泣き虫小僧はミカンがお好き   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ。
繁忙期、なちょすです。
結局自分の中では王道が最強だと、この間映画見て思いました。
これでひとまずいい区切りですよ。次回からはペースが遅くなります。

後は頼んだ、準レギュラー。


不幸だなんて言わせない(閑話休題)

雨でも降るんじゃないかってくらいどんよりとした曇り空。こんな日は誰かが悲しんでるんだって、昔好きだったヒーローが言ってたっけ。

俺は歩みを進める。昔遊んだ思い出の場所へ。

俺と涼介と善子で見つけた秘密基地⋯内浦の海が一望できる少し小高い丘の上。

確証なんてない。

ひょっとしたら無駄足かもしれない。

でも、『誰か居る』。

そんな理由も無い直感を頼りにここまで来たんだ。

人気の少ない藪を漕いで林の中を進むと、少しだけ広い場所に出る。そこが俺達の秘密の場所だった。

そして、体育座りで抱え込む一人の女の子が⋯そこに居た。

 

「やっぱり居たか。流石に風邪引くぞ善子?」

「⋯⋯。」

 

反応の無い体に、俺は着てたコートを掛けてやる。

彼女は膝に顔をうずめたまま、一向にあげようとはしない。

 

「⋯当ててやろうか。腹が痛い。」

「⋯⋯。」

 

無言という事は違うらしい。

 

「今日もついてない1日だった。」

「⋯⋯。」

 

またもや違う⋯まぁ、想像はついてるんだけどな。

 

「失恋したろ?涼介に。」

「⋯⋯何で。」

「その何ではどっちのだ?」

「何でそう思うわけ?」

「丸わかりだよ。中学の頃から、善子恋する乙女の顔してたもんなぁ。」

「してない。」

「無意識にあいつの事顔で追ってたし。」

「私じゃない。」

「いやいや⋯。」

 

変な所で強情だな⋯。

しょうがない、顔上げてもらうか。

 

「ちょっと失礼致しますよっと。」

「ん⋯何よ。」

「そんなに目を真っ赤にして、説得力皆無だっつーの。」

「⋯うるさい。」

 

ありゃ⋯怒られちった。

でも無理もないわな。好きになったやつは1人の人間しか見てなかったんだから。

 

「よし、叫ぶか!」

「は?何言って⋯。」

「涼介のバカヤローーーーー!!!!」

「ちょ、あんた何してんのよ!」

「昔っから、なんかあったら叫べばいいって言うだろ?それにここなら人も来ないし、最高のロケーションだ。」

「何よそれ⋯。」

「叫ぼうぜ。でっけー声で、溜まってるもん全部出しちまえよ。」

 

善子は黙って立ち上がる。

そうして息を吸いこんで⋯叫んだ。

どっかの泣き虫に聞こえるくらい大声で。

 

「涼介のバカーーーー!!私が、どんな思いで過ごしてきたと思ってんのよーーー!!」

「おぅ、言ったれ言ったれ!」

「こっちの気も知らないで惚気けてんじゃないわよーーー!!」

「中学の修学旅行で女湯覗いた仲なのに裏切りやがってーーーー!!」

「あんた達何してんの!?」

「いやさ?修学旅行と言えばこれっていうぐらい定番じゃん?だから無理矢理涼介を連れて女湯に⋯。」

「馬鹿だと思ってたけどそこまで馬鹿とは⋯。」

「オメェだけ善子の身体見れたらしいけどふざけるなーーーー!!!」

「こっちのセリフよっ!!///」

「うぼぁっ!!」

 

強烈なグーパンチ!ええいこの堕天使め⋯そんなに華奢な身体のどこにこんな力を⋯!!

 

「⋯見たの?涼介。」

「修学旅行帰ってきてから1週間ぐらいあいつ善子と目を合わせてなかったろ?そゆこと。」

「⋯⋯最悪///」

「俺は見れなかったけどな!」

「聞いてないわよ覗き魔っ!!///」

 

あの時は流石に俺も不味った。

もっと計画的にやるべきだったな⋯ってんな事はどうでもいいんだよ。

 

「やっと元気になった。」

「これを元気って言うならあんた眼科行きなさい⋯。」

「ははは!やっぱりお前はいつも通りギャーギャー言うくらいが丁度いいや。」

「あら、喧嘩売ってるなら買うけど?」

 

そうだ。こいつにはこんな顔が似合ってる。

泣き顔なんかより、馬鹿やって笑って⋯たまに赤くなって。

さて⋯もういっちょ叫びますか!

 

「涼介のアホンダラーーー!!俺の好きな女の子泣かせやがってぇーーーー!!」

 

何をするにも2番目だった。

『リトルデーモン2号』。

ずっと取れることは無かった、俺に押された烙印。

なぁ涼介⋯このぐらいは許されるよな?

