恐れ知らずがダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:もう何も辛くない

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ダンまち映画化&二期制作決定おめぇぇぇぇぇぇぇ!!!







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解ってはいた。相手は世界最高のLv.7、対する俺はやっと一人前と言える程度のLv.2。この間にどれだけの差が存在しているのか。解っているつもりだった。

全てが防がれた。全てが潰された。全てが、捻じ伏せられた。

 

二本の剣の内、一本は刀身が砕かれ地面に落ちている。激しく乱れた呼吸、額から流れる血、だらりと下がった左腕。剣を支えにして立つのがやっとなほど、完全に叩きのめされた。

 

今までどれだけフィン達が気を遣い、手加減してくれたのかを思い知る。かといって、目の前の男が今、全力を出して戦っているとも到底思えない。

 

「どうした。その程度か?」

 

猛者(おうじゃ)】は対峙してすぐの時と同じ、大剣を担いで俺を見下ろす。その体には傷一つなく、今まで戦っていたとは思えないほど平然としている。それ程までに俺はオッタルに対して何もできなかった。

 

「っ…!」

 

このまま戦い続けてどうなる。ただ嬲り殺しにされるだけだ。だが、逃げ道がある訳でもない。こいつ等が俺を逃がしてくれるとも思わない。

 

詰み

簡単なこの一言が、一番解りやすく今の状況を教えてくれる。

 

オッタルの問いかけに対して俺は何も答えず、目の前の男と、その背後で笑みを浮かべたまま立つ女神を見回す。戦いながらもずっと考えていた事をもう一度、思考する。それは、この二人の目的だ。

 

何のために俺に接触してきたのか。何のために、オッタルを俺にぶつけてきたのか。ただ俺を殺したいだけならば、フレイヤ・ファミリアには他にも手練れはいる上、第一にとっくに俺は死んでいるはずだ。それに、

 

『殺しちゃ駄目よ?』

 

そうフレイヤはオッタルに口にしていた。つまり、俺に接触してきたのは俺を殺すため、ではないのは確かだ。かといって、この戦闘を止めようとする気配は全く感じない。このままならば、確実に死ぬ。

 

「…もう、力は残っていないか?」

 

オッタルが再び口を開くと、奴から伝わる殺気が膨れ上がった。反射的に地面を突く剣先を離して剣を構える。体がよろけるが、両足で踏ん張り立ち続ける。

 

「続けるぞ」

 

そう言うと、オッタルは担いでいた大剣を構える。

一瞬の静寂の後、俺は重い足を動かし、オッタルに向かって疾駆する。

すでに得物は一つ折れ、もう片方の剣も時折不吉な音を発している。

それでも、ここで攻撃を止めれば、戦うのを止めれば、剣だけでなく全てが折れてしまうような気がした。

 

二つの刃がぶつかり合う。金属音が、地面を滑る靴の音が響く。オッタルの周りを動き回りながら背後から攻める。唐竹、袈裟、逆袈裟、右薙ぎ、左薙ぎ、右切り上げ、左切り上げ、刺突。剣戟全てが弾き返され、それでも止まらず剣を振り続ける。

 

再び戦闘が始まってから、どれ程時間が経っただろう。たったの一秒が長く感じられる感覚の中、右薙ぎに振るった剣が防がれた瞬間、踏ん張る右足に痛みが奔る。一瞬、動きが鈍り、その一瞬をオッタルに突かれる。

 

大剣が振るわれる。刃が俺の左肩から右脇腹にかけて切り裂く。切り裂かれた箇所から血を噴き出しながら体が宙を舞い、力なく地面に倒れる。それでも、再び立ち上がろうと腕を、足を動かそうとする。

 

まだ戦える。その心の意志は、俺の体に否定された。

腕にも足にも、体のどこにも力が入らない。立ち上がる事が出来ない。

そんな状況なのに、俺はどこか他人事のように感じていた。俺のこの無様な姿を別の俺が近くから見下ろし、言うのだ。あの時と同じだな、と。

 

そうだ、あの時と同じだ。あの時もこうやって倒れて、立つ事ができなくて、このまま死を待つだけなのかと覚悟した。しかし、あの時と少し違うのは、こちらに近づいてくる足音が聞こえない事だ。あいつは俺をどんな目で見下ろしているのだろう。失望した目で見てるのだろう。戦闘が始まった時、あいつの目はどこか、何かを期待しているように見えたから。オラリオ最強に期待されるような物など、持っていないのに。

 

「…っ」

 

自嘲気味に笑みを浮かべたその時、輝く何かが視界を横切った。瞬間、鮮明に、あの時の光景が脳裏を過る。…そうだ、どうして忘れていたのだろう。ずっとあの時から、俺は何をしていたのか。

