ストライクウィッチーズ 一匹の狼   作:長靴伯爵

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予想以上に筆が進み、久しぶりの一週間投稿です
これからもこんな感じで投稿できたらいいなぁ

さて、今回の話で新しい章になります がんばって書いていきますので、どうぞ楽しんでいってください!

感想、アドバイス、ミスの指摘などなど、どんどんお願いします!


インターバル 1941 ブリタニア
第三十話


 

 赤い夕日が差し込む夕方、私は時々書類仕事を天幕の外でする。天幕には暇な時間を使って設置した大きめのテーブルは砂が飛んでくるものの、熱が篭る天幕に比べれば遥かにマシだ。

 テーブルの上には、いつもはうず高く積まれた書類の束と、付けペン、タイプライターが占領しているが今日は違う。マルセイユから貰った年代もののワインと愛用のライカ、現像されたばかりの写真が入った封筒と分厚いアルバム、そして万年筆と紙と便箋だ。

 信介と玄太郎がスオムスに出発して二週間程経った。二人の二人の船旅も終盤か、中継地点であるブリタニアに到着した頃かな?今なら手紙を送ったら届くかも。ついでに写真も一緒に送るつもりだ。

 

「どの写真がいいかしらね・・・」

 

 アルバムには私がアフリカに来た時からの写真が全て収められている。ずっしりと手にくるぐらいの重さがある。

 我ながらよくぞここまで撮ったものだ。

 表紙をめくるとまず最初に出てくるのは、統合戦闘飛行隊「アフリカ」の部隊全員で撮った写真。マルセイユが中心に居て、その隣に私、玄太郎、ライーサ、信介、真美が左右に並び、整備部隊や補給部隊、警備部隊の面々が並んでいる。

 これ、いつ撮ったんだっけ?

 

「トブルク防衛戦(13~16話)の後の写真だな」

 

 いきなりの声にびっくりして顔をあげると、テーブルの向かい側にマルセイユがいた。

 いつのまに来たんだか・・・。

 

「ほら、ゲンタローの髪が変に短い」

 

「ホントだ。あなたも、頬に絆創膏が付いてる」

 

 あの時は大変だった。ネウロイの類を見ない大攻勢だったし、トブルクでは暴動が起こるし、玄太郎は暴走するし・・。今考えたら乗り越えられたことが不思議なくらい。

 

「他にどんな写真があるんだ?」

 

「あ、こら!」

 

 物思いにふけっていたらマルセイユが勝手にアルバムをめくり始めた。

 最初は私が記者としてここを訪れた時のページ。この部隊がマルセイユとライーサのカールスラント空軍だけの時の頃。

 次のページは私が大尉として陸軍に再任官し、真美達と共にやってきた頃の写真。真美は扶桑陸軍魔女(ウィッチ)の紅白の正装と扶桑人形のような容姿が相まってか、よく一緒に写真を撮ってくれってせがまれたっけ・・・。

 統合戦闘飛行隊『アフリカ』が結成された時のページ。みんなの表情がどこか固くて、今に比べて余所余所しさが目立つなぁ。

 そして次のページ。

 

「そうか。この時期に来たんだな。ゲンタローとシンスケは」

 

「・・・そうね」

 

 トラック2台とその脇で佇む2人の男性。玄太郎と信介がこの基地に到着した時の写真だ。写真でも海軍さんの白い制服はよく映えているなぁ。

 

「男で魔法が使えるなんてな。驚いたよ」

 

「だからっていきなり模擬戦を吹っかけるのはなかったんじゃない?」

 

「う・・・」

 

 あ、マルセイユがバツの悪い顔をした。そりゃそうだ。あの時、玄太郎は魔法力切れで倒れたんだから。

 

「お!これは、ライーサとシンスケの初対面じゃないか?」

 

 あ、話を逸らすつもりだな。でも、食い入るように写真を見つめ、ごまかそうとする姿が年相応で微笑ましかった。

 一緒になって写真を見る。信介とライーサ、そして真美が挨拶している場面だ。その上では玄太郎とマルセイユが模擬戦をしていることを考えれば、すこし笑えた。

 

