「行くところが決まった。聖地だ」
村を出て、歩いていった先。
子供達の悲鳴が聞こえなくなったところで、リアが言ったのがそれだった。
そろってなぜだという顔をしているレナとフィールに対して、リアは髪の毛に手を突っ込むと、ブチブチ言わせながら黒く四角い機械を取り出してみせた
「それ……魔力探知機?」
「さっきの宿屋で拾った……あいつらだけじゃない。聖地へ行って、遊んで暮らすために、魔法使いを欲しがってる連中は大勢いる。この魔力探知機も、金さえあれば誰でも買える。あんな死んだ村の住人が持ってたんだ。多分、今は外地の誰もが持ってるだろう」
絡まった髪の毛を引きちぎっていきながら、淡々と語っていった。
「だが逆に言えば、聖地にさえ行けば安全ってことだ。少なくとも、今日みたいな目には、もう遭わない」
「……聖地になんて行きたくない、て、言ったら?」
「また同じ目に遭うだけだ。無理強いはしないが、お前らの好きにしろよ」
そんな冷たい言葉を返されながら、さすがのレナも、おかしいと思った。
「いや……そりゃあ、みんなが便利な聖地に行きたがってるのは分かるけど、だからって、外地の全部が全部、あの村みたいってわけでもないでしょう? わたし達のいた村だって、聖地に行きたいって人、いなかったわけだし……」
「……え、そうなの?」
隣に立っていたフィールが、その話に声を上げた。
「聖地に興味がない大人なんて、いたんだ……」
「え? うん……そんなに珍しいの?」
「珍しい……?」
すぐに答えようとしたらしいが、途中で言葉が出なくなった。
なぜそんなことを聞いてくるのか、分からない。というより、そんな常識も知らないことに呆れ、唖然としている。そんな様子を見せている。
「……外地がどんな場所か、学校じゃ習わなかったの?」
そう聞き返されたレナは、なにも答えられない。
代わりに、横からリアの薄ら笑いが聞こえた。
「習うわけないだろう。今時、子供のことを大人になるまで面倒みてくれる大人達が集まったド田舎だぞ?」
「……え?」
レナにとっては、生まれながらに当たり前なことだった。それを説明した、同じ場所で育ったはずのリアは、さも滑稽だという口調と態度だった。
「教えてくれよ、フィール。そんな時代遅れのド田舎生まれな俺達に、今時の外地の人間たちの普通をさ……」
その声色は、レナのような純粋な疑問じゃない。全てを見て、知っていて、それでも他人からの答えを敢えて求める、悟りきったような、余裕ながらも投げやりな……
「そうね……仕事柄、色んな場所へ行くし、色んな村に行ったことがある。少なくとも、私が見てきた外地の人間は全部、あんなふうだった」
「あんなふうって?」
「……無気力で、自堕落で、なのにプライドだけは十人前で……今の不幸を人のせいにばかりして、何かってわけじゃない、周りにとにかくイラついて、怒ってる……そんな自分達の今を、どうにかする努力はせずに、誰かがどうにかしてくれることを、ただ待ってる……そうやって、都合の良い夢だけ見てるうちに歳だけ取った、そんな連中……少なくとも、私が見てきた村は全部、そんな連中が集まってできたような場所だった」
それはまさに、レナも、さっきの大人達を見て感じた、そのままの姿だった。
「いや……それは、まあ、分かるよ。そういう人たちがたくさんいることも、そういう人に限って、簡単に酷いことするのも、知ってるよ……」
成長も、そのための努力も、何もしようとしないくせに、自分のプライドを守ることだけには全力を尽くす。そんなろくでもない奴を、たった今、それに、昨夜も見たばかりだった。
そんな奴らに限って、普段はできないような、最悪なことを簡単にやって、しかもそれを正しいことだと信じ込んで、悪いことだとは気付きもしない。
悪いのは自分じゃなくて、自分にそんなことをさせる、相手が悪いんだ、と。
そんな最悪な奴らがいることは、レナもよく分かっている。
気になったのは、別のことだ。
