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「ライーサは坊主頭の感触が好きらしくて、俺の頭をよく撫でるんだよ」
「そうか」
嬉しいのは分からないでもない。
「で、この前逆に俺がライーサの頭を撫でてみたんだよ」
「・・・それで?」
浮かれるのもしょうがないと思う。
「そしたら顔を真っ赤にして照れてよ!それが可愛いのなんのって!」
「・・・・・・ふんっ!!」
「やっぱ、ライーサは可愛ブホァア!?!?」
だが、邪魔だ。
神崎は砂の塊を
統合戦闘飛行隊「アフリカ」基地
近頃は暑いのにも慣れてきた、アフリカ。
神埼はまたスコップ片手に死んだような目で砂掻きにいそしんでいた。先日の独断専行の件で処罰である。
神埼としてはあの行動を起こした時点で何らかの処分が下ることは覚悟していたし、ライーサと島岡が助かるなら、例え銃殺刑となっても悔いはなかった。だから、今回の処罰が砂掻き程度となったのは神崎にとって出来すぎた結果だった。
なら、なぜ神埼の目が死んだようになっているのか。それは隣にいる奴が原因だった。
「ペッペッ・・・何すんだよ!?」
「うるさい」
のろけ野郎もとい島岡の抗議を神崎は一蹴した。最近ライーサと付き合い始めた島岡は、彼女が出撃して居ない間はずっと神崎にのろけ話をしているのだ。延々と他人の恋人の自慢を聞かせられる身にもなって欲しい。
「お前、そんな話をしていていいのか?自分の仕事は終わらしたんだろうな?」
「零戦ねぇからなんもできねぇよ」
神崎の問いに島岡がにやけきった面から真面目な顔に戻り、溜め息をついて言った。
零戦が大破してからというもの、島岡は戦闘に出る事がなくなったことで、仕事らしい仕事がなくなったのだ。
航空機はあるにはある。この「アフリカ」基地には元からカールスラント製のHs126という航空機があった。この航空機は偵察又は爆撃機として使えるのだが、いかんせん型が古く、性能的にも良い物でもないため、目下連絡機として使われていた。そんな航空機では島岡でもネウロイに対抗できるはずもなく、いい航空機が手配できるまでは今のところは島岡は待機の状態だった。
「そういや、ゲン。お前、今メッサーシャルフ使ってるよな?どんな感じだ?」
「上昇、降下性能は零戦よりも良い」
「旋回性は?」
「最悪」
「んだよ、それ」
神崎の物言いに島岡は吹き出した。神崎もにやりと笑った。
「嘘じゃない。まったく曲がらん」
「じゃあ、俺には無理だな。旋回できなきゃネウロイには勝てねぇ」
ネウロイの攻撃を避け続け、通常兵器で渡り合っている島岡。故にその言葉には重みがあった。
「旋回性もとい機動性が一番重要なんだよな。当たらなければどうということもねぇんだ」
「そうだな」
「いや、まてよ・・・。メッサーシャルフに乗ればライーサとお揃いじゃねぇか!やっぱ、そっちで・・・」
「・・・もういい」
再びのろけ始めた島岡は放っておいて、神崎は付き合ってられないと、ため息をついて手車の砂を捨てに移動した。
「と、いうわけでどうにかしてください」
「それは補給とのろけ、どっちを?」
「どっちもです」
「あなたも無茶言うようになったわね・・・」
加東が渋い顔をして呟いた。
神崎は砂を捨てに行ったその足で加東の天幕に赴いていた。目的は零式の催促と島岡ののろけの苦情。
「零式に関してはこの前言った通り。補給が来ない限り無理よ」
「しかし、Bf109じゃキツイです」
加東の言葉に珍しく神崎は食い下がった。実際に操縦して感じたことなのだが、神崎は零式もとい扶桑製の機動性が高い戦闘脚に慣れきっていたため、Bf109に対応しきれないのだ。マルセイユの機動を見て自分で訓練し、更に彼女に直接教えて貰ったのだが、満足のいく機動には程遠かった。
その様子は加東も見ており、苦笑いしていた。
「確かにきつそうだったわね。まぁ、私も慣れないんだけど」
「なんとかなりませんか?」
「なんとかなるかもよ?」
「はい?」
突拍子もない言葉に神崎はつい聞き返してしまった。
「補給部隊の到着予定日が今日なのよ」
「そうですか!」
喜びの余り一瞬明るい声で喜ぶ神崎。だが、加東の視線を受けると咳払いしてすぐに表情を引き締めた。
「ゴホン・・・、それで零式の方は届くんですか?」
「予定通りならね。でも、もしかしたら無いかもしれないわ」
「そうですか・・・」
一気に落ち込んでしまった神崎を流石にかわいそうに思ったのか、加東は少し考えて言った。
「う~ん・・・。じゃあキ61使ってみる?
