恐れ知らずがダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:もう何も辛くない

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今まで投稿してきた小説より圧倒的にお気に入り増加ペースがやばい。
ダンまち効果すげぇ…。








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「アイズ…?」

 

風を纏ったアイズの長い金髪が靡いて流れる。ダンジョンに潜る時の装備ではなく、ホームにいる時の普段着姿のアイズは愛剣《デスペレート》を構えてオッタルと対峙する。

 

「お前、何で…」

 

「部屋にアルトがいなかった。だから、フィンとガレスと手分けして探しに来た」

 

「…ちっ」

 

何故アイズがこんな所にいるのか、問いかけるとアイズの答えはすぐに返ってきた。どうやら俺が窓から外に出た後、部屋に侵入されたらしい。鍵は掛けていたはずだったが…、恐らくガレス辺りに扉をぶち破られたのだろう。どうしてアイズ達が部屋まで来たかは解らないが、部屋に俺がいない事を不審に思って探し始めた、といったところか。

 

だが…、来てほしくなかった。

 

「アルトは下がって。後は私が…」

 

「っ、駄目だ!こいつは…っ」

 

剣を構えるアイズを止めようと腕を伸ばすが、直後に奔る激痛に動きが止まる。

痛みに顔を歪める俺を見たアイズが、鋭い視線でオッタルを睨む。

 

「貴様に用はない。そこをどけ」

 

「どかない。どうして貴方がこんな事をするかは解らないけど…、これ以上、アルトを傷付けさせない」

 

この場から立ち去るよう言うオッタルに、アイズは即座に返答する。

アイズにここからどく意志は悟ったオッタルは背後の少し離れた所にいるフレイヤに目線を送る。オッタルと視線を合わせたフレイヤは、先程まで浮かべていた悦びの表情とは打って変わった無の表情で口を開く。

 

「その子はどうでもいいわ、オッタル。生かすも殺すも、あなたの好きな様にしなさい」

 

ただただつまらなそうに言うフレイヤに、オッタルは頷きを返して再びアイズへと視線を戻す。

 

「貴様が選んだ道だ。後悔するなよ」

 

「…っ」

 

大剣を一振りしたオッタル。ただの一振りだけで起こる強烈な風がアイズの体を纏う風とぶつかり合う。

 

直後、両者は動き出した。アイズの《デスペレート》とオッタルの大剣が幾度となくぶつかり合う。

 

「駄目だ、アイズ…。逃げろ!」

 

今のところ、両者の戦いは互角と言える。()()()()()()

 

「風よ」

 

俺の言葉が聞こえていないのか、それとも聞こえた上で無視しているのか。アイズは俺を見向きもせずにオッタルと剣を打ち合う。アイズを纏う風の勢いが増し、それと共にアイズの駆ける速度、連撃の速度もまた上がる。だが、オッタルは全く表情を変えぬままアイズの剣戟を打ち払い続ける。

 

駄目だ…、駄目なんだ。俺が未だに生きているのは、オッタルに俺を殺すつもりがなかったからだ。フレイヤに、俺を殺すなと命令されたから。ただ、それだけの理由。だが先程、フレイヤは好きにしろと言った。生かすも殺すも、オッタルの自由だと。

 

「ぐっ!?」

 

大きく振るった大剣が、防御態勢をとったアイズの体を飛ばす。それでもダメージ自体はなかったのか、空中ですぐに体勢を整えるアイズ。アイズの視線の先ではすでにオッタルが着地する寸前を狙おうと動いている。

 

アイズは強い。だが、言いたくないがオッタルには遠く及ばないだろう。レベルの数から見ても、冒険者としてのキャリアから見ても。アイズはオッタルには、絶対に勝てない。

 

アイズの足が地面へ着く寸前、背後へ回り込んだオッタルの大剣がアイズを襲う。大剣がアイズに命中する直前、剣を割り込ませて体を切り裂かれずには済んだが、再びアイズの小さな体が吹き飛ぶ。同時、オッタルもまた吹き飛んだアイズの体を追って駆け出す。

 

アイズに休む暇も、体勢を整える暇も与えない。

 

殺される──────

 

「アイズ…!くっ…、顕現せよっ!」

 

痛みで鈍る思考に鞭を打ち、場所を特定、展開。

 

