ストライクウィッチーズ 一匹の狼   作:長靴伯爵

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ブレイブウィッチーズ面白いですね!
凄いですね!可愛いですね!なんか前回と同じようなことしか言ってないですね!

そんな訳で第五十五話です

感想、アドバイス、ミスの指摘等々是非お願いします


第五十五話

 

 

 

 

 ガタンガタンと列車の振動に心地よく揺られていた神崎。

 

 昨夜、昔話の間に思ったよりも多く摂っていたアルコールのお陰か随分と深い眠りの中にいたのだが、妙な圧迫感を感じてゆっくりと意識を覚醒させた。

 顔に掛けるように被っていた軍帽の隙間から眠気眼を覗かせると、神崎と同じように眠りこけ、完全に体を預けて来ているアウロラの姿が。普通、アウロラ程の美人に寄りかかられれば嬉しいはずなのだが・・・彼女の寝息から漏れる強烈な酒の香りが全て台無しにしていた。

 

 端的に言って酒臭いのである。

 

「・・・大尉、どいてください・・・」

 

「ZZZ・・・」

 

「大尉・・・割と重いんですが・・・」

 

「ZZZZZZ・・・」

 

「酒の臭いで頭が痛くなってきた・・・」

 

 神崎は頭痛で眉間に皺をつくりながら再度を被りなおす。もう放置するしかないと諦め、不貞寝を決め込むことにしたのだ。

 アウロラが言っていた目的地、ベルツィレまではまだ相当の時間がかかる。もう一眠りすれば、残っているアルコールも抜けて頭痛も治まるはずだ。願わくば、アウロラの酒も抜けていれば・・・。

 

 もっとも、酒が抜ければ抜けた分だけ飲んでしまうのが目に見えているのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベルツィレ。

 ソルタヴァラの北方に位置するスオムス空軍の飛行場を有している村落だ。補給の観点から鉄道が敷かれており、ソルタヴァラから約6時間ほどで移動することができる。元は深い森に囲まれた静かな村だったのだろうが、今は基地から聞こえる騒がしい音と共に人の活気で満ちていた。

 

「よし、着いたな」

 

「ここがベルツィレですか・・・」

 

 アウロラと神崎は列車から降り、簡素なホームに立った。移動中にぐっすり寝たおかげかアウロラはすっきりとした表情で鞄を持ち、神崎は顔色は良かったが眉間の皺は取れていない。いまだ頭痛は残っているようだが、少なくとも二日酔いではない。ソルタヴァラの時のような状態になることはなさそうだった。

 

「目的地はここの基地ですか?」

 

「ああ。そこまで遠くないはずだ」

 

 アウロラが先導する形で2人は駅から出た。まだ午前中ではあるが村の通りにはそれなりに賑わっており、通り自体もしっかりと整備された状態が保たれている。辺りを見回した神崎は意外そうな口調で言った。

 

「村・・・にしては賑わってますね」

 

「ああ。私も来るのは久しぶりだが、ここまでとは思わなかった」

 

「下手な街よりも活気があるのでは?」

 

「違いない。お!あそこに良さそうな酒が・・・」

 

「・・・道草は食いませんよ」

 

 アウロラが目敏く酒屋を見つけるが神崎は渋い表情で諌めた。すでに連日酒漬けで大分参っているのだ。しかもアウロラが酒屋に行けば沢山買い込んだ挙句にその場で飲み干しかねない。市民の前でそのような醜態を晒すのだけは勘弁して欲しかった。

 さすがに、その辺は弁えているのかアウロラは恨めし気に神崎を見ると溜息を吐いていった。

 

「ああ。私は悲しいぞ。こんな楽しい旅行に連れてきてくれた上司にそんな態度を取るとは」

 

「・・・少なくとも、今回の旅行は強制連行でしたが?」

 

「そうだったか?」

 

「・・・いいから行きますよ」

 

 ニヤニヤとしたからかいの笑みに憮然とした表情を返しつつ、アウロラを引っ張るように神崎は僅かに速く歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 通りを抜けてしばらく歩くと二人の耳に聞きなれた音が段々と聞こえ始めた。

 空気を震わす、唸るような音は魔導エンジンの駆動音である。

軍の敷地を示す柵も見えてきており、もう少しで飛行場に到着するだろう。

 

