オリジナルイオン(?)がアリエッタと共に世界救世旅行へ 作:ヴィヴィオ
スレイ
目覚めたオレはすぐに近くにいたミクリオとライラに事情をきく。被害を聞く限り、皆無の状態らしい。
「怪我人がでなくて本当によかったよ」
「それはそうなんだけどね」
「どうしたの?」
「あの場に私達以外の天族がすくなくとも一人はいました。いえ、むしろあの力は……」
「どういうこと?」
「ボク達以外にもなにかした奴がいるんだ。そいつはあそこに居た人達の被害を防いで治療を行った。だからこそ被害がでていない」
「良い人じゃないか」
「それだけならね」
「そうです。その人達はなんの目的か、私達の姿を住民の人達にみせていました」
それって慿魔を一般の人がみたってことか。そんな天響術もあるんだな。
「問題はそれを行った理由と、こちらが気付いたことで逃げたことです」
「ろくなことを考えていないだろうね」
「そんなことはないと思うけどね」
「どちらにしても愉快犯の可能性がありますね。彼等の力ならスレイさんが私と契約する必要もなく先の慿魔程度は倒せたでしょう」
つまり、わざわざオレが契約をするまでまっていたのか。
「どちらにしろ会って話してみればわかるんじゃないかな」
「そうですね。ですが、これからどうしましょうか?」
「まずは彼女にあったらいいんじゃないかな?」
「アリーシャだね」
アリーシャ、この国のお姫様に会いにいく。彼女がこの部屋を提供してくれたようだしお礼もしないとね。
その後、話し終えてからレディレイクの街でライラ達がみた天族達を探していると穢れの原因をみつけた。だからオレはレディレイクの地下にある穢れの原因である弱い慿魔を浄化した。その時に災禍の顕主を倒すことが導師の役目だと教えられた。その後、アリーシャがマーリンドに向かうことを聞いてオレ達も一緒に向かうことにした。
「おかしいです。レディレイクで感じていた穢れが明らかにすくない。まるで一度浄化されたような……やはり、あの天族と一緒にいた人は……いえ、そんなはずは……」
「どうしたの、ライラ?」
「いえ、なんでもありません」
目覚めたら、可愛い二人のペットによって身体が拘束されていた。二人は温かくて気持ちが良い。髪の毛を撫でると感触がとてもいい。安心しきって安らかに寝ているアリエッタを撫でて楽しむのが、前の日課だったけれどサイモンもいいね。願わくばこんなゆっくりとした時間が楽しめればいいんだけど、そうもいかないか。
「わふっ」
「大丈夫だよ」
ハンモックの周りにいた数十匹のライガやフレスベルグ達が空を警戒する。見上げた空を大きな大きなトカゲが飛んでいる。瘴気の塊でとてもじゃないが、あのなったばかりの見習い導師には勝てそうもない存在。
「やれやれ、観光する街を壊されてもかなわないが、何よりもボクの上を許可なく飛ぶなんて許せないな。日照権の侵害だ」
寝ている二人を譜術で浮かせてハンモックから出て二人を戻す。それからアリエッタのぬいぐるみからパンや調理器具を取り出して、フライパン熱する。火はライガに吐いてもらった。
目玉焼きを作って焼いたパンの上に乗せる。これで朝食は完成。ボクは料理だって少しはできる。面倒だからやらないだけで。後はパンを焼いてそこにレタスとハムをいれてサンドイッチを作っておく。
「マヨネーズが欲しいけど、作るの面倒だしな」
二人が起きるまで暇なのでライガ達をブラッシングして、最高の毛並みにする。譜術も使って綺麗にしたら最高のもふもふ具合になる。問題点はライガ達が骨抜きになって腑抜けることだけどね。
「うにゅ……おはよう、いおんしゃま……」
「はい、おはよう」
起きたアリエッタを抱き上げてハンモックから取り出し、ハグをして寝ぼけているアリエッタにおはようのキスをしてから解放する。
「主様、申し訳ございません」
「サイモンもおはよう」
「はい、おはようございます」
「二人で顔を洗ってくるといい」
「わかりました。アリエッタ、こっちだ」
「うにゅ……」
さて、二人がいない間に紅茶でもいれよう。コーヒーでもいいんだけど、アリエッタは苦いのが嫌いだからね。
紅茶を入れている間に戻ってきた二人と食事をとってから、昨日の風呂に移動する。
