本当に待ち遠しい!
という訳で第四十一話です!
感想、アドバイス、ミスの指摘等々よろしくお願いします!
アウロラが部隊を率いてやってきたのは鷹守等が共生派を殲滅した直後だった。
いつもは大胆不敵な態度をとるアウロラも、血の海となった格納庫の惨状には厳しい表情を浮かべていた。
「・・・派手にやったな。これほどとは聞いてないぞ」
「いきなりだったし、仕方ないね。それに、これぐらい返り討ちにできないとね~」
「ふん。約束通り片付けはこっちでやってやる」
「ごめんね。よろしくお願いするよ。あと宿舎の方にもいるからね」
アウロラと鷹守は会話を続けていくが、それを横から見ていた神崎はどうも違和感を拭えなかった。隣の島岡もいぶかしむように眉を顰めている。
「ヤッコ。死体は処分。使える装備は回収しておけ」
「了解です。隊長」
アウロラの号令の元、彼女の部下達が動き始めた。彼女が連れてきた部下は全員が男性兵士で構成されており、どこか手慣れた様子でテキパキと動いている。
彼女達のいきなりの登場に戸惑っている島岡を置いて、神崎は場を見計らってアウロラに声をかけた。
「すみません、ユーティライネン大尉。少し質問よろしいですか?」
「どうした?神崎少尉?」
アウロラと神崎と視線の目が合う。彼女の不機嫌ではあるが落ち着いている目を見て、改めて感じた疑問を口にした。
「驚かれないんですか?この状況」
突然の襲撃。
敵は彼女と同じスオムス軍人。
それを返り討ちにし皆殺しにした自陣に居座る扶桑皇国海軍の分遣隊。
大なり小なり驚きはするだろう。むしろ同じスオムス軍人を殺したとなれば、こちらに怒りを向けても不思議ではない。
だが、アウロラは事も無げに言った。
「一応、今朝の内に、ここ数日で襲撃の可能性があるかもしれないと聞いていたからな。まぁ、まさかその日の夜にあるとは思わなかったが・・・」
今朝とは緊急出撃の詳細を聞きに来た時だろう。その時点で知っていたのなら驚かないのも納得だった。
だが、他にも聞きたいことがある。戦闘後の荒れた気分が治まり切らないまま、神崎は不躾に言葉を続けた。
「大尉と同じスオムス軍人を皆殺しした我々に協力を?」
「直接的だな。不愉快だが嫌いじゃない」
「・・・質問に応えて欲しいのですが?」
「そもそもその質問が間違っている」
アウロラは好戦的な笑みを神崎に向けると、ツカツカと床に転がっている死体に近づいた。
どうすればいいか分からずにオロオロとしている島岡と静かに佇む神崎に見られる中、アウロラは一つの死体をおもむろに足蹴にして仰向けにした。
次いで、いつの間にか持っていたスコップを器用に操って、死体が纏う真っ赤に染まった雪中用迷彩を何カ所か破く。迷彩の下から覗く軍服を見て、アウロラは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「見てくれこそスオムス軍人だが・・・、部隊章も無し。しかもどこかからか掻き集めたのか種類がチグハグだ。それに何より・・・」
ここでアウロラは膝を付くといきなり雪中用マスクを剥ぎ取った。死体の伽藍洞の目が覗くが、アウロラは平然として、寧ろ怒りを滲ませて死体の顔を睨みつけた。
「スオムス人じゃない。スオムス人じゃないのにスオムス軍人の格好をして、スオムス軍の援軍である扶桑皇国海軍の部隊を襲撃する。キナ臭くて鼻が曲がりそうだよ」
アウロラは再度不機嫌そうに鼻を鳴らすと、そっと死体の顔に手を伸ばし虚ろな目をそっと閉じた。そして、アウロラが立ち上がったのと同時に、彼女の部下によって死体が運び出されていく。その様子を三人が何を言う訳でもなく見送っていると、入れ替わるようにして鷹守が近づいてきた。
「3人とも、この後時間貰えるかな?色々と説明することがあってね」
「上からお前の指示には従えという命令が来ていたよ。それも説明してくれるんだろうな?」
「勿論、勿論」
「まったく・・・。私はとんだ危険物を抱え込んだ」
ふぅ・・・と溜息を吐くアウロラを余所に鷹守は神崎と島岡を見た。
「神崎君も島岡君もいいかな?」