「あそこから入るぞ」

 

 アウロラが示した先には飛行場への門。併設されている警衛所にアウロラが顔を出すと、大した手続きもなく瞬く間に許可が下りて門を通ることが出来た。知り合いでもいたのかと神崎が疑問に思っていると、それが表情に出ていたのかアウロラが答えてくれた。

 

「一時期、ここの部隊に転属する話もあってな。知り合いや友人が多いんだ」

 

「そうですか・・・。なら、今回の目的はその方々に会いに?」

 

「それもある。だが、メインは違う。それにサプライズもある」

 

 まぁ、すぐに分かるとアウロラは意味ありげな微笑を浮かべた。神崎も無理に聞こうとは思っていなかったので、首をすくめて見せるだけだった。

 上空から再び魔導エンジンの駆動音が聞こえてきたので、話題変換も兼ねて空を見上げた。スオムス軍の青を基調とした制服を身に纏った航空魔女(ウィッチ)が綺麗な編隊を組んで着陸準備に入っている。彼女達が装備するストライカーユニットに神崎は少し驚いていた。

 

「随分と太いな・・・」

 

「バッファローというユニットだな。さて・・・急ぐぞ」

 

「は?大尉?」

 

 航空魔女(ウィッチ)達を見た途端、アウロラはいきなり歩調を速めた。慌てて神崎も歩調を速めて追いかけるも、アウロラは神崎に一切目もくれずに一直線に滑走路へと進んでいく。

 アウロラがやっと止まったのは滑走路に出た時だった。キョロキョロと辺りを見渡すアウロラに少し遅れて神崎も追いつく。

 

「大尉?いきなりどうしたんですか?」

 

「少し鞄を頼む」

 

「はい・・・はい?」

 

 アウロラは神崎の問いかけには答えず、逆に鞄を預けてきる始末。困惑する神崎を置いておいて彼女が向かうのは滑走路脇の駐機場。そこにはついさっき上空を飛行していた航空魔女(ウィッチ)達が着陸し、ストライカーユニットを外しているところだった。

 そこへアウロラは大股でずんずんと近づいていくのだ。さすがに整備兵や航空魔女(ウィッチ)の何人かが気付いたが、それにも構わず今しがたストライカーユニットを外した髪の長い航空魔女(ウィッチ)に近づいていく。

そして・・・。

 

「イッル!会いたかったぞ!!」

 

 喜色満面でその航空魔女(ウィッチ)の背後からから思い切り抱きついた。

 

「うわッ!?ね、姉チャン!?な、なんで姉チャンがここにいるンダ!?」

 

「元気だったか!随分と会ってなかったからな!」

 

「あ、頭を撫でるナヨ!?痛いッテ!?」

 

 アウロラが後ろから力一杯抱き締めて撫で回すと、その魔女(ウィッチ)は悲鳴をあげてジタバタと悶えている。そんな2人に元に他の魔女(ウィッチ)達も集まってきた。

 

「ア、 アウロラさん!?何でアウロラさんがここに!?」

 

「ニパ!お前も元気だったか!」

 

「え!?ええ、まぁ・・・」

 

「この前カードで負けてデザート取られて半泣きだった」

 

「い、言わないでよ!?ラプラ!?」

 

「まぁまぁ、ニパ。ついてないのはいつものことでしょ」

 

「ハ、ハッセも!?」

 

「ハッハッハ!!ラプラもハッセも元気そうだな!」

 

 全員、アウロラとの知り合いらしい。神崎が両手に鞄を提げて近づいていくと、和気藹々と再会を喜んでいるアウロラ達に呆れた表情の眼鏡をかけた魔女(ウィッチ)が溜息を吐いて声をかけていた。

 

「アウロラ、来るなら連絡の1つでも寄こせ」

 

「まぁいいだろう?エイッカ」

 

「まったく・・・。変わらないな、お前は」

 

「姉チャン!!いい加減放セヨー!!」

 

「お?そうだな」

 

 やっとアウロラの抱擁から脱出したイッルと呼ばれた魔女(ウィッチ)はゼェ・・・ゼェ・・・と息を荒げて一息ついた。そして、少し離れて場所に佇んでいる神崎に気付いた。

 

