ストライクウィッチーズ 一匹の狼   作:長靴伯爵

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 割と投稿するまでに時間が空いてしまいました
 申し訳ありません

 それはともかくエーゲ海の女神、見てきました!動いているライーサを見れてこの三笠、思わず前かがm・・・なんでもありません

 というか、ライーサとマルセイユが出ているなら神崎と島岡の登場シーンは?え?出ないって?あ、そうですか・・・

感想、アドバイス、ミスの指摘等よろしくお願いします


第三十五話

 

 

 飛行船でのゆったりとした空の旅の後、神崎、島岡の扶桑皇国海軍スオムス派遣分隊戦闘班は、スオムスの首都ヘルシンキに到着した。季節は冬、街並みは白い雪で覆われ、雪掻きに勤しむ民間人の姿も多く見受けられた。

 

「あ゛あ゛~寒ぃ~。俺、氷点下初めてなんだけど」

 

「風がないだけまだマシだ・・・」

 

 ぶつぶつと愚痴りながら、神崎と島岡の二人は扶桑海軍が支給している厚手の黒いコートで身を包み、防寒用の帽子と耳当てを装着していた。完全装備である。神崎に至っては腰に「炎羅(えんら)」を装備しているので、通りすぎる人から多くの視線を集めていた。

 ジロジロと見られるのには慣れている神崎は、様々な方向からくる視線を小さく鼻で笑って一蹴すると、隣を歩く島岡をジロリと見た。

 

「で、お前は何を食っている?」

 

「エビっぽいのが屋台で売ってたから買ってきた。うめぇぞ?」

 

 島岡の手には紙袋があり、中から鮮やかな赤に彩られたものが見えていた。茹でたてなのか、寒い中でも湯気があがっている。

 

「確かにエビっぽいな・・・。ザリガニだが」

 

「ザリガニかよ!!けど、うめぇからいい」

 

 神崎が見ているなかで次から次ぎへとザリガニを頬張る島岡は随分と幸せそうだった。その光景に神崎も少なからず食欲を刺激されるが、目下優先すべきことがある今は、その欲求を押し殺してポケットから懐中時計を取り出した。

 

「列車の出発まで後1時間だ。それまでにここを抜け出して、駅に着かねば・・・」

 

「つうか、なんで何も知らねぇ土地に置き去りにするかね。あんの変態大尉は・・・」

 

 完全に迷い込んでしまった裏通りの真ん中で、二人は深々とため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘルシンキに到着した当初は神崎、島岡の二人に加えて鷹守以下10名の整備班もいた。彼らは一度スオムスに来たことがあるらしく、二人は彼らについて行けば大丈夫だろうと考えていた。

 しかし・・・

 

「と言うわけで、僕達はここ(ヘルシンキ)から別行動になるから、二人でヴィープリまで行ってね」

 

 鷹守が放ったこの一言に、二人は思わず噛みついた。

 

「いやいや、何が「と言うわけで・・・」だよ」

 

「明らかに無理があるだろう?」

 

 鷹守は大尉で二人の上官にあたるのだが、その性格故に、彼に対する二人の口調は随分と砕けたものになっていた。

 鷹守はキョトンとした表情で言う。

 

「あれ?言ってなかったっけ?僕達、整備班は整備機材の関係と着任報告の為に一度、ミッケリに行かなくちゃいけないんだよ」

 

「初耳なんだが・・・」

 

「つうか、ミッケリってどこだよ・・・」

 

 ちなみに、ミッケリとはスオムス軍の総司令部がある街である。

 

「君達はすぐにでも前線に向かわせろって言われているから仕方ないね。あ!あと、君達に手紙が来てたから渡しておくね。じゃ、がんばってね~」

 

 そう言うと鷹守は整備班を引き連れて風のように去っていった。神崎と島岡は自分の荷物と渡された二つの封筒を握ったまま立ち尽くすしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘルシンキの街並みを右往左往し、同じ処を何度も行き来し、街の人からジロジロと見られ、ようやく駅にたどり着いたのは、列車が出発する5分前だった。ほとんど飛び込むようにして二人が列車に乗り込むと、まるでタイミングを見計らったように列車は出発した。

 

「何とか間に合ったか・・・」

 

「まさか、あんなに走るとは思わなかった・・・」

 

 這々の体で列車の三等車両の棚に荷物を置いて、座席に座り込む二人。実のところ、神崎が少尉で士官であるため二等列車には乗れるのだが、二人は時間がなさ過ぎて、そんなことに構う余裕がなかったのだ。むしろ、列車に乗れただけマシだと思っていた。

