劇場版からのOVA
OVAからのブレイブまでの待機任務を完遂した我々には隙は無い
そんな訳で第六十九話です
感想、アドバイス、ミスの指摘などよろしくお願いします
窓から見える雪は、いつものようにスオムスの街並みを包み込み、冷たい静寂を広げている。
幾度と無く見てきたはずの降雪は、状況によって随分と印象を変えるものだ。
街で見る雪。
基地で見る雪。
戦場で見る雪。
空で見る雪。
そして、病室から見る雪。
「ここから見る雪は・・嫌だ。ああ、本当に嫌だ」
暖炉により温かく保たれているヘルシンキの軍病院の一病室。
その窓に隣接したイスに座り、神崎は愁然とした様子で呟いた。
第2種軍装の姿ではなく、病人服に左腕を三角巾で吊り、右脚にはギプスが装着されている。すぐ傍には移動用の松葉杖が壁にかけられていた。
「どうしてだろうな。こんな気持ちになるとは思わなかった。お前は・・・。いや、なんでもない」
無意識のうちに話しかけた神崎は自らその問いかけを打ち消し、深く溜息を吐いた。そして、うな垂れる様に窓から視線を外し、松葉杖を掴んでイスから立ち上がった。慣れない松葉杖を突き、一歩一歩心もとない歩調で足を進め、この部屋のベッドに近寄る。
「・・・とりあえず一通りの片はついたらしい。聞くか?シン」
体中に、そして左目を除いた頭部にまでも包帯が巻かれ、ベッドに横たわる島岡。意識は無く、唯一覗く左目を閉ざし、力なく横たわる親友の姿を見下ろし、神崎は静かに言葉を紡いでいった。
「Freude, schöner Götterfunken,Tochter aus Elysium」
微かに聞こえるのはカールスラント語で紡がれる旋律。
口ずさむことさえも忘れていた懐かしい旋律。
自分が好きだった旋律。
ルーツィンデ・ヴァン・ベートーベンの交響曲第9番「歓喜の歌」
「Wir betreten feuertrunken.Himmlische, dein Heiligtum」
優しく小さな声音で紡がれていく歌が段々と意識を浮上させていった。
感じ始めるのは、拘束感。そして若干の気温の低さ。
閉じられた目蓋の上から仄かな明かりも感じた。
「Deine Zauber binden wieder. Was die Mode streng geteilt」
薄らと見えてくるのは淡いオレンジ色に照らされる天井。
視界の端に移るのは同じくオレンジ色に染まった仕切り用のカーテン。
そして・・・。
「Alle Menschen werden Brüder.Wo dein sanfter Flügel weilt.」
ベッドのすぐ脇のイスに座り、歌を口ずさみながら手元の資料を読む第2種軍装姿の女性。
白髪の短髪と右目を隠す眼帯。
自分の司令官でもあり、恩師。
才谷美樹中佐。
目が覚めた神崎は無意識の内に才谷に話しかけていた。
「先・・・生・・・?」
「あら・・・。目が覚めたようね」
自分が出した声は随分としわがれている。水分がないのか、それとも発声する体力さえも残っていないのか。身じろぎしようとも体は全く動かない。
神崎が自分で自分の状態が分からない中、才谷はすぐ傍のテーブルに資料を置くと神崎に向き直った。
「左腕と右脚に複数の骨折。左肩の銃創。全身の打撲に内臓へのダメージ。魔法力を極限まで使用したことによる体力の消耗。ここに運び込まれた時は、本当にひどい有様でした」
「・・・今は?現状は・・・どうなっていますか?」
「そうね。順番に説明していきます」
今は軍務とは関係ないからか、神崎を労ってなのか、才谷の口調が教官時代のように戻っている。1度神崎から視線を外し、先程テーブルに置いた資料を手に取った。
「今はあなたが運び込まれてから3日目の夜です。現在ネウロイの侵攻は止まり、各防衛線では急ピッチで再構築が進められています。一応の迎撃は成功といったところね。そして・・・」