「ん?誰ダ?お前・・・」

 

「自分は・・・」

 

「ああ。紹介しよう」

 

 エイラから訝しげな視線を投げかけられた神崎の横に、魔女(ウィッチ)達の輪から出てきたアウロラが立つ。

 

「こいつは神崎玄太郎。扶桑皇国海軍の少尉で世にも珍しい魔法使い(ウィザード)だ。そして・・・」

 

 まだ他に紹介することが何かあるのかと神崎が視線を向ければ、アウロラが意地の悪いニヤリとした笑みを向けてきた。何かよからぬことを考えているのではと、神崎の背筋に寒気が奔った。

 アウロラは棒立ちする神崎の首に勢いよく腕を回して抱え込みと言い放った。

 

「私の彼氏だ」

 

「ナッ!?」

 

「「「・・・は?」」」

 

「・・・はぁ?」

 

 絶対に碌でもないことをするとは思っていたが・・・、まさかこれがサプライズか・・・。

 一瞬後に来るであろう魔女(ウィッチ)達の驚愕の絶叫のことを考えて、神崎は重苦しく溜息を吐き、耳への衝撃に備えた。

 

「「「えええええええええ!?!?!?」」」

 

 神崎の予想通り、アウロラの突拍子のない衝撃発言を受けて魔女(ウィッチ)が驚愕の叫び声をあげた。耳に突き抜けるような大音量を何とか受け止めると、その後に嵐のような質問攻めが続いた。アウロラは楽しげのそれを全部受け止めた後、神崎の首に回していた腕を解いて言い放ったのだ。

 

「ま、嘘だがな」

 

不謹慎ではあるが、ポカンと呆けた魔女(ウィッチ)達の表情はそれなりに面白いと思ってしまう神崎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだヨ。嘘だったノカ」

 

 駐機場の狂乱から場を移し、今はブリーフィングルーム。

 流石にこのまま駐機場で騒ぎ続けるのは拙いと思ったのか、エイッカと呼ばれた魔女(ウィッチ)が全員を先導してここまで連れてきたのだ。今は何か用事があるらしくアウロラと2人で別の場所にいた。

 火が燈った暖炉と出されたコーヒーが任務明けで冷えた航空魔女(ウィッチ)達の体を優しく温めてくれている。アウロラの衝撃発言から始まった一連の騒ぎで疲れたのか、アウロラの妹らしきイッルと呼ばれた魔女(ウィッチ)は力の抜けた声で呟き、グッタリと身を沈めた。そして、隣に座る居心地が悪にしている神崎にジロリと目を向けた。

 

「で、結局お前は誰なンダ?」

 

「大尉が言っていたと思うが・・・神崎玄太郎。魔法使い(ウィザード)だ」

 

「カンザキゲンタロー?・・・ホントに姉チャンの彼氏じゃないのか?」

 

「違う。・・・君は大尉の妹か?」

 

「そうだゾ。エイラ・イルマタル・ユーティライネンだ」

 

 イッルとは愛称だったらしい。エイラの話し方は独特のイントネーションで、神崎はどこか新鮮味を感じつつ会話していた。性格はあまりアウロラと似ていなさそうだが、長い綺麗な銀髪は同じで顔立ちもどこか似通っていた。

 

「で、魔法使い(ウィザード)って何ダヨ?」

 

「え!?イッル知らないの!?」

 

 訝しげな表情のエイラに代わり驚きの声をあげたのは向かいに座った縦縞のセーターでショートヘアの魔女(ウィッチ)だった。もう一人似た格好で似た容姿の魔女(ウィッチ)がいたが、彼女は活発そうではあるがどこか幸薄そうである。神崎が目を向けると少し身をすくめる様にして自分の名を名乗った

 

「あ、私はニッカ・エドワーディン・カタヤイネンって言います。皆にはニパって呼ばれています」

 

「ニパ、知ってんのカ?」

 

「結構噂になってたよ。アフリカから扶桑の男の魔女(ウィッチ)が来たって」

 

「しかも、ソルタヴァラが1度陥落した後はラドガ湖周辺をずっと守っていたらしいね」

 

「え、ハッセも知ってたのカ!?」

 