 ページをめくっていき色々な写真を見ていく。

 皆で食事や宴会をしている場面や整備作業している場面、玄太郎が刀で素振りをする場面や信介が零戦艦上戦闘機のコックピットでポーズを取っている場面・・・。写真で、信介は笑っているけど、玄太郎はほとんど無表情だ。板前姿でも・・・

 

「最初の頃は、ゲンタローはほとんど笑ってないな」

 

「まだ私達のことが信用できなかったのね。誰かさんは、玄太郎を騙して酒を飲んで怒らせるし」

 

「うぐっ・・・」

 

「その誰かさんが大泣きしている写真はどこにあったかしらねぇ」

 

「そんな写真撮っていたのか!?ま、待て!どこにある!?」

 

 血相を変えてマルセイユが飛び掛ってくるけど、そんな写真は一枚も撮っちゃいない。からかっただけだ。

 

「でも、おかげで頭を撫でてもらったぞ!」

 

「その為に私がどんな苦労をしたと思っているのよ・・・」

 

 マルセイユを泣かせたせいで玄太郎が部隊で孤立しかけたのを何とかしようと色々と手を尽くしたのはいい思い出だ。

 ・・・。

 今思えば。この時がきっかけで玄太郎が気になり始めたのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにいたんだ、ティナ」

 

「ケイさん、何しているんですか?」

 

 マルセイユとワイン片手にアルバムを眺めていたら、ライーサと真美がやってきた。信介がいなくなってから数日の間はライーサは目に見えて落ち込んでいたけど、最近は表面上は今まで通りに振舞っている。でも真美の話では、夜はずっと信介の写真を見ているらしいから、やっぱり寂しいようね。そんなことを考えながら二人に手を振った。

 

「玄太郎と信介に送る写真を選んでいたら、つい見入っちゃってね」

 

「二人も来い!一緒に選ぼう!」

 

 マルセイユに手招きされ、二人は嬉々としてテーブルに着いた。私は4人で見られるようにとアルバムの位置を変える。4人で額を寄せ合ってアルバムを見るなんて初めてじゃないかしら?

 トブルク防衛戦が終わった後の写真には変化があった。

 まず、玄太郎の雰囲気が和らいでいること。笑顔を見せている写真もある。これはマルセイユの言葉が効いたのだろう。それともボディブローの方かな?本当は私が一発ブン殴って説教するつもりだったけど・・・。ま、結果オーライかしらね。

 もう一つの変化は、玄太郎と信介のツーショットが減って、信介とライーサとか玄太郎とマルセイユといった色々なツーショットが増えたことだ。ブリタニア王国陸軍の陸戦魔女(ウィッチ)のマイルズ少佐やカールスラント帝国陸軍のシャーロットととの写真もある。シャーロットはともかく、マイルズ少佐と写っているのは何か気に食わないけど。玄太郎が心を開き始めた結果だ。

 この時ぐらいから信介とライーサの仲は縮まっていったのかな?

 

「お、こんな写真もあるのか」

 

「あ、ちょっとティナ!?」

 

 また物思いに耽っていたらなにやらマルセイユとライーサが騒いでいる。ライーサが必死にアルバムを押さえているけど、どんな写真だったっけ?

 

「うん?ライーサ、ちょっと見せてね」

 

「え!ケイまで!?」

 

 ライーサがマルセイユに気を取られている隙をついてアルバムを掻っ攫う。慌てて止めようとしたライーサはマルセイユが羽交い絞めしてくれた。で、どんな写真かなっと。

 

「あぁ、この写真ね」

 

 寝ているライーサを信介がおぶっている写真だ。信介の背中に完全に体を預けちゃっているライーサの寝顔があどけなくて可愛い。信介もニコニコしているけど、背中にライーサの涎がべったり付いちゃっているのに気が付いていないな。

 

「これ、いつの間に撮ったんですか!?」

 

 顔を真っ赤にしたライーサが詰め寄ってきた。でも、私もいつ撮ったか覚えていないのよね~。さて、なんと言ったものか・・・。

 

「そんなことより、だ!前々から聞きたかったことがある。ライーサ」

 

 私が返事をする前にマルセイユがライーサに問いかけていた。やたら真剣な表情をしているけど、そんな重要なことってあったっけ?真美も緊張しちゃってオロオロしているし・・・。

