───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯無いな。」

「何してんの泣き虫小僧?襖なんか見ちゃって。」

「美渡ねぇ⋯人格入れ替えるスイッチ知らない?」

「はぁ⋯?」

 




コメディー+真面目=バ☆カ☆ッ☆プ☆ル!!
仕事終わりに書き始めて、なんとか間に合ったぁ〜⋯!

改めまして千歌っち、誕生日おめでとう!!(*'ヮ'*)
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