「というか、エイラが知らなさすぎなんだよ」

 

 新たに会話に参加したのはニパによく似た魔女(ウィッチ)だった。顔立ちは瓜二つ

だが、ニパと比べて優しく爽やかな印象を受ける。彼女はにこやかに笑って軽く会釈した。

 

「ハンス・ウィンドです。ハッセって呼ばれています」

 

「ああ・・・よろしく」

 

「『アフリカの太陽』と言われていたらしいな」

 

「そんなことまで伝わって・・・君は?」

 

「ラウラ・ヴィルヘルミナ・ニッシネン。ラプラだ」

 

 あまり感情を表に出さない性格なのか、無表情に近い顔で挨拶をしてくる。神崎も人のことを言えないのだが・・・。

 

「まだ、姉チャンと隊長こないのカ?」

 

「結構待ってるんだけどなぁ・・・」

 

 エイラとニパが退屈さを持て余してテーブルに突っ伏すのを横目に神崎は出されたコーヒーに口をつけた。普段は緑茶や鷹守に付き合って飲む紅茶ばかりで、たまにアウロラ達と飲むコーヒーはとてつもなく苦いものばかりだった。しかし、ここのコーヒーは美味いと感じることができる味だった。少なくともラドガ湖陣地で使われている物よりも上等な豆を使っているらしい。それとも、淹れ方の問題なのか・・・。

 

「美味いな・・・」

 

「よかった。上手く淹れることができたみたいだね」

 

 思わず心の声を漏らしてしまう神崎だったが、淹れた本人であるハッセが嬉しそうに答えてくれた。神崎はもう一口コーヒーを啜り、カップをテーブルに置いた。

 

「最近飲むコーヒーは苦いのばかりだったからな・・・」

 

「あ~、姉チャンのコーヒー苦いもんナ」

 

「そうそう。アウロラさん、よくあんなの飲めるよね~」

 

 エイラとニパも彼女が淹れたコーヒーを飲んだことがあるらしい。目を向ければハッセが苦笑い、ラプラが少し眉を顰めているのを察するに皆以前に豪い目にあったようだ。はぁ・・・と全員が溜息を吐いていると、食堂の扉が開いた。

 

「皆、いるのか。ちょうど良かった」

 

「神崎もいるな」

 

 話が終わったのか、楽しげな雰囲気で入ってきた2人にテーブルに座っていた全員が反応した。アウロラからはエイッカとエイラ達からは隊長と飛ばれていた、短い黒髪で眼鏡をかけた魔女(ウィッチ)が近づいてきたので、神崎は立ち上がって迎え入れた。

 

「エイニ・アンティア・ルーッカネンだ。階級は少佐だ。アウロラがいつも迷惑をかけている」

 

「神崎玄太郎少尉です。大尉には・・・いつもお世話になっています」

 

 エイッカも愛称だったらしい。独特な響きの愛称が多いことにどこか面白さを感じつつ、神崎はルーッカネンから差し出された手を握った。

 

「皆とはもう話したか?」

 

「はい」

 

「ここにいるのは我が隊のエースばかりだ。神崎少尉も相当な戦闘経験を積んできたと聞いた。お互いに色んな話をするといい」

 

「・・・はい」

 

「私は仕事があるからあまり時間は取れないが・・・ゆっくりしていってくれ」

 

 ルーッカネンはそういい残してミーティングルームから出て行った。扉が閉まったのを確認して振り返ると・・・。

 

「もう今日は上がりでいいそうだぞ。さぁ、イッル!飲もう!」

 

「酒を押し付けンナ!!何時の間に酒持ってきたンダヨ!?」

 

 エイラが座るイスごと抱きかかえて揉みくちゃにするアウロラの姿が。ここまで優しげで楽しげな表情のアウロラを見るのは初めてだったが、さすがに箍が外れすぎている気がする。ニパやハッセは慣れたように苦笑いで2人を眺め、ラプラは我関せずといった様子でトランプをきり始めていた。

 神崎は自分のイスに座ると呆れた視線をアウロラに向けた。

 

「大尉、ベルツィレに来た目的は・・・」

 

「イッルに会うためだ」

 

「アハハ・・・。アウロラさんと会うのも随分久しぶりだからね」

 

