ストライクウィッチーズ 一匹の狼   作:長靴伯爵

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ロスマン先生が本当に自分の先生だったらな~
あの笑顔があればどんな努力もいとわないのにな~

とブレイブを見てそう思います

そんな訳で、第五十九話です

感想、アドバイス、ミスの指摘などよろしくお願いします


第五十九話

 

 

 

 

 

 才谷はソファに深く腰かけて正面の人物を見据えた。

 

 スオムス、ヘルシンキ湾、軍港。

 他の部隊から隔離された港湾ドック。そこに収容された伊399内部の司令官室に彼女達は居た。

 

「ファインハルス中尉、報告を」

 

「我が隊は予定通り敵の隠れ家を攻略。敵の半数が踏み止まり、半数を逃がしました。敵は残った物資を爆破して抹消。捕虜は取れませんでした」

 

捨て奸(すてがまり)か・・・。敵ながら気骨がある」

 

 ファインハルスは眼鏡の奥の瞳を細めている。楽しげに口を動かすその様子を才谷は表情を動かさずに見ていた。

 

(戦闘狂か・・・。そんな奴でないと、この部隊ではやっていられないか・・・)

 

 才谷が見つめるファインハルスの瞳の光は常人のそれとは違う。通常ならばそのような人物を部隊に置いておくことはない。だが、この部隊だからこそ彼のような人材は生きる。

 報告を聞き終わると、才谷は足を組んで頬をついた。

 

「報告、ご苦労。それで奴らが爆破したという機材、お前はどう思った?」

 

「私見ですが、あれは兵器です。だが、あれが終着点ではない」

 

「なに?」

 

 ファインハルスは目を見開き、楽しげに口を歪めた。彼の顔立ちが元々綺麗だからこそ、その狂喜さが強調されてしまう。

 

「あの兵器は最高の導火線だ。さてさてさて、あれがあれば最高の戦争を起こしてくれる!」

 

「そうか・・・」

 

 今はまだなのか。それとも今からなのか。導火線に火は着いているのか。

これらはファインハルスの私見でしかないが、才谷にも同じような予感があった。

だが、ここからネウロイの第二次スオムス侵攻がどのような展開を繰り広げるのか、それだけは皆目見当がつかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神崎の要請により陸戦魔女(ウィッチ)達によって回収された森の中の残骸は、ラドガ湖の扶桑皇国海軍スオムス派遣分隊の格納庫に運ばれた。本来ならば後方へと運びしっかりと調査すべきなのだろうが、戦闘継続中の間に後方まで運ぶ暇などない。ならば、ある程度の設備があり、非常に優秀である技術者がいれば近場でも事足りる。

 

「う~ん。特に奇妙なところはないんだよね~。これには」

 

 そんな非常に優秀な技術者である鷹守は一通り残骸を調べて結論付けた。周りでその様子を見守っていた神崎と島岡、そして残骸の運搬に同行してここまで来たアウロラはそれぞれの眉毛を変な形に動かした。それだけには止まらず、島岡が口を開いた。

 

「そんなことはねぇだろ。誰だか分からねぇ奴が爆破して証拠隠滅しようとしたんだろ?なんかヤバイ奴じゃねぇのか?」

 

 島岡の言葉に神崎もアウロラも頷いて同意する。しかし、鷹守は首を横に振ってその考えを否定した。

 

「これはただのサーチライトだよ。ブリタニア軍が使っている極普通のね」

 

「ブリタニア軍があの地点にいたのか?」

 

「いや、ブリタニア軍は前線には出ていない。補給支援だけのはずだ」

 

 神崎も自身の推測を述べるが、それはアウロラが否定した。スオムス陸軍の大尉がそう言うのなら間違いはないのだろう。だが、そういうことになれば幾つかの疑問が出てくる。

 

「そもそも、なんでブリタニア軍のサーチライトがあそこにあった?」

 

「俺は紅い発光信号を出しているのを確認した」

 

「あ!それは俺も!モールス信号とかじゃねぇけど・・・」

 

 神崎と島岡の意見に聞きつつ、鷹守は近くの作業台に置いてあった紅茶のカップを手に取った。一口飲んで気が抜けたように首を傾げる。

 

