番外編はこの後半で終わり、本編に戻る予定です
感想、アドバイス、ミスの指摘等々よろしくお願いします
サン・トロンの雷鳴見てきました!もう最高!
エーゲ海の女神も楽しみですね。マルセイユとライーサが出るだと!?これはケイさんも・・・もしかしたら神崎と島岡も!?(錯乱)
広大な砂漠に砂煙が立ち上っていた。1つや2つではない。何十筋ともなろう砂煙が空を埋め尽くしている。さながら、砂漠に掛かる巨大なカーテンのようだった。
「すごいな・・・」
眼下に広がる光景に神崎は思わず呟いていた。無意識の内に九九式機関銃を持つ手に力がこもる。
『アフリカにいる陸戦
「ああ。だが、それだけじゃない。各国の機甲師団の精鋭部隊も揃っている。・・・滅多に見られるものじゃない」
独り言が聞こえたのか、二番機位置に付いていた稲垣が遠慮がちに質問し、それに神崎が答えた。
そう。
このカーテンを作り出しているのは、綺麗な横隊を組んで行進する陸戦
『前方に飛行場が見えました!』
稲垣の報告に神崎は前方へと視線を戻した。そして、砂漠に作られた急造の滑走路を確認すると、稲垣に手を振って指示を出す。
「まず、俺が滑走路の状態を確認する。その後、着陸しろ」
『了解です』
稲垣の返事を聞き、神崎は滑走路へと近づいた。速度を落とし、地面ギリギリを飛行して危険がないかを確認する。
「いいぞ。着陸しろ」
『はい!』
神崎が滑走路から上昇するのに入れ替わるように稲垣が接近してきて着陸体勢に入った。彼女が滑走路に滑り込んだ途端、脇にいた整備兵や警備兵が歓声をあげる。その様子を見ながら神崎も着陸体勢に入った。
今回実施される演習は各部隊の練度向上と
この演習にアフリカにいる連合軍の主力がほぼ集結しているのだった。
二人が着陸した仮設飛行場は急造ではあったが、状態は思いの外良好だった。
神崎が誘導に従って滑走路から脇にある格納スペースへと移動すると、先に着陸した稲垣が待っていた。興味津々といった様子で仕事をしながら彼女に視線を向ける整備兵が数多くいた。
やはり「アフリカ」の魔女となれば兵からの人気も凄いのだろう。
そんなことを考えつつ、神崎はユニットゲージに滑り込んだ。ユニットがゲージにしっかりと固定されたことを確認して、ユニットから足を抜き取る。ズボンに付いた皺(余談だが、神崎の第二種軍装は魔法糸によって作られている。その為、服自体が防御力が高かったり、皺が付きにくかったりする)を軽く叩いて伸ばしていると、彼と大して歳が変わらない整備兵が恐る恐るといった様子で近づき、ゲージから降りる階段に靴を置いた。
(・・・どうやら相当怖がられているようだな)
ちょっと耳を澄ませば周りからコソコソと小さな話し声が聞こえる。「アフリカの太陽」という単語も聞こえた。
神崎は表情は崩さずに心の中で嘆息した。
変な噂でもたっているのだとしたらたまったもんじゃないと思いながら、背筋を伸ばし腰に差す「
「・・・ありがとう」
「は、はい!」
靴を待ってきてくれた整備兵への感謝の言葉は忘れない。神崎の敬礼にその整備兵はひどく緊張した面持ちで返礼した。
そのまま神崎は歩を進め稲垣の元へと向かう。
「待たせたな」
「いえ!大丈夫です!」
稲垣は神崎が格納用スペースに入った時と同じ場所で待っていた。神崎は彼女に付いて来るように言い、格納スペースを抜ける。まずは今回の演習指揮所へ行き、到着の報告をしなければならない。
積み上げられた資材の山々を抜け、数多くの兵士がたむろしている居住スペースの横を通り過ぎていく。扶桑皇国海軍の真っ白な第二種軍装と扶桑皇国陸軍の
ふと神崎が傍らの稲垣に目を向ければ、緊張のしているせいか俯き気味で歩を進めていた。そこはかとなく足取りが重く見える。少し考えて、神崎は口を開いた。
「そういえば・・・」
「はい?」
神崎の声に稲垣が顔をあげると、案の定顔に緊張が張り付いていた。神崎は少し表情を緩めて言った。
「こうして二人で任務に就くのはあの時以来だな」
「えっと・・・神崎さんが暴走した・・・すみません」
「そう、その時だ。前みたいなことにはならない。信頼できないかもしれないが・・・、この三日間よろしく頼む」
「は、はい!でも、私は神崎さんのことを信頼しています!」