 

「ありえないほど運が悪くて!!友達作るのが下手くそで!!周りに気を使えるのに自分の事は後回しにして!!そんな不器用な堕天使を泣かせんなぁぁあああああっ!!」

「宗⋯弥⋯⋯。」

「ふぃ〜⋯叫んだ叫んだ。叫びすぎて腹減っちまったし、帰ろうぜ。」

「待ってよ!今の⋯。」

「⋯⋯。」

「本気、なの?」

 

ほほぅ、この可愛らしい堕天使はまだ疑ってるときた。俺の魂のシャウトが届いてなかったのかな?

 

「本気だよ。俺は善子の事好きだった。中学の頃から⋯今も大好きだ。」

「それじゃああんたは⋯宗弥は、ずっと⋯。」

「⋯不器用だよなぁ俺達。いや、俺の場合は師匠の影響が強いな。うん。黙ってたのはおあいこ様ってことだよ。」

 

涼介が好きなのに伝えられなかった善子。

そんな善子が好きだったのに何も言えなかった俺。

似たようなもんだ。

いや⋯振られたばっかの女の子に告白しただけ、俺の方が最低だな。

 

「悪かったな、振られた直後にこんな事言っちまって⋯。」

「⋯本当ね。私、どうすればいいのよ⋯。」

「好きに決めてくれ。俺はお前の前で気持ちを言えた。それだけで充分満足なんだよ。ぶっちゃけ付き合えたらそれはもう死ぬほど嬉しいけど、そんな高望みはしちゃいない。それに⋯このタイミングでしか言えなかった最低野郎だからな。」

 

俺の事を少しでも見て欲しかった。

涼介だけじゃなくて、俺もいるんだって気づいて欲しかった。

そんなわがままの塊。

 

「でもさ⋯言いたかった。お前がどれだけ不器用で、どれだけ不幸で、どれだけそんな自分が嫌いだったって⋯そんなお前を、誰よりも好きな奴がここに居るって事を。」

 

折角泣き止んだこの子の顔を、再び涙が伝う。

何を言うわけでもなく、ただただ俺の方に歩いてきて抱き着いてくる。

 

「⋯あんた、馬鹿じゃないの⋯⋯?」

「だから馬鹿なのは師匠譲りだって。」

「うっさい⋯。すぐに答えなんて、出せない⋯そんなに軽く決めたく無いから⋯。」

「⋯そっか。」

「それに、私あんたの事ろくに知らないのに付き合えるわけないじゃない⋯。」

「はは、ごもっとも。」

「だから、これから教えてよ⋯宗弥の事。そしてあんたも私の事知りなさい⋯不公平だから。」

「それはつまり裸を見せてくれるという解釈で良いのか?」

「本当死ねばいいのに。」

「辛辣ぅっ!?」

「⋯気持ちの整理がしたい。」

「あぁ。」

「時間かかるわよ?」

「知ってる。」

「ワガママとか堕天使とか言うし⋯。」

「全部可愛いな。」

「不幸だって持ってる!」

「その分幸せにしてやる。」

 

それでコイツが隣で笑っててくれるんなら⋯俺は何を掛けてもいい。

 

「ずっと2番目だった俺の事を1番だって言ってくれるまで、何日でも、何ヶ月でも⋯何年でも待ってるよ。」

「ありがとう⋯でも1つ訂正よ。」

「へ?」

「私の事好きって言ったの⋯その⋯あ、あんたが⋯初めて、だから⋯///」

「⋯⋯。」

「なんか言いなさいよ!///」

「え、あ、いや⋯⋯。」

 

やっべえ⋯ニヤケが止まらねぇ⋯!え、何これ?普段つっけんどんな女の子ってギャップヤバくない?それともこれが惚れた女の弱みってやつ?俺男だけど。

落ち着けぇ⋯落ち着けぇ俺⋯すーはー⋯すーはー⋯。

 

「じ、じゃあこれからはヨハネ様に一生の忠義を尽くさせて頂きます!」

「ふふっ、殊勝な心掛けよリトルデーモン。」

「では失礼して⋯。」

「え?」

 

善子のおでこに、軽くキスをする。

 

「な、ななななななな!?!?///」

「忠義だけに⋯チュー?」

「やかましいっ!!///」

「へぶぁっ!!」

 

グーパンという代償の代わりに真っ赤な顔した天使を拝めたから良しとしよう。

急ぐわけでもない。

ゆっくりと⋯時間がかかってもいい。

 

 

 

もう、君を不幸だなんて言わせないから。




これは⋯もう付き合ってるんじゃないですか?
でも書くの楽しかった⋯何だかんだ言ってこの二人が一番早く一線越えそうですね。

作者誰ですか?(怒)

また忘れた頃に、この二人の話をねじ込みたいと思いますよ。
なんなら別枠で出したいくらい。
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