血と死が蔓延する公園。
その先に待つものとは。
「あ、あれ・・・?」
朝の光。
その眩しさで曜は目を覚ました。
「ここは・・・、私の部屋?」
曜は体を起こし、辺りを見回す。
そこはいつもの自室。
「・・・私・・・」
今着ているのは何故かパジャマ。
それにいつもと変わらない朝。
ベッドの上のデジタル時計の日付を確認すると、1日過ぎていた。
「確か公園で気を失ったような・・・」
思い出すのは公園の惨劇。
千歌が攫われ、人が死んだ。
「うぷっ・・・」
曜はその出来事を思い出し、吐き気を覚え、口を押さえる。
「そうだ!千歌ちゃん!」
大事で、大切で、全てを捨てても守りたい存在。それを思い出し、部屋を見渡し、自分のスマホを探す。
気づけば吐き気もなくなっていた。
「あった!」
机の上に置かれたスマホをひったくるように掴みあげ、千歌の連絡先を表示させる。
電話をかけようとした瞬間、曜の指が止まる。
「あ、あれ・・・?」
指が動かない。
あと数ミリ指を動かせば電話がかかる。しかし曜の指はそこから動かず、小さく震えるだけだ。
「曜〜?起きてるの?」
扉の向こうから聞こえてきたのは曜の母の声。
「う、うん!起きてる!」
「早くしないと遅れるわよ」
「え?」
言われて曜は時計を確認する。時刻はもう7時を回っていた。
「やっばー!!なんでもっと早く起こしてくれなかったの!?」
「何回も呼んだわよ。返事しないから」
「寝てるんだから返事できるわけないじゃん!!」
慌てながら身支度を済ませ、家を飛び出る。
「行ってきまーす!」
「曜!」
家を出た瞬間、母親の声が聞こえ、曜は立ち止まる。
「何!?」
「小原さんにお礼をちゃんと言うのよ」
「鞠莉ちゃん?」
同じ部活の先輩、小原鞠莉の名前が出てきたことで、曜は首を傾げる。
「寝てる貴女を送ってきてくれたのよ。全くいつまでも帰ってこないと思ったら・・・。連絡くらいしなさい」
「う、うん・・・。行ってくるね」
モヤモヤする思考を残したまま曜はバス停に向かって走り出した。
バスに乗るといつもの席に善子が座っていた。
「あ、善子ちゃん。おはヨーソロー!」
「ヨハネよ。・・・おはよう」
「およ?」
善子にはいつもの元気が無く、曜は首を傾げる。
「どうしたの?また夜更かしした?」
曜は善子の隣に座り、顔を覗き込む。
「その・・・。曜が倒れて、千歌が怪我してって。もしかしたら私の不幸が2人に・・・、むぎゅう!?」
曜は善子の両頬をむぎゅっ、と手で挟む。
「善子ちゃんのせいじゃないよ。たまたま偶然が重なったの」
「・・・ふぇ、ふぇえ」
「あはは!何それ面白い!」
善子の変な声が曜にはツボだったようだ。
「えいえい!」
「ひゃ、ひゃめにゃしゃいひょー!」
「ふぅ〜。笑った笑った」
満足した曜は善子の頬を離す。
善子は頬を撫でながら、目を細めていた。
「ありがとね。私たちのこと心配してくれて」
曜の言葉に善子は顔を真っ赤にして顔を背け、腕を組む。
「ま、まあ?リトルデーモンの面倒を見るのもヨハネの役割なわけだし?」
「あー!もう可愛いな、よーしこー!」
「ヨハネ!だからやめなさいよ!」
善子は再び頬を揉みくちゃにされた。
「おはヨーソロー!」
朝の教室。
曜は挨拶をし、いつものクラスメイトの顔。
明るく挨拶を返してくれる当たり前に曜は昨夜の出来事が悪い夢のように感じる。
「あ、曜ちゃん」
梨子が曜に話しかけてくる。
「梨子ちゃん、おはよう」
「おはよう。体は大丈夫?」
「うん。体は大丈夫だよ。少し疲れが溜まってたみたい」