「キ61ですか・・・」
この提案を受けて神崎は、使ったことはないが同じ扶桑製なのでBf109よりかは使いやすいかもしれない・・・と前向き考えていたが、ふとあることに気付いた。
「キ61の予備あるんですか?」
「あ・・・」
加東が慌てて近くの机に座る金子を見た。金子は引き出しから帳簿を取り出すと、首を横に振った。
「予備部品はありますが、本体はありませんね」
「・・・」
「・・・」
神崎が恨みがましい目で見ると、加東は顔を引きつらせて目を逸した。
「じゃ、じゃあ、誰かから借りるのは?」
「・・・なら、ケイさんのを借りても?」
神崎がそう言うと、加東は一瞬呆気にとられたような顔になり、すぐに顔を真っ赤にして慌てて言った。
「だ、ダメよ!絶対ダメ!今の話はなし!」
「何を慌てているんですか・・・」
ストライカーユニットは直接身につける物だから流石に抵抗があるのだろう。神崎は自分の配慮のなさを反省しつつも、加東の慌て様に失笑してしまった。チラリと横を見れば金子も苦笑いしている。
二人の生暖かい視線に気付いた加東は取り繕うように咳払いして言った。
「き、機体がないならしょうがないわね。悪いけど我慢して?」
「分かりました」
「よろしい。で、信介ののろけのことだけど・・・」
そこで加東は諦めたように言った。
「それも無理。ライーサもそんな感じだし」
「ライーサもですか?」
「そ。マルセイユと真美がうんざりしてたわ」
どうやら恋人同士は似てくるらしい。
そこで意外にも金子が躊躇いながら話に入ってきた。
「しかし、二人が恋人関係になって大丈夫なのでしょうか?」
金子の疑問はもっともだった。
恋人がいる兵士が死ぬのを恐れて戦えなくなったり、二人共兵士だったりすれば片方が死んでしまった為に茫然自失となるなどよくあることだからだ。しかも
「そこは大丈夫じゃない?二人ならお互いを守る為に頑張れそうだし、『間違い』も起こさないでしょ」
「そうですかね・・・?」
楽観的な加東と不安げな金子。そんな二人を置いて神崎は静かに部屋を出ようとした、加東に呼び止められた。
「あ!そうそう!玄太郎!」
「まだ、なにか?」
「午後からの砂掻きはやらなくていいわ。トラック何台かと10人ぐらいを率いて輸送部隊を出迎えに行って。予定では零戦もあるから信介も連れて行って」
「分かりました」
「後、今回の輸送部隊には扶桑本国からの視察が便乗しているらしいから、その人も連れてきてね」
「視察ですか・・・珍しいですね」
何か視察が来るような危ないことをしたか・・・と不安げに考え込む神崎。加東は対照的にあっけらかんとしていた。
「確かに珍しいけど、そんな問題ないと思うわよ?私達の活躍を見に来たのかもしれないしね」
「・・・そうですね。じゃあ、自分はこれで」
「よろしくね~」
手を振る加東に見送られて神崎は天幕から出た。
「何もなければいいが・・・」
考え込んでも仕方がない。なるようになるだけだ。神崎は近くに突き刺してあったスコップを抜いて砂掻きに戻っていった。
島岡は不満だった。
もう少しでライーサが哨戒から帰ってくるという所で神崎に無理やりトラックに乗せられ、トブルクに連行されたからだ。
「つか、なんで俺もなんだよ!おかしいじゃねぇか!」
トラックのボードをバンバン叩きながら抗議する島岡に神崎は一言告げた。
「零戦が来るからだ」
「おい、ゲン!もっとスピード上げろ!」
手のひら返した島岡が騒ぎ立てるのを聞き流して神崎はハンドルを切った。後ろについてくる数台のトラックもこちらの動きに合わせて続く。未舗装の道路を走っているためにトラックはガタガタと揺れるが、二人には慣れたもので特に気にすることもなく話していた。
「トブルクに着いたら少しぐらい時間あるだろうし、ライーサに何か買えるか」
「・・・そうだな」
「だよな。さて、何買おうかね~」
楽しそうにあれこれ考え始めた島岡だが、神崎はそんな彼の姿を見ると心配そうに言った。
「お前、うちの部隊以外にはバレないようにしろ。ライーサと付き合っているのを」
「・・・なんでだよ?」
「いつかも言っただろう?