「そう言ってもらえると助かる」
神崎は手をポンと稲垣の頭に乗せると、何事も無かったかのように歩き始める。稲垣は慌てて彼の後を追った。その足取りは心なしか軽くなっていた。
二人が多くの軍人で混み合う本部としての区画で到着の報告を済ませると、何人かの知り合いに出くわすことになった。
「神崎さん!!」
「ん?ああ、マイルズ少佐」
後ろから投げかけられた声に振り向くと、そこには早足気味で駆け寄ってくるマイルズが居た。更にその後ろには副官のソフィもいる。
「お久しぶりです!マイルズ少佐!」
「真美ちゃん!あなたも来てたのね!」
稲垣の挨拶に笑顔で答えるマイルズ。任務が重なっていたせいか二人は随分とマイルズに会っていなかった。神崎は律儀に挙手の敬礼をマイルズへ向ける。
「少佐、お久しぶりです」
神崎の礼にマイルズも挙手の礼で応じた。
「元気そうでよかったわ」
「見てのとおりです」
「ここに居るということは、あなたたちもこの演習に参加するのね?」
「はい。『アフリカ』では自分たちが対地攻撃を主に担当しているので」
「頼もしいわね。・・・今は時間が無いから、また後でゆっくり話しましょう?」
「はい。ではまた」
またね・・・とマイルズはニコニコと笑いながらソフィを伴って離れていった。二人を見送っていると、また別の声が聞こえた。
「マミ!カンザキ少尉!」
「シャーロット!」
真美の嬉しそうな声が響く。振り返れば、稲垣に抱きつくシャーロットとその後ろにフレデリカ・ポルシェ少佐とミハイル・シュミット大尉が。
「マミ!久しぶりだね!」
「シャーロット、元気だった?」
楽しそうに会話する稲垣とシャーロット。
二人はいくつもの作戦を共にして以来、同じぐらいの年であることもあって、仲の良い友人である。
神崎は、キャッキャキャッキャとかしましい二人を置いておいて、ポルシェとミハイルの方へと顔を向ける。
「しばらくぶりね、神崎少尉」
「はい、お久しぶりです、ポルシェ少佐」
「また会えて嬉しいよ、少尉」
「大尉も、お変わり無い様で」
顔に大きな傷があるポルシェと彼女の傍に立つ髭と眼鏡のミハイル。寄り添うように立つ二人に、どこか夫婦然とした雰囲気を神崎は感じた。
「今回はシャーロットも参加を?」
「ええ。パットン将軍から是非にという要望があってね。これでティーガーの開発費を巻き上げやすく・・・もとい支援が受けやすくなるわ」
「フレデリカ・・・」
いい笑顔で黒い事を言うポルシェに、ミハイルは疲れたように頭を押さえため息を吐く。どうやら彼は日頃から彼女に苦労させられているらしい。
「カンザキ少尉!」
「あぁ、シャーロット。久しぶりだな」
稲垣と共に駆け寄ってくるシャーロットを神崎は微笑みながら迎えた。
「今日の演習は俺たちも参加する。一緒にがんばろう」
「うん!」
シャーロットの頭を撫でながら言った神崎の言葉にシャーロットは嬉しそうに笑った。砂漠の大演習が今まさに始まろうとしていた。
「目標、前方仮想標的1番から6番!全車両、撃て!!」
マイルズの号令の元、彼女の率いるC中隊の陸戦
マイルズは部下の錬度に満足そうに頷いた。
「私たちも続くわよ!ロックンロール!!」
新たな声と共に複数の砲声があがった。マイルズはそちらのほうを向く。
「撃て!撃て!撃って撃って撃ちまくれ!!」
そう叫ぶのはリベリオン陸軍の陸戦
リベリオン陸軍
「命中率は4割といったところかしら?」
マイルズは着弾の砂煙を見ながら呟く。
射撃もだが、射撃姿勢やそれに移るまでの動作にも粗さが目立つ。
だが、そういった粗い部分を部隊同士で克服し向上させていくのが今回の演習の目的だ。その為にマイルズは「パットンガールズ」の指揮権を譲り受けている。
「全車両、撃ち方止め!500m躍進!続け!!」
号令を発すると自ら先陣を切ってユニットを唸らせるマイルズ。C中隊はすかさず彼女の後に続くが、「パットンガールズ」の挙動は明らかに遅れた。
マイルズが振り向き一喝する。
「気合を入れなさい!パットンガールズ!この演習であなた達が砂漠と友達になるまで容赦しないわよ!」
「パットンガールズ」から悲鳴に近い声が上がるが、マイルズは一蹴した。
「泣き言を言うな!前進後、再び射撃始め!!」