ここで才谷は言葉を切り、神崎の様子を伺ったがすぐに続きを口にした。
「そして、戦闘状態にあった共生派は壊滅。少数を逮捕した以外は全滅しました。ですが・・・分かっていると思うけど、こちらの被害も甚大です」
聞こえる才谷の言葉はどこか夢のような感覚だったが、その言葉は確かに神崎の心に刻み込まれていった。
「ラドガ湖の防衛陣地に駐屯していた『
部隊の7割が戦死。
整備で世話になった兵士達の殆どがこの世にいない。
事実が重く神崎の心に圧し掛かるが、まだ聞いていない、否、聞かなくてはならないことがある。
「鷹守は・・・?シーナは?シンは・・・!?」
「静かに。・・・ええ。勿論教えます」
取り乱しそうになる神崎を優しく、しかし確実に抑えて才谷はまっすぐに事実を伝えて言った。
「鷹守大尉は辛うじて意識は残っていましたが、あなたとそう変わらない重症です。しかし至近距離で起こった爆発の破片を背中から受けてしまい、後遺症の恐れがあります。現在は別の病院で療養中です」
1つ1つの言葉が神崎を責めるようだった。
勿論そんなはずはない。
頭では分かっているのだが、何故か今までは感じていなかったはずの痛みを感じ始めていた。
「ヘイヘ曹長は顔面に受けた銃弾で左顎を負傷しました。しかし、銃弾の衝撃が頭部に受けてしまったためか未だ意識は戻っていません。また、左脇腹の負傷の状態が良くなくその治療も並行して行われています」
無意識の内にシーツを掴んでいた右手に力が篭る。
湧き上がる後悔の念を、今は何とか押し殺す。
聞きたくない。耳を塞ぎたい。
だが、これだけは聞かなくてはならない。
「島岡特務少尉は・・・。墜落により体の至る所を骨折。しかし、一番重要なのは・・・」
掴んでいたシーツに赤い色が滲む。
ギリギリと歯を喰いしばって耐える。
たまらない痛みはどこからくるものなのか。
それでも耐える。
「右目の負傷が脳にまで影響したらしく現在昏睡状態に陥っています。今の状態では治療の手立てはない・・・と」
耐え切れなかった。
「嘘だ!?俺は、負傷したあいつと話した!脳にまで達する負傷だったならあの時には・・・」
絶望に顔を歪ませ掴みかかり捲くし立ててくる神崎を、才谷は冷静に受け止めた。襟首を掴まれているにも気にも留めず、抱き締めるように神崎の肩を抱える。
「右目の負傷の後に受けたであろう脇腹の銃創で、症状が悪化したというのが医師達の見解です」
「後の・・・銃創・・・」
神崎の目の前で銃弾に穿たれる島岡とシーナ。
その銃弾を撃ったのはコリン・カリラ。
生き残っていたコリン・カリラ。
「俺が・・・あそこで・・・」
「誰に責任があるという問題ではないわ。今は生き残っただけで十分よ」
「あぁ・・・」
抑えつけていた分の負の感情が湧き上がり、神崎は俯いたまま肩を震わせた。
それしか出来なかった。
「・・・。朗報もある」
話し続ける神崎。
松葉杖を握る手には有らん限りの力が篭っている。
ベッドに横たわる島岡の姿を見るたびに心が軋んでいく。しかし、それおくびにもださずに穏やかな表情のままだった。
「後から教えてもらったんだが、お前はリベリオンで治療を受けることができるようになった。『
今のところ安全で安定した医療を受けることが出来る国はリベリオンぐらいだろう。医療技術も最先端にあるかの国なら、島岡の症状もどうにかなるかもしれない。
「今ブリタニアにリベリオンからの補給船団が来ているらしい。だから、お前はすぐにでも輸送してその船団に便乗させてもらうそうだ」
少しでも目を覚ましてくれたら。
いや、今眠っているから神崎は話しかけることができるのかもしれない。今の自分には島岡に合わせる顔がない。
「『
病室のドアが開く。
