ストライクウィッチーズ 一匹の狼   作:長靴伯爵

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ストライクウィッチーズのオフィシャルビジュアルコンプリートファイル買いました

すごくすごいですね!(静夏感)
来月に発売されるワールドウィッチーズ2018も凄く楽しみです

そんな訳で七十四話です

感想、アドバイス、ミスの指摘などよろしくお願いします


第七十四話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルッキーニ先導、シャーリー監修による基地案内を終えた神崎は2人に連れられ食堂に来ていた。時刻は夕刻。夕食の時間である。

 

「ねぇねぇ。カンザキ大尉。どうだった?面白かった?」

 

「ああ。・・・色々な所に作っているんだな」

 

「私は少しは知っていたけど、こんなにあるとは思わなかったな~」

 

 基地の主要な施設はシャーリーが説明してくれたが、ルッキーニの秘密基地が予想よりも膨大な数だった。空き部屋や倉庫の隅、更には使われていない暖炉にまで。少しのスペースがあれば、そこに毛布やら小物やらを詰め込んでいるのだ。仲が良いらしいシャーリーでさえ、今日初めて知ったのが多いというのなら、まだまだ他にもあるのかもしれない。

 

「えっとね~。まだまだあるよ!」

 

「凄いな~。ルッキーニ」

 

 シャーリーに頭を撫でられご満悦な表情になるルッキーニ。神崎はほんの少し目を細めてその様子を眺めたが、すぐに視線を外して食堂の入り口の方を向いた。

 

「あそこが食堂か?」

 

「そうだよ~!」

 

「確か今日はバルクホルンが作る日だったかな?」

 

「バルクホルン大尉が作るのか?士官が食事を?」

 

 一般的には士官が料理をすることはない。神崎の疑問はもっともだが、少しだけ事情が違うようだった。

 

「普通は炊事兵だよ。けど、月に何回かはレクリエーションを兼ねて隊員が作るんだよ」

 

「なるほど」

 

 そんな会話をしながら三人が食堂に入ると、キッチンで調理をしているであろうバルクホルンと夜間哨戒任務に就いている魔女(ウィッチ)以外全員すでに長いテーブルに座っていた。

 

「基地見学ご苦労だったな、神崎。基地の中は把握出来たか?」

 

「大まかには」

 

 テーブルの上座に付近に座る坂本の声に答えながら、神崎達は空いている席に座る。シャーリーとルッキーニはそれぞれ自身の席が決まっているらしくそこに座り、神崎は空いている下座の方に腰を下ろした。隣になったエイラが少しだけ肩を寄せて声をかけてくる。

 

「ルッキーニの秘密基地見たカ?面白ろかったロ?」

 

「ああ。よく作ったものだ。・・・ところで」

 

 エイラと会話しながらも、神崎は向かい側の空いている席に視線を向けた。

 

「もう1人、魔女(ウィッチ)がいるのか?」

 

「ン?ああ、サーニャか?サーニャなら夜間哨戒の準備で今はいないゾ」

 

「夜間哨戒ということは夜間戦闘航空魔女(ナイトウィッチ)。サーニャというのか。・・・サーニャ?」

 

 エイラから聞いた魔女(ウィッチ)の名前に何かの引っかかりを感じて神崎は首を捻っていると、目の前にドスンッと大きな皿が置かれた。どうやらバルクホルンが調理を終え、配膳に移ったようだった。

 

「皆、待たせたな。食べてくれ」

 

 次々とテーブルの上に並べられていく大皿。神崎は1度瞬きをして周りの様子を伺った。特に魔女(ウィッチ)達の表情に変わった様子はない。つまり、これは普通ということだ。

 

「・・・イッル」

 

「ん?なんだヨ」

 

「これは・・・料理か?」

 

 神崎が見るテーブル上の皿には、山盛りの茹でた芋と同じく山盛りの茹でたヴルストつまりソーセージと同じく山盛りのライ麦のパン。調理したとは言えるが、料理とはお世辞にも言い切ることができなかった。

 

「ここじゃこんなもんだゾ。むしろいい方だ」

 

「・・・本当か?」

 

「いつもはブリタニア兵が作ってるんだけどナ・・・。ほら、ブリタニアの料理ッテ・・・」

 

