ストライクウィッチーズ 一匹の狼   作:長靴伯爵

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今回は今までで最速更新ではないかと思います

筆が進む時は楽ですね

と、いうわけで第二一話です。

感想やアドヴァイスやミスの指摘など、よろしくお願いします





第二一話

 

 

 

島岡、ライーサの予想墜落地点

 

 

 

 神崎は上空から地上を注視していたのだが、何も見つけられていなかった。その時、島岡は神崎の操るBf109E-4のエンジン音を聞きつけ発煙筒を上げていたのだが、まだ若干暗い為に見つけられずにいた。

 

(予測通りならここら辺のはずだが・・・)

 

 神崎がさらによく調べるために高度を下げようとした時だった。

 

 爆発音が響き渡った。

 

「ッ!?どこから!?」

 

 音の原因はすぐに見つかった。一体ネウロイとビームによって空いた穴、そして島岡だった。

 

「シン!!!」

 

 神崎はすぐに炎を放とうとして止めた。このまま炎を放てば爆発に島岡を巻き込んでしまう。

 

「なら・・・!!!」

 

 神崎は扶桑刀「炎羅(えんら)」を抜くと逆手に構え、魔法力を集中させた。集まった魔法力は炎羅(えんら)を中心として渦巻き、炎を纏い、そして槍の形状を形作る。神崎は炎の槍を振りかぶると、魔法力で強化された筋力と炎による推進力を使って全力で投げつけた。

 

「ラァァァアアアアアア!!!」

 

 気合の声と共に放たれた槍は一直線にネウロイに飛んでいき、硬いはずの装甲をいとも簡単に溶かして貫通し、コアを焼き尽くした。貫通力を念頭に置いた攻撃のため爆発はない。

 神崎は白い粒子となり崩れ始めるのネウロイを尻目にすぐに島岡の元へと向かう。

 

「シン!」

 

 神崎が島岡のところへ降り立つと、島岡はよろよろと立ち上がって言った。

 

「遅せぇんだよ・・・。どんだけ待たせるんだ」

 

「こっちも立て込んでてな」

 

 軽口を叩き合うと、島岡は急に真剣な顔になった。

 

「まだ、敵は沢山いる。ライーサがやばい」

 

「いや、彼女は大丈夫だ」

 

「何言ってんだよ!早くあっちに・・・」

 

 と、島岡が神崎を促そうとした時、零戦のある方向から大きな射撃音が鳴り響いた。

 

「だから大丈夫だと言っただろう?」

 

 呆気にとられる島岡に地面に突き刺さった炎羅(えんら)を抜きながら神崎が自信満々に言った。

 

 

 

 

 

「頼みたいことがある」

『いきなりどうしたの?』

「仲間が落とされた。助けてくれ」

『ちょ・・・!?何を言って・・・!?』

「どうしても助けたい」

『・・・』

「・・・頼む」

『・・・分かったわ。詳しく教えて』

「恩に着る。場所は・・・」

 

 

 

 

 

 ライーサは零戦の下から必死に這い出そうとしていた。早く島岡を追わないと彼が死んでしまう。しかし、身体の痛みがそれを邪魔していた。

 

「・・・つ・・・くッ・・・!?」

 

 無理やり身体を動かしていると後ろの方から足音が聞こえた。さらに三体のネウロイが砂丘を超えてやってきたのだ。

 

(・・・シンスケ・・・!)

 

 半ば諦めて目を瞑ったライーサだが、そこで新たの音を聞きつけハッとしてその方向を向いた。そして・・・。

 

「C中隊、救援にきました!」

 

 砂埃を巻き上げてマイルズ、そして副官ソフィを始めとした部下11両が現れた。

 

「前方敵3!」

 

「目標に近づいています!」

 

「敵を目標から引き剥がす!四名、私に続け!突撃(チャージ)!!」

 

「「「了解!!」」」

 

 敵がライーサに近づいているのを確認するやいなや、マイルズは自ら先頭に立ち突貫した。

 

「はぁぁぁあああ!!!」

 

 シールドを展開した体当りでネウロイを吹き飛ばす。残り二体も部下が纏めて吹き飛ばした。

 

「撃て!!近づかせるな!!」

 

 五人が持つカノン砲が火を吹き、ネウロイに止めを刺した。遅れてきた部下も加わり、こちらに進軍してくる陸戦ネウロイに弾幕を張る。

 