「大尉が指揮官だろう?・・・良いも悪いもない」
「で・・・、何を話すんだよ?」
「うん、まぁ、僕達のことと今後のこと・・・かな?」
神崎の目には鷹守の目がギラリと光ったように見えた。
神崎、島岡、アウロラの3人が案内されたのは格納庫の隅にある控え室のような部屋だった。
工具や機材が少々散乱している中にあるテーブルに3人は座る。誰も口を開こうとせず重苦しい空気が部屋を満たす中、それを吹き飛ばすかのように、鷹守がドアを勢いよく開けて入ってきた。
器用にも4つのマグカップとコーヒーポットを持ち、いつも通りの騒がしさを携えて。
「いやいや、小汚い部屋でごめんねぇ。無事なテーブルはここにしか無くてね。あ!コーヒー飲む?やっぱりこういう状況こそ一度落ち着くことが大切だと思うんだ。本当は紅茶といきたいんだけど、残念ながら切らしていてね。だからしょうがなく・・・」
「そんなことはどうでもいいさ、鷹守大尉」
長々と鷹守が紡ぐ言葉をアウロラが一言で断ち切った。
怒りはないが苛立っている。
アウロラは挑発的な笑みを浮かべているのにも関わらず、神崎は彼女の背後に牙を剥く狼を幻視した。それほどまでの猛々しさを無理矢理凍り付かせたような雰囲気を彼女は醸し出していた。
「確かに上からはお前の指示に従えと言われた。だがな、私はそれだけでホイホイと付き従う程聞き分けが良いわけではないぞ?」
「勿論、僕もそんな簡単に事が進むとは思ってないよ。だから納得するできるぐらいの説明をしなきゃね」
と、言いつつも鷹守は一向に話を始める様子は無く、4つのマグカップにコーヒーを注ぎ始めた。場にそぐわない上品な香りが部屋を満たす。
状況が状況ならば和やかな雰囲気になっただろうが、今の4人の空気は一向に変わらなかった。
「話は長くなるからね。コーヒーは飲んでた方がいいと思うよ?」
3人の前にコーヒーが置かれ、鷹守は自分のカップを取る。厳しい表情の3人が視線を向けてくるのも露とも思わずに優雅に飲み始めると、島岡が痺れを切らしたように口を開いた。
「コーヒーなんか飲んでねぇで早く話を始めろよ」
「そうだ。それに、そもそも私は奴らが何者なのかも知らない。そこから説明してもらおうか?宿舎の方の奴らは確保したが全員自決して分からず仕舞いだ」
アウロラの言葉に神崎は僅かに眉を動かしたが、気付いたのは誰もいなかった。
「そうだね。ユーティライネン大尉が上から命令を受けたということは、スオムス陸軍はこっちについたみたいだしね。確認の意味を込めて1から説明しようかな」
島岡とアウロラの催促で鷹守はようやくカップを置いた。神崎と島岡に確認の意味を込めた視線を送ると、一人頷いて話し始めた。
「彼らは『ネウロイ共生派』と言われている、簡単に言えばネウロイに味方する連中だよ」
「ネウロイに味方だと・・・?」
アウロラは理解できないというように眉間に皺を寄せた。
「そんなことをする理由は色々だよ。ネウロイとの戦いに絶望して自暴自棄になってとか、ネウロイを神様かなんかと同列視したりとか、戦わずに寧ろ仲良くすればいいんじゃないか、とか、ここら辺の理由は民間人とかが主体となっている『共生派』だね。あとは反戦組織が流れちゃったとかもあるみたいだけど」
ちなみに・・・と、ここで鷹守は神崎と島岡を見た。二人は無意識の内に緊張し体を硬くした。
「君達がアフリカで戦闘になったのはこの類の連中だね」
「そうか・・・」
「別に知りたかねぇよ・・・」
それぞれ思うところがあるのか、神崎は神妙に頷き、島岡は吐き捨てるように言った。鷹守は興味深そうに2人の反応を見ると話を進めた。
「で、『共生派』は軍内部にも潜伏している。彼らの場合はネウロイの力を手に入れて自分達の戦力にしたいみたいだね。だけど、その為にネウロイを撃破される訳にはいかないから、故意にネウロイを誘導して他部隊に損害を与えたり、
アハハと鷹守は笑っているが、アウロラの表情は苦々しいものだった。不機嫌さを無理矢理押し殺した低い声で質問を重ねた。
「それで、お前等は一体何者だ?」
「『
鷹守は端的に返すと再びコーヒーを飲んだ。話し疲れた舌を休ませるかのようにゆっくりと飲み下す。