「なにをするのですか?」
「禊だよ。サイモンもやろうか」
「わかりました」
意味があるかはしらないけれど、訓練の一環になってしまっているのでやる。こっちにきてから疎かになってたからね。冷水で身体を清めてから瞑想を行う。警備はライガ達にお願いするのでいい。三人で裸になり、アリエッタのメイルシュトロームで揉まれる。結果、サイモンが目をまわしてダウン。ボクは息も絶え絶えで、アリエッタはピンピンしている。これが年季の違いである。二年の差はひどい。単純計算でそれだけの量のハーブを食べていると考えたら納得だ。正直、いまのアリエッタと全力で戦ったら……負けそうだ。前衛がいればダアト式譜術で力量の差を補えるだろうけど、一対一なら確実に負ける。まあ、アリエッタとボクが全力で殺し合うなんてないだろうけどね。
さて、フォルクエン丘陵を進んでいると大きな川がみえてきいた。そこにかかっている橋は崩れ落ちている。やったのは先のトカゲかもしれない。まあ、どうでもいいことだ。
「こちらです」
「あの山?」
「そうです。あちらに見えるのが霊峰レイフォルクと呼ばれる目的地です」
「おっきい、です」
「とっても大きいぞ。雲の上まであるからな。それに今度はちゃんと登らないといけない」
「飛んじゃだめ、です?」
「目的の人物がどこにいるかわからないから諦めるんだ」
「残念」
「まあ、登山も面白いさ」
ピクニック気分で登っていると、穢れが濃くなってくる。ここにトカゲがいるのは間違いないだろう。それに雑魚も結構でてきいているし。まあ、サイモンが処理してくれているので、ボクはアリエッタと手を繋いで登っているだけなんだけどね。
そんな風に進んでいると上から傘が転がり落ちてきた。そして、更に上からもう一つ飛んでくる。
「サイモン、アリエッタ。空から女の子が落ちてきた」
「目的の子です。受け止めてください」
正確には吹き飛んできたので、報告したら目的の子だと言われたのでアリエッタから手を離して杖も手放して両手でキャッチする。お姫様抱っこで受け止めたがいいが、非力なボクはそのまま倒れそうになる。
「ん、イオン様」
「ありがとう」
アリエッタが背中から支えてくれた。ちなみにサイモンの言葉が間に合わなかったら、彼女は死んでいたと思う。アリエッタのデモンズハートによるカウンターがきまっていたからだ。
さて、ボクの腕の中にいる女の子は金髪碧眼可愛らしい子で、髪の毛をサイドテールにしている。その子は正直言って傷だらけで満身創痍といえる。出血や青あざなんかも所々にある。片手と片足なんて折れている。
「それで何時までこうしているつもりかしら?」
「ずっと?」
「それじゃあ、お願いしようかしら」
「いいよ」
「イオン様っ! ずるい!」
アリエッタもこうして欲しいのか。なら後でしてあげよう。
「サイモンがいうにはこの子が目的みたいだしね」
「あら、私が目的できたの?」
「そうだよね、サイモン」
「はい。地の天族エドナ。我が主、導師イオン様のものになれ」
「嫌よ。だいたい、このままだと死ぬわよ」
彼女、エドナの言葉に空をみると回転しながらこちらに棍棒を振り上げてせまる複数の巨体の慿魔。攻撃の軌道を見切って一番最初の相手に、ジャンプしながら蹴り飛ばす。吹き飛んだ相手は他の連中に命中して弾かれていく。着地と同時に地面の広範囲に魔法陣を構築してダアト式譜術を発動する。
「アカシック・トーメント」
魔法陣から湧き上がってくる無数の光に追加で飛び降りてきた群れは串刺しになって消滅していく。
「死ななかったね」
「そう、みたいね。でも、死ぬんじゃないかいしら?」
「え?」
「後ろ」
振り返るとデモンズハートを上に掲げて巨大な炎の塊を作っているアリエッタの姿があった。どうやら、彼女が一掃しようとする前に始末してしまったようだ。それにボク達にバリアーが張られているので防御を優先したのだろう。
「わふっ!」
「そこっ!」
アリエッタのクリムゾンライオットが放たれる。着弾する瞬間、そこから大きな蛇女がでてきてこちらを睨もうとした瞬間、消失して周りがガラス化した。
「トロルの群れにナーガ。主様達には瞬殺か。しかし、よく生きていたな」
