今回は私の好きな作品のクロスオーバーです!
これまでとは少し違うラブライブ!サンシャイン!!の世界へ案内いたします。
人も街も草木も眠る深夜。
少しだけ都会な街並みの真っ暗な路地裏はゴミが散乱している。そこに転がっているのはゴミだけでなく、頭から血を流した体格のいい青年も数人いる。もちろん、彼らは死んではいない。気を失っているだけ。
そんな状況の中で少女が1人、立ち尽くしている。彼女の手からは血が滴っている。
「なんでこんなことになったのかなぁ・・・」
少女は真っ黒な空を見ながら、ため息を漏らす。
「ヤァヤァヤァ。見事な仕事っぷりデスネ」
カタコトの日本語を話しながら少女の後ろから褐色肌の男性がやって来る。
「いつも通りですよ。私にできることってこのくらいしかないですし」
「uum・・・。そんなことはないのデスガ。貴女がそういうなら、そういうことにしておきましょう」
愉快に笑う男。
その姿に少女もクスッ、と笑う。
「じゃあ、私は先に車で休んでます。後処理、よろしくお願いするであります!」
「エエ。おやすみなさい」
少女はスキップしながらその場をあとにした。
少女が行ったことを確認し、男は周囲を見渡す。
少し奥、そこには少女より少し年上の女性が綺麗な寝息を立てて、座っている。男はそれを見て吹き出すように笑う。
「マッタク。変に器用だ、彼女は。さて、私も仕事をシマスカ!」
遡ること、数ヶ月前。
まだ、夏の暑さが残る季節。
ここ、静岡県沼津市内浦。山と海がこの町の魅力だが、田舎ということもあり、近辺の学校は統廃合を繰り返し、年々減ってきている。そんな中に廃校を抱えてはいるものの一際輝く学校がある。
それは浦の星女学院。
この学校も統廃合の問題を抱えているが、そこには今、怒涛の勢いを見せているAqoursというスクールアイドルグループが存在しており、彼女たちのお陰で浦の星女学院は注目を集めている。
メンバーは9人で、それぞれ理由を持って活動に取り組んでいる。
時間帯も夕暮れになり、Aqoursメンバーも帰宅の時間。
みなバス通学をしている事もあり、日々の練習も終バスまでとなっている。
「じゃあ、また明日ねー!」
「うん、またね」
「see you!」
あわしまマリンパークのバス停で3年生の松浦果南と小原鞠莉が降りたことで、バスには2年生の渡辺曜と1年生の津島善子が残る。
この2人は家が沼津にあり、片道1時間弱の道を毎日通っている。
「ふーっ。今日も疲れたね、善子ちゃん」
「ヨハネよ。曜はそんなこと言いつつ、いつも元気じゃない」
「うーん。そんなことないけどなぁ」
「あるのよ。ダンスもして衣装も作って、それに飛び込みもやって。貴女、化物?」
「日課だからそんなことないんだよ、よーしこー!」
「ヨハネ!」
いつもの様に曜は後輩をいびりながら、このバスの時間を楽しんでいる。
すると、善子はため息をつく。
「お?どーした?よーしこー」
「だから、ヨハネ!全く、ヨハネには変な絡み方するくせに、千歌にはヘタレなんだから」
「えー。善子ちゃんが言う?」
「私が言いたくなるほどなのよ」
「まあ、千歌ちゃんは、その・・・」
高海千歌。
曜の幼馴染みでAqoursのリーダー。曜はこの千歌に何年も片思いをしている。
「貴女ねぇ、さっさと告白しちゃえばいいじゃない」
「うっ」
この通り、曜は千歌に対しては弱く、いつもが嘘のように大人しくなる。
「もう!ケータイ貸しなさい!」
善子は曜のスマホを奪うと、何やら打ち込んでいる。
「はい」
善子から返されたスマホの画面を見ると千歌へメールを送信した、と表示される。慌てて内容を読むと千歌を屋上に呼び出す文があった。
「ちょっと!?何してくれてんの!?」
「いつまで経ってもうじうじしてるからイライラして」
「この悪魔!堕天使!」
「ククッ、最高の褒め言葉よ」
善子は決めポーズをとって、低い声で言う。
彼女は中二病なのだ。自らをヨハネと名乗るほど重度の。
「もう・・・。これ、完全に告白する流れじゃんかぁ・・・」
「ま、頑張りなさい」