才谷の部下であるファインハルスが入ってくると、神崎は静かに頷いた。
ファインハルスの後から幾人かの兵士と看護師、そして医者が入ってきて島岡の搬出準備を始める。手馴れた様子の彼らの手によって作業はすぐに終わり、島岡が病室から運び出されていく。
島岡のベッドが横を通り過ぎる時、神崎は小さく呟いた。
「すまなかった。また・・・会おう」
ベッドが運び出され、ドアが閉まる。
誰もいなくなった病室で神崎はしばらく立ち尽くしていた。
彷徨うように歩を進める神崎。
慣れない松葉杖を動かし、病院の人気の無い廊下を暗い目で前を見据える姿は幽鬼のよう。
もし、見知らぬ他人が彼の姿を見れば死人が蘇ったのではないかと勘違いしてしまいかねない程。
特に目的はない。ただじっとしていられないから無理に動き回っているだけだった。
廊下に響いていたコツコツという松葉杖を突く音が唐突に止まる。暗い目が見つめるのは、休憩用なのか廊下の脇に設置されたベンチ。そしてその上に無造作に置かれた煙草の箱だった。誰かの忘れ物であろうそれは、白地に円の模様が描かれた俗に言うブルズアイと呼ばれるものだった。
神崎は誘われるようにベンチに座ると、松葉杖を置いて煙草の箱を手に取った。カサリと音を立てた箱の中には、残っていた煙草が2、3本顔を覗かせていた。
無感情の表情のまま煙草を取り、見よう見まねで口に咥え、僅かな魔法力を解放する。ポッ・・・と指についた小さな火。それを使って口元の煙草に火を着けた途端、神崎の口に紫煙が溢れた。
「ゴホッ!?ゴホッ!?」
紫煙にむせ、体の内側に走る痛みに神崎は堪らず煙草を口から外す。しかし、すぐにもう一度煙草を咥えると、再び紫煙を吸い込んだ。
「ゴホッ!?ゴホッ!?あぁ・・・。キツイな・・・。煙いな・・・。煙くて・・・目に染みる」
煙が目に入ったのか、神崎の目から一滴の涙が零れる。それだけに止まらず、涙は止め処なく流れ始めた。慣れない煙草の痛みを理由にして、神崎はようやく涙を流すことができた。
動く左足を抱えこみ、膝に額を当てる。きつく閉じた目から涙が止まることはない。
「畜生・・・。何が・・・別行動だ。何が・・・また会おうだ。ライーサに何て言えばいいんだ・・・。俺が・・・下手を打たなければ・・・」
あそこで感情に任せて突撃しなければ。
あそこで援護しようとする島岡を止めていれば。
あそこでコリンを確実に殺していれば。
湧き上がってくる自責の念には際限が無い。喪失感は増えていくばかりで、目の前には絶望しか見えない。
今の神崎には、1人嗚咽を洩らすことしか出来ない。
その日、廊下に響く慟哭は途切れることは無かった。
一週間後。
意気消沈した神崎の元に来客がやって来た。
「随分とやさぐれたな」
看護師から面会申請がある旨を伝えられたのは、ほんの十数分前。
魔法力が回復するにつれ自然治癒力も増大し右脚の骨折は完治したとはいえ、右脚よりも怪我の状態が悪かった左腕は未だ吊ったままである。
神崎は気が重いまま準備してもらっていた第2種軍装に苦労して着替え、最低限の身嗜みを整えて面会用に用意された個室に向かった。
先程の言葉は、面会室にいたアウロラが神崎を一目見て言い放ったものである。
それもそうだろう。
身体的にも精神的にも疲弊している神崎である。いくら入院していてある程度回復していたとはいえ、まだまだ本調子には程遠かった。よく眠ることもできないのか、目の下には隈が出来ていた。
「・・・見苦しい姿を見せて申し訳ありません」
「いや・・・私も言葉が過ぎた」
力なく頭を下げた神崎のあまりの精彩の無さに、アウロラも調子を狂わしたようだ。彼女に似合わない殊勝な言葉で神崎を自身が座っていたテーブルに招く。
お互い向かい合ってテーブルに座ると、まず神崎が口火を切った。
「ユーティライネン大尉。助けていただきありがとうございました」
