原作キャラがアウロラネーチャンと北郷さんしか出てないよ~
でも、続けますw
感想、アドバイス、ミスの指摘、などなどよろしくお願いします
では、どうぞ
扶桑皇国、呉、海軍造船所
海洋国家の扶桑が造船が盛んになるのは最早必然だっただろう。他国との交わりを持つためには自国を取り巻く海を渡るしか無く、船は必要不可欠だった。現在では航空機の発達により空を使うこともできるが、船の必要性は僅かにも揺らいでいない。
そんな扶桑で、呉は数ある造船港の中でも最大規模となるものを有していた。扶桑皇国海軍の保有する軍艦の数多くがここで建造されており、それらの多くが今ネウロイとの戦いに投じられている。
そんな呉造船所の一角にある、古いドック。
北郷章香大佐は、自分の斜め後ろに従卒を控えさせて、そのドックの入り口前に立っていた。
ドックは海風に長年晒され続けた為か錆が酷く、入り口のドアも随分と古ぼけた物だった。ドアの両脇には海軍のセーラー服の上から武装を装着した歩哨が一人ずつ立っており、関係者以外の立ち入りを威圧するように拒んでいた。大佐である北郷もその例外ではない。
数分程経過しただろうか?
北郷と警備兵達が睨めっこをしていると唐突にドアが内側から開いた。即座に直立不動の姿勢を取る歩哨達。その間を通って現れたのは、才谷美樹中佐だった。眼帯に隠れていない左目で北郷の姿を確認すると足早に彼女の元へと向かう。
「ようこそ、おいで下さいました。大佐」
才谷は北郷の正面に立ち、敬礼と共に言った。北郷も綺麗な姿勢で返礼する。
「うん、ご苦労様。それじゃあ、案内してもらえるかな?」
「はい。どうぞこちらへ」
才谷の先導に従い、北郷はゆっくりと歩を進めてドックの中に入る。従卒は外に残したまま。今から彼女が見るのは扶桑皇国海軍の中でも重要機密になっている為、知る資格のある者はごく一部の者だけだった。
「状況はどうなっているかな?」
「基本的な部分は完成済みです。艤装の方も8割方は。全てが完成次第試験運航に移ります」
外装と同じく錆だらけの通路を事務的な会話をしつつ歩く北郷と才谷。錆で大部分が茶色くなった通路を進み、階段を登り、何度目かの警備兵で守られた扉を開くと、突然照明の光が差し込んだ。
「こちらです」
北郷は、才谷に促されるままに扉の中へと足を踏み入れる。けたたましい作業音や溶接の火花が散るドックの中心部となる作業場。彼女は今、その一面を見下ろすことのできる監督室に居た。
北郷は作業場を一目見て、僅かに目を見開いた。彼女の視線の先には作業場の空間を埋め尽くしてしまう程の巨大な横長の黒い塊。
「試験運航は2週間後を予定しています」
才谷の言葉も今の北郷には疑わしかった。果たしてこんな物が本当に動くのかと。
「大きいね」
疑問と感嘆が入り交じった言葉が無意識の内に口から出ていた。才谷も同じような気持ちを味わったのか、僅かに表情を緩めた。
「ええ、大きいです。試作艦扱いですが、運航能力は世界最高と言っても過言ではありません。
才谷の言葉には少なくない熱が籠もっていた。ここの指揮を取っていた分、思い入れもあるのだろう。
「2週間後が楽しみだね」
「はい。とても楽しみです。はやく見てみたい。この「伊399」が海を進む姿を」
2人が見下ろす中、巨大な試作潜水艦「伊399」は爪を研いでいるかのように、着々と艤装を施されていった。
スオムス ラドガ湖北部 中隊防衛陣地
外からはスコップで土を掘ったり槌で木を打ち付けたりと土木作業の音が聞こえる。ザックザック、コンコンコン、というリズミカルな音に機嫌を良くしながら、アウロラはイスの背に体を預けつつ瓶を取り上げ、テーブルの上に置かれたグラスに透明な液体を注いだ。グラスから果実の爽やかな甘い香りが仄かに漂う。
「これはコッスというスオムスの銘酒だ」
アウロラはグラスを取り、しばし果実の香りを楽しむと一気に飲み干した。グラスの半ばまで入っていたはずだが、事も無げにその味に微笑み、再びグラスに注ぐ。次いで、向かいの席に置いてある二つのグラスにも注いだ。
「ネウロイの侵攻を防いでスオムスを守った後に飲むコッス程美味いものはない。私はそう思うんだが、2人共どう思う?」
「自分は・・・なんとも・・・」
「そ、そうっす・・・ね?」
グラスの揺らめく水面を目の前に、神崎と島岡はこの状況に困惑しながらも、何とか返事を口にした。
当初、2人は暖炉の近くに座りこれからについて話し合っていたのだが、アウロラが帰ってきた途端に何故か酒飲みになってしまったのだ。
気の抜けたような返事だったが、アウロラは特に気を悪くすることもなく2人に酒を奨め、自分のコップを空にしては再びコッスで満たす作業を繰り返していた。あまりにもアウロラが美味そうに飲み、強く奨めてくるので、まず島岡が次いで躊躇いながら神崎もグラスを取る。爽やかな甘い香りが2人の鼻をくすぐり、誘われるようにグラスを傾けた。その瞬間・・・
「!?!?!?」
「ゴハッ!?」
神崎は口を押さえて目を白黒させ、島岡は盛大に吹き出した。爽やかな香りではあるコッスだが、実の所ウォッカとあまり変わらない。つまり、アルコール度数が非常に高いのだ。
こんなものを涼しい顔で飲んでいたのか・・・!?