「そうだね~。多分、このサーチライトはスオムス軍に送られた支援物資の1つだよ。ほら。ソルタヴァラのレーダー施設。あれの建設は夜を徹してやってたんじゃないの?それに使われていた沢山のサーチライトをちょろまかしたんじゃないかな?」

 

「誰が?」

 

「まぁ、十中八九『共生派』だよね~。問題は彼らが何をしているのか。そこで鍵となるのは・・・」

 

 鷹守は手に取った紅茶を再び作業台に置き、台上の隅にあった小さなケースを持ち上げて3人の前に立った。3人が注目する中で鷹守がゆっくりとケースの蓋を開けると、中には紅い結晶が入っていた。それを見たアウロラが首を傾げる。

 

「これは?」

 

「神崎君がこの残骸と一緒に見つけてくれたものだよ。多分、共生派はこれを隠したくて爆破までしたんだと思うよ」

 

鷹守はポケットから取り出した手袋を嵌めると慎重に結晶をつまみ上げて天井の照明に翳した。結晶がギラリと紅く瞬くのを見て、島岡が何かに気付く。

 

「それ、俺が見た光に似てる!」

 

「いや、それだけじゃなくて・・・」

 

 何か引っかかりを覚えた神崎はアウロラに目を向けた。アウロラも腕を組んで何かを考えていたが、神崎と目が合うと何かに気付いた。

 

「ネウロイのコアか・・・?」

 

「まさか・・・それはコアの欠片ぁあ!?」

 

「いや、コアだけを取り出すなんて不可能だ。こんな風に欠片で残ることはない」

 

 島岡が素っ頓狂な声を上げたが神崎は冷静にその意見を否定した。しかし、そこでその否定を否定するものがいた。

 

「詳しく調べるには機材が足りないから確証は持てないけど。まぁ、それが“本当の”ネウロイのコアであればね・・・」

 

 鷹守は掲げていた結晶をケースに戻すと蓋にしっかりと鍵をかけた。その表情は珍しく険しい。ここからは完全な推測だけどね・・・と鷹守は念を押して口を開いた。

 

「共生派はネウロイとのなんらかのコミュニケーション手段を見つけたんだと思う」

 

「じゃあ、俺達が見た紅い閃光は・・・」

 

「共生派がネウロイに対して何かしらの指示を出していた・・・と僕は考えているよ」

 

 鷹守の言葉を聞いていくうちに他3人の表情も段々と険しくなっていく。

 

「使っていたのはサーチライトと・・・」

 

「この結晶を利用した・・・ネウロイのコアの光を模倣するレンズかな」

 

「待てよ!?なら、そのレンズはどこから手に入れたんだよ!?」

 

 鷹守が出していく推測に、島岡は噛み付いた。そこは当然疑問がいく部分であり、鷹守はその疑問に対する答えを持っていた。

 

「僕は長年ブリタニアで研究していたんだ。それこそ宮藤博士が亡くなった後、零式艦上戦闘脚を完成させる為にずっとね」

 

「ああ。それは知っている」

 

「零式艦上戦闘脚を完成させるためには宮藤博士の様々な研究資料が必要だった。そりゃ、魔法力を扱うものだからね。死に物狂いで掻き集めて読み漁ったよ。でも・・・そこである資料を見つけた」

 

「・・・それは?」

 

 沈黙してしまった鷹守に促すように神崎は言う。鷹守は作業台に置き放しで冷めてしまった紅茶を一気に飲み干すと、そのまま溜息を吐き出すように言った。

 

「ネウロイ兵器転用計画」

 

 3人が衝撃で固まってしまう中、鷹守は口を止めなかった。

 

「資料自体は大部分が検閲済みでね。大したことは分からなかったけど、その計画に宮藤博士が関わっていて、博士はネウロイのコアについての研究もしていたことが分かった。宮藤博士が亡くなった後もこの研究が進んでいたら?すくなくとも成果ゼロってことはないんじゃないかな?例えば・・・ネウロイのコアの成分ぐらいは解析できたとしたら?例えば・・・ネウロイ兵器転用計画を軍内部の共生派が嗅ぎつけたとしたら?」

 

 あくまでも推測だけどね・・・と再度念を押して鷹守は笑う。しかし、その目には楽しげな感情など一切無い。

 

「最近はブリタニアからの援助が多かったよね?そんな状況からネウロイの第二次スオムス侵攻が始まり、敵の侵攻方向からブリタニア製のサーチライトの残骸が見つかり、ブリタニアで研究されていたネウロイのコアの欠片らしき(・・・)ものが見つかった・・・。これって偶然なのかな?」

 

 すべてブリタニア軍内部の共生派の差し金だったとしたら?