神崎達が瀕死の状態だったのを救出したのはコッラー川から後退してきたアウロラ達だった。彼女達の救出が遅れていれば、3人とも命を落としていても可笑しくなかった。
だが、アウロラは神崎の感謝に表情を曇らせた。
「いや・・・。元はといえば私達の汚点をお前達に押し付けてしまったせいだ。感謝など・・・」
共生派の存在からなるスオムス陸軍とスオムス空軍との確執。本来であれば、陸軍が決着を着けるべきだとアウロラは考えていた。それを状況が状況だったとはいえ、言い方は悪いが余所者の扶桑皇国海軍の神崎達に押し付けることになったのは、悔やんでも悔やみきれない結果だった。
だが、神崎はそれを否定した。
「共生派が関わっていた時点で『
神崎はここで言葉を切るとテーブルに額が付くほどに深々と頭を下げた。
「自分の不甲斐無い指揮で、ヘイヘ曹長を・・・、シーナに重症を負わせてしまいました。申し訳ありません」
「・・・」
頭を下げた神崎にはアウロラがどんな表情をしているか分からない。アウロラがなんの声も発しないまま幾ばくかの時が経ち・・・不意にガタリッとイスが動く音が聞こえた。そのまま近づいてくる足音に変わり・・・肩を掴まれ無理矢理顔を上げさせられた。そのまま胸倉まで掴まれ顔の向きを変えさせられると、目を怒りの色に変えたアウロラの顔があった。
「私達は兵士。戦闘で負傷するのも死ぬのも当然だ。お前の謝罪はお前に対するシーナの信頼を汚しているんだ。シーナを、私達を見くびるなよ」
「・・・すみません」
アウロラの言葉にぐうの音も出ず、神崎はうな垂れるしかなかった。そのあまりにも弱々しい姿にアウロラの怒りはすぐに治まってしまい、代わりに憐憫の情が募っていく。
「馬鹿が・・・」
神崎の胸倉から手を離し、そっと頭を胸に抱き寄せる。神崎がビクリと怯えたように震えるが、構わず腕に力を込めて顔を寄せた。
「馬鹿みたいに真面目で・・・。意固地で・・・。それでも他人を気にかけて・・・。戦っているうちに壊れてしまいそうでお前が心配になる・・・」
「大尉・・・」
少しの期間とはいえ、殆ど同じ部隊として死線を潜ってきたからこそ感じていたアウロラの神崎への印象。それに加えてこうも弱った現状を見てしまえば・・・。堪らず抱き締めたのだ。
「戦友を失うかもしれない恐怖は私もよく分かる。だがな、お前はそれを乗り越えないといけない。けど・・・まぁ・・・」
段々と神崎の震えが治まっていくのを感じ、アウロラは抱き締めていた腕の力を少し緩めた。神崎の頭が動いて覗いた目を見て、アウロラは優しく微笑みかけた。
「これでもイッルの姉をしてるんだ。甘えさせてやることなんて朝飯前さ」
「・・・私にも妹がいて兄なんですが?」
「お?減らず口をきけるようになったか?いいから、甘えていろ」
「・・・ありがとうございます、大尉」
抱き締められている間、神崎は震えはしても涙を流すことはなかった。
しかし、神崎の中で何かが変化したのは確かだった。
「・・・大尉、そろそろ」
「なんだ。遠慮するな」
「もう十分すぎます。ありがとうございました」
しばらくの間アウロラの腕の中にいたが、若干の名残惜しさを抱きつつも神崎はやんわりと彼女の腕を解いた。神崎の様子が大分マシになったのが分かったのか、頷いて正面のイスに座った。
「さて、どこまで話したか・・・」
「シーナの件です。・・・今、彼女は?」
中断していた会話が進んでいく。
神崎の質問に、アウロラは腕を組んで答えた。
「シーナは陸軍の野戦病院に収容されている。今は目を覚まして療養中だ。撃ち抜かれた顎は、運よく居た治癒魔法持ちの
そこまで聞いて神崎は目に見えて安堵していた。シーナまで島岡のようになってしまったのでは・・・と危惧していたが、話を聞く限り命に別状も無く、復帰できる希望もある。