神崎はそんなことを思いながら、アルコールで焼けた喉に冷たい空気を送るべく喘ぐ。島岡も似たり寄ったりな状態だった。アウロラは悪戯が成功した悪ガキのようにニヤニヤして見ていたが、おもむろに口を開いた。
「いい感じで緊張も解れたな。じゃあ、状況の説明といこうか?」
まだ混乱している2人に構わず、アウロラは一滴も酒が入っていないかの如くつらつらと今の状況について説明し始めた。
本来の計画では、神崎と島岡はスオムス空軍の第一飛行団に所属する偵察部隊第12戦隊と戦闘部隊第14戦隊の基地「ソルタヴァラ」に出向することになっていた。当然、2人の出迎えもこの基地の人員が行うはずだった。
しかし、同時期にスオムス空軍は大規模な反抗作戦を計画しており偵察を主任務とする両戦隊は作戦準備の為に連日の出撃。基地の方も仕事に忙殺されて、急遽近場で防衛任務にあたる第34歩兵連隊第2大隊第6中隊に代行を依頼した。指揮官のアウロラはそれを了承し、シーナを派遣。そのまま2人をソルタヴァラに送る・・・はずだった。
「だが、ここで問題が起きてな」
ここでアウロラが一端話を切り上げ、唇を湿らせる為にコッスを飲んだ。神崎は内心呆れつつも、いつものポーカーフェイスを保つ。島岡はどうやら自分のものをちゃっかり飲み干していたらしく、もう一杯飲みたいのか、チラチラと自分の前の空のグラスを見ていた。神崎はまだ半分以上残っている自分のグラス(飲む気には到底なれなかった)を島岡に押しつけると、話の続きを促した。
「それで問題とは?」
「ソルタヴァラがネウロイの攻撃を受けた」
「ゴホッゴホッ!?」
「・・・それで?」
事の重大さのせいかコッスのせいかは分からないが、島岡が再び咳込んだ。神崎は驚きつつも、冷静に情報を求める。アウロラは腕を組んで言った。
「どうやら、どっちの戦隊も出払っている時に襲撃を受けたらしい。航空型ネウロイの爆撃を受け、基地機能の半分以上が麻痺。死傷者が襲撃の規模の割には少ないのがせめてもの救いだな。さっきのここに攻めてきたネウロイはソルタヴァラが麻痺した隙をついて攻めてきた物だよ」
いつもなら第14戦隊の奴らがある程度片づけてくれるんだが・・・とアウロラはため息を吐いた。
「基地の修復にはそれなりの時間がかかる。基地機能が回復、もしくは別の辞令を受け取るまではここに滞在させておくようにと司令部から命令を受けた。ま、今の状況はこんなものだな」
何か質問は?