「・・・なるほど」

 

 黄昏たエイラの表情から察した神崎は、いままでの部隊での食事は恵まれていたのを実感した。しかしながら、温かい食事が出来るだけ十分ありがたいものだというのも実感している。・・・冷え切って半分凍った軍用缶詰など食えた物じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「温かい」食事を終えた神崎は、シャーリーから聞いた喫煙所に赴いていた。基地中心部分の脇にある中庭のような場所である。日が落ちかけている中、幾つか立てられた街灯に照らされて小屋のような場所がある。どうやら、そこが喫煙所らしい。

 ドアを開けて中に入ると、幾つかのベンチと灰皿、テーブルが設置された簡素なつくりだった。

 神崎は適当なベンチに座り、取り出した煙草を咥えて指で火をつける。5分ほど紫煙をたゆたわせていると,ドアが開いて新たな喫煙者がやって来た。

 

「ッ!?お疲れ様です!!」

 

「気にしなくていい。好きに吸ってくれ」

 

「ありがとうございます」

 

 まさか上官が喫煙所にいるとは思わなかったのだろう。整備兵の服装をした若い兵・・・それでも神崎よりも年上だが・・・神崎の階級章を見て緊張した声をあげた。だが神崎の言葉を聞くと若干居心地を悪そうにしながらも少し離れたベンチに座った。

 しばらく2人とも煙草を吸うだけだったが、神崎が1本吸いきったところで若い兵に話しかけた。

 

「すまない。最近この基地に来たんだが、ここはネズミが多かったりするのか?部屋の家具が齧られていたんだが・・・」

 

「ネズミですか?そうですね・・・。最近少し増えてきましたかね」

 

「それは大変だな。・・・ネズミ捕りに猫でも飼ったらどうだ?」

 

「猫もいいですけど、やっぱり蛇がいいですかね。壁の隙間に潜むネズミも食べてくれそうじゃないですか」

 

「・・・魔女(ウィッチ)達には不評そうだ」

 

「確かにそうですね」

 

 気安い雰囲気で会話を進ませる2人。この会話が終わったのと丁度で若い兵は灰皿に煙草を押し付けた。もう仕事に戻るらしい。

 

「あぁ、そうだ。最近、この基地に来たのなら釣りとかどうですか?色々なものが釣れますよ」

 

「・・・なるほど。最近はどんなものが釣れる?」

 

「活きのいい奴から、最近は危ない奴まで」

 

「参考になる。ありがとう」

 

「それでは」

 

 敬礼を残して喫煙所から去った若い兵。神崎も2本目を灰皿で揉み消すと喫煙所から出た。10分ぐらいしか経っていないはずだが、日は落ちている。

 

「さて・・・戻るか」

 

 煙草の箱を上着の内ポケットに収め、神崎は食堂に戻るべく建物へと入った。そこで、偶然鉢合わせした坂本からミーナが呼んでいることを知り、隊長室に足を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 机に向かい書類にペンを走らせるミーナの手が、扉のノック音で止まった。

 壁に掛けられた時計の針の進み具合を見るに、呼び出しの言伝を頼んでから大して時間は経っていない。

 

「どうぞ、入って」

 

「失礼します」

 

 呼びかけると今までこの部屋では聴くことのなかった男性の声が聞こえた。入室して一礼するのは、勿論神崎だった。その姿は一分の隙も無く軍人然としている。

 

「急に呼び出してごめんなさいね」

 

「いえ。用件はなんでしょうか?」

 

「明日の予定について少しね。こっちへ来て座って」

 

 応接用で向かい合うように置かれた2つソファを指し示すと、神崎は首を引くようにして頷き下座へと座った。ミーナもペンを置き、神崎の向かい側に腰を下ろす。

 

「明日は午前中に輸送されてきた貴方のストライカーユニットの調整を行い、午後からは模擬戦を行ってもらいます。予定ではバルクホルン大尉と行ってもらいます。その結果であなたの今後の運用を考えていきます。ここまでで質問は?」

 

「はい。模擬戦のルールは?」

 

「使用する武器はペイント弾装填の銃のみ。銃の種類は問いません」

 

「固有魔法は?」

 