「っ…、貴様」

 

駆けるオッタルの軌道上に魔力の壁を顕現、反射的に動きを止めたオッタルが俺を睨みつける。このまま俺に狙いを変える、事はなく、動きが止まったのは一瞬。大剣を振るって魔力の壁を斬り砕くと、壁に激突したアイズに向かって駆け出す。

 

俺の相手は後、という事か。今は邪魔者を排除するという事か。だが、させるものか。

 

「顕現せよっ!」

 

再び詠唱式を唱える。今度はただの壁ではなく、オッタルを囲む箱。しかし何度も同じ狙いは通用せず、オッタルは即座に魔力の壁に反応し、大剣を振るって斬り払う。動きを止める事すら叶わない。

 

それでも、少しは時間を稼げたらしい。呼吸を整えたアイズがオッタルに疾駆する。

露出した肩や足から血を流しながら、再びオッタルと剣戟を打ち合う。

 

「最後にもう一度だけ言う。ここから消えろ。さすれば、命の保障はする」

 

「…嫌だ」

 

「アルトリウスを殺すつもりもない、と言ったら?」

 

「そんなの、信用できないっ」

 

鍔迫り合いをするアイズとオッタルが声を交わす。

 

「そう、か。ならば」

 

「っ…!」

 

鍔迫り合いを続けるアイズとオッタル。会話が終わると同時に、アイズが少しずつ押され始める。オッタルの剣は振り払われる直前にアイズはその場から後退。だがすぐにアイズは前進、オッタルに疾駆すると剣を振るう。

 

ガキッ、と耳障りの金属音が響き渡る。

 

「なっ…!?」

 

「終わりだ。剣姫(けんき)

 

振り下ろされたアイズの剣は、オッタルの腕に装備された籠手で防がれていた。もう一方の手に握られた大剣の刃がアイズに向けられる。

 

「アイズ!くそ!」

 

今、俺は得物を持っていない上に、あの二人の戦いに割って入ればただの邪魔にしかならない。魔法でのちょっとしたサポートしかできない状況だ。

 

場所を特定、魔力を顕現──────駄目だ、間に合わない。

オッタルの大剣が振り下ろされる。アイズはすぐにその場から後退しようとするが、直前にオッタルの手がアイズの腕を掴んで動きを止める。アイズは、逃げられない。

 

「そこまでだ」

 

オッタルの大剣がアイズの肩先から斬り入る、その寸前の事だった。辺りに響いた力強い声にオッタルは動きを止める。

 

「やれやれ…、随分と派手にやってくれとるのぅ。広場をこんなにボロボロにしよって」

 

今度は先程響いた声とは別のしわがれた声が響く。

俺とアイズの視線の先、オッタルが振り返った先。フレイヤの隣に立っていたのは、小人族(パルゥム)とドワーフ。

 

「フィン…、ガレス…!」

 

「遅くなってすまなかったね。…アイズの手を離してもらおうか、オッタル」

 

「…」

 

フィンとガレスの登場に表情を緩ませたアイズに微笑んでから、フィンはオッタルに視線を移し、厳しい声で告げる。

 

オッタルは動かず、アイズの腕を掴んだまま。

 

「離しなさい、オッタル。もういいわ」

 

フィンと睨み合うオッタルがフィンから視線を外し、己の主神を見る。

 

「邪魔は入ったけれど…、見たかったものは見れたし。帰りましょう」

 

「…」

 

俺達に背を向けて去るフレイヤを追って、アイズの手を離したオッタルもまたその場から立ち去る。

 

「やれやれ、謝罪の言葉もなしかい」

 

「いいさ。これ以上深くいくと、ファミリア同士の戦争になる。それは望まない事だ。…ロキにこの事を報告すればどうなるか、解らないが」

 

立ち去る二人の背中を眺めながら呆れたように話し合うフィンとガレスの二人。

オッタルから受けた傷から流れる血を拭って、俺の方に振り返るアイズ。

 

…終わった、のか?助かったのか?こんなあっさり?生きてる。死んでない。何とか生き延びる事が出来た。相手に殺す気はないと解っていても、何度も何度も死んだと思わされた。

 

──────あ、やばい。

 