アウロラは自分のグラスに酒を注ぎ足しつつ、視線を投げかけてくる。幾つか疑問を抱いていた神崎は、それでは・・・と居住まいを正して口を開いた。
「まず、1つ。ソルタヴァラには何故防衛部隊がいなかったのでしょうか?基地機能を麻痺できるほどの敵戦力が来る可能性があったのなら、それに対処できる戦力を残しておくのが普通では?」
「そんなこと私に聞かれても困る。こっちは陸軍で、あっちは空軍。作戦内容を全て教えられている訳ないだろう?あっちには何か基地をスッカラカンにさせなければならないほどの理由があったんじゃないか?・・・もっとも、その理由が訳の分からない物かもしれないが・・・」
「・・・?すみません、最後の方が聞き取れなかったのですが・・・」
「ああ、気にしなくていい。で?他に聞きたいことは?」
アウロラがぞんざいに手を振って誤魔化す。神崎は違和感を覚えつつも、彼女の言葉に従って次の疑問について尋ねた。
「ここの陣地にはストライカーユニットと航空機を運用する能力がありますか?よしんば自分のストライカーユニットに関してはどうとでもなるにしても、シン・・・失礼、島岡特務少尉の零式艦上戦闘機はどうしても滑走路が必要となります」
「その点については問題ないさ。ここの陣地から少し離れるが、連絡機用の滑走路がある。最近はあまり使ってなくて準備は必要だが・・・まぁ、なんとでもなるだろう」
「分かりました。では・・・自分達の所属はこの中隊ということに?」
「いや、上の第34歩兵連隊に協同する形になる。私たちだけでなく、ここ周辺に展開する部隊の援護をしてもらうつもりらしい」
ポーカーフェイスだった神崎の眉間に僅かな皺が浮かぶ。あまり状況が理解できないのか、島岡が確認するようにこっそりと神崎に尋ねた。
(え?これって、ルタヴァラが墜ちたせいで増えた敵を俺達が相手にしなくちゃいけねぇってことか?)
(そういうことだ)
(これって、もしかして俺たちに尻拭いさせてるんじゃねぇの?)
(もしかしてもなにも、そうだとしか思えない)
「一応、これは扶桑の海軍も了承しているらしい。まぁ、私も随分と虫のいい話だと思うが・・・自棄酒なら付き合うぞ?」
「いえ・・・結構です」
なにやら期待してそうな目をするアウロラにしっかりと断りを入れつつ、神崎は再度質問した。
「最後に一つ。自分達が滞在する場所はどこになりますか?」
「滑走路の脇には格納庫と宿舎もある。そこでお前達と整備班は寝泊まりしてもらうことになる。質問はそれだけか?」
「はい。ありがとうございました。では・・・これからそちらの方に行っても?」
「あ~・・・」
アウロラは少し考える素振りを見せると、頭を掻きながら面倒くさそうに言った。
「仕様がないかぁ・・・。誰かに話してそこまで送って貰え。後から追加で人送るから頑張れ」
「・・・?了解しました。・・・いくぞ、シン」
「おう」
2人は席を立ちアウロラに敬礼すると、彼女は先程と一緒でぞんざいに手を振って見送った。指揮所から出ると、周りでは沢山の人達がスコップや金槌片手に陣地の復旧作業に勤しんでいた。
「あれ、隊長との話は終わったんですか?」
その中の一人、スコップを担いで歩いていたシーナが2人に声をかけた。服が土で汚れているところを見ると、彼女も今の今まで復旧作業に参加していたらしい。彼女の姿を見定めた神崎は、これ幸いと話しかけた。
「ああ。・・・ところでヘイヘ曹長。ユーティライネン大尉から、ここの陣地にあるという滑走路に向かえと言われたのだが・・・案内を頼めるか?」
「え・・・?」
そう言った途端シーナはポカンとした表情になった。まるで出来の悪い冗談を真顔で言われたかような、なんでそんなことを言うのか信じられないという表情だ。
「本当ですか?」
「・・・ん?ああ、そうだな」
「本当の本当ですか?」
「お、おう。どうしたんだよ、ヘイヘさん?」
「いえ・・・。はぁ・・・また面倒なことに・・・」
シーナはそこら辺に置いてあったスコップを二つ掴むと、眉を八の字にした疲れたような表情で言った。
「では、さっさと行きましょう。早くしないと日の出ている間に宿舎の中に入れないかもしれません」
シーナは2人にスコップを押しつけると先んじて歩き始める。神崎と島岡も彼女の言動に訝しげな表情を浮かべるが、すぐに彼女の後を追った。
5分後・・・
深く降り積もった雪を苦労して歩き・・・もっとも苦労していたのは神崎と島岡でシーナは涼しい顔をしていたが・・・たどり着いたのはラドガ湖辺にある只広い雪原だった。綺麗な景色ではあるが、それを見るために3人はここまで来た訳ではない。
「あれ?滑走路が無ぇ・・・」
「どうなっている?ヘイヘ曹長?」
島岡は呆けたまま真っ白な雪原を眺め、神崎は隣に立つシーナに問いかけた。するとシーナは眉を八の字にした疲れた笑みを浮かべた。