なぜ
それは
「アフリカ」では特に何もしてないが、ヨーロッパの部隊では男性兵士との交流を一切禁止している部隊もあるという。
「・・・」
「まさか、忘れていたのか?」
「いやいやいや、まだそんなことしてないし、第一そんなことで俺の愛は消えねぇよ?」
島岡が青ざめているが、神崎は構わず追い打ちをかけた。
「うちの部隊は大丈夫だと思うが、他の部隊は分からん。どこからか漏れて大本営から帰還命令下る可能性がないわけではない」
「・・・分かった」
「しかも、今日は本国からの視察が来るらしい。十分に、いや十二分に気をつけろよ」
「・・・俺、何か悪いことしたか?」
島岡は涙目になって大人しくなり、神崎は言いたいことが言えてスッキリしたのか鼻歌を歌い始めるのだった。
「あれ?お前も
「・・・ああ。そうだな」
「そうか。お互い大変だな・・・」
「(実は俺だけは特に問題ないとは・・・言えないよな)」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、何も言ってないが?」
「んじゃいいや」
トラックの一団はトブルクへの道のりをのんびりと進んでいった。
トブルク 軍港
のんびり移動したはずなのだが、輸送部隊の到着予定よりも早く着いてしまったのかトブルクの軍港に着いても輸送船の姿はなかった。
「・・・待機だな」
「船が来るまで暇か~」
トラックから降りた二人は海を眺めながら呟く。潮風が頬を撫でるのは心地よいが、いかんせん手持ち無沙汰だった。
「少尉、輸送部隊は一時間程到着が遅れると連絡がありました」
「わかった。では、それまで全員待機だ」
「了解しました」
神崎の命令を受けてトラックを運転してきた兵士達は各自ゆっくりし始めた。神崎もトラックに寄りかかって海を眺め、島岡に至っては何処から取り出したのか釣竿を手に取り、興味を持った数人を引き連れて海に突撃していた。
戦場に似つかわしくない穏やかな時間だった。
「あれ?カンザキ少尉・・・?」
「・・・ん?」
ぼぅっと海を眺めていた神崎だが、突然聞こえた自分を呼ぶ声にフッと振り返った。
「お久しぶりです。カンザキ少尉」
「シャーロットか・・・。随分と久しぶりな感じがするな」
そこには試作重陸戦ユニットティーガーを操る
彼女は前線に近い方でティーガーの実戦テストをしていたはず・・・と神崎が考えて不思議そうにしていると、それを察したシャーロットが言った。
「定時報告と買い出しでここまで来たんです」
「なるほど・・・ポルシェ少佐と一緒か?」
「いえ・・・。今日は・・・あ」
「ああ。シャーロット、ここにいたのか」
二人が話している所に一人の男がやって来た。眼鏡と髭面が特徴的な男で、どうやらシャーロットの知り合いらしかった。
「おや・・・君は?」
「はっ。統合戦闘飛行隊『アフリカ』所属、神崎玄太郎少尉です」
「ああ。君が噂の『アフリカの太陽』か。私はミハイル・シュミット技術大尉。ティーガーの整備を担当している」
シャーロットと同じ部隊の人だと分かり少し緊張を解く神崎だが、聞きなれない単語に首を傾げた。
「すみません。その『アフリカの太陽』と言うのは?」
「アフリカで言われている君の別名だよ」
「アフリカにいる部隊ではよく聞きますよ?聞いたことないんですか?」
「・・・ああ。初耳だ」