「ニパにも会いたかったぞ?」

 

「え!?それは・・・嬉しいけどってアウロラさん!痛い痛い!」

 

 アウロラはエイラだけでなくニパの頭も撫でている。ニパもアウロラにとって妹のようなものだろう。神崎も妹がいるが軍に入ってからもう随分と顔を合わせていない。こうして姉妹仲が良い様子を見ていると、考えさせられてしまうものがあった。

 黙ったままでいたのが暇にみえたのだろうか、トランプをきっていたラプラが神崎の腕の突いた。

 

 

「ポーカーは出来るか?」

 

「まぁ・・・少しなら」

 

 あまり感情が見えない表情にどこかシーナに似ているなと感じている間に、ラプラはテーブルにカードを配り始めた。配りつつアウロラ達をチラリと見て、若干呆れた声音で口を開いた。

 

「ああなってしまえば時間がかかる。暇を潰すのが一番だ」

 

「ポーカーするの?私も入っていいかな?」

 

「ん・・・」

 

 ハッセも加わり3人でポーカーを始めて数十分。ようやく一区切りついたのか、エイラは先程よりぐったりとテーブルに突っ伏し、その隣でニパも同じようになっていた。アウロラは満足そうな表情で立ち上がり、皆を見下ろして言った。

 

「いい頃合だ。食堂に行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕飯時だった為か、一同が食堂に着いた時にはそれなりに賑わっていた。

 一般兵士から航空魔女(ウィッチ)までごちゃごちゃに長テーブルに座り、各々食事を進めている。

 食事を受け取った神崎達も長テーブルの一角を確保して食事を始めた。食事は近くの森で取れるキノコや狩りで手に入るジビエがよく使われているらしい。今回はキノコとトナカイ肉のスープに付け合せのパンだった。

 

「美味いな・・・」

 

「ね!美味しいよね・・・イタッ!?」

 

 神崎の感嘆の声に同意してくれたニパだったが、いきなり声をあげて口を押さえた。涙目になるニパをエイラは面倒くさそうな目で見ていた。

 

「ああ?ニパ、またカ?」

 

ほなかいのほねがははった(トナカイの骨が刺さった)~」

 

「今週で5回目だね」

 

「ニパのついてなさは相変わらずだな」

 

 ハッセとラプラもぞんざいに返事をする辺り、これもいつものことなのだろうか?神崎のスープに入っていたトナカイの肉はしっかりと調理されており、骨が入っているとは思えなかったが・・・。

 

「ニパの運の無さは流石だな」

 

「そりゃナ~。ついてないカタヤイネンは伊達じゃないッテ」

 

「見ていて安心するな」

 

「姉妹揃って酷くない!?」

 

 ハッセ達の言葉に続くユーティライネン姉妹のイジリにニパが悲鳴をあげる。

 

(意地の悪い笑みで並ぶとやはり姉妹か・・・)

 

ニパへの同情の念は禁じえないが、神崎はそ知らぬ顔でスープに舌鼓を打つことにした。

下手に手を出してあの姉妹に狙われるのは真っ平御免である。

 

「ねぇ、神崎少尉?」

 

「なんだ?」

 

 神崎が黙々と食事を続けていると、向かい側に座るハッセが声をかけてきた。ニパに向かうユーティライネン姉妹の注意がこっちに向く前にこれ幸いと話を続ける。

 

「少尉のラドガ湖の戦闘はわりと噂は聞くんだけど、アフリカではどんな戦いをしていたのかな?」

 

「私も興味ある」

 

 ハッセの言葉に被せるように彼女の隣に座るラプラも口を開いた。特に問題も無かったので、神崎は1つ頷いて話し始めた。こう思い返してみれば、1年も経過していないはずなのにやはり随分と昔のことのように思えてくる。

 

「アフリカでは統合戦闘飛行隊『アフリカ』に参加して戦っていた」

 

「統合戦闘飛行隊か~」

 

「扶桑皇国、カールスラント帝国、ロマーニャ、ブリタニア、リベリオン、そして現地の人々から支援を受けて戦っていた」

 

「戦力は?」

 

 身を乗り出すようにして聞いてきた辺り、ラプラは結構な興味があるのだろう。神崎はしっかりと話せるようにと一口水を飲んで口を潤してから話を続けた。

 