 

 鷹守の問いには誰も答えることはできなかった。

 

 

 

 

 

 格納庫での鷹守の話が終わって場所は隣の休憩室。

 緊急発進に備えてはいるが、島岡は仮眠用ベッドに寝転がって天井をぼぅと見上げており、神崎は机に向かって座ってアフリカの加東圭子から送られてきた十数枚の写真を眺めていた。ストーブの上に置いた薬缶の湯気が上がる音だけが部屋の中に響いていた。

 

「・・・なぁ」

 

「・・・ああ」

 

 気の抜けた島岡の呼びかけに神崎は写真から目を逸らさずに答えた。

加東の写真を見ればアフリカでの日々が思い返される。色んな魔女(ウィッチ)、色んな兵士に出会った。共にネウロイと戦った。今も戦い続けている。

 

「このネウロイの侵攻はあいつらが引き起こしたことなのか?」

 

「・・・鷹守が十中八九と言ったということは殆ど確定だろう」

 

「まぁ・・・そうだよな」

 

「だろうな」

 

 鷹守に対してなんだかんだ言っている2人では一応彼の判断に信頼を置いている。だからこそ、今回の状況が重大なことだと理解していた。

 

「これ、戦闘が・・・もしかしてよ・・・」

 

「アフリカの時みたいに・・・なるだろうな」

 

 写真から目を離して神崎はそっと呟いた。

 アフリカの街、トブルクで市民をも巻き込んだ共生派との戦闘。それがまたスオムスでも起こる。すでに神崎が誘拐された一件で共生派と(シュランゲ)の戦闘の火蓋は切られているのだ。今までとは比べ物にもならない戦闘が起こってしまうだろう。

 

「・・・写真、見せてくれよ」

 

「さっき見てただろう」

 

「もう一回見てぇんだよ」

 

「・・・ほら」

 

 島岡に催促され、神崎は写真を纏めてベッドからだらしなく伸ばされる島岡の手に渡す。そのまま写真を眺め始めた島岡を放っておいて、ストーブの所へ歩いていった。シュンシュンと湯気を上げる薬缶を取り上げ、紅茶を淹れるべく近くにおいてある鷹守のティーポットにお湯を注いでいるといきなり島岡がベッドから起き上がった。そのあまりにも急な挙動に神崎の薬缶を持っていた手がビクッと震えた。

 

「なんだ。どうした、いきなり」

 

「なぁ、ゲン。お前、手紙の返事書いたか?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、写真撮ろうぜ!俺達2人のよ!」

 

「・・・そういうことか」

 

 ここ最近で最高にイキイキとした表情の島岡に、神崎はどこか納得して薬缶をストーブの上に戻した。

 

 

 

 そんな訳で、2人は整備終わりの鷹守と近くを通りかかったアウロラを引き連れて零戦の前に立った。カメラは鷹守の私物を借り、カメラマンも鷹守にしてもらう。

 

「誰に送るんだって?」

 

「彼らの元上司にだって。アフリカの」

 

 カメラを構える鷹守の後ろでアウロラが神崎と島岡の様子を眺めている。その視線を受けつつ、2人は零戦の正面の左右に立った。2人とも待機中の格好のままで、神崎は白い第2種軍装に炎羅(えんら)とC96、島岡は飛行服姿である。鷹守がピントを合わせていると、アウロラが楽しげな口調で言った

 

「2人とも、もう少し格好をつけたらどうだ?」

 

「格好を付ける」

 

「突っ立ったままだと味気ないだろう」

 

 写真を撮ろうとは思い立ったが、どう撮ってもらうかは全く考えが至らなかった2人。困惑して顔を見合わせていたが、結局アウロラの指示通り立つことになった。

 