「確かにここです。間違いありません」
「だが・・・、まさか・・・」
彼女の言葉に神崎は冷や汗を垂らす。その冷や汗は外気に晒されすぐに凍り付いた。島岡はまだ分からないようだった。
「ん?滑走路はどこにあるんだよ」
「・・・ここだ」
「はぁ?どこだよ?」
「ここの雪の下・・・だ」
「・・・え?」
島岡の動きが固まる。シーナはため息を吐くとスコップを担いで前に進んだ。
「さぁ、早く雪をどかしましょうか。せめて宿舎に入れるようにしないとあなた達の宿がありません」
シーナは雪の小山の前に立つとスコップを突き立てた。黙々スコップで雪を掻く姿を見て、神崎も自分の持つスコップの柄を持つ。島岡も額を押さえつつもスコップを持つ手に力を込めた。
「・・・やるぞ」
「アフリカでは砂掻きでここでは雪掻きかよ・・・。だから、こんなのパイロットの仕事じゃねぇだろ・・・」
「泣き言言っても始まらん」
神崎と島岡もシーナの隣に立って雪掻きを始める。が、宿舎に積もった雪の量は三人で対処出来るほど甘くはなかった。
30分程経過して、まず島岡が音を上げた。
「なんだよこれ!?全然無くならねぇじゃん!?」
スコップを放り投げ、雪の中へドサッと仰向けに倒れ込んだ。額は汗が凍り付いて真っ白である。神崎も同様に顔が真っ白であるが、黙って作業を続けていた。シーナも同様に作業を続けてはいるが、汗一つかかずに言った。
「島岡さん、もう少しで増援が来るよ。神崎少尉も頑張ってるんだから、あなたも頑張って」
「いや、俺は魔力ねぇし・・・、そんな体力ねぇよ・・・」
「増援・・・?もしや、先程のユーティライネン大尉はこのことを予想して・・・」
「おおい!シーナァア!手伝いに来たよぉ!」
神崎の声を遮って聞こえてきた甲高い大きな声。声のした方向を見ると、そこには3人と同じようにスコップを携えた3つの人影。雪を滑るように移動してくるとシーナと神崎の前に立った。
「どうも!私はシェルパ・メルケリ軍曹です!お手伝いに参りましたぁ!」
「リッタ・フルメ軍曹です。頑張って雪を掻き出しましょう」
「マルユト・カッピネン中尉だ。隊長から手伝うようにと言われている。日が暮れた後の雪掻きは辛いぞ?」
シェルパは元気のよい名乗りの様にポニーテールの明るい少女だった。リッタは肩の辺りで髪の長さを揃えた大人しそうな雰囲気で、マルユトはショートヘアで切れ者然としている。
三者三様の挨拶に神崎は直立不動の姿勢を取ると、律儀に敬礼を返した。
「神崎玄太郎少尉です。ご協力、感謝します。こいつは・・・おい」
「ブヘッ・・・!し、島岡信介特務少尉っす!」
神崎は寝転がった島岡に雪をかけて叩き起こさせる。そんな2人の様子を見てシェルパは笑った。
「ハハハ!神崎少尉は堅いなぁ!島岡特務少尉みたいに軽いほうがいいよぉ!」
「おい、シェルパ。笑ってないでさっさと始めるぞ」
「そうだよ。シェルパ」
「痛っ!?小突くことないじゃん!2人して私を責めて!」
「・・・」
そんなシェルパをマルユトはせっついて雪掻きをさせる。リッタの方は既に雪掻きを開始していた。なかなか個性豊かな面々に神崎が少し手を休めてしまうと、シーナが肘で脇をつついた。
「少尉達の宿舎なんですから、手を抜かないで下さいよ」
「分かっている。・・・賑やかだな」
「みんないい人達ですよ?」
「・・・分かる気がする。シン、お前もさっさとしろ」
「へぇへぇ・・・」
3人の増援のおかげで雪掻きの速度は圧倒的に上がり、30分後には雪の中から宿舎のドアが現れた。その瞬間、雪掻きにうんざりしていた島岡はやりきったように再び雪の中へ突っ込んだ。
その時は、雪で閉じこめられた宿舎の惨状を見て絶望を味わうことになるとは露程も思っていなかっただろう。
数時間後・・・
宿舎の方は終わったがまだ雪掻きは残っている。
「で、今度は滑走路の雪掻きもしなきゃいけないんですけど・・・」
少なくとも300mは広がる雪原を見てシーナは心底疲れた様子でため息を吐いた。隣に立つ神崎は試しに足下の雪にスコップを突き立ててみるも、土の地面にたどり着く気配が全くない。少なくとも1mは積もっているのかもしれない。
「これは・・・6人で終わるのか?」
「重機がないと辛いぞ」
神崎の独り言に、同じように立っていたマルユトもうんざりしたように言った。彼女も雪掻きにはうんざりしていたようだ。
「重機にアテは?」
「そんな余裕は貧乏のうちにはない」
神崎の望み薄な要望は簡単に切って捨てられた。ならやるしかないのか・・・と諦めてスコップを持ち直すと・・・。
「いいこと思いついたぁ!!」
「おお!そりゃあいい考えじゃねぇか!」
背後から島岡とシェルパの歓声が響いた。その声に何故か嫌な予感したのは神崎だけだろうか?
