オリジナルイオン(?)がアリエッタと共に世界救世旅行へ 作:ヴィヴィオ
湖上の街レディレイク。聖剣祭のおかげで出店も多く、食材も豊富だった。だから、アリエッタとボクの手に串焼きやフランクフルト、リンゴ飴とかが握られていてもなんにもおかしくない。
「食べ歩き楽しい、です」
「アリエッタ、口元が汚れているよ」
「んっ」
アリエッタの口元を舐め取ってソースとかを取ってあげる。アリエッタはお返しとしてリンゴ飴を差し出してくるので人齧りする。
「サイモンもどうぞ、です」
「ありがとう」
「必要な物は揃ったかな?」
「後は馬車ですか? でも、そのぬいぐるみがあればいりませんよね」
「そうだね」
ぬいぐるみがあれば荷物を全て収納し、足は馬の代わりにアリエッタのもふもふライガ達がいる。わざわざ馬車を買う必要もない。問題の通行手形も幻術で誤魔化せばいい。
「イオン様、アリエッタはおやつが欲しい、です」
「なら、8千ガルドで買っておいで。ボクとサイモンはそこで休憩しているから」
「離れても大丈夫、です?」
「サイモンがいるから平気だよ」
「なら、お願いするです」
「任された」
アリエッタが嬉しそうに近くでお菓子を売っている店にいったので、ボク達は水路の柵にもたれかかる。サイモンも一緒に隣でいてくれる。
歩く人達の話では聖剣祭で導師が誕生したとか化け物が現れたとかだ。休憩がてらにゆっくりとしているとサイモンが手を握って身体を預けてくる。
「どうしたの?」
「すこし穢れが強くて……」
よくよくみればサイモンはうっすらと冷汗をかいている。我慢してついてきていたのだろう。
「そうなんだね。これからはもう少し早く言ってね」
「はい」
ボクは近くにあったベンチに座ってサイモンを寝かせて、頭を膝の上にのせて楽な姿勢にしてあげる。それから杖をついてダアト式譜術の発動準備を行う。どうせなら子守歌がわりに鎮魂歌を歌って瘴気……こちらでいう穢れを浄化してあげよう。
「~~♪ ~♪ ~~~♪」
歌いながら錫杖を鳴らし、瘴気を集めて杖に吸収させて結晶体を作成する。それを錫杖に仕掛けた輪に加工されている同一体の譜石が共鳴して、音機関を起動する。制御された超振動により、分解してダアト式譜術を介して再構築を行う。結晶体は何も刻まれていない譜石となり、ボクの手元にできる。これを加工して指輪に作り替える。入れる譜は瘴気を吸収して変換し、所有者の力を回復させるものとする。もっとも、子機みたいな物なのでボクの近くにいないと意味がないけれどね。
加工も終わったので、歌をやめると通行していた人達がボクをみていた。そして、何を思ったのかお金を渡してきた。どうやら芸と勘違いされたようだ。
「お金はいりません。ただの鎮魂歌ですから。どうしてもというのなら、私達に感謝の気持ちを向けてくださるだけでかまいません」
オラクル教団で覚えた人心掌握術を使って、信仰心を集める。ボクには必要ないけれど天族であるサイモンには必要だろう。
「イオン様、お待たせしたです」
「おかえり。それじゃあいこうか。起きて、サイモン」
「ん……わかった。あっ、わかりました」
起きたサイモンと一緒にレディレイクを出る。浄化はしておいたので、導師が目覚めるまでは大丈夫だろう。
レディレイクから出たボク達はどちらに向かうかサイモンに聞かなくてはいけない。
「どっちかな」
「左側に進んでフォルクエン丘陵を目指します」
「了解」
「イオン様、準備できた」
アリエッタの周りには大きなライガ達がお座りして待っていた。ボクは彼等に抱き着いて撫でまわす。
「よろしくね」
「わふっ!」
「乗ったことはないが、大丈夫なのだろうか……」
「平気だよ。心配ならボクの中に入ればいい」
「弟達はいう事はちゃんと聞いてくれます」
「わかった。頑張ってみる」
「なら、まずは慣れることからだね。お辞儀してから、撫でてあげて」
サイモンがお辞儀してから、恐る恐る近付いて撫でていく。ライガは大人しくされるがままだ。その間にボク達は鞍をつけさせてもらって、サイモンが慣れたころに乗って走ってもらう。
「まずは橋を渡ってもらいます」
サイモンとライガ達に行き先を任せ、ボクは橋の上から景色をみる。大きな湖に浮かぶ都は綺麗に見えている。最初に見た時は穢れに満ちていたけれどだいぶましになっている。この世界は大分末期になりかけているようだ。これからボク達が暮らす世界なんだから、壊す側ではなく救う側になるべきかもしれない。まあ、部外者であるボク達がなにかをしていいのかはわからないけれど。いや、いいか。ボク達もこの世界の住人になったのだから。