「相手に直接向けなければ使用しても構いません」

 

「なるほど。分かりました」

 

 その後細かい事柄の調整を行っていると、壁際の掛け時計のチャイムがなった。チラリと神崎が時計の針を見れば時刻は9時になっていた。そのまま視線を戻そうとしたが、掛け時計の隣にある本棚に置かれたある物に目が止まった。

 それは艶のある茶色の筐体に鈍い金色のホーンの蓄音機。以前、スオムスに向かう直前でのブリタニアの基地で見た物と同一の物だった。そう、あの時もミーナの部屋で話をしていた。そこで・・・。

 

「神崎大尉?」

 

「・・・すみません。以前見たことがある物を見つけたもので」

 

「あぁ。あの蓄音機ね。あれは私の私物だからここに持ってきたの」

 

「そういうことでしたか」

 

「そういえば、あなたと初めて会った部屋でもあの蓄音機が・・・」

 

 そこでミーナの言葉は不自然に途切れた。神崎がミーナの表情を伺うとどこか後ろめたいような暗い表情で目を伏せている。どうやら数年前の会話で神崎に言った内容を思い出したようだった。神崎としてもあの時の会話で色々と傷ついたりもしたが・・・。

 

「・・・あの時の会話には色々と考えさせられました」

 

「そう・・・なの。ごめんなさい、あの時の私は相当ひどいことを言ったわ」

 

「いえ。中佐がおっしゃったことは事実です。事実・・・でした」

 

「・・・今でもあの時言ったことは、あなたが望むまいが危険を引き寄せてしまうという考えは、変わっていません」

 

「・・・はい」

 

 それは当然だと神崎は考えた。それはアフリカでもスオムスでも経験したからこそ。神崎がそこに居たからこそ誘発されたといっても、スオムスでの共生派との戦闘は特に、過言ではない。ミーナが501を守るために神崎を切り捨てるのならそれも致し方ないだろう。そうとなれば神崎にもやりようはあるのだが・・・。

 しかし、予想外の言葉が神崎のその思考を遮った。

 

「でも、すでにあなたも501の一員です。ならば501を預かる隊長として、その危険から貴方を守るわ」

 

「それは・・・」

 

「これから共に戦うのなら当然でしょう?」

 

「・・・そうですね」

 

 微笑んだミーナに神崎は小さく頷いた。

 その後調整は恙無く終わり神崎は隊長室を後にした。予想外のミーナの言葉に若干の驚きを抱えながら。

 だからこそ、退出する寸前のミーナが呟いた言葉に気が付かなかった。

 

「貴方が信頼に足るなら・・・ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、午前中の調整は問題なく終わった神崎は上空にいた。

 手にはアフリカの時から慣れ親しんだMG34。模擬戦用のペイント弾を放つオレンジの塗装が施されたそれは違和感こそあるものの運用には問題なかった。腰の弾帯にある炎羅(えんら)とC96は相変わらず装備されていた。

 今は演習相手であるバルクホルンを待ちつつ暇つぶしがてらに501基地の全容を眺めているところだった。

 

「すまない。少し遅れてしまった」

 

「大丈夫です、大尉」

 

「なら演習開始は・・・。おや?」

 

 神崎が持つMG34と同様にオレンジ色に塗装されたMG42を2丁持ったバルクホルン。すぐにでも演習を始めようとしたが、神崎が装備するストライカーユニットが目に入り驚きの声を上げた。

 

「そのユニットはメッサーシャルフか?」

 

 神崎の両足に装備されたストライカーユニット。塗装こそ坂本が使用している零式艦上戦闘脚二二型甲と同様の白色と白地に太陽と月のマークが描かれているが、形容は完全にバルクホルンも装備しているメッサーシャルフと呼ばれるBF109シリーズと同じ物だった。

 

「そうです。もっとも中身は殆ど別物ですが・・・始めますか?」

 

「あ、ああ。そうだな。始めよう」

 

 バルクホルンは他にもユニットについて聞きたいことがあったのだろうが、神崎の催促で質問するのをやめた。その様子をインカム越しに聞いていたのか、地上で待機している坂本から通信が入った。

 

『2人とも準備はいいか?2人が直線上ですれ違った時点で模擬戦を開始する』

 