「あぁ・・・シェルパがまた変なことを思いついた・・・」
どうやら神崎だけではなかったらしい。リッタの疲れた様子から見るに彼女はシェルパの言動にいつも苦労しているらしい。ドタドタと雪を蹴り立ててシェルパと島岡は神崎に近づいた。
「神崎少尉って
「そして、お前ぇの固有魔法は炎!」
「なら、少尉が炎で雪を吹き飛ばせば・・・」
「即問題解決!雪掻き終了!」
「・・・」
どうやら2人は神崎の労力を全く計算に入れていないらしい。馬鹿馬鹿しい・・・と神崎は無視して雪掻きに戻ろうとしたが、誰かが神崎の腕を掴んだ。引き留められた腕をチラリと見ると、そこには目を輝かせたシーナが。
「ヘイヘ曹長・・・」
「少尉、やりましょう。さっさとやりましょう。すぐに終わらせましょう!」
「お願いします、少尉。もう今日は休みたいです」
「少尉、できればお願いしたいのだが・・・」
シーナだけでなく、リッタも、マルユトも神崎に期待した視線を向けている。多方向から向けられる期待の目に神崎は自分の退路が塞がれたのを感じた。神崎はため息を吐いてスコップを雪の上に突き立てた。
「・・・滑走路の方向は合っているか?」
「う、うん・・・」
「なら、少し下がって欲しい」
5人を下がらせた神崎は滑走路の方向に体を向け左手に魔力を集めた。
(この範囲を蒸発させるなら、生半可な炎じゃ意味がない。爆発させて地面に大穴開ける訳にもいかない・・・ならこうするしかないか)
神崎の手に炎が渦巻き始める。一拍の間を置き、左手を前方に向ける。
「ッ!!」
放たれた炎は3つ。通常の物よりも強大でしかも速度が極端に遅かった。距離を取っていた5人にも熱が伝わる程高温の炎は、雪を舐めていき確実に蒸発させていく。
「クッ・・・!」
神崎は300mほど炎を進ませた所で一気に上昇させるように誘導した。そして、そのまま爆発させずに上空へと解き放った。後に残ったのは真っ黒な土の地面の滑走路。
「凄い!適当に言ったのに本当にできたぁ!」
「ちょっと、シェルパ・・・またそんな」
シェルパとリッタが何やら話している。
「いや、まさか本当にできるとは・・・凄いな少尉」
「これでやっと休める・・・。ありがとうございます、少尉」
「さすがゲンだな・・・。ゲン?」
マルユトもシーナも島岡も声をかけてくるが、神崎にはどこか遠くから聞こえるように思えた。体が鉛のように重く、平衡感覚が崩れ始める。
魔法力不足。ストライカーユニットの魔力増幅補助無しにここまでの炎を放ったツケだ。
いつの間にか倒れていたらしい。雪雲で真っ白な空と見つつ、背中から伝わる冷たさを感じながらぼんやりと思った。
(そういえば・・・アフリカでも魔力不足で倒れたな・・・)
かけられる声を子守歌のように感じつつ神崎は意識を手放した。
遅ればせながら、お気に入り数が550に到達したことを報告すると共にいつも読んで下さる皆様に感謝申し上げます
原作とはかけ離れた、お話ではありますがこれからも楽しんでいって下さい(^_^)