「それで暴れたりする?」
「あ、あはは・・・」
曜は誤魔化すように笑う。
「それで千歌ちゃんは?昨日のこと謝りたいんだけど」
話を逸らし、曜は親友の姿を探し、教室を見回す。
「千歌ちゃん、今日はお休みだって。なんでも千歌ちゃんまで昨日倒れたらしくて。鞠莉ちゃんの紹介した病院に行くって」
「・・・倒れた?」
「うん。倒れ方悪くて指を折ったあと、病院の帰り道で倒れてたのをたまたま通りかかった鞠莉ちゃんが見つけたらしいわ。LINE見てない?」
朝はドタバタしていて見るのを忘れていた曜。
自分のスマホを確認すると確かに鞠莉からのメッセージが届いていた。
「本当だ・・・」
「指を折って倒れてって、千歌ちゃん大丈夫かしら」
梨子は腕を組んで悩む。
「廃校を撤回することはできなかったけど、最後まで足掻くって決めた矢先にこれなんて・・・。ラブライブ本戦も近いから早く良くなって欲しいわ」
そう、浦の星女学院は存続のための条件として、受験人数100人を超えなければならなかった。
しかし、それは最後の最後で後一歩が届かず、廃校が決定してしまった。
「そう、だね・・・」
曜は千歌を心配すると同時に昨日の出来事を思い出す。
あれは夢ではなく、実際に起きた現実ということを改めて認識した。
(鞠莉ちゃんに見つけてもらったのが不幸中の幸いかな・・・)
学校には朝礼の鐘がなるのであった。
昼休み。
曜は理事長でもある鞠莉に理事長室に呼び出されていた。
「やっぱり、理事長室は緊張するなぁ・・・」
曜は扉を3回ノックすると、中からどうぞ、と声がした。
「失礼しまーす・・・」
中に入ると席に座った鞠莉とその隣に褐色肌の背の高い男がいた。
「ごめんね。いきなり呼び出して」
「ううん。あ、昨日はありがとう。送ってくれたんだよね。お母さんから聞いたよ。でも、昨日のことあまり覚えてなくて・・・」
「曜」
いつになく声のトーンが低い鞠莉。
その声色に曜は1歩後ろへ下がる。
「な、なに?」
「昨日、貴女は事件の中心に居たわね」
「・・・なんのこと?」
「惚けないで。私は全て、知ってるわ」
鞠莉は曜を睨んで逃がさない。
曜の額からは嫌な汗が滲み出る。
「や、やだな。事件なんて」
「3人」
「え?」
「3人、人が死んだ。そして、そこには曜、それに千歌っちが居たわ」
「・・・いじゃん」
「曜?」
曜は俯いてボソリ、と呟く。
「仕方ないじゃん!だって千歌ちゃんが襲われたんだよ!許せるわけないじゃん!あんな奴ら死んで当然だよ!」
声を荒げ、肩で息をしながら曜は叫ぶ。
「・・・それはあの場にいたことを認めた、ということでいいのね?」
「好きに捉えなよ・・・」
「そう」
鞠莉は立ち上がり、曜の前に立つ。
「私を逮捕するの?それとも死刑?」
「違うわ。協力して」
「協力・・・?」
思わぬ単語が鞠莉から出てきたことに曜は驚く。
「まず説明するわ。曜、貴女は病気よ」
「そんなことないよ。昨日だって検査したけど問題ないって・・・」
「・・・誰かを好きで、その人を殺したくて殺したくてたまらない。そんな衝動が貴女にはあるはずよ。そうね、千歌っちとか」
図星を突かれ、たじろぐ。
鞠莉はそんな曜を気にすることなく話を続ける。
「病名を『Intellect Destruction』。通称『ID』というみたいよ。治療方法は不明。感染方法も不明だけど有力な説は感染者と接触。または、突発的な発病」
感染者との接触で曜の心臓は跳ねる。
(あの時なの?帰り道に襲われた時なの・・・?)
