「「「は???」」」
「あれ、意外だな。お前らのことだからもっと大騒ぎすると思ったんだが」
予想外の生徒の反応に秋人は少し驚いていた。
「当たり前ッスよ、武ちゃんはなんでこうも生徒の盛り上げ方が悪いのかねぇ…」
高身長の
「あっきー!男の子?イケメン?もしかして彼女いたりしちゃうの?」
「落ち着けってリサ。相変わらずイケメン大好きだなお前は」
目を輝かせるリサを茶髪のポニーテールの
「まぁ俺としてはこれ以上個性的なヤツに来られてもめんどいだけなんだがな...聞いた話によると男子らしいな」
「よっしゃあオルァ!!!」
「...別にイケメンだとは言ってねーぞ」
「ガックリ...」
リサは心底がっかりしたように肩を落とす。
「まぁいい、そろそろ呼ぶぞ。おーい!入ってこーい!」
ガラガラ、と教室の扉が開く。
入ってきたのは幸機と同じくらいの身長の銀髪の...イケメンだった。
「流石あっきー!期待を裏切らないわぁ!」
「おお!なんか凄いのが来たね!」
「......!!」
リサはイケメンが来たことに狂喜乱舞し、翠はほーほー、と言いながら転入生を見つめ、凛華は目を丸くして何やら警戒心を抱いているようだった。
「とりあえず自己紹介だけしてくれ。名前、誕生日、あとはテキトーに好きなスリーサイズとか言いたいこと言ってくれ」
秋人に指示されると転入生は淡々と言った。
「
「「「.........」」」
灰牙から出た言葉はまるで、お前達と仲良くするつもりは毛頭ない、と言っているようだった。この発言にクラスは一瞬、静まり返る。
「おおぅ、これまた一段と個性的な...まぁ皆、仲良くしてやってくれ。ちなみにこいつは教室から神虎玉寮で住むことになった。ええと、神虎玉寮に住んでるヤツは......」
「あ、俺たちです」
蒼真が答える。
「ああお前らか、なら安心だな。コイツ、まだ寮の場所知らねーから案内してやってくれ」
「わかりました」
「じゃ、今日はもうかいさーん。寄り道は......してもいいけど日が変わる前には帰りなさいよ、じゃないと先生は心配で夜しか眠れなくなっちゃうからね」
秋人は怠そうに教室から出ていった。するとクラスにはまた活気が戻る。
「なぁリサ!今からどっか遊びに行かねーか?どーせ暇だろ?」
「ダメー、私は今からハイガ君をデートに誘うんだ〜♪」
「いや、神狩はファミリーの皆との用事があるから今日は無理だろ。諦めてアタシについてきな」
「むぅー、しょうがないなぁ。ハイガ君!まったね〜!!」
「......」
リサと沙弥夏は足早に教室を出ていった。それから続々と家に帰る者や遊びに行く者が教室をあとにする。蒼真はファミリーを引き連れ、まだ席に座り続けている灰牙に声をかける。
「神狩」
「......何だ」
「これから俺たちは帰るけど、お前まだ寮の道知らないだろ?俺たちと一緒に帰ろう」
「別に食べたりしないから大丈夫だよー!」
翠がニコニコと言う。
「...必要ない。俺一人で帰れる」
「そんなこと言うなって、同じところでこれから暮らすんだから名前と顔くらい覚えてくれよ」
「そうそう、知ってて損はないと思うよ〜?俺らはなんてったって」
「アイドル?」
「違うわミドリ!ってか、ボケが古いな!今どきの高校生には分からないから!!」
「俺たちは虹友ファミリーって言ってな!最強のファミリーなんだぜ!」
翔が斬夜のセリフを奪う。
「最強...?」
「ああ、俺たちは最強のグループだ。とりあえず、その話は帰りながらでいいか?」
蒼真の問いに少し考えた後、灰牙は頷く。
「いいだろう。今回は一緒に帰ってやる」
「なんでそんなに上から目線なの...?」
桃葉が苦笑いする。じゃあ行くぜ!と翔たちが教室を飛び出した後、蒼真も教室を出ようとすると、
「ん?どうしたリン?」
きゅっ、と凛華に袖を掴まれた。そのホワイトボードには、
