泣き虫小僧はミカンがお好き   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ。
涙腺が涼介レベル、なちょすです。
イチャイチャさせようと思いつつ、今回はファーストライブ回。好きです、美渡ねぇ。
新キャラも出ますよ!

次女って大変なんですよね。


お姉ちゃんは面倒なんです

「1発殴らせろ!」

 

同じクラスの友人から告げられる一言。

こいつの名前は『佐久良 宗弥(さくら そうや)』。

アイドルオタクであり俺と同じように堕天使の影響を受けた1人。

そして親友だ。

その親友から何故こんな一言を投げられたのかというと、全てはこいつの質問から始まった。

 

「よ!居候先の旅館はどうだ涼介?」

「めっちゃ楽しいよ。懐かしくて何度泣いた事か⋯。」

「お前本当にそこだけは変わってないよな⋯。お前の好きな先輩だって居るんだろ?」

「まぁ⋯でもあの人危機感が無くてさ。昨日もいきなり一緒に寝ようって言い出してどれだけ焦ったことか⋯まぁ寝たんだけど。」

「は?」

「ん?」

「寝たのか?1つ年上の女子高生と??」

「ああ。」

「歯を食いしばれぇ!」

 

そして今に至る。

まぁ⋯俺の言い方も悪かったな。

 

「取り敢えず落ち着けって。」

「お前は⋯こっち側だと思ってたのに⋯!」

「別に何かあった訳じゃ⋯いや、あるか。」

「テメェっ!!」

 

おかしな奴だが悪いやつじゃない。結構気配りできるし俺よかモテても全然おかしくない性格と容姿。

中身が極度のドルオタな事を除けば。

 

「宗弥だってすぐに春が来るさ⋯。」

「そんな遠い目で見られてもよぉ⋯まぁいいか。ところで、お前浦の星女学院って知ってるよな?」

「あぁ、内浦にある女子高だろ?」

「そうだ。最近そこでスクールアイドルやってる子達がいるんだってよ!3人だけで活動してまだ正式な部にはなってないらしいんだけど、今週の日曜日にライブがあるから一緒に行こうぜ!」

「別にいいけど⋯でも誰がやるか分かんないぞ?」

「あー⋯何か駅前に行った時に赤い髪の綺麗な人と凄い元気なヨーソロー!って言ってる子と⋯。」

 

ヨーソロー?もしかして曜さん⋯?

あの人もスクールアイドルだったのか。昔は俺と同じくらい泣いてた記憶があるんだけどな⋯。

 

「後はあれだ、アホ毛が立ってる子。2人からは千歌ちゃん、って呼ばれてたような⋯。」

「は?」

 

千歌ねぇ?千歌ねぇがスクールアイドル!?全然聞いてないぞ!?

何で2年生の彼女がこの時期に⋯。

 

「どうした?いきなり唸りだして。」

「怒らないで聞いてくれ⋯その千歌って人⋯居候先の人だ。」

「⋯てことはあれか。涼介君は現役スクールアイドルで素敵なお姉さんと昨日一緒に寝たってことか?」

「⋯ああ、そうなるな。」

「水臭いじゃないか〜、それならそうと言ってくれよな〜あっはっはっは!!よーし喧嘩だ。」

 

それからは質問攻めにあったよ⋯その上購買でパンまで奢らされるという謎のとばっちり。こいつのスイッチが入るとろくなことが無い⋯。

何とか1日を終えた俺は、バスで十千万へ帰ってきた。

千歌ねぇにスクールアイドルのことを聞かないといけないしね。

 

「ただいま⋯」

「お願い美渡ねぇ!会社の人200人くらい連れてきてさ〜⋯。」

「⋯はぁ。」

「満員にしないと廃部になっちゃうんだよぉ!!」

「面倒臭い。てか、それで私が連れてったってお前達の為にならないだろバカ千歌。」

 

帰ってきて最初に目に付いたのはそんな姉妹のやり取り。美渡ねぇはマジックで千歌ねぇのオデコに『バカチカ』と書いている。

 