「症状は好意を寄せている相手への殺意。それに伴い、超人的な力を得る。さて、曜。貴女にはどれだけ当てはまるかしら」
「・・・」
何も話さない曜。
「・・・分かったわ。ミスターネイブ、貴方から見てこの子はどう?」
「フム・・・。そうですね、昨日あの場で見てましたカラ。貴女のお名前、教えてくれませんカ?」
ネイブと呼ばれた褐色肌の男性は少し片言な日本語で曜に笑顔で話しかける。
「・・・渡辺、曜」
「渡辺サンですネ!よろしくお願いします!ワタシはネイブといいマス!」
ネイブと名乗った男は曜の手を握り、激しく振る。
「え、えっと・・・」
「貴女からはとても刺激的な匂いがシマス!是非ともワタシからも協力をお願いしたいのデス!」
たじろぐ曜に対し、ネイブは笑顔を振りまく。
「もし・・・。もし断ると言ったら・・・」
「この場で貴女を殺します」
「え・・・」
声の調子を変えず、ネイブは曜に殺すと告げた。
そして昨夜、曜が意識を失う寸前に聞いた声を思い出した。
「ま、まさか・・・」
「オヤ?気づかれました?」
「あの『JOY』って声、貴方なんですか?」
曜は震える声で尋ねる。
全身からも嫌な汗が吹き出て気持ちが悪い。
「はい!あれはワタシ。彼はもう手遅れでしタ」
「どういうことですか・・・」
「ワタシはID患者を保護し、治療方法を探すために動いてマス」
ネイブは曜の手を離し、真剣な顔付きで話す。
「IDには症状の段階があるのですが。これは好意の度合い、つまり殺意が高まれば高まるほど超人的な力を得ることができマス」
「それじゃあ・・・。私は・・・」
曜は自分の状況と照らし合わせる。
間違いなく曜の症状はまずい。
「殺されるんですか・・・?」
「いいえ」
「・・・え?」
拍子抜けな回答に曜は口を開ける。
「言ったでショウ?見ていたと。貴女は完璧とは言えませんが、殺意をコントロールできています。敵と見方を認識できる。これは通常の患者とは大違いだ」
ネイブは嬉しそうに笑い、続ける。
「症状が進みすぎた患者はもう手に負えません。見境なく虐殺を始める。貴女を締め上げたあの男のように。そうならないためにワタシは貴女のような患者を探し、協力を求め、ID患者の治療を確率させる。それにバックには小原家もついている」
そしてネイブは再び手を差し出す。
「ワタシたちのためにその力を貸していただけませんか?」
「・・・」
曜は俯き、考える。
「・・・少し、考えさせてください。私にはまだそういうのは分からないんです」
「分かりまシタ。いつでも歓迎しますヨ」
「それと」
「ハイ?」
「あの場にいたあと2人は・・・」
「あの2人は逃げましたヨ。足取りは掴んでマスのでご心配なく」
「曜」
今まで黙っていた鞠莉が口を開く。
「今日は千歌っちがいないから大丈夫だと思うけど、貴女を監視させて貰います」
「うん。仕方ないよ」
曜は苦しそうな笑みを浮かべる。
「だからいつでも頼ってね」
優しく微笑む鞠莉。
「ごめんね、鞠莉ちゃん」
「違うわ。ありがとう、でしょう?」
「・・・ありがとう、鞠莉ちゃん」
鞠莉の優しさで曜は涙を堪えながらお礼を言う。
「また練習で会いましょう。あ、そうそう。接触すると感染するとは言ったけど、トリガーがないと発病しないらしいの。そのトリガーが分かってないのも事実だけれども、いつも通り過ごして問題ないわよ」
「うん!」
小さく手を振る鞠莉に見送られ、曜は理事長室を後にする。
「ミスターネイブ」
「はい、なんでショウ」
「約束して。あの子を辛い目に合わせないで」
「・・・ゼンショはしますヨ。それはカノジョ次第デス」
放課後。
浦の星女学院屋上ではスクールアイドルAqoursが練習を行っていた。
「曜さん!またズレていますわ!」
「ご、ごめんなさい!」