「死にかけてたわよ。普通はいないはずの慿魔がこんなにいるんだもの。貴方達がこなければ確実に死んでいた程度にはね」
「それもそうか。それと動かないでほしい」
「ん?」
「空から降ってくる、です」
今度も女の子(?)が降ってきた。それは両腕が翼で両足が鳥の足になった女の子だ。それらは地面に激突していろいろと折れた。それ以外の外傷はない。
「なにをどうやったらこんなに落ちてくるの?」
「幻術で地上と空を入れ替えただけだ」
「えげつないわね」
「言われてるね」
「主様が嫌ならやめますが……」
「別にいいよ。効率的に倒すのはいいことだし」
「死んではいません。私にはそれは無理なので」
「みたいだね。アリエッタ」
「はい、です。ご飯だよ」
助けてあげてもいいけれど、助ける理由もとくにないんだよね。だからライガ達に食べさせればいい。それに無駄な力は使いたくない。これから大物が控えているかもしれないのだから。
「狼の慿魔?」
「アリエッタは魔獣使い、こっちだと慿魔使いだからね」
「なにそれ。というか、導師なのにこんなことしていいの?」
「導師だから無償で救うとかボクはしないよ。そういうのは別の人に頼むよ。何かを得るためには何かを差し出すのが君達にはわかりやすいだろ。誓約なんてものが存在している天族には」
「そうね。それで私が欲しいって?」
「そうだよ。ボクも可愛い君が欲しい。だめかな?」
「い・や・よ。といいたいのだけれど、運がないと諦めたほうがいいのかしら。このままじゃ死ぬし。それは困るのよ」
明らかに怪我がやばいからね。とりあえず、治してあげるか。譜術でもいいけど、やっぱりこっちだね。
「でも、こんな状態じゃ役に立たないわよ」
「治せるから大丈夫だよ。それで困るってなにかな? 言った通り、代価は支払うよ」
「じゃあ、できないでしょうけどお兄ちゃんを助けてくれたら、あなたのものになってあげるわ」
「お兄ちゃん?」
「あのドラゴンです」
サイモンが空を指さすと、周りが一気に瘴気に満ちてくる。とりあえず、まとめて浄化する。でも、どんどん湧き上がってきて、空から瘴気の塊であるトカゲが降りてきた。
「なんだか大きくなってない?」
「凄く怒っていますね」
「イオン様、凄く怒ってる。妹に手をだすなって……」
「え?」
「それ本当?」
「意識があるの?」
エドナとボクが質問すると、アリエッタが答えてくれる。
「微かだけど……今の姿をみてそう思ったみたい」
「なるほど」
「主様、いいことを思い付きました」
「ふむふむ」
サイモンがあくどいことを思い付いたので、それを実行する。だって、凄く面白そうだから。少し戻った意識をさらに覚醒させてあげる。
「お兄さん、エドナをボクのお嫁さんにさせてもらいます!」
「なにをっ、んんんんんっ!?」
エドナの唇を奪ってやると、一気に穢れの量がました。抵抗するエドナの口に舌までいれてからアリエッタに渡す。空のお兄さんをみると怒り狂ったように真っ赤なオーラに包まれてこちらに突っ込んでくる。
「ほら、お兄さんこっちだよ! アリエッタは彼女の護衛をお願いね!」
「イオン様の護衛は……」
「私がする。心配しなくていい」
サイモンが走って付いてくる。ボクは落としていた杖を足で弾きあげて手に持って、思いっ切り振るう。お兄さんの下顎を打ち抜いて空まで押し返す。
「ほらほら、どうしたの! その程度だとエドナはボクのものだよ!」
「ガァアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!!」
大きな口から特大の炎が吐かれる。
「サイモン」
「御意」
回避したそれは炎の海を作り、穢れを巻き散らかす。錫杖を鳴らしてダアト式譜術と合わせて穢れを回収して浄化する。同時にサイモンがお兄さんの耳元でエドナの姿と声で無理矢理お嫁にとか、色々といっていく。それはもうえげつない内容を幻術でみせているようだね。ボクに対して怒り心頭なお兄さんは大暴れ。ボクは結界を張って防いだり、光の剣を作って放ったり、コキュートスで空から叩き落したりといろいろとする。
楽しく歌いながら浄化を繰り返す。さあさあ、もっと吐き出すんだ。今の状態はボクでも準備がいる。大量の瘴気を消費させて、その力を貰う必要がある。