 

違うだろ。俺の魔法は、スキルは俺の力だけで使えるものじゃなかった。

俺はただ導くだけ。ただ、それだけだったのに。

 

あの時は、何かが嵌る音が頭の中でした。

だが今、頭の中で響いたのは、何かが砕ける音だった。

 

 

 

 

 

 

◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 

 

 

 

 

 

「…どうやら、相当強い力で封印されてるようね。一度解かれてるから、今度は簡単にいくと思っていたけど」

 

血溜まりの中で倒れるアルトリウスを見下ろしながら、フレイヤが言う。

 

「シリウス…。あなたがもしここにいたらどう思うかしら。失敗したと後悔した?それとも…」

 

「…っ、フレイヤ様っ」

 

フレイヤがアルトリウスに歩み寄りながら呟きを続ける。その呟きが終わる前に、割り込むようにオッタルが口を開くと、フレイヤを抱えてその場から飛び退いた。

 

直後、フレイヤとオッタルが立っていた場所に何かが突き刺さる。着地したオッタルは、その腕にフレイヤを抱えたまま、突き刺さった何かを凝視する。

 

「これは…」

 

その色をどう判別すればいいか、オッタルには解らなかった。透明な壁の中で、小さな粒のような何かが蠢いていた。

 

「…ふふ、ははっ」

 

オッタルの腕の中で、オッタルと同じ物を見ていたフレイヤが突如笑い出す。

その堪え切れずに漏れた笑い声は、次第に大きくなっていく。

 

「アハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!凄い、凄いわアルト!!!やっぱりあなたは美しい!!!」

 

フレイヤの叫びの直後、地面に突き刺さった何かは音もなく霧散する。だが、そんな物はもう、フレイヤには見えていなかった。今、フレイヤに見えているのはその奥。血溜まりの中でゆっくりと立ち上がる、アルトリウスの姿だけ。

 

「シリウス、見ているかしら!あなたの息子はこんなにも美しくなって…、これからもっと、もぉっと美しくなるわ…」

 

フレイヤが言葉を言い切るか否や、再びオッタルがその場から飛び退く。鳴り響く轟音、巻き上がる煙。オッタルはフレイヤを抱えたままその場から駆け出した。

 

「広い所まで移動します」

 

「えぇ。あまり大事にしたくはなかったけれど…、どうでも良くなったわ」

 

アルトリウスに背を向けて移動するオッタル。迷路のように入り組んだ道を駆け抜けて出た広場でフレイヤを下ろし、オッタルは振り返ってアルトリウスがこの場に来るのを待つ。

 

「…便利な能力だな」

 

自身が走ったその道を見つめていたオッタルだったが、気配を感じて視線を上げる。

そこにアルトリウスは立っていた。オッタルとフレイヤを襲った謎の物質と同質のものと思われる何かを足場にして、空を駆けて来たのだろう。

 

アルトリウスが地面に降り立つ。つい先程までと、雰囲気が余りにも違う。

 

直後、アルトリウスの周りに前触れなく浮かび上がる無数の物体。それらは形を変え、オッタルに向けて先端を作り出すと一斉に射出された。

 

オッタルはフレイヤの前に立ちはだかり、一振り、大剣を一閃した。

射出された物質はオッタルの大剣に斬られ消滅し、斬り残された物質も衝撃だけで霧散していく。

 

「フレイヤ様」

 

「えぇ。遊んであげなさい」

 

フレイヤはオッタルにそう言って微笑みかけると、ゆっくりと歩いてその場から離れる。

それと同時に、爆炎の中からアルトリウスが飛び出してくる。右手に握った剣が振るわれ、オッタルの大剣とぶつかる。

 

「軽い」

 

「っ」

 

アルトリウスが息を呑む音が聞こえる。ぶつかり合った二本の剣、その内片方は砕かれ、もう一方は勢いを失わず振り抜かれた。言うまでもなく、砕かれたのはアルトリウスの剣。振り抜かれたのはオッタルの剣だ。

 

アルトリウスは目を見開きながらも即座にその場から後退。オッタルから距離をとってから時間を置かずにオッタルに向かって物質を顕現、射出。それに対し、オッタルはその場から動かぬまま、先程と同じように大剣を一振りするだけ。

 

「確かに便利な能力だ。それでも、まだ俺の脅威にはならん」

 

自分を睨むアルトリウスを見返し、オッタルは抑揚のない声で一言、そう言った。

 

 

 

 

 

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

 

 

 

 

 

怪物だ。同じ人間とは到底思えない。確かに力を全て操って戦えたとしても簡単にはいかないと思っていた。全てが想像を超える、それがLv.7。それが最強。勝てると信じようとする事すら傲慢なのではないか、そう感じさせる存在。