マイルズは指示を出すと真っ先にカノン砲を構え引き金を引く。自身の放った弾丸が的を撃ち抜いたのを確認した時、背後で空気が震えるような一際大きな砲声が鳴り響いた。
「な、なに!?」
驚いて振り返ったマイルズが見たのは、巨大な機影から伸びる、自分が持つカノン砲が玩具に思えるような長い砲身。
「い、いきます!」
その巨大な機影から聞こえたのはまだ幼さの残る少女の声。これこそ、カールスラントが誇る対空砲「
彼女は緊張で顔を強張らせながら、しかし真剣な表情で再び
「すごい・・・」
マイルズもその光景に思わず呆けてしまうが、シャーロットがティーガーを前進させているのを見て我に返った。負けるものかと声を張り上げる。
「シャーロットに遅れるな!前進!!」
「
「ああ。そして、その華を守るのが私達男の役目だ。そうは思わないかね、シンプソン君?」
「その通りです、先生」
「よろしい。では・・・こちらの射撃を開始するとしよう」
先生と呼ばれた将校『煉獄の教師』ことウィルヘルム・バッハ少佐の号令の下、防衛陣地に設置された十数門の
バッハ少佐の率いるハルファヤ守備大隊は、その名の如く戦線の重要地点であるハルファヤ峠を防衛する部隊である。
ハルファヤ守備大隊が更に数度一斉砲撃を行うと、陣地前面に設置された塹壕からワラワラと歩兵部隊が現れた。彼らは砂漠の隆起や岩を利用し効果的に身を隠しながら前進しつつ、仮想ネウロイとして設置されたハリボテに近づく。その手には火炎瓶や地雷。素早い動きで
彼らこそ、ロマーニャ陸軍一の精鋭として名高いフォルゴーレ空挺師団である。特別強力な火器が配備されていないにも関わらず、恐れることなく突撃し、火炎瓶と対戦車地雷を駆使して数多のネウロイを葬ってきた彼らは、もはや
フォルゴーレ空挺師団が動き始めたのと同時に新たな一団が陣地の両翼から現れた。
ブリタニア王国陸軍の戦車「マチルダ」
カールスラント帝国の戦車「Ⅳ号戦車」
リベリオン合衆国の戦車「M4」。
陣地正面の範囲を囲みこむように展開した戦車隊は、そのまま射撃姿勢に移行し一斉射撃を行った。
射撃を終えた戦車隊がジグザグに動く回避行動を行いながら砂漠を駆ける。
男性兵士にとってネウロイが強大な脅威であるのは言うまでもない。
しかし、その事実は彼らが戦うことを諦める理由にはならない。少女達が銃を握り戦うのを、男がおびえ指をくわえて隠れることができようか?
魔法力はない。しかし、戦えない訳ではない。
その手が銃を、大砲を、戦車を、戦闘機を、軍艦を操ることでネウロイに立ち向かうことが出来る。微力ではあろうが、
「それが男の花道、と言ったところだろう?」
誰に言うわけでもなく、そう呟いたバッハが立つ丘に突風が吹く。突風で飛んでいきそうに帽子を押さえて見上げると、真っ青な空に描かれる二本の飛行機雲。
「君は違うな。君だけは
神崎と稲垣は航空支援を行うべく演習場の上空で待機していた。眼下に広がる演習の模様を神崎は感嘆のため息と共に、稲垣は驚きで目を丸くして眺めていた。
「さすがは精鋭だ。動きの乱れが殆ど無い」
神崎の呟きに稲垣も頷いた。
「はい。こう言っては何ですけど・・・とても綺麗です」
「ああ。同意だ」
上空から見ていると砂漠というキャンバスに地上部隊という絵の具で絵を描いているようにも見える。そして、その絵の上端―マイルズを始めとした陸戦
『航空支援要請!目標、赤のスモーク!!』
「了解、支援を開始する」
通信に短く応えると、神崎は稲垣に指示を出す。
「まず、俺が先攻して出来る限り
「はい!」
稲垣の力強い返事に神崎は軽く微笑んだ。
「頼んだ」
神崎は一言残して急降下に入った。
スモークの地点を目指しながら右手に九九式機関銃を構え、左手に魔力を集中させる。スモークを見定め、攻撃を開始する直前にマイルズへ通信を入れた。
「航空支援を開始する。巻き込まれるなよ」
『そっちこそ狙いを外さないでね!総員、対ショック姿勢を取れ!!』
神崎は急降下から低空の水平飛行へ移した。魔力で強化された目は、既に10体の
「・・・いけ!!」
鋭く振った左手から10発の炎が一斉に放たれた。炎は空気を切り裂いて飛翔し、
爆発。
10体の内6体の