「でも……それがどうして、子供を育てるのが時代遅れだって話になっちゃうの? 今時、子供は誰も産まないってこと?」
「子供は今でも生まれてる」
その質問には、リアが答えた。
「子供を作る理由は色々だ。さっきの村の奴らは多分、無理やり作らされて、産むしかなかったんだろう。自分の意思で産んだなら、コドモを嫌いこそすれ、恨んだりしないだろうからな……心底コドモって存在を恨んで、それでも嫌々育ててた」
「……恨むくらい嫌なのに、どうして育ててるの?」
「もしかしたら、魔法使いかもしれない。そしたら聖地へ行ける。探知機があれば、生まれたてだろうと魔力の有無ですぐに分かるが、持ってなければ育てて、魔法を使えるかどうか確かめるしかないからな」
「……むしろ、今時はそれだけを目当てに、育てる気もない子供を産む人間の方が多いくらいね」
「魔法使いじゃなかったら?」
「最悪、顔さえ良ければ売って金になる。それもダメなら……分かるだろう?」
「……」
その問いかけの答えは、たった今見て、知っていた。
それでも、答えたくはなかった。
「子供って、なんなの?」
答えたくないから、逆に聞き返した。
「わたし達の学校でも言ってたじゃん。子供はとても大切で、親はもちろん、周りの大人の人たちが守って、そうやって大きくなっていくものなんだって。だから、わたし達が大きくなったら、わたし達より小さな子供は守らなきゃいけないんだよって……村は最悪でも、学校で教えてたことはマトモなことだって、ずっと思ってたのに……」
「……」
「子供ってさ、なんなの?」
二度と帰りたくない、思い出したくもない最悪な村だとしても、そんなところで大切に育てられてきたから、今の自分がある。
それをよく知っているからこその疑問だった。
自分がこうして大きくなって、一人になっても生きてこられたのは、厳しくも優しい父親が育ててくれたからだ。
わたしのお父さんだけじゃない。少なくともあの村の大人たちは、リア以外の子供たちのことは、大切に守っていた。子供達が付け上がって、性格が歪んでも、それでも大切に甘やかしていた。
だから少なくとも、親や大人達は、子供の面倒を見て、守ってくれる。そんな人たちだと思ってたのに……
「命が人か力が人か」
「……なにそれ?」
「リン国で書かれた本に載ってた言葉だ」
「リン国って……確か、隣の島国だっけ? この国よりずっと小さいけど、ずっとすごいっていう?」
ようやく、学校でも習った単語が聞こえた。
今言葉にした通りの薄い認識でしかないが、リアも、それが正しいと表情で頷きつつ、体重を預けている、さっきまで獣達が積まれていた、巨大なトラックを見上げた。
「このトラックだとか、車とか、電気とか、水道とか、他にも色々……大よそ現代に残った遺物や生活必需品は、世界一の技術先進国であるリン国が発明したもの……てことは、今はどうでもいい」
重要なのは、今の時代に生まれた人間が、まさにその言葉の通りの価値だということ。
「昔は、子供は生まれた時から……いいや、生まれる前から大人たちに愛されて、守られて、尊ばれてる、そんな存在だったらしい。実際、俺達のいた村じゃあそうだった。けどな、今はもう、時代が違う。さっきのババアも言ってたろ? 金も無い、魔法も無しに生まれてきた子供なんか、なんのために育てるんだよ?」
「そんなの……」
あんまりな理屈に、言葉も出ない。隣のフィールも同じながら、それでも納得していた。
「まず、妊娠すれば、それだけで体調が悪くなって、人並みに動けなくなる。そのせいで周りの足手まといになって、仕事がクビになることもある。長い時間辛い思いをして、いざ産む時には、何時間も死ぬほど痛い思いをさせられる……俺は男だから分からんが、お前らも女なら、なんとなく想像はできるだろう」
「……」
「……」
「それで無事生まれたとして、今度は大人になるまで十年以上、食わせなきゃならない。わがままやイタズラをすれば躾けなきゃならないし、一人で生きていくために必要なこと、全部教えなきゃならない。それだけ苦労して世話をしても、親や、世の中の役に立つ人間に育つ保障は無い。それだけ人生を振り回される割に、見返りなんか何もない。そんな不利益にしかならん生き物、誰が面倒見たがる?」