「次はそれについて説明しようか」
カップに残ったコーヒーを最後まで飲み干すと鷹守はにこやかに言った。
「
共生派の動きが看過できないと判断した3人はそれに対処するべく新しい部隊を創設するべきだと考えた。
だが、そこにはいくつかの問題があった。
まず、どこに共生派が潜伏しているかということ。アフリカのように民衆の中に紛れ込み反乱分子となるならば鎮圧部隊を差し向ければいいだけの話だ。
だが、軍内部となれば話は別だ。
ロンメル将軍の指揮の下調査を行った結果、軍内部に共生派が潜伏しているのが確実な国は、ブリタニア、ガリア、スオムスの3国。その中でもスオムスの共生派は予想外に規模が拡大しており、少なくない戦力を保持していた。早急に共生派に対処する部隊を編成する必要があったが共生派が存在するブリタニアを部隊の主軸に加える訳にはいかなかった。
そこで、モントゴメリーは共生派の存在を既に認知している神崎と島岡に注目し、扶桑皇国海軍に秘密裏に協力を打診。扶桑皇国海軍としても何か思う所があったのか僅かな交渉の後にその打診を承諾。
こうして、対共生派の特殊部隊『
しかも、部隊の特性上大っぴらに部隊整備することができないため、部隊が完全な形になるには相当な時間を要する。その為に『
「ま、そういう訳で僕達がスオムスに来ることになったということ。以前のうちの海軍が送った義勇隊のこともあるから受け入れられ易かったし」
長々とした説明を終え鷹守は2杯目のコーヒーを満足そうに飲み干した。対して、その説明を聞いていたアウロラ、神崎、島岡のコーヒーは未だ1杯目で半分も飲んでいない。3人とも険しい表情のまま口を噤んでいた。
「スオムス軍に潜伏している共生派はどのくらいの規模なんだ?」
「スオムス空軍の約3割といったところかな」
さらっと鷹守が言った衝撃の事実に3人は絶句した。アウロラに至っては目を剥いて体を乗り出していた。
「なんだと!?」
「別に不思議じゃないんだよね。なんたって、元々共生派が生まれたのがスオムス空軍なんだから」
その言葉に神崎と島岡はアフリカでモントゴメリーから聞かされた共生派に関する話を思い出した。ネウロイとの戦争初期に生まれ一度は終息したはずの共生派が息を吹き返した事件。
ネウロイのよる
これらが起こったのは確かにスオムスだった。
「24戦隊は共生派に含まれているのか!?」
アウロラは焦った様子で言う。先程までの最低限の落ち着きを持っていた姿とは大違いだった。アウロラに問われ、鷹守は記憶を探るように宙に目を泳がすと、やああって首を左右に振った。
「含まれてないね。そこはまともな部隊だよ」
「そうか・・・」
ふぅ・・・と安堵の溜息を吐いて安心するアウロラ。その姿を不思議に思った神崎がじっと見つめていると、その視線に気付いたアウロラが居心地が悪そうに目を逸らして言った。
「・・・妹が居るんだ。心配するのは当然だろう?」
「・・・そうですね」
神崎が真顔で且つ真剣に同意すると、アウロラは気恥ずかしかったのか若干頬を赤らめて咳払いした。それで気持ちを切り替えたのか、表情を引き締め、鷹守に向き直った。
「私達はどうすればいい?」
「納得して貰えたのかな?」
「ああ。納得した。スオムスの危機だ。例え、命令がなくても手を貸していたさ」
「それはありがたいね。よろしく頼むよ」
そう言うと、鷹守はイスから立ち上がり手を差し出した。アウロラも立ち上がり握手を交わす。その後、握手を解いた鷹守は神崎と島岡を順に見た。
「2人には『
「上等だよ。奴らのせいでライ・・・、魔女《ウィッチ》が殺されるかもしれないなら、俺が奴らを殺してやる」
歯を剥き出すように言う島岡。彼の言葉の裏には言わずもがなライーサへの想いがあった。アフリカで共生派との戦闘で彼らが神崎や稲垣を躊躇無く殺そうとすること身を持って知った。アフリカの共生派はモントゴメリー等の手で抹殺されたとはいえ、他の共生派を野放しにしていれば再びアフリカに共生派が現れ、今度はライーサに魔の手が迫るかもしれない。
(そんことは絶対させねぇ・・・!!)