橋を通ると深い森に作られた道に入った。そこを進んでいるとライガやアリエッタが気持ちよさそうにしている。急いでいるわけではないのでゆっくりと進んでいる。
「イオン様、道の先に何かいるから、確認してくる、です」
「お願い」
「はい、です」
アリエッタが何かに気付いたようなので、任せる。ライガが加速して先に向かうとサイモンが心配そうに聞いてくる。
「大丈夫なのですか?」
「アリエッタは大丈夫だよ」
「いえ、森が」
「そっちかぁ~。そっちはわかんないな」
少しして前の方から悲鳴と雷鳴が轟いてくる。ライガ達の声も聞こえてそちらに向かうと、横転した馬車とそこに巻き込まれている少女。それにその両親と思われる者。彼等の視線の先には慿魔化したと思われる変な生き物。それは現在、痙攣した状態になっていてライガ達によって噛みつかれている。そんなライガ達を見守るアリエッタ。
「アリエッタ、殺さないでいいよ」
「ストップ、です」
アリエッタの指示ですぐに離れるライガ達。慿魔はまだギリギリ生きている。ボクは手をかざして穢れを吸い取ってから治療する。すると碧色に変わってへんな生物は森の中に消えていった。実験は成功だ。穢れを浄化すればどうとでもなる。
「さて、次は君達だ」
「お、お助けを……」
「助けてあげるから手伝って。まずは馬車を起こすよ」
馬車に触れて力をいれるとあっさりと持ちあがってしまった。そういえば、ボクは力も強化していた。
「痛い、痛いよぉぉ……」
女の子の足は完全に砕けている。とりあえず、サイモンに頼んで眠らせてもらう。それから治療をしてあげる。
「レイズデット、リザレクションかな。うん、これで完治。君達も怪我はなくなったかな?」
「は、はい! ありがとうございます!」
「あ、あの、折り入ってお願いが……」
「なにかな?」
「私達はマーリンドからきたものです。どうかそのお力で村をお救いください」
「マーリンド?」
サイモンの方に向いて聞いてみると、彼女が教えてくれた。
「大樹の街マーリンド。穢れに満ちていて疫病が流行っています。その正体は……」
「なるほど。場所は?」
「目的地の近くです」
「わかった」
「あの、誰と話して……」
「大樹の街には用事を済ませた後でなら行ってあげよう。今は先にやることがあるから、そっちが終わってからね」
「そんなっ! いますぐにでも……」
「ボクが街まで助ける理由はないよ。何かを願うなら代価を差し出すといい。まあ、あいにくとボク達はボク達の目的を優先するけれどね」
サイモンが×を両手で作っているので、そちらは後回しだ。
「それは……」
「やめないか。用事が終わったあとでもいいので、どうかよろしくお願いいたします。できる限りのお礼は致しますので」
「それならついでだし寄ってあげる。大樹の街っていわれるなら、観光もできそうだしね」
馬も治療して動けるようにしてあげた。彼等はそのままレディレイクに助けを求めに向かうようで、別れて進む。
「さて、ボク達も急ぐよ。予定が増えたからね」
「助けるのですか?」
「気が向いたらね。人がいなくて観光ができないと困るし」
「なるほど。アリエッタ、全力で進んでくれるか?」
「うん。聞いてみる。いけるって」
「なら、それで。私は主様の中に入るから交代しながら進めば速いだろう」
ライガに乗ったボク達は急いで森を抜ける。森を抜けると田畑が見えてきたけれどそこはすでに滅んでいるようで打ち捨てられた村があった。
「今日はここで泊まりましょう」
「コテージ、出すね」
「あ、どうせだからキャンプがいいな。キャンプにしない?」
「イオン様がそういうなら、アリエッタはそれでいい、です」
「虫とか寝る時は大変ですが……」
「結界張るから大丈夫だよ」
「ならそうしましょうか」
という訳でキャンプになった。アリエッタとライガ達には食材確保と枝を取りに森へと向かってもらう。ボクは結界を張ってから木々にハンモックを作る。材料は蔦で編んでいく。サイモンは岩で簡易の竃を作ってくれた。そこにY字に加工した枝を突き刺して鍋の用意をしていく。
アリエッタが戻ってきたら枝とアリエッタのブレイズエミッターを使って火を起こし、お湯を作る。
「今日の晩御飯はなにかな?」
「単純に魚の塩焼きと粗汁でいいですよね」
「ワイルドな奴だね」
「もっと手の込んだ奴を作ります」
「おこったの?」
「いいえ、作りたくなっただけです」