「目標確保しました!」

 

 その間にソフィともう一人の部下がライーサを助け出していた。マイルズは両側から支えられたライーサを確認するとすぐさま指示を出した。

 

「後進微速!もう一人を回収した後に撤退させる!」

 

 射撃を続けながらもゆるゆると後退し始めるC中隊。砂丘で敵が見えなくなると一斉に踵を返して後退し、島岡のところまで来た。

 

「二人に掴まって下さい。全速力で離脱します」

 

「お、おう」

 

 島岡もライーサと同様に両側から支えられるが、丁度その時タイミングが悪いことに陸戦ネウロイが砂丘を越えてきた。

 

「隊長!」

 

「迎撃!護送班が離脱までここを死守する!」

 

「「「了解!!」」」

 

 全速力で撤退を始めた護送班を守る為に陸戦魔女(ウィッチ)達は一列横隊となった。

 

 真正面からの砲撃戦。

 

 砲弾とビームが飛び交い、魔女(ウィッチ)のシールドとネウロイの装甲が火花を散らす。

 

 防御に秀でた陸戦魔女(ウィッチ)、そして彼女達のシールドはネウロイのビームを完全に防ぎ、魔力が込められた砲弾はネウロイの装甲を容易く貫通し、次々と葬りさっていく。

 しかし、ネウロイ側も負けず、数の利を活かして人海戦術を取っていた。撃破された味方の粒子を掻き分けて前進し、ビームを撃ち続ける姿は見るものに一様の恐怖心を与えた。

 

「くぅ・・・!?」

 

「全然減らないじゃない!」

 

「もうカンバンですよ!?」

 

 倒しても倒しても次々と現れる敵にC中隊も段々と押され始めてきた。いくら陸戦魔女(ウィッチ)のシールドとはいえ、絶え間無くビームを撃ち込まれれば耐えきれなくなる。弱音を吐く部下を叱咤するようにマイルズは叫ぶ。

 

「怯むな!もうすぐ援護がくる!それまで・・・」

 

「隊長!直上!!」

 

 突然の部下の声にハッとしてマイルズは空を見上げた。キラリと光る何かを確認すると丁度通信が入った。

 

『こちら、神崎。炎による援護射撃を開始する。目標の指示を』

 

 Bf109E-4を履いた神崎。まだ暗い為に地上が正確に見えないのだろう。 神崎の声を聞くとマイルズは直ぐ様発煙筒を取りだし言った。

 

「目標は赤のスモーク!総員、衝撃に備えろ!!」

 

 マイルズは叫ぶのと同時に発煙筒を投げた。赤い煙幕がネウロイの大群から昇るのを確認すると、C中隊は各々身を低くして対ショック姿勢をとる。

 

『煙幕、確認した。いくぞ』

 

 神崎からの通信がきた一瞬後、空気を切り裂く音と共に数多の炎がネウロイに襲いかかった。陸戦ネウロイは航空型よりもはるかに防御力は高いが、こうも連続して炎の爆発を受ければその装甲は溶解し、コアは焼きつくされていた。その衝撃は凄まじく、近くにいたC中隊の中には這いつくばる者もいた。

 

「つつ・・・やりすぎよ・・・!」

 

 マイルズが毒づきながら身を起こすと、目の前にいたネウロイの数が大きく減っていた。部下も呆気に取られた表情で目の前の光景を見ている。

 

『どうなった?』

 

「多数の目標を撃破!こっちの被害はすごい衝撃を受けたのと、砂が大量に降りかかってきただけよ!」

 

『・・・』

 

 神崎の言葉にマイルズ半ばキレ気味で叫ぶと、申し訳なさそうな沈黙が返ってきた。

 

『・・・残存魔法力に第二波を放つ余裕がない。援護はできるが機銃掃射のみになる』

 

「・・・後はこちらで対処できるわ。護送班の援護に回って」

 

『了解』

 

 マイルズは上空で反転し後退する神崎を見送ると、カノン砲を構え直した。

 

「さぁ、残党を片付けるわよ」

 

 神崎の炎に生き残り右往左往している物や一部を破損し足掻いている物を確実に仕留めていくC中隊。そこまで時間はかからず、程なくしてC中隊は基地への撤退した。

 こうして、島岡とライーサの救出作戦は成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トブルク ブリタニア陸軍病院

 

 