 

「な、なに?ティナ・・・」

 

「ああ・・・。シンスケのプロポーズはどんなだった?」

 

「って、そんなことかいっ!!」

 

 思わずつっこんでしまった。重大なことだと思ったのに。ただ、ライーサにとっては違うようだけど。

 

「プ、プ、プ、プロポーズって!?」

 

「プロポーズを受け入れたから付き合っているんだろう?」

 

「でも、結婚の約束はしていないし!?」

 

「なんだ?シンスケとは結婚したくないのか?」

 

「したいけど!!いや、そうじゃなくて!?」

 

 あぁあぁあぁ、完全にマルセイユの術中に嵌っちゃってる。でも、ここまで取り乱すライーサも珍しい。写真撮って信介に送ったら喜ぶんじゃないかしら。

 

「わ、私も是非聞きたいです!ライーサさん!」

 

「マミまで!?」

 

 あ、真美も興味あるんだ。やっぱり女の子ねぇ。ま、私も聞きたいけど。

 

「で、実際の所どうだったの?」

 

「ケイまで・・・」

 

 どうやら観念したみたい。ライーサは顔を真っ赤にしながらポツリポツリと話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘックション!!!」

「さすがに冷える。・・・帰るぞ」

「まだ一匹も釣ってねぇじゃねぇか」

「だとしても・・・時と場所を考えろ」

「え?竿も釣り糸も海まであるだろ?」

「・・・空母の上から釣りをすること自体間違っているだろう・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、私はシンスケの恋人になったの」

 

 ライーサは口を閉じた。そして、服の中に入れていたネックレスを取り出すとじっとそれを見つめた。信介を思い出しているみたいね。

 まるで、恋愛小説のような話だなぁ。隣を見れば、真美がライーサと同じぐらい顔を真っ赤にしているしマルセイユもどことなく頬を染めているような・・・。でも、なにか不満そう?なんで?

 

「キスをしたぐらいで目を回すのか。シンスケは意外とヘタレなんだな」

 

 あ、そこか。まぁ、欧州の人から見ればそう思うかもね。扶桑じゃ滅多にそんなことしないから、信介には刺激が強すぎたんだろうけど。

 

「しかし、そんなことが会ったのか。でも、二人がラブロマンスしている間、私達はネウロイの相手だったんだからな」

 

「そうね。しかも二人を助けに行くって部隊が分裂しかけたし、玄太郎は勝手に救援要請を出してるし、色々な意味で胆が冷えたわ」

 

 ・・・ま、この時から私は玄太郎に・・・

 

「で、でも、皆さん無事でしたし、ネウロイにも勝ったんだからよかったですよね?」 

 

 真美が慌てたように言った。私は何故か嬉しくなって彼女の頭を撫でた。

 

「そうね。よかったわ、本当に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食も近くなり、ライーサと真美は食事の準備をしに行ってしまった。私とマルセイユはほろ酔いぐらいになりながらまだアルバムをめくっている。

 

「これは扶桑の魔女(ウィッチ)が来た時の写真だな。タケイ・・・だったか?」

 

「あぁ、醇子ちゃん?昔に比べたら随分変わっていてビックリしたわ」

 

 マルセイユの視線に釣られて、醇子ちゃんと玄太郎のツーショットを見る。同じ海軍だからって撮ったけど、なんか納得いかなかったな。

 

「そんなむくれた顔するなよ。別にゲンタローを取られた訳じゃないだろう?」

 

 あら、不機嫌さが顔に出ちゃってた?まぁ、マルセイユの言う通りなんだけど、なにか釈然としないので言い返しておく。

 

「別に、そんなにむくれている訳じゃ・・・」

 

「お、玄太郎が歌った時の写真もあるのか!」

 

「ちょっと」 

 

 あなたが言い始めたんだから、ちゃんと相手をしなさいよ。これだから酔っぱらいは・・・。でも、玄太郎が歌い始めた時は本当に驚いたわね。人前で何かするっていうガラじゃなかったし。しかも、歌の腕前もそ相当上手くて、また驚いたわ。

 

「あの時のゲンタローはかっこよかったな」

 

「そうねぇ」

 

 マルセイユも玄太郎が歌っている姿を思い出しているのかと思いきや、急にニヤーと笑った。何かからかいがいのあるものを見つけたような・・・。え?私?