「俺を含めて航空魔女(ウィッチ)が5人。戦闘機が1機。これで戦い抜いた」

 

「少ないな・・・。うちの部隊の半数以下だ」

 

 ラプラは腕組をして唸る。確かに人数は少なかったが、マルセイユというスーパーエースを有している分有利な面が多かったように思える。

 

「航空魔女(ウィッチ)達が優秀だった。特にハンナ・・・マルセイユ中尉がいれば大概の敵はなんとかなった」

 

「マルセイユって、『アフリカの星』のマルセイユ中尉!?」

 

「彼女の凄さはここでもよく聞く。そうか・・・彼女と一緒の部隊だったのか」

 

 世界中にマルセイユのファンがいるというのは本当だったのか・・・と違う所で感心する神崎。殆ど宴会での酔っ払いが話す法螺吹き話という認識だったので、心の中でマルセイユに謝っておいた。

 

「俺の動きは大部分をマルセイユの動きを参考にしている。何度も模擬戦して負け続けたせいでもあるが・・・」

 

「一度も勝てなかった?」

 

「いや、最後の最後に勝つことが出来た」

 

「マルセイユに勝ったのか・・・!?どうやって?」

 

「固有魔法をフルに使って不意を突いた。具体的に言うと・・・」

 

 そうやって始まった神崎のアフリカ話はハッセとラプラを大いに引き込むことになった。やがて弄られ続けたニパと弄り続けていたユーティライネン姉妹も話しに加わり熱を帯びていく。

 話の中で特に盛り上がったのは艦船を利用した超大型ネウロイとの戦闘の話だった。神崎と稲垣真美、マイルズ少佐率いる陸戦魔女(ウィッチ)隊に各国の通常部隊が一丸となって戦い、最後の止めをロマーニャの空挺師団が刺したというのが戦闘の顛末だった。このスオムスでの戦闘も他の戦線に比べて通常部隊との連携が重視される傾向にあるため、親近感が湧いたのだろう。

 

 神崎が話した後は、今度はエイラ達の話になった。

 

 ニパの数々のツイてない不幸話や、容姿が似ているニパとハッセが入れ替わって将校を騙した話、ラプラがカードの勝負でいけ好かない上官の身ぐるみを剝いだ話など取り留めの無い話から、エースとして相応しい数々の華々しい戦闘の話。取り留めの無い話は兎も角、戦闘に関する話は勉強になることばかりだった。

 そして話がエイラの固有魔法になった時・・・。

 

「未来予知?」

 

「そうダゾ。少し先のことが分かるンダ」

 

「そうだ!イッル、神崎少尉にあれやってあげなよ」

 

「別にイイゾ」

 

 ニパの言葉にエイラは長方形のカードの束を取り出した。神崎が不思議に思って見守っている中、テーブル上にカードを不思議な配置をしていく。よほど訳が分からないという表情をしていたのか、見かねてエイラが口を開いた。

 

「タロット占いダヨ。私は固有魔法もあるから得意なンダ」

 

「そんなこと言って滅多に当たらないけどね」

 

「うっさいゾ!」

 

 外野から茶々を入れられつつもカードの配置が終わったらしい。神崎は未来予知とタロット占いにどんな関係があるのだろうかと疑問に思っている傍らで、エイラは満足そうにカードを眺めて自信有り気に宣言した。

 

「さぁ、占うゾ!カードを捲るんダナ!」

 

「あ、ああ・・・」

 

 エイラに言われるがまま、皆が注目する中で神崎はカードを捲る。そして、カードの絵柄が見えた瞬間、いままで自信に満ちていたエイラの表情が一気に曇った。神崎は全く分からないので、ただただエイラの説明を待つことしか出来ない。

 

「うわ~。これは酷いナ」

 

「・・・酷いのか?」

 

 そう言われ、神崎は思わずカードの絵柄をまじまじと見つめた。円柱のような建物に雷が落ちている絵柄だが・・・。

 

「『塔』のカードは最悪なカードなんダヨ。逆位置だから・・・意味は緊迫とか事故とか転変地位とか・・・」

 

「碌なカードじゃないな・・・」

 