 

 清潔な病院の一室に病衣姿のライーサは居た。

 護送班に救出されたライーサは、あの後医師の診察を受けて全身打撲と診断され、数日の絶対安静を言い渡された。

 

 病室にはお見舞が来た。

 

 「アフリカ」の面々が来た時は凄かった。マルセイユははしゃいで、真美はべそをかいて心底喜んだ。加東は二人を諌めつつも目に若干涙ぐんでおり、マティルダも穏やか表情をしていた。

 

「間に合ってよかった」

 

「神崎さん・・・」

 

 神崎も微笑んでいた。初めて会った時はずっと無表情で怖い印象だったが、今ではよく笑うようになり印象も大分和らいでいた。しかし、姿が見えないもう一人が気になってライーサは遠慮がちに尋ねた。

 

「シンスケは・・・」

 

「シンは後処理と事情聴取で忙しくてな。すまない」

 

「いえ!いいんです・・・」

 

 申し訳なさそうな神崎の言葉にライーサも申し訳なく感じ、声がしぼんでいった。そのまま俯いてしまったライーサに神崎は再び微笑んでいた言った。

 

「そういえば・・・」

 

「・・・?」

 

「シンのことを名前で呼ぶようになったんだな」

 

「・・・あ」

 

 その一言でライーサは真っ赤になった。神崎はライーサの頭に手を乗せて言った。

 

「シンはいい奴だ。よろしく頼む」

 

「ちょ、神崎さん!?私はそんなつもりじゃ・・・!?」

 

「じゃあな」

 

 ライーサを引っ掻き回すだけ引っ掻き回して神崎は病室を後にした。

 

「どうした、ライーサ?顔が赤いぞ?」

 

「な、何でもないよ!?ティナ!?」

 

 その後、ライーサは終始真っ赤だった。

 

 

 

 

 

「マイルズ少佐。今回は無理を言って申し訳ありませんでした」

 

「まったくよ。こっちに直接連絡が来たときは驚いたわ。後、今は普通に話していいわよ?」

 

 病院を出た神崎は、入り口にいたマイルズに頭を下げていた。

 マイルズ等C中隊が救出作戦を実行したのは、実は神崎の個人的な切実なお願いが発端だった。神崎がマイルズに連絡を取り、そこからマイルズが作戦を立案し司令部に提出し、半ば強引にそれを認めさせたのだ。結果的に島岡とライーサは助かったので問題なかったが。

 

「あの二人はここ(アフリカ)じゃ人気があるから助けられてよかったわ。それにあなたに貸しができたしね。ちゃんと返してくれるでしょ?」

 

「それは勿論」

 

 更にマイルズは上機嫌で言った。

 

「でも、意外だったわ。真面目なあなたがあんななことを言うなんて」

 

「今考えれば自分は馬鹿なことをしたと思う」

 

 マイルズの言葉に神崎は苦笑しつつ答えたが、新たに入ってきた声がその顔を凍りつかせることになった。

 

「本当よ。完全な独断専行。言い逃れできないわね」

 

 神崎が恐る恐る振り返るとそこには黒いオーラを発ち昇らせる加東の姿が。笑顔ではあるが、目はまったく笑っておらず、しかもその目の下の隈が更に凄みを醸し出していた。しかもその目は神崎にだけでなく、彼と楽しそうに話していたマイルズにまで向けられている。

 

「ケ、ケイさん・・・」

 

 神崎の額から冷や汗がタラリと垂れた。

 

「モントゴメリーから苦情が来たんだけど?『私の部隊を勝手に使ってもらうのは困る』って」

 

「そ、それは・・・」

 

「しかも、それ関係で大量の書類を片付けなきゃならないのよね。寝てないのに」

 

「も、申し訳ありませんでした!!」

 

 加東の言葉に耐えきれなくなった神崎は腰を九十度に曲げて謝った。加東は不機嫌そうにフンッと鼻を鳴らすと神崎の手を取った。

 

「さぁ、さっさと帰るわよ。こんな所で油を売ってる暇はないの」

 

「ちょ・・・」

 

「ちょっと待った!」

 

 加東が神崎を引き摺っていくのを止める者がいた。マイルズは神崎の加東が握る手とは逆の手を握ると二人を引き留めた。

 

「加東大尉?私は神崎少尉に個人的な用事があるの」

 