「お、涼介おかえり。」

「た、ただいま⋯何の話?」

「あ、りょーちゃん!今大変なんだよ!私達がスクールアイドル部を作る為に、体育館満員にしなくちゃいけなくて⋯。」

「あぁ⋯もしかして週末の?」

「知ってるの!?」

「友達と行く予定だったからさ。頑張ってね、千歌ねぇ。」

「ありがとぉ〜りょーちゃん⋯!」

「千歌ちゃーん、そろそろ歌詞作らないと梨子ちゃんが怒⋯ってそっちの子は?」

「曜ちゃん、りょーちゃんだよ!」

「えっ!?涼介君!?」

 

この人が渡辺 曜さん。千歌ねぇと幼馴染みで、俺も小さい頃によく一緒になって遊んでいた。何か⋯凄い活発系運動少女みたいになってる。

 

「久しぶり涼介君!そっかぁ⋯話は聞いてたけど、印象変わりすぎてて分かんなかったよ!」

「曜さんも変わりましたね。昔は結構泣いてるイメージがあったので⋯。」

「何を〜!?泣き虫小僧がそれを言うか〜この!」

「あっはは、すみませんすみません!」

「千歌ちゃん?曜ちゃん?」

「ひっ⋯!り、梨子ちゃん⋯!」

 

2階から降りてきたその人は、初めて見る人だ。

この2人よりもどこか大人びた印象で、このへんの人じゃないんだろうなっていうのはすぐ分かった。

何かめっちゃ怒ってるけど。

 

「ずっと戻ってこないと思ったら⋯何してるの?」

「えぇっと⋯感動の再会?」

「もう⋯時間あんまり無いんだから、早く進めないと大変だよ?⋯初めまして。私はこの2人と同じクラスの桜内 梨子です。」

「あ、初めまして。十千万に居候している滝沢 涼介です。」

「じゃあ貴方が千歌ちゃんの言ってた子ね?これからよろしくお願いします♪」

「いえいえ、こちらこそ2人をお願いします!」

「ふふ、涼介君は千歌ちゃん達よりしっかり者かもね?ほら、早く作業の続きするよ。」

『はーい!』

 

スクールアイドル、か。

結局どうして始めたのか、聞くことが出来なかった。部屋には彼女達が作ったポスターと、それを眺める美渡ねぇだけが居る。

 

「⋯美渡ねぇも行くんでしょ?」

「面倒臭いからやだよ。それに飽きっぽい千歌の事だしすぐ諦めるだろうさ。まぁ気が向いたら行くかもね〜。」

「美渡ねぇ⋯。」

 

チラシだけ持って美渡ねぇは自分の部屋へと戻っていってしまった。

 

「もう⋯美渡ちゃんってばどうしてあんな言い方しか出来ないのかしらねぇ⋯。」

「志満ねぇ⋯。あの2人ってよく喧嘩するの?」

「ふふっ、それはもう昔っからね。お互い変なとこで頑固というか素直じゃないというか⋯。でもね?私がまだ学生だった頃の話なんだけど⋯。」

 

 

 

 

 

 

『ただいま〜。』

『あ!志満ねぇだ!おかえり志満ねぇ!!』

『ただいま〜千歌ちゃん。美渡ちゃんとお留守番出来た?』

『うん!あのね、美渡ねぇがいーーーっぱい遊んでくれたの!お絵かきしたりキャッチボールやったりしたんだよ!』

『あらあら⋯ありがとうね美渡ちゃん♪』

『⋯べっつにー。あ〜これで楽になれるわ〜。』

 

 

 

 

「あの美渡ねぇが⋯」

「口であんな事言ってるけどね⋯本当は、私やお母さんよりも千歌ちゃんの事大好きなんじゃないかしら。それに、美渡ちゃんの宝物って何だか知ってる?」

「え?いや、聞いたことないけど⋯。」

「ふふっ、それはね⋯?」

 

 

 

 

 

 

「こんな田舎でスクールアイドルねぇ⋯。」

 

 