「了解だ、少佐」

 

「了解」

 

 坂本の説明を皮切りに2人の雰囲気が切り替わる。本気の殺気ではないものの2人とも闘志を漲らせつつ、バルクホルンは軽く睨みを効かせ、神崎は1度目を瞑ってから相手を見据える。

 

「いつでもいいぞ」

 

「では・・・いきます」

 

「こい・・・!」

 

 短い会話の後、2人はほぼ同時に加速を始めた。加速度的に相対距離は短くなっていき、一瞬後には2人の距離は零になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始まったな」

 

「ええ」

 

「トゥルーデが相手か~。カンザキ大尉、勝てるの?」

 

「少なくともいいところまではいくはずだ」

 

 2つの機影が重なったそのすぐ後に複雑な軌跡を描き始めるのを、ミーナ、坂本、ハルトマンの3人は基地のベランダで見ていた。他の魔女(ウィッチ)達は任務や所用でいなかったり、はたまた別な所で観戦していた。

 

「そういえば、カンザキ大尉が使っているストライカーユニットってメッサーシャルフでしょ?なんで坂本少佐と一緒の機種じゃないの?」

 

 ハルトマンの質問も最もだった。扶桑皇国海軍所属の神崎がカールスラント帝国空軍のBF109を使用しているのは普通ありえない。

 

「ああ。私も詳しいことは知らないんだが、以前の任地で現地判断で使っていた物をそのまま使っているらしい」

 

「私も確認を取ったけど、現場判断から供与品ということで、後から正式に認められているそうよ」

 

「ふ~ん」

 

 坂本とミーナがそれぞれ答えるとハルトマンは気の抜けたような声で返事をしたが、上空の軌跡を見ながら首を傾げた。

 

「メッサーシャルフってあんな曲がったかな~」

 

「お、神崎がしかけるか?」

 

「トゥルーデはどう対処するかしら?」

 

 上空で描かれていく軌跡のリズムが変わり始める。模擬戦の戦局が動いたのを地上の3人は目敏く気付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ッく。中々やるな」

 

 背後を取ろうと格闘戦を行っていたバルクホルンは中々尻尾を掴めずに思わず言葉を洩らした。これまでに数度、射撃を行っていたがどれも寸での所で回避されている。掴めるようで掴めない神崎の飛行にバルクホルンは眉を顰めた

 

「もう少し様子を見るか・・・?しかし、あの飛び方どこかで・・・」

 

 攻めあぐねているのを自覚しながらも、どこか感じる違和感。しかし、それをはっきりと自覚する暇も無く視界に捉えていた神崎の動きが変わった。

 捻り込むような急激な旋回。

 どうやら勝負を仕掛けてきたようだ。

 

「来るか・・・!!!」

 

旋回と共に撃ってきた射撃をバルクホルンは回避する。そのまま再び背後を取ろうと再び格闘戦に入り引き金を引くが、神崎は僅かな旋回半径と挙動でバルクホルンの射撃を回避していった。しかも回避するタイミングの所々で背後への射撃を行ってくるので、追撃しきれない。

 しかし、ここで2人の持つ武器の差が出た。

 神崎の背後への射撃が不意に止まる。

 バルクホルンの目は神崎がMG34の弾倉を取り外しているのを捉えた。

 

「弾切れか!ここで決着をつける!!」

 

 バルクホルンはここが勝負所だと判断し、一気に加速した。2つの銃口を回避行動を取り続ける神崎の背中にピタリと合わせた。そして、神崎の回避行動が甘くなった瞬間に、引き金を引く。模擬戦はそれで終了した。

 

 

 

 バルクホルンの負けで。

 

 

 

「な・・・!?」

 

 自身の背中にペイントが付いていることを信じることが出来ずに呆然とするバルクホルン。そんな彼女の背後で、再装填を終えたMG34を構えた神崎は静かに呟いた。

 

魔女(ウィッチ)相手には・・・こんなものか」

 

 バルクホルンが呆然としたまま見た神崎の姿は、逆光で陰になる中で無感情な目だけがいやに印象に残った。

 





次回は色々な説明回になると思います
ストライカーユニットのことやら、模擬戦のことやら・・・


あれ?神崎強すぎ?
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