その様子を見ていたアウロラは、自身のポケットから紙を取り出し神崎の目の前に置いた。
「シーナからの伝言だ」
「・・・見せてもらいます」
神崎は綺麗に二つ折りされた紙を取り、ゆっくりと開いた。書かれた文章に目を通し、そのままテーブルの上に置いた。
それを見たアウロラは口を開く。
「その紙は返さなくていいぞ」
「・・・大尉は中身を見ましたか?」
「そんな無粋なことはしないさ。ただ気にはなるな」
「『待っていてください』と」
神崎は扶桑に帰還しなければならないし、シーナの復帰にも時間がかかる。文面通りの意味なのか、それとも何か別の意味があるのか。神崎には見当がつかなかったが、アウロラは何か納得するように頷いた。
「そうか・・・。さて、もう私は帰るぞ。ラドガ湖の陣地の修復が立て込んでいるんだ。マルユトに指揮を任せたが、もうそろそろ帰らないと不味い」
「分かりました。・・・来ていただきありがとうございました。マルユト中尉やシェルパ軍曹たちにもお礼を伝えて下さい」
立ち上がったアウロラを見送るために神崎もシーナの伝言をポケットに仕舞って席を立つ。
両者が向かい合い、視線がぶつかった。
「自分は扶桑に帰還することになります。当分は・・・お会いできません」
「ああ。その話は聞いた。異動は軍人の常だが・・・戦友との別れは辛い」
「自分も・・・戦友と?」
「当たり前だ」
不意に。
アウロラは静かな動作で神崎に近づくと、流れるように手を神崎の頭に添えた。
そして、優しく引き寄せ神崎の額に唇を寄せた。
「助けが必要ならいつでも私を呼べ」
お前は家族のようなものだからな。
そう言い残し、アウロラは部屋から去っていった。
神崎は去って行く彼女の背中に深々と頭を下げた。
数日後。
朝早くのスオムスの首都、ヘルシンキの港には海霧が立ち込めている。その霧の間を掻き分けるように漁に出ていたらしい漁船が港へと帰港した。
接岸した漁船からは数人の漁師が収穫した魚を運び出し始める中、1人の人物が漁船に近づいていった。厚手のレインコートを着てフードも被った人物は、作業する漁師達の脇を通り、作業を監督していた船長に近づいた。
「船長、『蛇の道は蛇』」
「・・・中へどうぞ。神崎少尉」
「よろしく頼む」
合言葉を受け取った船長に誘導されて乗り込むレインコートの人物は神崎だった。この漁船は「
程なくして漁船は作業を終了して、再びヘルシンキ港から出港した。海霧を掻き分けて進んでいく漁船はある程度の沖に出るとエンジンを止めて停泊する。
「少尉、到着しました」
「分かった」
船長に呼ばれ船室から出た神崎は、漁船から目の前の海面が隆起するのを見た。霧の中で顕になる巨大な鉄の山にしばし呆然とするも、山の頂から投げ出された縄梯子を使い、鉄の山、試作潜水艦「伊399」の船上へと乗り移る。
この潜水艦で扶桑まで帰還するのだ。
艦内へ通じるハッチに入る直前。
神崎は振り返り、朝焼けの光に照らされ始めたヘルシンキの街を眺めた。
そして、1度だけ目を瞑ると振り切るように視線を前に戻して、そのハッチに滑り込むのだった。
極寒の戦場は神崎から様々なものを奪っていった。
様々な出会いも会った。この出会いが神崎の人生にどう影響するのかは分からない。
だが、神崎が胸の内に巣食う黒く渦巻く感情を自覚してしまったのは確かだった。
スオムス編はここで終了します
アフリカ編からブリタニアのインターバルを経て始まったスオムス編ですが、ここまで来るのに2年以上かかってしまいました
スオムス編でも番外編を書けたらいいなと思っています
あと、別作品でブレイブウィッチーズ関連の話も書いています
特に戦闘は描くつもりはありませんが、時間軸は違えどこの小説と同じ世界観です
少しはこの小説のネタを入れるかもしれません
よければ読んでください