ダンスのレッスンでいつも完璧な曜だが、この日は調子が出ず、ミスが多かった。
「一旦止めましょう」
手拍子を打ちながらリズムをとり、動きを見ていたダイヤが止める。
「これは千歌がいないからかな。心配で動けてないみたい」
果南が腕を組み、曜の今の状態を分析する。
「曜さん、調子が戻っていないのなら無理に・・・」
ダイヤも曜を心配している。
「だ、大丈夫だよ。次は上手くやるから」
「・・・いいえ。ここまでにしましょう。みなさん、体を冷やさないように」
ダイヤの声でみんな屋上を後にする。
「ちょっ、ダイヤさん!?本戦も近いんだよ!」
「今の貴女は見ていて危なっかしいのです。昨日倒れたのでしょう?尚更用心しないといけません」
ダイヤの言葉に曜は黙ってしまう。
「曜さんは頑張りすぎなのです。これを機に少し羽を伸ばしてみませんか?」
「羽を伸ばすって言ったって・・・」
「では、これからわたくしの家に来ませんか?バスの時間はまだまだあるので。それに時間もそこまで取りません」
「でも・・・」
突然の申し出で、曜はうろたえる。
「迷ってる暇はありませんわ。ほら、行きますわよ」
ダイヤは曜の手を握り、連れて行く。
「えっ!ちょっ、ダイヤさん!?」
「さ、着きましたわ」
半ば無理矢理連れてこられた曜の前には大きな和風の屋敷。
「相変わらず大きい・・・」
「そうですか?普通だと思うのですが」
「いやいや・・・」
「まあ、お気になさらず」
黒澤家そのものがこの内浦の網元の名家。
つまりダイヤは無自覚だが、十分すぎるほどのお嬢様なのだ。
「ただいま帰りましたわ」
「おかえりなさい、ダイヤさん」
玄関で出迎えたのはダイヤの母。
背は低いが、風貌はダイヤにそっくりだ。
「あら、お客様ですか」
「はい。わたくしがお招きしました」
「そうですか。では、母は下がります」
ダイヤの母は一礼し、奥の部屋へ入って行った。
曜はたった数秒だが、彼女の美しい動作に見入っていた。
「すご・・・」
「どうかされましたか?」
「あ、ううん!何でもないよ!」
惚けていた曜ははっ、とし慌てて取り繕う。
「では、少しお待ちください」
ダイヤに案内され、前に1度来たことのある縁側の部屋に通される。
(落ち着かない・・・)
曜はまるで無縁な空間に落ち着かないようだ。
「あれ?曜ちゃん?」
「あ、ルビィちゃん」
襖からひょこ、と顔を出したのは浦の星女学院1年生の黒澤ルビィ。
曜の後輩でダイヤの妹。そして、Aqoursのメンバーの1人だ。
「お客さんて曜ちゃんだったんだ。てっきり果南ちゃんか鞠莉ちゃんかと思ったよ」
「私もなんで今ここにいるのかよく分かってないんだよね・・・」
苦笑いで答える曜。
ルビィはハニカムとみかんを取り出した。
「お部屋で食べようかなって思ったけど曜ちゃんにあげるね」
「いいの?ありがとう!」
ルビィはみかんを渡すと行ってしまった。
みかんを食べながら待つこと数分。
着物に着替えたダイヤが琴を持って入ってくる。
「琴?」
「ええ」
「ということは、弾くの?」
「もちろんです」
ダイヤは丁寧な動きで琴を置き、弾く体勢になる。
曜はその動きを見逃さないように見入る。
素人目の曜からしても分かる。
既に演奏は始まっているのだ。
ダイヤは一礼し、弦に指をかける。
紡がれていく旋律は美しく、芯の通った音。
凛として、真っ直ぐで。
この音そのものが黒澤ダイヤという人物を表している。
「・・・いかがでしたか?」
演奏は終わり、ダイヤは正座のまま曜に尋ねる。
「す・・・、すごかった!」
満面の笑みで答える。
「琴の演奏はあまり聞いたことなかったけど思わず聞き入っちゃっよ!」
「ふふっ。それは良かった。どうですか?少しはリラックスできましたか?音楽には人の心を落ち着かせる力があります。梨子さん程ではありませんが、多少は音楽を嗜んでいるのですよ?」