「
島岡の返事に満足したのか鷹守は大きく頷き、口数の少ない神崎に目を向け首を傾げた。
「神崎くんはどうかな?」
「・・・。ああ。命令通り『
神崎はそう返事はするが、どこかその選択に確信を持てずにいた。
なるほど、確かに共生派は脅威だ。その恐ろしさは身を持って実感している。だが、それでも神崎には疑問が残っていた。
なぜ人間同士で殺し合わねばならないのか?
「ここ周辺に共生派はいるのか?」
「うん。割と近くにね」
アウロラと鷹守の会話が神崎の沈み込んだ思考を現実に引き戻す。神崎が耳を傾けた丁度その時、島岡が2人の会話に割り込んだ。
「どこにいるんだよ?」
「ヴィープリ」
「はぁ!?すぐ本当に近くじゃねぇか!?」
「だから近くだって言ったでしょ?」
島岡は驚いていたが、アウロラは1人納得していた。
「なるほど・・・。どうもヴィープリから来る空軍の連中は手を抜いているように思えたが、そういう訳だったのか」
「まぁ、事前の調査ではまだ疑いという段階だけどね。これから本格的な調査を・・・」
「失礼します」
新たな声が部屋に響き、鷹守の言葉を遮る。4人が一斉に部屋のドアの方を見ると鷹守子飼いの整備兵・・・いや、「
「どうしたの?」
「隊長に通信が入っています」
「誰から?」
「ヴィープリ基地所属、43戦隊長、カリラ・コリン大尉です」
人物紹介5
名前:シーナ・ヘイヘ
通称:白い死神
年齢:17
階級:曹長
使い魔:犬(スオムス原産のスピッツ)
固有魔法:魔眼(未来視)
別名:死神の目
未来視の一種で、彼女が行おうとすることの結果を見ることが出来る。射撃の場合は発射された弾丸がどのような弾道を描き、どのように命中し、標的がどのように破壊されるか、まで見ることが出来る。
だが、見える未来は自分が行動を起こして関与した物の結果であるため、自分の関与しない未来、例えば目の前にいる相手が次にどのような行動を起こすかといったこと未来は見ることが出来ない。
人物設定
スオムス陸軍第12師団第34連隊第6中隊所属。
第一次ネウロイ侵攻を戦い抜いたベテラン。
天性の射撃センスを持ち、多くのネウロイを撃破した彼女はいつしか敬意と畏怖を込めて「白い死神」と呼ばれるようになった。
物々しい二つ名とは裏腹に、体格は小柄で栗色の髪を首の辺りまで伸ばしている。明るいが落ち着いた性格だが、苦労性で貧乏クジを引いてしますことが多い。よく眉を八の字にして困ったような表情をする。
犬と自転車が好きで、橇を引くの犬の世話をよくしている。市街地の移動には自転車をよく使う。
アルンヘムの前売り券が後三枚も残っている・・・
(´・ω・`)