サイモンが魚の腹を裂いて腸などを抜いてから塩を振ってから、串にさして焼いていきます。それからライガ達が取ってきた肉を捌いてそれをミンチにしていった。続いてキャベツを取り出してそこにミンチを詰め、紐で固定したら鍋にトマトと一緒にいれていった。
「できるまで時間があるのでゆっくりとしていてください」
「わかった。じゃあ、アリエッタ」
「なにをするです?」
「ライガ達にブラッシングしておいてあげて。アリエッタのは後でボクがやってあげるから」
「はいです!」
大喜びなアリエッタとライガ達。ライガ達は我さきにとアリエッタに殺到してペロペロと舐めて催促していく。アリエッタも嬉しそうにブラッシングを開始する。
さて、ボクは少し離れたところに杖をついて譜術を発動する。
「サーチ。みつけた」
地面のある場所にアースクエイクを発動し、大地を裂く。するとそこから水が出てくる。周りの木々を風の刃で伐採して、ロックランスで穴を塞いで水が微かに流れてくるようにする。追加のロックブラストで岩を作ったら今度はレーザーで加工する。そこに水を流す水路を取り付けて完成だ。後は焼いた石を数個入れて流れ込む水を調整すれば風呂の完成。周りは適当な木で囲いも作っておこう。結界を張ってあるから動物や魔物、慿魔がくる心配もない。
元の場所に戻ると美味しそうな匂いが漂っていた。ライガ達を背もたれにして火を囲む。
「食事はできています」
「なら、食べよう」
ライガ達は肉と骨を食べ、ボク達は焼き魚とロールキャベツを頂いていく。味はまずくはないけれど美味しくもない。及第点といったところだね。
「これから精進だね」
「そもそも自分で食べる必要もなかったので……」
「それならなおのこと、ボクのために愛情こめて頑張ってよ」
「はい!」
嬉しそうにするサイモンと嬉しそうに食べているアリエッタ。ボクと一緒にいられるのが嬉しいのだろう。こうやってたったの三人で動くことなんて前は無理だった。教団に閉じ込められていたしね。どこにいくにも護衛がついてまわってくるから。
「ごちそうさま。洗い物を手伝うよ」
「いえ、そういうわけには……」
「ボクがやりたいからいいの」
「アリエッタもやるです」
三人でお風呂を作ったところに移動する。そこで余った水を使ってあらうことにする。
「何時の間ににこんなものを……」
「後で入るからね。アリエッタ、手をいれてブレイズエミッターを付与してお湯を沸かしてほしい」
「任せるです」
洗い物を終えたら、服も洗濯する。お願いしてサイモンに洗ってもらう。その間にボクはアリエッタを洗っていく。それが終ればサイモンも洗って、今度は二人に洗ってもらう。お湯で流してから綺麗になってら湯船に浸かる。
サイモンは恥ずかしがって真っ赤になっているが、アリエッタは自然に抱き着いてくる。
「サイモンもこっちにおいで」
「は、はい……」
アリエッタはボクの膝の上に座って完全に身を預けてくる。サイモンも同じようにして二人の柔らかさと温かさを感じながら空をみる。空には普通はみえない暗い影が複数みえる。
「この先、大変なことがおきそうだけど、これから楽しいことができそうだね」
「イオン様と自由に旅するの、楽しいです」
「アリエッタもしたいことがあったら、いってね」
「アリエッタはイオン様といられるだけで幸せ、です」
「まったく良い子だね。でも、行きたいところや、やりたいことがあったら教えてね」
「アリエッタの行きたい場所はイオン様の隣です。あ、でもやりたいことはありました」
「なに?」
「イオン様の、子供を……」
「え?」
「そういえば失敗してたね。なんでだろ?」
「その、イオン様がいなくなって、悲しくて……」
「ああ、そういうことか」
「まってアリエッタの年齢は?」
「アリエッタ、16歳。お姉さん、です」
信じられない顔をしているけれど、サイモンもこの姿で20歳くらいなんだよね。とりあえず、生意気なことをいったアリエッタの頬っぺたをぷにぷにする。
「ちなみにボクは14歳か12歳だね。12歳で死んだから12かもしれないけれど。おかしいよね。死んだのに偽物がいたから二歳も年をとったんだよ」
「主様……」
「まあ、気にしてないからいいよ。ボクも二人がいて今が幸せだしね」
「アリエッタもです。イオン様の居ない世界なんていらない、です」
「というわけで、こっちは気にしてないよ」
「まあ、私も主様に付き従うだけだからかまわないですが……」
サイモンも身体を預けてくるので、そのままゆっくりとお湯を楽しんでから外に出てアリエッタに乾かしてもらった服を着て、一つのハンモックで三人で抱き合って眠った。