 

 

 

 

「なぁ、ケイはなんでゲンタローが好きになったんだ?」

 

「んなっ!?・・・んんっ!何でいきなり?」

 

 思わず声が裏返ってしまった。同様しているのを隠さないとマルセイユが調子乗っちゃう・・・手遅れだろうけど。

 

「いやなに、こんなことを話す機会なんてなかったしな。ゲンタローがいないからこそ話せることもある」

 

「結局はあんたが聞きたいだけじゃない」

 

 思わず溜息が漏れたけど、少し考えてみる。

 

「最初は厄介者が来たと思ったわ」

 

「厄介者?」

 

「そう。玄太郎の実家は扶桑の軍隊とは色々いざこざがあってね。陸軍は特に。しかも玄太郎は最初無愛想だったでしょ?正直、やりずらかったわ」

 

 話しているうちにその時のことを思い出してしまい、自然と頬が緩む。マルセイユは私の言葉に困惑しているようだった。

 

「わ、私はケイがそんなことを思っているなんてまったく気付かなかった」

 

「そりゃ、私は隊長だし、そんなことを表に出す訳にはいきないでしょ?まぁでも、少し経てばただの無愛想って訳じゃないって分かったけどね」

 

「ふ~ん。じゃあ、いつから好きに?」

 

 興味津々といった感じで目をキラキラさせるマルセイユ。やっぱり女の子ねぇ、そんな他人の色恋が面白いか。でも、話し始める前にワインを一口。どうでもいいけど、もうワインもなくなりそうね。

 

「ケイ?」

 

「ん?あぁ、えっとね。きっかけはトブルク防衛戦の後。玄太郎の魔女(ウィッチ)恐怖症や彼が受けてきた仕打ちを知って思ったのよ。玄太郎が魔女(ウィッチ)を怖がっている兆候はあったはずなのに、なんで隊長の私は気付けなかっただろうって。なんでもっと玄太郎についてしっかり知ろうとしなかったのだろうって」

 

 ワイングラスを揺らすと、ワインの水面に写った自分の顔も揺れてひしゃげていく。その顔は泣き顔にも見えなくも無かった。

 

「玄太郎についてしっかりと知ろうと思った。できるだけ会話して、玄太郎の様子を眺めて、そしたらなんとなくだけど分かってきた部分があった。プライベートが意外とズボラだったりね」

 

「あぁ、あの天幕はなかなかすごかったな」

 

 マルセイユも玄太郎のベットを見たみたいね。軍に入ったら身辺整理は徹底されるはずなんだけど、どうしてああなったのかしら?

 

「他にも、魚の調理がとても上手いこととか、小さい子供の扱いが慣れているとか、お酒は飲まないって言ってるくせに意外と強かったりとか、歌が上手いとか・・・」

 

「あと、髪の手入れも上手いんだぞ?」

 

「何それ。私知らない!?」

 

「ここを出発する前にやってもらった」

 

 マルセイユが自慢げに髪をなびかせてこっちを見てくる。少しイラッとしたので、マルセイユのワインを掠め取って一気に飲み干してやった。

 

「あ・・・!」

 

「上官を虚仮にした報いよ」

 

 私もして欲しかったなぁ。でも、私の髪はくせっ毛で短いし、やりずらかったかな。私も、マルセイユみたいに髪が長かったら・・・。いそいそと新しいワインの瓶を取り出して自分のグラスに注いでいるマルセイユを尻目に、私は自分の右手を眺めた。

 そう。私が玄太郎に惹かれたのは・・・

 

「やっぱり優しい所かな・・・」

 

 ライーサと信介が落とされた時、私は潰れかけた。

 一刻も早く二人を助けに行きたいケイ・カトーと二人が抜けた穴を塞ぐ為にすぐに増援をと考える加東圭子大尉に挟まれて。あの時、決断を下せたのは玄太郎が励ましてくれたお陰、手を握ってくれたお陰。私は潰れることなく加東圭子大尉として事態に対処することができた。二人が生き残っていると信じて軍人としての責務は果たすことができた。結果的に、ネウロイの侵攻を防ぎ、二人も無事救出することができた。