「どういうこと?」
ダイヤの意図が読めない曜は聞き返す。
「曜さんに何があったのかわたくしは知りません。でも、相当無理をしているのでしょう?」
「それは・・・」
ダイヤは曜の異変に気づいていたようだ。
この琴の演奏も曜を気遣ってのことだ。
「曜さん、こっちへいらっしゃい」
ダイヤの言葉に従い、曜は立ち上がり、ダイヤの隣に立つ。
「ここへお座り下さい」
ダイヤは用意していた座布団を取り出し、そこに曜が座る。
「なんでここに?」
曜が首を傾げ、ダイヤに質問する。
「こうするのです」
「だ、ダイヤさん!?」
ダイヤは曜にハグした。
「果南さんが言っていました。ハグするとお互いに疲れが吹き飛ぶと。・・・眉唾物ですが、今の曜さんを見ていると何もせずにはいられなく・・・」
「ダイヤさん・・・。気にしないでいいのに」
曜も自然とダイヤの腕を握り、離れないようにする。
「そういう訳にはいけません。ただでさえAqoursでの曜さんの負担は大きいですし。それに仲間が、友達が辛そうにしているのを見ているだけ、というのはできないのです」
「そっか・・・。ダイヤさんは優しいね」
「できることをしているだけです」
ダイヤは曜の髪を撫でる。
髪を撫でるダイヤの手つきは優しく、曜は完全に体をダイヤへ預ける。
「・・・どうでしょうか。あまりこういったことは慣れていなくて」
「そんなことないよ。とっても落ち着く。私にお姉ちゃんがいたらこんな感じなのかな・・・」
「曜さんのお姉様、ですか・・・。きっと果南さんのように元気な方かも知れませんね」
「ふふっ。そうかも。・・・ありがとう、ダイヤちゃん。もう大丈夫」
曜のいきなりのちゃん呼びでダイヤは顔を赤らめる。
「は、はい。どうでしょう。少しは楽になれましたか?」
「うん!元気だよ!」
曜は笑いながら右手で力こぶを作る真似をする。
その仕草を見て、ダイヤは微笑む。
「そうですか。すみません、遅くなってしまいましたわね。家の者を呼んでご自宅までお送りしますわ」
「そんな、悪いよ」
「バスももう終わってますのよ」
「え?」
曜は部屋の時計を見る。
既に8時を回ってバスが無くなっていた。
「本当だ・・・。いいの?」
「勿論ですわ。さ、参りましょう」
黒澤家所有の黒塗りの高級車は曜とダイヤを乗せて沼津までの道を走る。
「そういえば、来週は学園祭・・・、ううん。閉校祭なんだっけ」
曜は思い出したかのように呟く。
「はい。せめて最後は楽しく終わろう、そう皆で決めて計画を立てています」
「そっか・・・。それにダイヤちゃんたちが最後の卒業生になるんだね」
「・・・そう、なります」
車内には沈黙が流れる。
聞こえるのは車の駆動音だけだ。
「でも!最高の思い出を作ろうよ!色んな人呼んでさ、私たちの学校を廃校にさせたことを後悔させるくらいの!」
「・・・はい!その為にもわたくしも頑張りますわ!」
顔を見合わせ、笑い合う2人。
それからは何気ない談笑を繰り返し、沼津の曜の家まで到着した。
「着きましたわ」
「うん。ありがとう!」
曜は車を降り、扉越しにダイヤに礼を言う。
「礼には及びませんわ。また明日お会いしましょう。よ、曜ちゃん・・・」
ダイヤに曜ちゃんと呼ばれ、一瞬キョトン、とする曜。
対してダイヤは顔を赤くしている。
「うん!また明日ね!ダイヤちゃん!閉校祭では鞠莉ちゃん、果南ちゃん。そしてダイヤちゃんが絶対に忘れられないことやるからね!」
「うふふ。楽しみにしておきますわ」
車は走り出す。
曜は車が見えなくなるまで大きく手を振って見送る。
「私も頑張らなきゃ。上手くコントロールしないとね」
頬を叩き、気合を入れ、曜は帰宅したのだった。
ダイヤの優しさに触れ、曜は進み出す。