「・・・さすがに数が多いと狙いが粗くなるか」
自分の能力を冷静に評価しつつも、九九式機関銃を構え残りの近くの
こちらへ急降下してくる稲垣。
その手に持つのはボヨールド40mm対空機関砲。本来は基地防衛用として使用される兵器だが、『アフリカ』の氷野曹長を始めとした整備兵達により改造され、航空兵器として生まれ変わった。発射される40mm徹甲弾の威力は、MG34はもちろんのこと20mmの九九式機関銃よりもはるかに高いが、その分並みの
稲垣は銃の照準器を覗き込んだ。
「射撃のコツは当たる距離まで近づくこと!」
自分に言い聞かせるように叫んだ稲垣は地面スレスレまで降下し、引き金を引いた。ズンッという重く低い発砲音と共にやってくる衝撃を小柄な体で綺麗に受け流し、更に引き金を引く。続けざまに放たれた複数の弾丸は次々を
「やったぁ!全機撃破です!」
自身の戦果にパァと笑顔になる稲垣。その様子を見ていた神崎は満足そうに頷いて通信を入れた。
「掃討完了。航空支援を終了する」
『了解!全車両、前進!』
神崎から報告を受けたマイルズは部隊を動かし始める。その様子を見つつ、神崎は傍に戻ってきた稲垣を労った。
「いい射撃だった。ご苦労だった」
「ありがとうございます!神崎さんも凄かったです!」
「ありがとう。次は哨戒だ。二番機位置に就いてくれ」
「はい!」
二人は巡航速度で飛行し、演習場を見渡す。その後、二人は3回程航空支援を行い、日が暮れかけた頃演習は終了した。
演習後、空に月が昇り始めた頃、神崎はマイルズと共に居た。今日の演習の結果を考察し、今後どういった連携を図っていくか話し合っていくためである。
「狙いはまだシビアでいいわ」
「しかし、そうすれば地上部隊が巻き込まれる可能性が高くなります」
「私達はシールドがあるから、もしもの時は大丈夫。それでネウロイへの有効射が増えるなら問題ないわ」
「しかし・・・」
「それにあなた達の腕を信じているしね」
「・・・その信頼に応えられるよう努力します」
テーブルの上の地図を挟んで座るマイルズは真剣な表情だが、一方向かい側に座る神崎は酷く疲れた顔色をしていた。
と、いうのも二人での話し合いの前に演習に参加した全部隊での会議が行われたのだが、これで神崎の精神は大いに消耗した。
周りを見れば、自分よりはるかに年上で、何百人の部下を率いる佐官級の人ばかり。少尉の自分がひどく小さく思え、また彼方此方から注がれる無遠慮な視線に晒され、神崎はいつものポーカーフェイスの下でずっと冷や汗をかいていた。
マイルズというよく知る人物がいなければ、神崎は会議を乗り越えられなかったかもしれない。
「じゃあ、そういうことでよろしくね」
「了解しました」
話し合いが終わったところで、マイルズは真剣な表情を崩して大きく伸びをした。
「う~ん、終わり!さすがに疲れたわね」
「・・・そうですね。しかし・・・」
「仕事はもう終わりよ?いつも通りに話しましょ」
「・・・だが、セシリアが居てくれて助かった」
「え!?そ、そう?」
「ああ。もし居なければ・・・今ここに居る気力も残ってなかったはずだ」
体と精神に溜まった疲れを吐き出すように深い溜め息をつく神崎に、マイルズは心配そうな目を向けた。
「大丈夫?やっぱり全員が上官だったというのは・・・」
「緊張するし、気を使う。
勝手に料理酒を飲んだマルセイユ(中尉)を正座させて説教する稲垣(軍曹)。軍曹が中尉を叱るなど普通に考えたらありえないことだが、そのありえない光景が『アフリカ』では日常的に見られるのだ。
「考えられるか?時々、上官という感覚が薄れそうで怖い」
「はあ。あなた達らしいわね」
半ば愚痴のようになってしまった神崎の話にマイルズは苦笑いで応えるが、何か思い当たることがあったのかニッコリと笑って言った。
「でも、それがあなた達の強さかもしれないわね。だから上下関係を超えて皆で力を合わせることができるのよ」
「・・・そうかもな」
マイルズの笑顔に釣られて神崎も微笑んだ。
その後、二人は彼女が持参した紅茶をしばし楽しつつ談笑し、明日に備えてそれぞれの天幕へ戻って行った。
気づいた
神崎と島岡でるはずないじゃん・・・
だとしても、早くマルセイユとライーサを見たいですね