善子は素っ気ない態度で言うと、曜はその善子をくすぐる。
「ちょっ!やめて!キャハハハハハ!」
「このこの!・・・・・・はぁ」
曜はくすぐる手を止め、ため息をつく。
「まあ、これもきっかけだよね。明日、頑張るね」
「ええ。健闘を祈るわ」
「じゃあ、私はここで降りるね。じゃーね!」
「さようなら」
曜は手を大きく降って善子を見送る。
バスが見えなくなると、いつものように今日あったことを思い出し、笑いながら帰宅する。
「いーみしーんなーこえでー・・・、ん?」
誰もいないいつもの道を歌いながら進んでいると、男が道の端で蹲っていた。
「あの、大丈夫ですか?」
曜は恐る恐る声をかける。
「うっ・・・。わた・・・なべ・・・?」
「え?」
彼は曜のことを知っているらしい。
記憶を辿りに彼を思い出す。
「もしかして、中学のクラスメイトの」
「あ、あぁ・・・」
「やっぱり!?うわぁ、懐かしいなぁ」
「いいか、ら・・・。逃げろ・・・」
「え?」
曜は突然言われたことに理解できず、首を傾げる。
「逃げてくれ・・・。俺は渡辺を・・・。ぐっ・・・!」
「ねえ、大丈夫!?救急車を」
曜はスマホを取り出し、119番に連絡しようとする。
「わた・・・なべぇ・・・!!」
「何?きゃぁっ!!」
男は曜を組み伏せ、上に乗りかかる。
「や、やめて!洒落じゃ済まないよ!?」
「俺は・・・俺はァ!!」
息を荒くし、顔が近づいてくる。
「い、イヤだ。やめて。お願いだから、やめて!」
「俺は・・・、お前を」
「殺したい」
「え?」
その瞬間、男は曜の首を締め上げる。
「うっ・・・!ギッ・・・!」
曜自身、体を鍛えるのも趣味でその辺の同年代の男には負けないと自負していたが、この男の力は異常だった。
必死に首に回された手を引き離そうとするが、全く動かない。
体を暴れさせ、抵抗してもびくともしない。
「うぁっ・・・・・・、あがっ・・・・・・」
曜の視界は段々白くなり、意識も薄れていく。
「ああっ!いいよ!いいよ、渡辺!最高だ!いつも明るいお前が苦しんで!もがいて!最高の景色だ!」
男は曜の首を締めながら狂気、いや狂喜の声を上げる。
「あの渡辺が!みんなの憧れの渡辺が!俺の手の中で死のうとしている!!これほど最高なことはあるのか!?いや、ないッ!!」
笑いながら叫ぶ男。彼の手の力はますます強くなる。
「イヤ・・・だよ・・・。ち・・・か・・・ちゃ・・・・・・」
その時。
「ぐふっ!?」
途切れそうになる意識の中、千歌の名前を細く呼んだ瞬間、体にのしかかっていた重みと、首についていた締めつけが無くなった。
「ゲホッゲホッゲホッ!!」
「君、大丈夫?」
曜はなんとか体を起こし、見上げるとそこには細身の男がしゃがみこんで、曜を心配そうに見ていた。
「え、ええ・・・。なんとか・・・」
「だったら早く逃げてくれ。ここは危ない」
男は曜の肩を持ち、立たせると、庇うように前に出る。
男が見つめる先には数メートル先に倒れているクラスメイトだ。
「あ、あの!危ないのは分かってるんですけど、彼、苦しそうにしてたから、救急車を」
「大丈夫。俺はああいう人を助けるためにここにいるから。早く行くんだ!」
「は、はい!」
曜は恐怖で今にも溢れだしそうな涙を零さないように、必死に家に走る。振り向いてはいけない。振り向いたら今度こそ殺される、と言い聞かせ、死の恐怖から逃げる。
「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!・・・はぁ・・・、・・・はぁ・・・」
自宅の自室まで止まることなく駆け込み、ベッドに倒れ込むようにうつ伏せになる。荒い呼吸は収まる気配がない。
「ううっ・・・、怖いよ・・・怖いよ・・・。千歌ちゃん・・・。助けて・・・」
脳裏に浮かぶのは死が近づいてくるという感覚。
その恐怖に震えながらベッドの上で曜は泣き続けた。
夜が明けるまで。
いかがでしたか?
少しシリアスな雰囲気ですが、楽しんで貰いたいです。
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