 島岡は背もたれにだらしなく体を預けると、疲れた声音で言った。

 

「疲れたし、寒ぃし、寝てていい?」

 

「好きにしろ」

 

「じゃ、お言葉に甘えて・・・zzz・・・」

 

 神崎から了承を得るとすぐに体を丸めて寝始める島岡。神崎はその素早い行動に嘆息しつつ、腰の「炎羅(えんら)」を取り外して脇に置く。何気なく周りに視線を向ければ、物珍しそうにこちらを見る乗客が数人いるぐらいで、特に気になる物もない。

 神崎も背もたれに体を預けて力を抜くと、コートのポケットから鷹守の置き土産である封筒を取り出した。随分と分厚い方を取り上げて差出人を見ると、思わず頬が緩む。もう既に恋しくなっているアフリカ、敬愛すべき加東圭子大尉からだった。検閲済みの印が押された封筒を開けると、中には数枚の便箋と十数枚の写真。封筒が分厚くなる訳だと、神崎は小さく苦笑して、ひとまず便箋の方に目を落とした。

 内容は最近の「アフリカ」の近況。任務については検閲が入ることを見越してか一切触れられていなかったが、マルセイユやライーサ、稲垣、マティルダの様子が事細かに書かれていた。加えて、二人への心配や落ち着いたら手紙を書いて欲しいという旨も・・・。併せて送られてきた写真には、神崎と島岡が居た時の物が数多く含まれていた。「アフリカ」全員の集合写真や神崎とマルセイユの模擬戦の様子、島岡とライーサのツーショットや、皆での宴会など様々な物があり、神崎は随分と懐かしい気持ちになった。

 

「まだ、1ヶ月も経っていないんだがな・・・」

 

 神崎は苦笑混じりに独りごち、「アフリカ」が自分にとって随分と大きな物になっていることを実感する。そして、ゆっくりと便箋と手紙を封筒に戻すと、もう一つの封筒を手に取った。差出人の名を見て軽く目を見張る。

 

「醇子か・・・」

 

 今は扶桑で教官職に就いていたはず・・・と神崎はアフリカでの彼女との交流を思い出しながら封を開いた。

 内容は、無事扶桑に到着した後、舞鶴の魔女(ウィッチ)養成学校に教官として着任したとのこと。訓練を受ける候補生達の姿は昔の自分を見ているようで懐かしい、また、そんな彼女達を導いていくことが出来るのかと不安になると綴られていた。最後に、今度扶桑に帰って来る時は自分の家に戻って欲しい、と・・・。

 

「・・・」

 

 神崎は、ふぅ・・・と息を吐くと静かに便箋を封筒に戻した。少なくとも、今はまだ帰るつもりはなかった。

 

 

 

 

 

 しばらくして列車がガタゴトと揺れてゆっくりと停車した。どうやら駅に止まったらしい。ドヤドヤと乗客が乗り込み、瞬く間に空いていた席が埋まっていく。そんな中で、神崎達が座る座席の近くに子供連れの女性が立った。赤ん坊を抱え、3才ぐらいであろう女の子の手を引いた女性は、見慣れない軍服を着た外国人の前に座るのを躊躇っているようだった。しかし、この車両には他に空いている座席はなく、他の車両に移ろうにも子供達がグズり始めて手間取っている様子である。

 神崎は出来るだけ柔和な表情を作ると、女性に声を掛けた。

 

「どうぞ、座って下さい」

 

 しかし、彼女は戸惑うように目を泳がすだけで動こうとしない。どうやらブリタニア語が分からないようだった。残念なことに神崎はスオムス語が分からないので、手振りで座るように促す。すると、意味が通じたのか女性が微笑みを浮かべた。

 

「キートス」

 

 感謝の意味を表すのであろう言葉を告げて、女性は女の子と共に座る。神崎は眠りこける島岡を少しどかせて女性に邪魔にならないようにした。

 

 ふと視線を感じてその方向に視線を向けると、向かいの座席の女の子がジッとこちらを見ていた。扶桑人が余程珍しいのか、神崎の一挙一動を見逃さない勢いである。

 その姿を見て神崎はあることを思いついた。立ち上がって荷物棚にある自分の鞄から、ある物を取り出した。女の子が食い入るように見る中、神崎はただの紙を膝の上に広げた。女の子はそのことに気付くと落胆したように表情を曇らせるが、神崎は小さく笑うとよく見えるようにゆっくりと紙を折り始めた。折っては伸ばし、折っては伸ばしを繰り返して現れたのは一羽の鶴。女の子はまさか紙が鶴になるとは思わなかったのか目を丸くして驚いていた。そんな彼女に神崎は鶴をそっと差し出すと、女の子は大喜びで受け取った。お礼を言う母親に軽く応じつつ、体を背もたれに体を預ける。小さな満足感を抱いて、外の流れる景色を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流れる景色に雪が混じり始めた頃、列車はヴィーブリに到着した。向かい側に座っていた親子は二つ前の駅で降車しており、既に姿はない。その代わりと言ってはなんだが、車両内には軍人の姿が多くなっていた。