一気に気が抜け、体から力が抜ける。瞬間、視界が歪んだ。これは何度か経験した事がある。これは、気絶の前兆だ。後一秒もすれば俺の意識は失われるだろう。

 

視界が傾く。アイズが目を見開いて、こちらに駆け寄って来るのが見えた。

直後、ぷっつりと、視界が真っ暗闇に覆われた。

 

おやすみ

 

 

 

 

 

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

 

 

 

 

 

「アルト!」

 

ゆらりと体が揺れ、倒れるアルトリウスに駆け寄る。アルトリウスの体が地面に倒れる前に自身の体を割り込ませて支える。アイズはすぐに耳をアルトリウスの顔に近づける。呼吸の音は聞こえる。

 

「アイズ!」

 

「大丈夫、気を失ってるだけ。でも…」

 

アルトリウスはただ気を失っているだけ。だが、体中に付いた生々しい傷が戦闘の激しさを物語る。

 

「こりゃひどいのぉ…。全部急所を外れているが、すぐに治療した方がいいな」

 

「あぁ。早くリヴェリアの所へ連れて行こう。ガレス、アルトを頼む」

 

「おぅ。アイズ」

 

ガレスがアイズに背中を向けしゃがむ。アイズはガレスの背にアルトリウスの体を乗せた。ガレスがアルトリウスの体を背負って立ち上がると、三人は同時に駆け出す。

 

路地裏を抜けてメインストリートへと出て、黄昏の館へと急ぐ。すれ違う人達の何事かという戸惑いの視線も気にせず走る。ロキ・ファミリアのエンブレムが描かれた旗が揺れるのが見える。長い一本道の向こうに見える大きな門。門番が走って来るフィン達を見て目を丸くしたのが見えた。

 

「門を開けろ!今すぐに!」

 

「は、はい!」

 

門の前まで辿り着く前に、フィンが走りながら門番へ大声を上げて門を開けるよう命ずる。何故、という疑問もあっただろうがそれを口にすることなく、フィンの命令通りに巨大な門を開ける。

 

「フィン…っ」

 

扉から館の中へ入るとすぐ、そこでリヴェリアが立っていた。館に入って来たフィン達を見て目を見開き、そしてガレスに背負われる傷だらけのアルトリウスを見て慌てて駆け寄って来る。

 

「一旦部屋まで運ぼう。そこで治療する」

 

フィンが何かを言う前にリヴェリアがそう言い、三人は頷いて階段を駆け上がる。駆け上がった先の廊下の途中、扉が壊れたままの部屋に入るとそこのベッドにアルトリウスの体が寝かされた。

 

「…何があった」

 

ボロボロになった服、アルトリウスの体に刻まれた生々しい傷跡を見たリヴェリアが表情を険しくさせ、口を開いた。

 

「僕達も正直、詳しくは解らないんだけどね…」

 

アルトリウスの治癒を始めたリヴェリアにフィンが代表して答える。とはいっても、フィンやガレス、二人よりも前に来たアイズでもアルトリウスの身に何が起きたのか、詳しい所までは解らない。

 

だが、

 

「…どうやら、女神フレイヤに目を付けられたらしい」

 

「っ…」

 

フィンのその一言を耳にしたリヴェリアの体が小さく震える。

 

「僕はこの事をロキに報告しに行くよ。アルトを頼むよ、リヴェリア」

 

「…あぁ」

 

一まず一件落着したとはいえさすがにこの問題を放っておくわけにもいかない。フィンはリヴェリアにそう言い残すと部屋を出て、主神の間へと向かう。アイズとガレスはフィンの姿が見えなくなると、再びリヴェリアの治療を受けるアルトリウスへ視線を戻す。だがすぐに、ガレスがアイズの方へ顔を向けた。

 

「アイズ。お前は大丈夫か?」

 

「…うん。掠り傷しかないよ」

 

アイズもまた、所々に小さな傷を受けていた。派手に吹っ飛ばされたとはいえ、実際に受けたダメージは大したことがなかったため、ガレスの問いかけに大丈夫と答えるが、

 

「後でお前も治療してやる。そこで待っていろ」

 

リヴェリアにそう言われ、アイズはこの部屋でしばらく待つ事にする。といっても、アルトリウスの治療が終わるまではこの部屋で待っているつもりだったのだが。

 