「誰がって……」
「少なくとも、俺はゴメンだ。母一人の面倒を見るのだって、幸せだったがかなり大変だったんだからな」
「……私も。生まれつき親の顔なんか知らなかったけど、そうでなくても、自分一人守るので精いっぱいだったから。子供やペットの面倒なんて、見てられない……」
「……」
理屈だけ言えば、二人の言った通りだろう。
レナとしても、今は亡きお父さんが、たった一人で赤ん坊だった自分を育ててくれたのがどれだけ大変なことだったか。子供ながらに、なんとなく想像はできる。自分に同じことができるかと言われたら、できる、なんて言える自信はない。
それでも……
「大変だからって……何も得しないからって、簡単に捨てられるものなの? 自分の子供って……」
親の、子供に対する愛情なんか、レナ自身も分からない。想像さえできない。
それでも、小さかった自分は、お父さんのことが好きだった。そのお父さんも、わたしのことを愛してくれていた。
村の親はみんなそうだったし、ネアさんだって、そうだったはずだ。それなのに……
「……正直、俺には分からない。だが少なくとも、得にも金にもならないって分かったから、誰もしなくなったのが子育てだ。魔法も金も無いから、何の価値もない。だからいらないって捨てられたのがコドモだ」
命が人か、力が人か……
「子育てだけじゃない。子育てもそうだが、金にならないこと、辛くて苦しいこと、それでも誰かがやらなきゃいけない。そういう仕事とか役割はたくさんあった。そういうことから順に、自分がするのは嫌だ、どうせ誰かがやる、そう言って誰もしなくなっていった。仕舞いには、働くことも、成長することも、何もしなくなって、最後は何も無くなった。そうやって、夢も希望も、未来も無くなっちまったのがこの国……いいや、この世界だ」
それを、実に分かりやすい縮図にしたのが、たった今出ていった村。そして、そこに住む人間達の姿だった。
「そんな世界に生きてる
今日まで、村の学校では教えてくれなかった、この世界の惨状。
そんなものを一度に聞かされて、レナは最初、信じられないと思った。だが、たった今出ていった村や、朝にやっつけた暴漢たち。リアを狙ってやってきた盗賊たち。
何より、フィールや、リアの口から言われたことこそ、レナにとっては『何より』の説得力だった。
「だから、お前らを聖地へ連れていく」
レナが世界の事実を認識したところで、最初の話題が聞こえた。
「そんな死んだも同じなクズ野郎たちに、お前らは渡さない。さっきの連中みたく、助けてもらえるのが当然だって思ってる連中を、助けてやる義理なんか無いんだからな」
「そっか……だからリア、わたしに、人前で魔法は使うなって、言ってたんだね」
レナが何気なく言った一言に、フィールは一人、目を見開いた。
「リア……レナの魔法のこと、知ってたの?」
「……一年くらい前だったか? 俺に魔法が使えるって打ち明けたのは……」
リアに向かって頷きながら、レナも、過去のことを思い出した。
仕事中に大ケガをした時、なぜそうしたのか、レナ自身、今でも分からない。
傷に手を触れ、意味不明の言葉を囁いた。すると、傷は綺麗に治ってしまい、以来、同じことが何度もあった。ためしに小さな獣でも試したら、その傷も治った。
魔法のことは学校でも習ったし、他の子達と同じように、ワクワクしながら聞いていた。
それでもせいぜい、わたしならこんな魔法を使いたいな、と、子供なら誰もが夢見るような妄想で遊ぶ程度だった。まさか、自分が使えるだなんて思ってもみなかった。
だから、それが魔法だと気付いた時は嬉しくなって、真っ先にリアに見せたいと思った。
いつも無口でクールなリアも、それを最初に見せた時は、さすがに驚いていた。
けどその後すぐに、大慌てで、このことは誰にも話してはいけない。二人だけの秘密。