 

「おい、着いたぞ」

 

「んあ?あぁ・・・着いたのか~」

 

 今の今まで眠りこけていた島岡は、座ったまま大きく伸びをすると神崎の顔を見て首を傾げた。

 

「うれしそうだな?何かあったか?」

 

「まぁな・・・。さ、降りるぞ」

 

「はいよ」

 

 鞄を持って列車から降りると、細かな雪が混じった突風が二人を襲った。肌を刺すような冷気に、二人は思わず身を震わせた。

 

「痛い!?アフリカとは別の意味で風が痛い!?」

 

「・・・へっくしょん!!」

 

 こんな反応をしているのはこの二人ぐらいで、周りの人々は寒さに全く動じることなく歩を進めている。この程の寒さなどスオムス人にとってはどうということはないのだろう。寒がっている二人は異様に浮いていた。

 島岡は再度身を震わせながら言った。

 

「ったく、めちゃくちゃ寒ぃじゃねぇか・・・。もっと中に着込むんだった・・・。というか、坊主の頭が寒ぃ・・・」

 

「さすがにこの寒さは堪えるな・・・。氷点下など軽く下回ってだろうな・・・」

 

「あ~。アフリカが恋しい~、ライーサが恋しい~」

 

「・・・お前はブレないな」

 

 寒くても島岡はやはり島岡である。神崎が呆れかえっていると・・・

 

「あの、すみません」

 

 誰かが彼の背後から声をかけた。控えめだが、その実、一本の芯が入ったような声である。

 神崎が振り返ると、一人の少女がこちらを見ていた。神崎よりも頭一つ分小さい小柄な体にスオムス軍のコートを纏い、肩口の辺りまで伸ばしている栗色の髪の頭には、スオムス軍の略帽を載せていた。階級章から察するに下士官である。

 神崎は無意識の内に僅かに身構えていた。彼女が魔女(ウィッチ)だということは自ずと分かる。

 

「・・・はい?なんでしょうか?」

 

 神崎はいつものポーカーフェイスで応えた。表面上は普通のはずである。

 

「失礼ですが、お二人は扶桑皇国海軍の・・・えっと・・・神崎玄太郎少尉と島岡信介特務少尉で間違いないでしょうか?」

 

「そううですが・・・貴女は?」

 

 そう返答しながらも神崎は彼女が自分たちの出迎えに来たスオムス空軍の魔女(ウィッチ)では・・・と、ある程度察していた。結果は彼の予想から少し外れていたが・・・。

 

「私は、お二人の案を任されました、スオムス陸軍第12師団第34連隊第6中隊所属、シーナ・ヘイヘ曹長です」

(陸軍・・・?)

 

 

 彼女、シーナの敬礼をしながらの名乗りに神崎は疑問を抱いた。チラリと島岡に目を向ければ、彼もいぶかしむように僅かに眉を顰めている。

 それはともかく、シーナだけ名乗らせる訳にはいかないので、神崎と島岡はシーナに答礼しつつそれぞれ名乗った。

 

「扶桑皇国海軍スオムス派遣分隊所属、神崎玄太郎少尉です」

 

「同じく、島岡信介特務少尉です」

 

 二人が名乗り終わるとシーナはゆっくりと敬礼していた手を下ろした。

 

「では、さっそく移動しましょう。もうそろそろ着くはずですし・・・」

 

 心なしか、シーナは草臥れたような雰囲気を醸し出していたが、神崎っは気にしても仕方ないとあまり気にしなかった。代わりに、別のことを尋ねる。

 

「どこに移動するのですが?」

 

「向かいのプラットホームです。そこから出発する列車であなた方の出向先であるソルタヴィラに向かいます。・・・移動が楽で助かる」

 

「はい?」

 

「いえ、なんでもありません。早速行きましょう」

 

 シーナに促されるままに、神崎と島岡は自分達の鞄を持った。

 

 

 

 

 

 




 エーゲ海のとあるシーンでは島岡が発狂しそうでしたねw

 既にBDは予約済みです
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