 

…それでも

 

「顕現せよ」

 

周囲の魔力を集め、固めた魔力の集合体を実体化させる。手元に武器はない。二本ともすでに折られている。周囲にある無限の魔力もあの怪物を前にすればただの一振りで一蹴される。

 

だが、それでもと抗い続ける。

 

射出、斬られる。

 

射出、斬られる。

 

射出、斬られる。

 

射射射射射射射射射射

 

斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬

 

射出される魔力の間を縫って、接近してくるオッタルの斬撃を魔力の壁を何重にも顕現させて勢いを弱める。勢いを失った剣戟ならかわせる、それでもギリギリなのが途轍もなく恐ろしい。

 

オッタルから距離をとりながら新たに顕現させた魔力の針をオッタルに向けて射出。オッタルが魔力の針を迎撃している間に今度はオッタルの背後に新たな魔力の針を顕現、射出。それすらもオッタルは一瞬の間に振り返り、大剣を一振りして一蹴。再び俺との距離を詰めてくる。

 

ならばと空中に魔力の足場を顕現、段差を作って空へと逃れる。それを見たオッタルは広場を囲む建物の壁を駆け上がって屋根へと上ると、そこから跳躍、俺と同じ高さまでやって来る。慌ててオッタルの四方を囲んでその場から飛び降りる。その一瞬の間にオッタルは自身を囲む壁を一閃、斬り砕くと飛び降りた俺を追う。

 

「…顕現せよっ」

 

オッタルの体が空中で落下している場所を確かめ、魔力の実体化の地点を断定、そして詠唱。現れたのは巨大な立方体。現れた場所は、オッタルのすぐ傍ら。

 

「っ…」

 

オッタルに向けて魔力を動かす。大剣を振るう暇を与えず魔力の塊がぶつけ、オッタルの体を吹っ飛ばす。大したダメージは与えられていないだろう。それでも、空中で体勢を崩す事は出来た。

 

先に地面に着地した俺はオッタルを見上げる。落下の速度、角度、場所は…あそこか。

オッタルの体は落下を続ける。その間に体勢を整えたオッタルは俺に視線を向けながら着地の体勢をとる。

 

「顕現せよ」

 

「っ!」

 

その瞬間、俺は詠唱式を唱えた。そして初めて、オッタルの表情が変化した。

オッタルの足元から現れる魔力の針。一本だけでなく、オッタルが着地するであろう地点の周囲に針の森は広がる。

 

さすがのオッタルでも空中で移動することなどできないはずだ。

 

これで、せめて少しでも──────

 

傍から何も知らない人がこの光景を見れば、俺が優勢のように見えるだろう。だが、そうではない。この作戦が成功したとしても、たかだかオッタルにはかすり傷がつくかどうか、といったところだろうか。

 

もう、奴と俺の間の実力の差は思い知っている。だから──────

 

オッタルが着地した途端、バキバキと折れていく魔力の針を見ても、俺は驚きもしないのだ。

 

「良い攻撃だ。これでお前のレベルがあと二、三上であったなら、俺もダメージを避けられなかったかもしれん」

 

言いながらオッタルは大剣を振るって周囲の針を薙ぎ払う。斬り払われた針は魔力の粒子へ戻り、霧散していく。

 

「さあ、これで終わりか?お前の能力は色々と応用が効くようだ。まだ…、戦えるだろう?」

 

オッタルが大剣を構え、接近してくる。こいつ、さっきまでは自分から動こうともしなかった癖に。俺の力を少しは認めてくれた、のか?普通だったら、オラリオ最強に認められるなどこれ以上ない名誉なのだろうが、今この状況では全く喜べないし、ただただ止めてくれとしか思えない。

 

それにまだ戦える?冗談言うな。こっちはもうとっくに限界超えてるわ。さっきのが最後の手だよ。もう少し早く魔法の操り方が解れば…、いや、それでも結果は変わらなかっただろう。

 

負けだ、完全に

 

「…それでも」

 

だが、このままただで負けてやるものか。せめて、その体にかすり傷一つだけでも残して負けてやる。

 

「顕現せ…っ」

 

詠唱式を唱えようとしたその時、風が流れた。オッタルも気付いたのか、動きを止めて風が吹いたその方向に目を向ける。

 

その直後だった。オッタルが防御態勢をとり、大剣に鋭いサーベルがぶつけられる。サーベルを握る何者かは続けて連撃を仕掛ける。たった何秒かの神速の打ち合いの後、長い金色の髪を揺らした何者かは俺の前に降り立った。

 

「アルト。大丈夫?」

 

風を纏ったアイズは振り返ると、普段通りの無表情でそう俺に問いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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