人前では絶対に魔法を使うなと、ほとんど一方的に約束させられた。
最初はなぜかと思ったけど、どうせリア以外に、特別仲の良い人がいるわけでもない。
リア以外に、ケガをしたら治してあげたいと思う人もいない。
だから、そのくらい構わないと思ったし、何より、リアがそう言うならと、理由を特に何も気にせず、言われた通りにしていた。
そして今日、ずっと分からなかったその理由をはっきりと理解した。
「もし、村の誰かや、最悪、外から偶然やってきた誰かが、レナの魔法のことを知れば、噂はあっという間に広まる。そしたら、俺を狙う以上に、盗賊とかろくでもない連中が来るのは目に見えてる。あそこで平和に暮らすには、黙ってるしか無かった」
それが本当に正しいことだったと、レナもよく分かった。
ただの貧しい村人達でさえ、二人を巡ってあそこまで争った。
リアがいつもやっつけてくれていた、盗賊達が一度に襲ってきたら、あんな村、ひとたまりもない。
「あの村の人達は、そういうの、興味ない人達だったのかな?」
「どうだかな……中には聖地に興味がある奴もいたかも知れない。だが、俺が見た限り、あそこにいる連中のほとんどは、俺のこととか、不満はそれぞれあったろうが、村での生活自体には満足してた。外のことは気にもかけてなかった。多分、仮にレナの魔法のことを知っても、それで聖地へ行こうって考えるやつはいなかった。と、思う」
「……あれ? でもそれなら……」
そこまで会話を聞いたところで、フィールが声を上げた。
「それなら、リアが今まで倒してきた、盗賊や賞金稼ぎって……リアのこと、魔法使いだと思って襲ってたってこと?」
「……そういう連中も、中にはいたかもな。一度追い返すと、さっきみたいに脅えて、二度とやってこなかったから、実際には金目当てか魔法目当てだったかは分からんが……」
フィールも、実際に戦った時のことを思い出した。
確かに、体格とか歳とか、そんな物に見合っていない強さだったが、魔法、というふうには感じなかった。フィール自身が魔法使いだったことを差し引いても、その感覚は変わらなかったろう。
それに、さっきみたいに、あからさまに見せつけたならともかく、あの夜の戦いで、あの長刀をどこかから出すところを見た人間は、多分、一人もいない。
魔法にしか見えない行為も、上手いこと、魔法には見えないよう立ちまわっていたんだろう。
その上で、相手が二度と襲ってこないよう、怖い化け物を演じていたわけだ。
「いずれにせよ、あの村ももう、終わりだろうがな……」
「どうして?」
「わたしとリア、村に二人しかいない猟師が、両方出ていったんだよ? 大っきな獣が出たとして、誰がやっつけるの?」
「それにいずれ、俺を狙う盗賊達も来る。俺達みたいな戦えるヤツも他にいない」
「一ヵ月もたないんじゃない?」
「そうだな……半月もてば奇跡だな」
近いうちに故郷が無くなる。そんなことを平然と語る二人の顔は、終始冷たかった。レナに至っては、薄ら笑いさえ浮かべている。
そうなって当然だとフィールも思うし、むしろそうなった方が清々する気持ちもある。けれど……本当に、故郷に未練は欠片も無いんだな。故郷が無いフィールにも、それがよく分かる冷たさだった。
たとえ住民が最悪であれ、今となってはかなり貴重な、コドモが子供らしく生き、人間らしく成長していける、そんな場所だろうに。
未練も思い入れもないから、故郷だろうと簡単に捨てて、見捨てられる。
(それも、世界が終わっていく理由の一つなのかも知れないわね……)
「いずれにせよ、もう帰る場所も無い。外地に安全な場所もない……聖地まで連れて行ってやる。無事に辿り着いたら、後は好きにしろ」
「好きにって……どういうこと?」
聞き返してきたレナに、リアは答える代わりに、手元の機械のスイッチを入れた。
フィールやレナに向けると、さっきと同じように、耳障りな音が鳴り響いた。なのに、リアに向けた途端、ピタリと止んだ。
「……やっぱり、俺に魔力は無い。俺は魔法使いじゃない」