「で、でも、再生とか再出発の意味もあるんダナ!そんな気に病むことないッテ!」

 

「そ、それにイッルの占いは当たらないか大丈夫だよ!」

 

 神崎が余程落ち込んだように思えたのか、エイラは慌てて取り繕い始めた。ニパも元気付けようとしてフォローを入れるが、それを遮るようにラプラがボソリと言った。

 

「まぁ、イッルの占いは悪いのだけは当たるがな」

 

「ラ、ラプラぁ!追い討ちをかけるナヨ!!」

 

 エイラの占いで予想外のダメージを受ける羽目にもあったが、最終的に食堂から追い出されるまで話し続けることのなったのだった。

 

 

 

 

 

 神崎はあてがわれた宿舎に戻ったらすぐ眠るつもりでいた。いままでの移動やら連日のアウロラとの付き合いで疲れが溜まっていたからだ。だが、しかし・・・。

 

「なんでここにいるんですか?」

 

「うん?気にするな」

 

「・・・自分の部屋があるじゃないですか」

 

「散々同じ部屋だったんだ。今更気にすることか?」

 

「いや、そういう訳ではなく・・・」

 

 さも当然とばかりに部屋のイスに座ってグラスを傾けるアウロラに神崎はもう何度目か分からない溜息を吐いた。片方の手にもう1つグラスを持っており、神崎に向けて軽く振って見せている。

 

「飲むか?」

 

「・・・どうせ断っても飲ませるんでしょう?」

 

「よく分かっているじゃあないか」

 

 神崎が対面のイスに座ってグラスを受け取るとアウロラは上機嫌に微笑んだ。どこかからか酒瓶を取り出し、神崎が持つグラスに透明な酒を注いだ。軽く合わせて小気味よい音を鳴らせると、二人はゆっくりとグラスを傾けた。果実の甘い香りと舌を焼くような強いアルコールに思わず目を瞬かせてしまったが、神崎はこの味に覚えがあった。

 

「・・・コッスですか」

 

「お?よく分かったな」

 

「スオムスに来て、大尉に初めて飲まされた酒ですよ?」

 

「あの時はむせてたな」

 

 その時の光景を思い出していたのかニヤニヤとした笑みを浮かべ始めたアウロラ。神崎は自嘲気味な笑みを浮かべて頭を振った。からかわれるのは勘弁とばかりにに話題を変える。

 

「妹に会うのがこの旅の目的だったんですね」

 

「そうだな。色々心配もあったからな・・・」

 

 アウロラが言う心配には神崎にも心当たりがあった。少し躊躇したが、グラスに目を落としつつ呟くようにその言葉を口にした。

 

「『共生派』・・・」

 

「ああ・・・そうだ」

 

 アウロラの上機嫌だった顔に影が差す。アウロラに神崎が所属する『(シュランゲ)』について告げた時、スオムス空軍の『共生派』が妹のエイラが所属する部隊ではないかと酷く気にしていた。あの時、鷹守はそのことについてはっきりと否定していたが、やはり自身で確認したかったのだろう。

 

「後、エイッカ・・・ルーッカネン少佐に色々と。まぁ、警告を、な」

 

「・・・そうですか」

 

 ここの部隊にも『共生派』の魔の手が伸びるかもしれない。可能性は否定しきれないのだ。自然と沈黙がおり、2人はただただグラスを傾けて続けた。神崎が3杯目を口を付けた時、アウロラは胸の内の澱みを吐き出すように苦々しく告げた。

 

「次、共生派と遭遇すれば殺し合いは避けられないと思う。やってられないがやってやるさ。正直、胸糞悪くてしかたないが」

 

「はい」

 

「だから、その後はまた酒に付き合ってくれ」

 

「・・・自分でよければ」

 

「楽しみにしているぞ」

 

 その言葉を最後にアウロラは部屋から出て行った。神崎はグラスに残ったコッスを舐めるように飲みつつ、深い溜息を吐き出した。

長らく感じることがなかった、家族に会いたいという思いを誤魔化すために。

 

 

 

 こうしてアウロラと神崎の旅が終わりを告げたのだった。

 





スオムス編も随分と長くなりました
何気に久しぶり原作キャラの登場で、書いてて楽しかったですw
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