『神狩灰牙、なんかアイツから変な感じがする。』
と書かれていた。やはりそうだったかと蒼真は納得する。
「そうだな、正直俺も只者じゃないとは思ってるけど今は大丈夫じゃないか?少なくとも、俺たちに害はないさ」
「......ならいいけど...」
凛華は今ひとつ納得いかないようだった。そんな凛華の頭を蒼真は撫でる。凛華は気持ちよさそうに目を細める。
「さ、俺たちも帰ろう。皆を待たせてるぞ」
「......うんっ」
帰り道、灰牙に皆は自己紹介していた。
「俺はファミリーのリーダー、紅月翔だ!好きなものは甘いもの!冒険だ!これからよろしくな!」
「私は那須桃葉!好きなものは少ね......少女マンガ!よろしくね!」
「俺は柊斬夜。好きなことは歌かな〜。ま、仲良くしてね〜」
「ハイハーイ!安倍翠だよーん!好きなものはいたずらとファミリーの皆!寮にいる時は頭上に気をつけてた方がいいよ〜♪」
『白浜凛華。よろしく。』
「麻宮蒼真だ。料理が好きかな。よろしく」
「......」
6人が挨拶をしても灰牙は興味を示さない。ただ黙々と歩き続けている。
「これは相当めんどくさい転入生だよ......」
「んー、なんとかして仲を深められないもんか...」
斬夜と翔が頭を悩ませていると、
「あ!じゃあハイガの歓迎会やろうよ!」
と桃葉が提案した。
神虎玉寮リビング。そこはいつもと違った光景が広がっていた。壁には風船や折り紙などが貼られ、大きな字で「ようこそ!神狩灰牙君!」との文字が。テーブルもクロスが敷かれ、まるで小さな学園祭のようだった。テーブルには灰牙と蒼真以外のファミリー6人が座り、蒼真の料理が完成するのを今か今かと待っていた。
「ホイ、出来たぞー」
蒼真はそれぞれ皆の好きな料理を作っていた。翔にはオムライス、桃葉にはちらし寿司、斬夜にはハンバーグ、翠には野菜炒め(丼いっぱい)、そして灰牙には醤油ラーメンがそれぞれ出された。
「「「「「おおー!!!」」」」」
灰牙以外の5人は目を輝かせ、いただきますも言わずに食べ始める。
「これはなんという食べ物だ?」
「ん?お前ラーメン知らないのか。変わってるな」
蒼真も同じ醤油ラーメンを自分のテーブルに置いて灰牙に食べ方を教える。
「麺をすすって食べるんだよ。結構美味いぜ」
ズズっと食べる蒼真を真似て灰牙もラーメンをすする。するとしっかりとした醤油ベースのスープに麺が絡み、灰牙の空腹を満たす。
「...ラーメン、なかなかいい味だ」
「相変わらず上から目線だな。気に入ってもらえて何よりだ。おかわりあるから欲しかったら皆も気にせず言ってくれ」
「「「「「おかわり」」」」」
蒼真が言うより早く、5人は自分の皿を蒼真に出していた。
「早すぎだろお前ら、神狩は......お前も早いな」
「そりゃそーだよ!ソーマの料理は世界一ィ!だからね!!」
翠がビシィっと人差し指を立てる。
「確かにお前の料理は美味い。それは自信を持て」
灰牙も蒼真の料理の腕を褒める。
「ありがとな。じゃあ腹いっぱいになるまで食べてくれ」
食後、デザートの苺のショートケーキを食べながら歓迎会の続きをしていた。
「「「「「灰牙!神虎玉学園へようこそ!!」」」」」
ファミリーの皆はクラッカーを鳴らし、灰牙に歓迎のメッセージを送った。凛華は無言だったが。
「これからお前は俺たち2ーEの仲間だ!よろしくな!」
「『仲間』......?」
差し出された翔の手を灰牙は払った。
「いてっ!何すんだよ!」
灰牙は翔を睨みつけながら、
「くだらない。俺はお前らや他の奴らの仲間になる気は一切ない。俺に仲間なんて必要ない」
そう言って灰牙は自分の部屋へと戻っていった。灰牙が去った後のリビングは先程のような明るい雰囲気は無くなっていた。
これが謎めいた転入生、神狩灰牙が虹友ファミリーと過ごす最初の日だった......