溜め息交じりに結論付け、探知機を握りしめ、粉々に砕いてしまう。
「魔法使いでもないガキが、聖地で一緒にいたって仕方がないだろう」
間接的な、二人に対する別れの言葉だった。
それが分かったレナとしては、リアと別れるくらいなら、楽園だろうとそんな所へ行きたくない。当然、そう思った。
「もちろん、さっきも言ったが無理強いはしない。外地にいたいのならそうしろ……守ってやるから。二人とも」
強くて優しい声でそう言った。とても心強い言葉だった。
だがそれはつまり、昨日までリアがお母さんにしてきたことを、自分たちにしてくれる。そういう約束だ。
ただ二人より強いっていうだけで、たくさん辛い思いをして、たくさん戦って、たくさん傷ついて……
そんなリアなんか、見たくないのに。そんな目に遭わせたくないから、フィールと一緒に、リアを守ろうって決めたのに……
聖地へ行けば、リアはそれ以上、辛い思いをしなくてよくなる。けど、リアとはそこでお別れ……
外地に残れば、リアとずっと一緒にいられる。代わりに昨日までと同じ、辛くて苦しくて、痛い思いをずっとさせることになる……
「分かった。聖地に行きましょう」
内心で激しく悩んでいたレナ隣から、そんな即答が聞こえた。
「三人で聖地へ行く……で、リアも一緒に聖地へ連れていく」
「……俺も?」
怪訝な声を上げたリアに、フィールは更に続ける。
「リアだって、ずっと聖地へ行きたかったんでしょう? ネアさんと一緒に」
「……」
「家は、金があればどこでも買える。けど、歩けないネアさんの足を治すなんてこと、聖地じゃなきゃ無理だものね?」
「……」
「少なくとも、魔法使いの私がいれば、聖地で暮らすことはできる。ネアさんが死んだ今、こんなこと言っても仕方がないかもしれないけど、あなたが行きたがってた聖地へ、私が連れていくわ。そこで私が、リアの家族になる」
「か……!」
「家族……」
レナは声を上げ、リアは聞き返した。
「そう。家族なら、一緒に聖地で暮らすことができる。奴隷は御免だけど、家族になら喜んでなってあげる。あの時、あなたにも……ネアさんにも、誘われたことだしね。その誘いを、今受けても良いでしょう?」
「……」
リアはその顔を、フィールとは別の方向へ向けた。
その方角の先にあるのは……
「聖地……」
「わたしも行く!」
そんなリアに向かって、レナは慌てて大声を上げた。
「小さい頃から森と猟師のことしか知らなくて、都会とか聖地とか、全然興味無かったけど、あの村から出ていって、行くとこ無いのは一緒だし、さっきみたいな目にも、もう遭いたくないし……それに、リアがそこに行きたいって言うなら、わたしも一緒に行く……ていうか、わたしだって魔法使いだし、だから、わたしが連れていってあげるから」
優しく語った少女。そして、必死に訴えた少女。
「言っとくけど、嫌って言っても、無理やり連れていくから」
「そうだよ……ま、守るって言ったんだから、責任持って、ずっと、そばにいてよね……」
語りながら二人が向けた瞳には、濁りも陰りもまるでない。
真っ直ぐな思いをリアに向け、確かな決意を示しての言葉だった。
「……分かった。この三人で、聖地へ行くぞ」
そんな視線を受けながら、ボソリと声を発した。
二人とも、そんな答えに安心したように、笑みを浮かべた。
「……フィール」
「なに?」
「……このトラック、運転できないか?」
「……できるくらいなら、とっくに賞金稼ぎなんか辞めてるわ」
「だろうな……」
予想通りだったろうが、それでも落胆し、ため息を吐いていた。
「……ねえ、リア?」
「リア、あのさ……?」
そんなリアに向かって、フィールとレナは、ふと気になったことを聞こうとした……
その時、突然リアは、二人の服を掴み、自身の後ろへ引き寄せた。
「え、リア……?」
引っ張られ、振り返った直後……
夜の中からそれは現れた。
ついさっきリアが、ここにいた男に向かって投げつけた、獣よりも遥かに大きく、そして強い、魔獣……
「クロジシ……!」