 

「実は玄太郎も相当焦っていて勝手にマイルズ少佐の所へ救援要請だしていたけどね」

 

「そうだな。ゲンタローは自分も苦しいのにも関わらず、相手に手を差し伸べる」

 

「本人に自覚があるかどうか分からないけどね。だから、私は玄太郎に惚れたの」

 

「さすが、ゲンタローは私の兄貴だ」

 

 そう言って二人で笑い合う。マルセイユが徐にグラスを掲げた。

 

「ゲンタローに」

 

「玄太郎に。あと信介にもね」

 

 私もグラスを掲げてマルセイユのグラスに軽くぶつける。チンッと小気味よい音が響いた後、二人で残りのワインを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が完全に暮れた後、天幕の中で私は手紙をしたためた。作戦のこととかはどうせ検閲が入るから書いても意味ないだろうし、二人がいなくなってからの部隊のこととかを書いておいた。

 後は写真。

 「アフリカ」全員で撮った物と私達戦闘部隊で撮った物。ライーサと信介のツーショットに日常の風景をいくつか・・・。

 便箋の封を閉じて一息つく。少しだけ考えて、私は引き出しから一枚の写真を取り出した。

 何も無い滑走路を背景に撮った私と玄太郎のツーショット。

 玄太郎が異動前で忙しい中、無理を言って撮ってもらったものだ。とってつけた理由をまくし立てた気がするが、玄太郎は二つ返事で了承してくれた。信介が写真を撮ってくれたけど、とても複雑そうな顔をしていたけど・・・。

 

「だから、好き・・・なのよね」

 

 思わず呟いてしまった言葉に顔が赤くなる。写真に話しかけるなんて、いい年して恥ずかしい。もし、再び会うことができたらこの気持ちを伝えよう。思いが届かなくても、大切にしていこう。

 

「その時まで・・・待ってなさい」

 

 そう呟いて、私は写真に軽くキスした。

 

「ねぇ、玄太郎。そっちは大丈夫?私に会うまで、無事でいなさいよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちら、神崎!!残存兵力は!?」

『俺以外、全員落とされちまったよ!?』

 

 夜明け前の薄暗い中、眼下の海面からは所々から火が上がり、空中には無数の赤い閃光が煌く。

 

「くっ・・・」

 

 島岡の悲痛な叫び声に神崎は悔しげな息を漏らした。手に持つヰ式散弾銃改にすばやく弾を込め、背後から襲ってきたヒエラクス3体の攻撃をすんでの所で回避する。そして回避した勢いとマルセイユ仕込の急旋回でヒエラクスの後ろを取ると容赦無く引き金を引いた。短い銃声の後、素早くレバーを前後に動かしもう一発。更にもう一発。無数の弾丸に貫かれたヒエラクス3体は穴だらけになって空中に消えた。

 

「これで、9体・・・!」

 

 太陽が昇り始める。東から差し込まれる日の光の眩しさに神崎は目を細めた。しかし、一瞬後大きく目を見開かせることになる。

 今まで通信が通じなかったと思った空母「翔鶴」は甲板のいたる所に穴が開き、黒煙をもうもうと立ち昇らせている。周りにいる駆逐艦や巡洋艦からは対空砲火が上がっているが、ほとんどの艦が中破以上の損傷を負っていた。水面には無数の戦闘機の亡骸。空を飛ぶ為の翼は無残にも切り裂かれ、漏れでた油が円を描いていた。

 

「なんてことだ・・・」

 

 神崎は毒づきながらも銃を左手に持ち替え、炎羅(えんら)を抜いた。そして目の前に立ち塞がる無数のネウロイを睨み付ける。

 

「ケイさん・・・。こっちは全然大丈夫じゃないです・・・」

 

 額から汗が垂れる。

 神崎は遥か彼方にいる頼もしい上官に思わず呟いていた。

 




いきなりスオムスに着くわけない

あと、新しく章追加しました

スオムス編の為にフィンランド空軍の本を読んだら、色々なことが分かって面白かった!
そういう読書もいい
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