千歌が持ってきたポスターには可愛らしく描かれたあの3人の絵とライブの詳細が書かれていた。

スクールアイドルがどういうものかは少しは知ってる。それに涼介が来るまで、飯の度にその話聞かされてたしな。

 

「それより、ここの振り付けはこうした方が大きく見えるんじゃない?」

「じゃあここで私が後ろに下がって⋯。」

 

隣の部屋から3人の会話が聞こえてくる。

襖を開けてこっそり覗くと、ノートに纏めたフォーメーションの確認をしていた。いつになく真剣な妹の顔。

アイツのあんな顔見たの、いつぶりだっけ⋯。

 

何か始めても長続きなんかしなかった。それが今じゃあんなに楽しそうに1つの事に熱中している。

襖を閉じて、机の上に飾ってある1枚の絵を手に取った。

千歌が子供の頃、初めてくれた私の似顔絵。

曲がった字で書かれた『ありがと』の文字。

 

 

 

 

『美渡ねぇ!』

『ん?どした?』

『あのね⋯これ、描いたからあげる⋯!』

『⋯これ、私か?』

『うん。その⋯遊んでくれてありがと⋯千歌ね?美渡ねぇ大好き!』

 

 

 

 

「はぁ⋯。私も甘ちゃんだよなぁ。⋯会社に貼らせてもらうか。あ〜めんどくさ。」

 

そう口にしても嬉しそうに笑っちゃってる自分が、多分一番面倒臭いわな。

 

 

 

 

 

 

志満ねぇから全てを聞いた俺は号泣していた。それはもうボロッボロに泣いてたさ。

 

そして⋯今日がライブ当日の日曜日。天気は最悪だ。

雨は土砂降りだし雷は鳴るし⋯。

俺は宗弥と浦女の体育館で集合して、開始時間まで適当に喋ってた。チラホラと人はいるが、到底満員には程遠い。

でもまだ開始まで時間はある⋯それまでに来てくれれば⋯!

 

「皆さんこんにちは!」

「⋯え?」

 

突如ステージにスポットライトが当たり、3人の少女が照らされる。

おかしい⋯開始時間までまだ時間があるはずなのに⋯!

 

「私達は、浦の星女学院スクールアイドル⋯Aqoursです!」

「お、おい⋯開始時間と違わないか?」

「あぁ、早すぎる!千歌ねぇ何で⋯。」

 

分からないことだらけだ。何かそうならざるを得ない状況なのか⋯単純に開始時間を間違えたか⋯。

ライブはそのまま進んでいったが、心無しか皆の顔が浮かない気がする。

 

そして、事件は起きた。

 

近くで雷の音がなったと思ったら、学校内の電気も音響も全て消えた。

停電だ。

流石に会場内がざわつき始める。満員にならなかった上に、このままだと停電のせいでライブそのものが中止になりかねない状況だ。

 

「何だよこれ⋯皆が、千歌ねぇが何したってんだよ⋯!」

「涼介⋯。」

 

3人共あんなに必死になって、初めての事ばかりだったのに本気で取り組んできた。なのにこんな⋯。

高海家に来てから初めて流した悔し涙が頬を伝う。どうすることも出来ない自分が悔しい。

ステージの上で歌うあの人に言葉をかけたい。

泣きそうな顔をしたあの人を抱き締めてあげたい。

そんな事をしても、現状が変わるわけじゃないのは分かってる⋯。

それでも⋯!

 

 

「バカ千歌ーーー!!」

 

 

突然体育館の扉が開き、声が響いた。

 

 

「み、美渡⋯ねぇ⋯?」

「アンタ開始時間間違えたでしょ!!」

 

さっきまで真っ暗だった体育館に電気がついた。

目の前に広がっていたのは、観客で埋まった体育館。文字通り、満員だった。

 

 

「おわ!なんだなんだ!?非常電源がついたのか??」

「すっご⋯いつの間にこんなに人が⋯!」

「ったく、世話かけやがって。」

「美渡ねぇ、やっぱり来てくれたんだ!」

「⋯大雨でたまたま休みになったから来ただけだよ。」

 