「マイルズ少佐?軍務中に私用は不適切だと思いますが?」

 

 神崎を挟んでバチバチと火花を散らし始めるマイルズと加東。この状況に嫌な予感を感じた神崎は躊躇いながらも口を開いた。

 

「あの、お二方?言っておきますが、自分にはこ・・・」

 

「「ちょっと黙って(黙っときなさい)!!」」

 

「・・・了解」

 

 直ぐ様口を塞がれた為に黙るしかなくなり、神崎は溜め息をついた。

 

(俺には婚約者がいるんだが・・・勘弁してくれ)

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、神崎さんは変な事を・・・。・・・」

 

 皆が去った後、ライーサは一人ベッドで物思いに耽っていた。何を考えているかと言えば、勿論島岡のことだった。

 

 ライーサの島岡に対する第一印象は意外にも親近感だった。

 マルセイユの二番機であるライーサは神崎の相棒である島岡につい自分と重ね合わせていたのだ。だから、悲しそうに自分の非力さを話す島岡を励ましたのかもしれない。なぜならライーサ自身、マルセイユと自分を比べ自分の非力さに落ち込んだことがあったからだ。

 そこからの島岡の姿は見違えた。通常の戦闘機なのにネウロイを撃墜していく姿は、戦闘機を操り大空を翔ける真剣な表情は正直言ってかっこよかった・・・と思う。そして、自分の励ましのお陰で島岡がこうなったと考えると嬉しく思う自分がいた。

 

 島岡の隣で彼の模擬戦の話を聞き、一緒に空を飛び、一緒に戦った。

 

 自分でも気づかないうちに島岡はかけがえのない存在になっていたのだろうか?

 だから、墜落した後目を覚ました時、島岡を見て安心したのだろうか?

 だから彼が零戦の下から自分を残して飛び出した時、目の前が真っ暗に成る程の絶望を味わったのか?

 だから、今彼のことを思うとこんなにも・・・。

 

 

「シンスケ・・・」

 

「俺がどうした?」

 

「え・・・?」

 

「お、おう」

 

 ライーサの思考を遮って突然現れた島岡。ライーサは半ば呆然として島岡がイスに座るのを見ていた。

 

「ちょっと抜け出してきた」

 

「・・・ば・・・」

 

 軽い調子で喋る島岡の態度にライーサは拳を握った。

 

「ば?」

 

「馬鹿!!!」

 

「おぶっ!?!?」

 

 島岡の頬に炸裂する前のめりになったライーサの強烈な拳。直撃を受けた島岡は大きくよろめいた。

 

「痛ぇ・・・。何すんだよ!?」

 

「どれだけ!!!」

 

「ッ!?」

 

 非難の声を上げる島岡だがライーサの叫び声、そして彼女の涙に口を噤ませた。

 

魔法使い(ウィザード)でもないくせに!!生身でネウロイを相手にして!!どれだけ心配したと思ってるの!!!」

 

 そう。

 あの時、島岡が被弾した時や拳銃一丁でネウロイを引きつけようとした時、ライーサは目の前が真っ暗になるような喪失感を味わった。一発殴らなければ気がすまなかった。

 

「・・・すまねぇ。俺、あんま頭良くねぇから・・・」

 

「そんな問題じゃない・・・!」

 

 拳で胸元を叩いてくるライーサに島岡は力なく答えた。

 

「あれは咄嗟のことでよ・・・。流石に考えなしだった」

 

「ホントだよ・・・。反省してよ・・・。うぅ・・・」

 

 そう言ってさめざめと泣き始めたライーサの頭を島岡はおっかなびっくりに撫でた。するとライーサは更に泣いてしまい、島岡は肝を冷やし慌てて謝った。

 

「す、すまん!撫でるのは止めと・・・」

 

「・・・そのままでいいから」

 

「お、おう・・・」

 

 島岡はしばらくライーサの頭を撫で続け、ライーサも泣き続けた。

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん・・・。ごめんね・・・」

 

「気にすんな」

 

 落ち着いたライーサが謝るのを島岡は笑って許した。しかし、そこからどちらとも黙ってしまい沈黙が続いた。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 ライーサは俯きつつチラチラと島岡を伺い、島岡は焦っているようなソワソワした様子だった。

 ややあって島岡は意を決したようにライーサに話しかけた。

 

「ライーサ、これを渡しにきた」

 