ミハイルとシャーロットの言葉に神崎は半ば呆然として呟いた。よもや自分に別名が付いているとは思っていなかったからだ。名前の由来は「戦闘空域で炎を使う姿がまるで太陽のようだったから」ということらしい。正直言ってマルセイユの別名と似ていてムズ痒い感じがした。
ちなみに島岡には『ゼロファイター』という別名が付いているとか。
・・・そのまんまだとかは決して思ってはいない。
「・・・なんか変な感だな」
「そうですか?私は・・・かっこいいと思いますよ?」
「・・・ありがとう。シャーロット」
遠慮がちにも褒めてくれたシャーロットの頭を神崎はつい撫でてしまった。シャーロットはいきなり撫でられたことに真っ赤になって俯くがまんざらでもない様子だった。
「・・・なんか少尉、変わりましたね」
「・・・お互いにな」
「そう言えば、神崎少尉はどうしてここに?」
二人の様子を温かい目で見ていたミハイルが思い出したかのように言った。神崎もシャーロットの頭から手を離すとミハイルに向き直って言った。
「補給部隊が到着するので、その受け取りを」
「ああ、それでトラックが沢山あるのか」
ミハイルとシャーロットが納得したように辺りを見渡す。神崎も一緒なって見渡すが、釣りに異様に盛り上がっている一団は無視することにした。二人が微妙な表情をしているのも無視することにした。
程なくして二人は去り、代わって輸送部隊が到着した。
輸送部隊は入港したらすぐさま荷揚げ作業を開始した。アフリカにいる扶桑の部隊は「アフリカ」だけなので輸送船は一隻だけだったが、それでも沢山の補給物資が届いた。
一番目を引いたのは零戦だろう。
「ッシャア!これでやっと飛べるぜぇ!!」
零戦が輸送船からクレーンで運び出される時の島岡のはしゃぎ様は凄かった。輸送部隊の兵士達が何事かとギョッとしたほどだった。
零式が運び出される時はチェックリストに目を通していた神崎の頬も緩んだ。流石にはしゃぐことはなかったが。
他にも試作兵器も含めた武器弾薬やストライカーユニットの部品、零戦の部品、更には稲垣が要求していた味噌や味醂といった扶桑食など大量の補給物資が荷揚げされ、順次トラックへと積まれていく。
「これで全部だな・・・」
チェックリストを全て確認し終えた神崎は、ある人物が船から降りるのを待っていた。そう、この輸送船に便乗している扶桑本国からの視察だ。
神崎は今回の視察に関してとても不安だった。自分のアフリカでの暴走ないし
そう、誰か分かるまでは。
輸送船から一人の士官が降りてきた。
黒のボディスーツの上に神崎と同じ第二種軍装を纏う扶桑皇国海軍の
彼女は神崎の姿を見つけると、船から降りて神崎の前に立った。
「今回、統合戦闘飛行隊『アフリカ』の視察に来ました。扶桑皇国海軍、竹井醇子中尉です」
「・・・統合戦闘飛行隊『アフリカ』所属、扶桑皇国海軍、神崎玄太郎少尉です」
互いに敬礼をする二人。緊張した空気が辺りに漂うが、彼女がフッと微笑んだことで、その空気が一気に和らいだ。
「お久しぶり、ゲン君」
「ああ・・・醇子」
扶桑皇国海軍中尉、竹井醇子。
神崎の婚約者である。
なんと神崎の婚約者はジュンジュンこと竹井醇子でした!
気づいていた人いるかな?
次はなぜ竹井さんが神崎の婚約者になったのかの説明があると思います。
それでは