そっぽを向いてそう呟く優しいお姉さん。

素直じゃないと言ってた志満ねぇの言葉を思い出して、ちょっとだけおかしくなってくる。

 

「あはは⋯そっか!そういう事にしておくよ。」

「何泣きながら笑ってんのさ、泣き虫小僧。」

 

ライブは無事終了。

約束通り体育館をお客さんで埋めた千歌ねぇ達3人は、浦の星女学院の正式なスクールアイドル部『Aqours』としてこれから活動していくことが決まった。

ライブ終了後、宗弥と別れた俺は千歌ねぇ達のところへ急いでいた。なんて言葉をかけようかなんてその場任せでいい。

 

たった一言伝えたかった。

今まで見た中で、1番輝いていたって。

 

「千歌ねぇ⋯!」

「りょーちゃん!やったよ私、やりきって⋯」

 

彼女が言い終わる前に抱き締める。

 

「うぇえっ!?///ちょ、どうしたの!?///」

「お疲れ様⋯!心配したよ⋯。皆本気で頑張ってたのに、あれで終わりだったらどうしようって⋯!」

「⋯ありがとね、りょーちゃん。」

「それから!開始時間を間違えるとか、心臓に悪い事は勘弁してくれよ⋯。」

「それは⋯本当に申し訳ありません⋯。」

「でもさ⋯⋯輝いてたよ、千歌ねぇ!」

「りょーちゃん⋯!」

「いや〜お熱いですなぁ桜内さん⋯。」

「ふふ、微笑ましいじゃない渡辺さん♪」

 

ずっと抱き締めてたからようやく気づいたけど、何やら先輩2人がニヤニヤしていらっしゃる。

あの顔は後々からかわれるやつだ⋯。

 

「?どーしたのりょーちゃん、ちょっと顔赤いよ?」

「や、その⋯あっついな〜ってね!ここここの場所温度高いんじゃないかな〜!?」

「涼介君⋯もしかして⋯。」

「あぁ〜⋯頑張ってね涼介君!千歌ちゃんは手強いよ?」

「はは⋯頑張ります⋯。」

「え?何?私強いの??」

 

クエスチョンマークだらけのこの人は置いといて、曜さんと梨子さんにはバレてるらしい。

ええい、ままよ!

 

「と、取り敢えず美渡ねぇが車で送ってくれるみたいなので、そろそろ帰りましょう!千歌ねぇもお疲れ様!さ、帰ろう?」

 

彼女の手を握って、美渡ねぇの元へ歩き出す。

相変わらず小さい手だなぁ。

でも暖かい。

 

「あ⋯。」

「ん?どうかした??」

「⋯ううん、何でもない!行こっ、りょーちゃん♪」

「あぁ!」

 

手を繋いだまま走り出す彼女の後を、俺も追いかける。

 

「⋯曜ちゃんは幼馴染みとして今の千歌ちゃんをどう思う?」

「あれは難しいですね〜⋯多分千歌ちゃんは戸惑ってるんじゃないかな?弟みたいな存在だった涼介君もすっかり男の子に成長してるから。」

「そっか⋯ねぇ、ちょっとだけ賭けてみない?」

「え?何に?」

「千歌ちゃんと涼介君がどうなるか♪ちょっと耳貸して?」

「あ〜⋯。ははっ!私も同じ答えの場合は賭けになるのかな?」

 

そんなやり取りが裏で行われていたことを俺が知ったのは、まだ少しだけ先の話だった。




準レギュラー出ましたね。
なちょすがお送りする準レギュラーはピンチヒッターです。頑張れ宗弥。
涼介、宗弥、謎の堕天使⋯全員が再び集う日は来るのか!謎の堕天使とは一体誰なんだ!?教えてくれ善子!!
次回は千歌っちの一挙手一投足に涼介が悶々したり、無自覚涼介が千歌っちを戸惑わせたり一緒に寝たry
頑張ってイチャコラさせます。
この2人一緒に寝てばっかだな⋯。

P.S.美渡ねぇには愛のある喧嘩でずっと千歌っちを支えて欲しい。
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