部屋の中に沈黙が流れる。聞こえるのは、アルトリウスの治療箇所を変える際に動く、リヴェリアの衣が擦れる音のみ。両腕、胸、腹、両足にまで付いた傷跡全ての治癒を終えたリヴェリアが立ち上がり、大きく息を吐く。アルトリウスの体に布団を被せてから振り返ると、リヴェリアはアイズへ視線を向ける。

 

「さあ、次はアイズ、お前の番だ。傷を見せろ」

 

「…うん」

 

本当に大した事はないのだが、ここで大丈夫と言ってもリヴェリアが引き下がらないのは知っている。おとなしく、まずは左腕に付いた傷を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 

 

 

 

 

 

「…ほぉ。要するに、フレイヤがアルトを欲しがってオッタル連れて襲ったっちゅう事か?」

 

「それにしてはやけにあっさり帰っていったけどね。でも、フレイヤがアルトに目を付けたのは間違いなさそうだ」

 

一通り自分が見た事をロキに報告し終わったフィン。フィンが話す間、何度も蟀谷をぴくぴく震わせていたロキだったが、話し終わった頃には完全に青筋が立っていた。

 

ロキが大きく息を吸う。それを見たフィンは苦笑を浮かべながら両手で耳を塞いだ。

 

「あんの阿婆擦れ糞女神がぁぁぁぁぁああああああ!!遂にうちの子にまで手を出しよって!!許さん許さんぜっっっったいに許さん!!」

 

今まで聞いた事もないくらいのボリュームで怒鳴るロキは、それでもまだ怒りが収まらずどたどたと床を足で踏み鳴らす。

 

「気持ちは解るけどロキ、落ち着いて」

 

「フゥーッ、フゥーッ、フゥーッ!」

 

フィンが言うとロキは足を止め、激しく息を荒くする。次第に呼吸が落ち着き、表情もいつもの穏やかなものへと戻っていく。

 

「ホンマにあいつ、どうしてやろうか…。とりあえず百発殴って顔ぐちゃぐちゃにするのは決まりとして、後は…後は…」

 

前言撤回。これっぽっちも落ち着いてなどいなかったらしい。

 

「だから落ち着くんだロキ。そんな事をすれば、フレイヤ・ファミリアとの全面戦争は避けられないよ?」

 

「おぉーっ!全面戦争上等やんけ!うちの子に手出ししたツケはしっかり払ってもらわななぁーっ!!」

 

「…」

 

フィンは思った。もう話にならない、と。今日は一度置いといて、明日ちゃんとロキが落ち着いた時にこれからについて話し合うべきだ。

 

だが、先程も言ったがロキの気持ちは解る。むしろ同じと言ってもいい。団員達の存在がフィンの理性を繋ぎ留めてはいるが、今にでもバベルの塔に行ってフレイヤ・ファミリアのホームで暴れたいところだ。リヴェリアやガレスもきっと同じ気持ちだろう。今ではすっかり鳴りを潜めてはいるが、元来は自分も含めて三人共、血の気が多い性格なのだから。

 

それでも堪える。フレイヤ・ファミリアとの全面戦争となれば、結果はどうあれ犠牲者が出るのは免れない。それはロキとしても望む所ではないはずだ。今は怒りで我を忘れ、好き放題言ってはいるが。

 

「やれやれ…」

 

ロキの様子を見て、明日に本当に落ち着いてくれるのか。心配になりながら、フィンは小さく頭を振りながら溜め息を吐く。

 

アイズを連れてくれば少しは落ち着いてくれるだろうか。しかし、ロキを一人にするのは危険な気がする。今すぐにでもフレイヤの所へすっ飛んでいきそうな勢いだからだ。きっともう少しすれば、アルトリウスとアイズの治療を終えてリヴェリアとガレスがここに来るはずだ。それまでここで待つ事にしよう。

 

リヴェリアとガレス、そして、呼びに行く手間が省けてアイズも一緒にやって来たのはロキが背後に般若を背負ってから十五分ほど後の事だった。ちなみにフィンの予想通り、アイズを目の前に置いた途端ロキはそれはもう簡単に落ち着いた。そして、アイズに抱き付こうとする親父ロキ…、いつもの騒がしいロキが戻って来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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