そう言って差し出したのは所々凹んでしまった小箱だった。

 

「これは・・・?」

 

「ちょっと見てくれは悪いけど、中身は大丈夫だ。・・・多分」

 

 小箱を開けたライーサの目に写ったのは、あの鳥を象ったネックレス。驚いた表情をしてライーサが島岡を見ると、彼はバツが悪そうに頬を掻いていた。

 

「死にかけて思ったんだよ。悔いは残したくないって」

 

「悔い・・・」

 

「そう。だから・・・はっきり言うわ」

 

 そして島岡は真剣な顔になった。それは、ライーサがかっこいいと思ったあの大空を翔けている時の表情。

 一言一言、その言葉の重みを確かめるように島岡は言った。

 

 

「ライーサ。俺はお前が好きだ」

 

 

 いつもの砕けた口調ではない真剣な言葉だった。

 

 ライーサは惚けたように島岡を見つけていたが、おもむろに手に持っていた小箱を突き返した。

 

「!?・・・そうだよな。やっぱ俺なんかよりも・・・」

 

「違う」

 

 断られたと思いショックを受ける島岡にライーサは顔を隠すように俯いて言った。

 

「・・・着けて」

 

「え?」

 

「そのネックレス、私に着けてくれる?」

 

「お、おう」

 

 ライーサはネックレスが着けやすいように身体を近づかせ、島岡は慣れない手つきでライーサの細い首に手を回しネックレスを着けた。

 

「で、できたぞ」

 

「うん。・・・綺麗だね」

 

「・・・気に入ってくれたならよか・・・ッ!?!?!?」

 

 島岡は「よかった」と言い切ることはできなかった。ライーサが胸に飛び込んできたからだ。自分の胸に伝わるライーサの体温と、ふわりと鼻に香るライーサの匂いに島岡の脳髄は痺れ、身体はガチガチに硬直してしまう。もちろん心臓の音は早鐘のように鳴り響いていた。

 

「今まで、一緒に話して、飛んで、戦って・・・。死にそうになってよく分かった」

 

 ライーサは島岡の胸に顔を埋めながら静かに言った。島岡の心音を聞くにつれて心拍数も上がっていく自分。島岡の言葉で泣きそうになるほど喜んでいる自分。

 

 つまりはそういうことなんだ。

 

 ライーサは一度島岡から離れると、自分を落ち着かせるように深呼吸した。覚悟したように表情を引き締めると未だ硬直している島岡に近づき、そして・・・

 

「私も・・・好きです。シンスケ・・・」

 

 優しく自分の唇を島岡の唇に重ねた。

 

 

 

 少し経つとライーサは顔を赤くして離れた。

 

「えぇと・・・あの・・・シンスケ?」

 

 もじもじして自分の恋人となった人の名を呼ぶライーサだが、全く反応がないことに気づいた。

 

「シンスケ?どうしたの?」

 

「・・・」

 

 固まったまま全く動かない島岡。ライーサが恐る恐る触れると、そのまま目を回して倒れこんでしまった。

 

「え!?ちょ!?シンスケ!?大丈夫!?」

 

「アガが、アガガガがががが・・・」

 

 

扶桑男児にはキスは刺激が強すぎた。

 

 

 

 

 

KAK司令基地

 

 

 

「・・・大体のことは分かった」

 

 ロンメル言った。向かいに座るフーゴは長かった尋問がやっと終わるのかと表情を弛めるが、ロンメルの隣にいる少佐が一枚の書類を取り出したことで再び顔を引き締めた。少佐はフーゴの正面に書類を置いた。

 

「バルテン上等兵。本日を以て貴官は第21装甲師団麾下第2警備小隊から、新たに新設される部隊へと転属してもらう」

 

「は、はい?」

 

 まったく予想していなかった展開にフーゴはつい間抜けた声を出してしまった。しかし、少佐は構わず続けた。

 

「部隊名は・・・『(シュランゲ)』」

 




本当はマイルズ達C中隊に銃剣突撃させるつもりだった。でも、気づいたんだ。カノン砲に銃剣取り付ける場所ないって。

今回の話は結構悩んで書きました。(速かったけどね)
恋愛部分を文章におこしたことなんてほとんどなかったので

あと、島岡はヘタレではない。あれは文化の違いのせいだ!あの頃の扶桑にはキスの習慣なんてほとんどなかったんだよ!(多分)
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