「撮るよ~。3、2、1、はい」

 

 合図と共にカチャリとシャッター音が鳴る。カメラのフィルムには零式の前方左右で腕を組む2人の姿が収められた。撮り終わってから2人は自然と溜息を吐いてしまう。

 

「あんまこういうの慣れねぇな・・・」

 

「そうだな・・・」

 

 思い返せばこうやってちゃんとした形で写真を撮ることは数える程しかなかった。加東は皆が動いている風景を写真に収めることが多かったからだ。2人してとぼとぼと零戦から離れていく背後に黒い影が・・・。

 

「2人ともいい顔だな!」

 

「うわっと!?」

 

「大尉!?」

 

 いきなりアウロラが背後から2人と無理矢理肩を組んできたのだ。面食らって狼狽する2人に、アウロラは顎で前を示す。困惑したまま前を見ると、そこには実に面白そうにニヤニヤしてカメラを構える鷹守の姿が。

 

「いくよ~。はい!」

 

そうして撮られた写真は戦闘の合間とは思えないとても和気藹々とした物になった。だが、これが現像されたのは随分と後である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、神崎君は、これからまたユーティライネン大尉に同行してミッケリまで行ってもらうね」

 

「・・・いきなりすぎないか?」

 

 写真を撮り終えた神崎に伝えられたのは、アウロラの護衛任務だった。鷹守曰く、アウロラは上層部の会議に前線の状況を伝えるために出頭を命じられたとのこと。一番、戦線の状況が安定しているという理由でアウロラが呼ばれたらしいが、彼女に護衛など必要ないと考えてしまうのは神崎だけではないはずだ。

 だが、どうやら護衛以上に必要な仕事があったらしい。訝しげな表情の神崎に鷹守は近づいて声を潜めた。

 

「扶桑本国から『(シュランゲ)』の実働部隊が到着したんだ。君にはこちらからの報告書を届けてもらいたい」

 

「実働部隊・・・。了解した」

 

 神崎が頷くと鷹守は離れてにこやかに言った。

 

「神崎君が離れている間はソルタヴァラとベルツィレの部隊が都合してくれるみたいだから、気にしなくて大丈夫だよ」

 

「ソルタヴァラにベルツィレ・・・。ユーティライネン大尉の妹に迷惑をかけるな」

 

「まぁ、ちゃんとした任務だから気にする必要はないよ。じゃあ、よろしくね」

 

 ヒラヒラと手を振って離れていく鷹守と入れ替わって今度はアウロラが神崎の下にやってきた。

 

「神崎、鷹守からミッケリの件を聞いたか?」

 

「はい」

 

「出来るだけすぐに出発したい。出来るか?」

 

「すぐに準備します」

 

 神崎はアウロラに軽く敬礼すると踵を返して自室へと向かった。手早く荷造りをしている最中、島岡が部屋に入ってきた。ドスンと自分のベッドに腰掛けると、色んなものをひっくり返しながらカバンに物を詰め込んでいく神崎の様子を見てポツリと呟いた。

 

「なんか急だよな。どうも変じゃねぇか?」

 

「『(シュランゲ)』絡みだ。実働部隊が動き始めたらしい」

 

「実働部隊かよ・・・。本格的に動き始めたみてぇだな」

 

 島岡が重い溜息を吐くのとほぼ同時に神崎の荷造りが終わった。そしてあらかじめ準備してあったクリーニング済みの冬用の第一種軍装を着込み、問題がないことを確認するとC96を懐に入れ、炎羅(えんら)とカバンを手に取り、軍帽を被った。

 部屋を出る直前、神崎は島岡の方を振り返り、言った。

 

「行ってくる」

 

「おう。行ってこい。アフリカへの手紙と写真は出しといてやるよ」

 

「頼む」

 

 部屋の扉が閉まってから十数分後にはアウロラと神崎はラドガ湖の陣地から出発。ミッケリへの旅路に着いたのだった。

 





ブレイブウィッチーズも残り僅かです
あっという間でしたね

次は・・・ノーブルかな?アルターかな?それともタイフーン?
それよりもアフリカだろ!!!
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